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173/306

173、発情期43、真っ黒


 双子のヒャッハー。

 逝ったか。

 別に好きな奴では無かった。

 ………だが、愉快な気持ちでもない………………。

 利用出来そうな、敵対しそうな駒が、一つ減った。


『アキリア。ヒャッハーの奴は、助けたい人がいるとか言ってた。ソイツがどうなったか知らないか?』

『………………ヒャッハー王孫が発動した【聖戦】の内容は、グドウ伯爵領全ての人を皆殺し。燃やし尽くし奪いつくせってモノだった』

『何だ?………無茶苦茶じゃないか?』


 皆殺し? 

 アイツ、何を考えてたんだ?


『まぁ、それだけ怒る様な事に、なってたんでない?』

『そうか………そうか。悔しかったんだなぁ』


 大体何が起きたかは、見当がついた。

 アイツはハチャメチャだ。

 思い切りが良すぎる。

 だけど

 前にはチャンスをじっと待ってた。

 そして俺とセーラ殺害に成功してたのに。

 なのに今回は失敗した。

 チャンスで無いのに、機会に飛びついた?


 何故だ?


 そうか………

 たぶん怒りで我を忘れて、失敗したんだろうなぁ。


 アンナ奴の事はどうでも良い………か?

 ………………

 いや。

 何かが

 何か黒黒とした感情が、腹の底から湧き上がってくる。

 自分のモノでは無いかもしれない何か。


 ふとヒャッハーの人生を思う。

 赤ん坊の体のママ。

 怒りに駆られて、返り討ち、か?

 ソレはどれだけの怒りだ?

 何故成長を待てなかった?

 機会を伺わなかった?

 アイツなら出来たろう。

 鮮やかに、してやられた記憶がある。

 俺には勝ったのに。

 なのに今回は無様に負けやがるとは………

 何があったか、よく知らん。

 が

 短絡的な行動から、

 奴がどれだけ怒り狂ってたかは想像はできる。

 もしかしたら、ソレは………

 俺にとってかけがえの無いモノに繋がるのかもしれない。


『………………』

『怖い顔をして。何を? かんがえてるの?』

『なぁ。ヒャッハーの死体はどうなったか知らないか?』

『首切られてたよ』


 ああ。

 駄目だ。

 一瞬。

 首の無い黒い巨竜の姿が脳裏に浮かぶ。

 何かを守れなかった竜の姿が。

 その為に死力を尽くした姿。

 美しいと思ってしまった姿が

 ヒャッハーと重なった。

 重なってしまった。


『あぁ………そうか。なら………仇はとってやらねば、なるまい』

『え? なんで? なんでそうなるの?』


 混乱するアキリア。

 わからなくていい。

 知らなくて良い事はある。

 だから………

 俺の目の前の地獄のように腹立つ光景を指差す。


『見ろ。俺以外の男に、嬉しそうにデレデレするアルマを!』

『え? それがどうしたの?』

『人類なんて、滅びてしまえば良いんだ』

『いや、ちょっと待って。ソレは八つ当たりだよね。なんとかって伯爵。関係無いよね?』

『双子の兄弟を殺されて、復讐しない奴が、何処にいる?』

『嘘だ。絶対にフラレた八つ当たりだよね』

『………』


 まぁソレもある。

 ドラゴンテイムスキルで、感情と行動が制限されている。

 それが無ければ、何を仕出かすか?

 自分ですら予想出来ない。


『ねぇ。やめようよ』

『いや、やる。みんな滅びれば良い』

『殺るにしても大量虐殺は駄目だよ』

『みんな滅びれば良い』

『ただでさえヒャッハーのせいで、死んだ人の魂が現在進行形で、飛んできてて、処理面倒なのに』

『お前も滅びてしまえば、良いんだ』

『いや、待って待って待って。僕への嫌がらせで、虐殺とかヤメテ』

『ふふふ、いい感じに仕上がってるだろ。俺は』

『ちょっ〜』

『大量虐殺可能なスキル。寄越せ』

『あげる訳無いじゃん』

『手持ちスキルは、海神の加護。竜変幻。発情期。福音。ブレス。火力が足りない』


 一対一ならドラゴンキラーもあるし、いい感じだけれども。

 かつて持ってた切り札スキルと比べると、心もとない。

 てか、大量虐殺出来ない。


 う、う〜ん。

 本体がドラゴンだった前回と違って、

 本体が人間の今回。

 レベルが上がっても強力なスキルが生えてこない。

 と言うか、スキル自体なかなか生えない。

 ドラゴンに比べると、人間凄い貧弱。

 そんな俺の気も知らずに


『火力不足? そっか。ふう。良かった』

『良くない。人類を皆殺しにできるスキル、カモン』

『あげる訳無いじゃん。君は頭おかしいの?』

『お前、そう言うスキル渡すの得意だろ』

『……………僕を何だと思ってるんだい?』

『邪神とか………いや、それにしては弱すぎるな』

『僕は慈悲深い女神だからね〜。弱いんじゃ無くて、優しいのさ』

『お前って、すぐ嘘つくよな』

『僕は強いから、嘘なんてつく必要無いってば』

『それも嘘だろ』

『ふふふ』

『ふふふじゃね〜よ』


 駄目だコイツ。




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