174、発情期44
やってやるか。
敵討ち。
『グドウ伯爵領に殴り込みだ』
『だからね。止めようよ』
『いや。やる』
『復讐とか八つ当たりとか、非生産的で意味ないよ』
『少なくともスッキリは、する』
『コレは………君さぁ。発情期スキルとテイムスキルの影響で、精神状態ハチャメチャになってる自覚とか無い?』
む?
何だと?
………言われてみると、発情期スキルはポジティブな感情を、テイムスキルの影響は、最近は感情抑制を………。
それとアルマ絡みの嫉妬。
セーラからの仕打ち。
歪んだ愛情。
双子の死亡………復活してくるかもだけど。
復活してきたとしても、死体がバラされてる以上。
違う体で戻ってくるだろうから、たぶんもう双子じゃない。
アキリア。
セーラ。
双子。
アルマ。
マッマ。
結果………
人類なんて滅びれば良いんだ。
アキリアも。
何処の街のチゴヤ商会の支店で、
世界の片隅で、
ひっそりと、俺の精神状態はハチャメチャになってる。
アキリアの、言うとおりかも知れない。
たぶん発情期とテイムのスキルの影響が大きい。
青春時代に、生活を恐ろしく厳しく管理されてるようなものだった。
精神状態への負荷が半端じゃない。
『………とりあえずアレだ………』
『何だって?』
『グドウ伯爵って奴を、ぶっ転がせば、気が晴れそうだ』
『八つ当たりだよね?』
『………………』
『ほら。返事が無い、ただの八つ当たりじゃん』
『良いからグドウ伯爵のいる所まで案内してくれ?』
『………………しょうが無いな〜。とりあえず東だよ』
『おい………。西じゃないのか?』
『え?』
『詳しい場所は知らんけど、ヒャッハーと合流しようとしてた時に、大まかに太陽の沈む方向へ歩いてたぞ』
『そうなの?』
………
ん?
んんん〜?
何だコイツ?
俺を騙そうとした?
『あ、わかった』
『何が?』
『お前、魂の処理が面倒だから、俺をグドウ伯爵領と、反対の場所に誘導しようとしてたろ』
『………………』
『おい………お前………』
『ちぇ。バレたか』
『そんな、いずれはバレる、嘘なんてついても意味ないだろ』
浅い。
嘘が浅すぎて、つく意味が無い。
グドウ伯爵の元へとたどり着く時間が、余計にかかるかどうかだけで、結果は変わらない。
『そうでも無いよ』
『なんでさ?』
『時間さえ稼げれば、後は君の地雷が何とかしてくれから』
『………………地雷』
あ。
セーラか。
忘れてた。
確かに、俺がここから居なくなれば、どうなるか?
すぐにでも追跡してくる可能性は高い。
ヒャッハーの敵討ちをセーラが許容するか?
………………
その可能性は恐ろしく低い。
アイツ等、絶対仲悪いし。
セーラに捕まる。
仇討ち禁止される。
間接的なテイムスキルで逆らえない。
これで摘みか。
『つまり俺は、セーラにバレる前に、グドウ伯爵を仕留めなきゃいけないのか?』
『復讐とか止めるのが一番良くない?』
『却下だ。復讐はともかく。何かを壊さないと………』
『へ? 何で?』
『俺の精神が先に壊れそうだ』
『あ、この子は、ついに八つ当たりだと認めちゃった』
『この子とか言うな。………八つ当たりの何処が悪い? 見ろ』
目の前には地獄。
ここしばらく俺の心を掴んで離さなかったアルマ。
ちっこ可愛いアルマが………
イケメン達に囲まれてご満悦だ。
『いや、見たけど』
『世界なんて、滅びてしまえば、良いんだ』
『わりかし、あのアルマって子さ。君みたいな頭のおかしいイケメンを量産してると考えると、罪な存在だよね』
『アルマの悪口を言うな〜〜〜』
『………いや、君の思考回路………』
『何だよ』
『いい感じに、おかしくなってるね』
『むう』
『自覚は出来たみたいで、良かったね』
むう。
全てはタイミングが悪かった。
運が悪かった。
運が悪かったと思ってしまった。
だからね………
俺以上に運が悪かった伯爵。
グドウ伯爵には、俺以上に運が悪かったと思って、何もかも全てを諦めてもらうんだ。
そう思ってしまったんだ。




