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166/306

166、発情期31



 走れ。

 猶予は二分あるかどうか?

 怪人の加護で、強化された体、足をフルに使う。

 今の俺の体は発情期スキルで、成人前の姿に成長している。

 海神の加護でバフがかかった人間の姿。

 直近のレベリングで、そこそこ強化もされている。

 短時間でも、かなりの距離を走れるはずだ。

 走れ。

 逃げろ。


 アルマ。

 可愛いアルマ。

 アルマを守る為に

 アルマをミンチにしない為に

 アルマを守るために

 コレから俺の元へと召喚される悪魔から、出来るだけ天使を引き離さなくちゃならない。


 くそう。

 一体全体、何処の召喚術師の仕業だ。

 よりにもよって、悪魔を俺の元へと召喚するなんて。

 脳裏にセーラへと厄介なスキルを渡した、青い神様と、コチラを観察してニヤニヤ笑う黒い神様が浮かぶ。

 文句を言ってる時間も惜しい。


 走れ走れ走れ。

 走りながら頭も使え。

 どうやってセーラからアルマを守る?

 隠す?

 騙す?


 ペタペタペタペタ

 どれだけ距離が離れていても、百八歩歩けば目的の人の元へと移動できるぶっ壊れスキル。

 海神の奴、厄介なスキルをセーラへわたしやがって。

 ペタペタ足音が、恐怖でしか無い。


「く、耳障りな足音が、追いかけてくる」


 集中出来ないが、惑わされるな、頭を使え。

 ………何も説明せずに駆け出したから、カルナ達は俺を追いかけてくる可能性は高い。

 その場合にも備えて、セーラを上手く騙さねば。

 ………………もういっそのこと。

 セーラを口説いてしまおうか?

 恋は盲目。

 上手く甘い言葉で囁やけば、セーラとて騙されてしまうに違いないんだ。

 問題があるとすれば、俺にそんな器量があるかどうか?

 覚悟は問題無い。

 アルマを守るためなら、なんだってできる。

 が、技術は別だ。

 セーラをだまくらかして、ニコニコに頭もポワポワにさせるほど、上手く口説けるか?


 ………………失敗すれば、カルナ言うところのドラゴンミンチ。

 いや、ドラゴンミンチを使った料理が誕生しかねない。

 ドラゴンハンバーグ?


 だがそれでも他に手が思いつかなければ、やるしかない?

 ………神よ。

 我に力をあたへたまえ。

 セーラを口説く力を………。


 何だか、またしても変な黒い神様と青い神様が頭に浮かぶ。

 ダメダメ。

 ダメダメだ。

 ダメダメのダメダメだ。

 あいつ等に祈る時点で駄目だろう。


 ………この作戦の、あまりの希望の無さに、一瞬で他の作戦を探す事にした。


 く、矢張り当初の計画どおりにデコイ、囮を使おう。

 カルナだ。

 浮気を否定しつつ。

 カルナに口説かれた的な………

 いや、駄目だな。カルナはアルマを売りかねない。

 ………アキリアのせいにするか?

 アキリアに騙されてるぞ。

 俺とカルナは何でもありませんよっと。

 木を隠すなら森の中。

 カルナを囮に、アルマから目をそらさせる。

 そもそも浮気なんてアキリアの嘘ですよっと。

 

 よし、これでいこう。

 もう、たぶん三十秒も猶予は無い。

 他のプランをかんがえてる暇はない。

 セーラだって人間だ。

 話せばわかるに違いない。

 

 グドウ伯爵領へと向かう田舎道。

 そこから脇にそれ、出来るだけカルナ達から見つかりにくい場所を探す。


 立ち止まり、息を整える。

 俺何もやましい事などありませんよ。

 そのポーズを貫く準備。


 そっと両目を閉じると。

 まぶたの裏には、満面の笑みを浮かべるセーラの顔がうつった。

 ………………

 額に血管が激怒マ〜クみたいに、浮き出てるのをのぞけば、素敵な笑顔だった。


 俺、カラダは人間だけど、心は今でもドラゴンなのに、

 そのつもりなのに。

 ドラゴンに戦いを挑む、勇者の気分が少し分かった。


 男には勝算が低くても、守る者の為に、戦わなきゃならない時があるんだ。


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