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171、発情期41、魔女の所業



 アルマとセーラの、俺にはよくわからない、ルールの取引は続く。


「う〜ん。あのイケドラ捕まえるのに、優秀なドラゴンキラー折られたし」


 ………確かに折った。

 根に持ってたんだ。

 アルマすまんかった。


「ドラゴンさん。本当に?」

「ああ」

「わかりました。私が、かわりのドラゴンキラーを用意します」

「ん〜〜〜」



 セーラの提案に、唇に手をあてて悩むアルマ。

 いや、待て。

 そんなに悩むなし。

 俺の価値そんなに安くないし。

 俺≫ドラゴンキラーだろ?

 そんなアルマをみて


「では、あなた好みのイケメンを、三人差し上げます」

「カッコイイ?」

「商会では、奴隷も取引してますから」

「わかった」


 うなずくアルマ。


「待て。わかるなよ。人身売買、竜身売買じゃね〜か」

「イケドラ、バイバイ」

「待って。アルマ待って〜。捨てないで〜」


 いや、本当に。

 コイツラ、あっさりと人身売買する気だ。

 一線を越えやがった。

 巫山戯んな。

 俺はモノか何かかな?

 テイムされて、売られる。

 ………………最悪ドコロの話じゃない。


「ね、姉さん。ソレはあんまり」

「黙ってなさい。愚かな妹」

「愚かな妹って………」

「良いですか。イケメン争奪は、戦争です」

「え???」

「チゴヤの血を引くものなら、どんな手を使ってでも、ライバルを蹴落とし、理想のイケメンを手にするのです」

「………ソレはチゴヤじゃ無くて、魔女の血を引くモノのやることさ」

「馬鹿ねカルナ。父さんを見なさい」

「へ???」

「私の母を手に入れるために、どんな犠牲を厭わず、監禁してるでしょ」

「………いや、アレは………そもそも義母さん(魔女)に問題があるさ」

「私はね。父さんのそういう所は見習うべきだと思うの」

「それ、父親じゃ無くて母親の、魔女の血が目覚めたのさ」

「カルナ………」


 セーラは、妹を可愛そうな者を見る目で見つめる。

 その目はアカの他人の俺から見ても

 冷たい冷たいものだった。


「ちょっと、姉さんその目をやめるさ」

「そんな事だと、良い男を捕まえそこねてしまいますよ」

「………人身売買してまで、捕まえようとするのは、どうも………」

「ヤレヤレ。カルナに恋は、まだ早かった様ですね」

「恋? コレが恋?」

「ええ」


 セーラはニッコリ。

 アルマも頷く。

 俺はブンブン首を横にふる。

 モブ男は、………冷や汗凄いな、あいつ。


「では、アルマさん。取引は成立ですね」

「ん!」

「成立するな」

 

 抗議する。

 が

 俺の抗議を無視して。


「でもねアルマさん。イケメンはね。スキル等で、無理に言う事を聞かせるのは駄目ですよ」

「何故?」

「イケメンハンターとして、それは2流ですよ」

「ん? なんで? 私はイケメンスレイヤーだけど」

「良いですか。無理やりでは、愛が足りないのです」

「愛?」

「そう、ただイケメンを、手に入れるだけでは駄目」

「そうかな?」

「はい。イケメンを愛し。愛される事こそ、至福なのです」

「んんん?」

「私の母は、ソレは沢山のイケメンを集めましたが、満たされませんでした」

「なんで???」

「魔法や、無理矢理集めたイケメンには、愛が足りなかった」


 経験者は語る風に言ってるが………

 内容が、ただただキナくさい。

 てか、禍々しくないか?

 もう、何も聞きたくない。


「………………」

「母は言っていました。イケメンに命令するのは、ゾクゾクするけど、愛されるのはソレを上回る至福だと。私もそう思いました」

「ん〜〜〜。ソレわかんない」

「いずれ貴方にも、イケメンに命令するのに飽きる日が来ます」

「そうかな?」

「その時が来たら、愛される事を目指して欲しい」


 何か良い事言ってるふうに、聞こえるけど………

 何だ?

 あいつ等???

 何を言っている?

 女ってあんななのか?

 頭の中がグチャグチャになるぞ。

 何かが狂ってやがる。


「あ、そうだ姉さん。その取引は待つさ」

「黙ってなさい。愚かな妹よ」

「愚かな妹って姉さん。じゃ無くて、そもそもアルマは、ドラゴンテイムスキルの解除方法を知らないさ」

「そうなのですか? アルマさん」

「ん!」


 頷くアルマは可愛い。

 んんん?

 セーラの目が光る。

 何だ?


「ね。ね。だから取引しても意味ないさ」

「黙りなさい。愚かな妹」

「え? なんで怒られるの?」

「アルマさん。それではドラゴンさんに、命令してくれませんか?」

「なんて命令するの?」

「私セーラの言う事を、なんでも聞くように。っと」

「………」

「………………」

「姉さん。アンタ、さっきと言ってる事違うさ」

「黙りなさい愚妹」

「愚妹? でもそれじゃ、アルマや義母(魔女)とやってる事、変わらないさ」

「カルナ。コレはチャンスです。いや、違った。スキル解除出来ない以上、他には方法が無いのです」

「姉さん。本音が駄々漏れさ」


 なんだろう?

 なんだろうコレは?

 ………悪い予感が止まらない。

 俺とモブ男。

 男性陣は、ダラダラと変な汗を流していた。


「イケドラ。セーラの言う事を聞いて」

「断る」


 嫌だ。

 アルマの言う事でも拒否する。

 テイムスキルの強制力が働くのがわかる

 が、

 全力でドラゴンテイムスキルに逆らう。

 イタタタタ。

 命令に逆らおうとすると激痛がはしる。

 が、屈しない。


「今、幸せなんだ。

 操られてると知ってても。

 その幸せを手放したりするもんか」


「に、義兄さんアンタ………全部知ってて幸せって」

「なんて可愛そうな奴なんだ。痛々しい。一体どんな人生歩めば、そこまで歪むんだ?」


 知るか。

 カルナとモブ男。

 勝手に同情とかすんなし。


「イケドラ。ワタシの為に言う事を聞いて」

「アルマの為に?」

「そう。貴方が不幸になれば、私が幸せに、なれるの。だから………ワタシの為に不幸になって」


 アルマ………


「失礼な。ドラゴンさんを不幸にしません。私が幸せにするのです」


 セーラの否定も気にならない。


「あぁ、アルマが幸せになる為ならば………仕方ない。か………」


 可愛いアルマの為に

 ちっこいアルマの為に

 たとえこの想いが、スキルで操られてるものだとしても。

 ………アルマを想う。

 それでもアルマの幸せを祈っている。


「義兄さん。アンタ」

「やっぱり。なんて可愛そうな野郎だ」


 カルナとモブ男がウルウルしてた。

 泣くなし。


 正反対に、満面の笑みを浮かべた、セーラは

 俺の方に手を伸ばし

 嬉しそうに


「お手」


 と言った。

 ………………

 何だと?

 お手???

 馬鹿にしてる。

 冗談だろ?

 冗談だとしても………

 だが………

 

【セーラの言う事に従って】


 ドラゴンテイムスキルの影響か?

 アルマの為に

 アルマの為に

 アルマの幸せの為に………

 反射的に、差し出されたセーラの手に、

 俺の手を重ねる。


「うふふふふふ。やっと捕まえた」


 セーラが嗤う。

 嬉しそうに

 幸せそうに

 花の様に

 魔女の様に

 セーラ

 本当に本当に幸せそうに嘲笑っていた。


「ペット扱い。ね、姉さん。ソレはあまりにも………」

「ヤベェ。カルナの姉ヤベェ。人格を疑うぜ」

「あんなの、もう姉の所業じゃ無くて、魔女の所業さ」


 引く人間

 そんな人間の事など気にもせずに、笑う魔女。

 ………………………

 こうして俺は、悪い魔女に捕まった。


 何処かで、

 聞き覚えのある鐘の音と、

 腹の中まで真っ黒な、

 慈悲深い女神の

 爆笑する声が聞こえる。


 そう言えば、

 そもそもセーラが、ここに来たのは

 アイツに売られたせいだった。




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