160、発情期25
「セーラか。ちょっと気になるし。半魚人に福音スキルでセーラの様子を聞いて見るべきかなぁ?」
「え? 義兄さんそんな事できるの?」
「たぶん。やった事無いけれど」
「もっと早くやるさ」
むう。
半魚人にはあんまり関わりたくない。
特にアキリアにスキルを貰った今。
バレたら何をされるか?
アルマと接触する迄は、セーラは脅威でも何でもなかったし。
でも今の状況は確かにヤバイかも知れない。
アルマの事がセーラにバレたら………。
危険が危ない。
俺は死んでも転生できるけれど、アルマの命はそうでは無い。
………仮にアルマが死んだ時に、アキリアや半魚人に転生を頼めるか?
………アキリアは無理っぽいし、ちっこ可愛いアルマが半魚人に改造されたら目も当てられない。
セーラの状況を確認しとくべきだ。
セーラが俺等と同じく赤子に転生してて、さほど身動き取れないようなら、当面は問題無し。
まだ転生して無くて、状況知られてたら………
どうしよう?
う〜ん。
ま、先ずは確認だ。
「福音」
『半魚人。聞こえる?』
『………』
「もしも〜し』
『………』
『生臭魚人』
『………』
つながらないな〜。
アキリアの時は、アキリアが封印されてた時以外は繋がったのにな。
「義兄さんいったい何を一人でブツブツと」
「ヤク中の奴もこんな感じで、ぶっ壊れてたぜ」
福音スキルの事を知らない二人がガヤガヤ言う。
「スキルで半魚人。神と連絡とろうとしてる。アイツならセーラの事を知ってるはずだし。つながらないけど」
「そ、そうか。てっきり俺は壊れたのかと」
「そ、そういえば、姉さんも似たような事良くあったさ」
「そうなの?」
「なかなか神は答えてくれないって、中2病的な事を言ってたさ」
「そうか。半魚人は着拒的な事をしてるのかな? それとも返事がすぐ来たアキリアは、ストーカー的な事をしてたのかな?」
どっちもありそうだ。
半魚人は使徒にポコポコ裏切られてたし。
管理とかせずに、放置してなきゃありえないだろうし。
いや、しかし諦めるな、俺。
もっと気合を入れて福音スキルを使って見る。
集中だ集中。
竜変幻スキルも集中である程度なれる姿をコントロールできた。
福音スキルだって、強くできるはずだ。
強く念じる。
強く強く。
『………………だ』
『だ…………そ…………』
聞こえる。何かが聞こえるぞ。
『だから、私のドラゴンさんの魂を渡して欲しいのです』
『あのドラゴンの所有権は半魚人に移ってるから、半魚人に聞けば〜』
『貴方が契約でドラゴンさんの魂を縛っているのは、知っています』
『あ、そう。半魚人め。余計な事を』
『それどころか、貴方が何をしてきたのかも大体の想像はつくと、教えてくれました』
『つくづく余計な事を』
………………あ〜。
なんだろう。
絶望的に聞き覚えのある二人の女性の声がする。
福音スキルいったい何処に繋がった???
『今は女神アキリアでしたっけ?」
『違う。僕は慈悲深き女神アキリアだよ。海神の使徒さん』
『半魚人では無くて海神ですか?」
『僕等にとって名前は神聖なものなんだ。僕も正確に読んで欲しいから、君の名前もそう呼ぶんだ』
『そうですか。では慈悲深き女神アキリア』
『なんだい? 海神の使徒』
『貴方が私のドラゴンさんにした事を、水に流す代わりに、ドラゴンさんの魂を私に下さい』
『あげない。そもそもアレは僕のおもちゃだ。君のじゃないよ』
『………………』
『………………』
二人が何処にいるのかもわからず、
福音スキルで声だけしか聞こえない。
何がなんだか良くわからないが、とりあえず。
セーラとアキリアが、勝手に俺の所有権を主張してるのはわかった。
全く持って迷惑な。
俺は俺のものだい。
いや違った。
俺はアルマのものだった。
『良いでしょうアキリア。貴方を滅ぼして、神の座と貴方の神格を、ドラゴンさんの魂のついでに、もらってあげるわ』
怖い怖い怖い。
セーラの声のトーンが急にゾッとするものに変わった。
向こうの様子は見えないが、
セーラはきっと洞穴のような、あの一度見たら忘れられない、恐ろしい目をしてるに違いない。




