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157、発情期22。今世両親


 なんとか魔物を振り切って、魔物達の戦場から離脱する。

 気が緩んだのか、目に見えて先頭を走る男のテンションが上がっていた。


「俺の生まれ育った公国は、元々経済や文化の発展した国で、9日王国よりも軽く5倍以上国力がある」


 先頭を走る男の冒険者は公国の出身者だったのかぁ。


「王国は弱肉強食主義というか、弱者の人権を限りなく削ることで、強者を育てて戦力だけは王国のが上さ」


 対抗心でも煽られたのか、カルナは王国のほうが強いと力説する。

 だけどさ。

 弱肉強食の響きがなんか異様に重く感じる。


「え? なんかそれヤバくない?」

「実際ヤバイ。俺は公国の生まれだけど、戦争では兵力5倍の公国が、王国によく負けてたからなぁ」

「ま、王国は強くあれば、反乱内乱搾取に強制徴兵なんでもござれの無法地帯さ。外国よりも国内の敵のが怖いから」

「この国………思ったよりも終わってる国だったんだなぁ」


 なんつ〜か世紀末っぽいのが、なんともかんとも。

 カルナの実家や筋肉集団、野党や王族が、なんだか、だいぶおかしかった。

 アレは、そのせいだったわけか。

 納得した。


「ま、そんな中で我等が公国に、豚公女と言う変わり種が生まれてな。これがまた強いわ。公平だわ。頭が良いわ。ただ顔と男グセが悪かったが」


 褒めてるのか、けなされてるのかよくわからん評価。


「………俺の母親のアレか?」

「たぶん、ソレ、だ。身分の高いイケメンに目が無い。それ以外は、最高の存在だったんだなぁ」

「もう、ナニカ嫌な予感しかしない」


 母親の色恋沙汰なんぞ聞きたくもない。

 しかも不穏な気配がビシバシしてくる。


「公国中のイケメン貴族を、手当たり次第にてごめにしてたっけ。それはもう国民に大人気」

「どうしてそれで人気が出る?」

「国民には一切害がなかったなぁ。むしろ国内の貴族が萎縮したから暮らしやすくなった。貴族がビビったりしてるのは楽しかった」

「ママンなんてコトを」


 実の母親が一国のイケメン貴族をてごめにして回ったって。

 ………そこまで行くと、褒めていいのか?

 けなしていいのか?

 ワケワカラン感情になるね。

 ぞわぞわする。


「ママンって義兄さんアンタ」

「アレは母親と言うよりママンだ」

「ま、うちの国では大人気だったんだなぁ」

「ほうほう」


 人気があったかぁ。

 あの豚みたいな顔で。

 てっきり魔物の戦場にいる、豚人間の亜種かと………


「ま、その人気の豚公女様が、王国の第三王子に一目惚れしちまって………」

『あの竜好き王子。確かに子供の頃から顔は良かったさ」

「それで、どうなった?」

「どうもこうも。豚公女の顔とご乱交は王国にも知られてたから、どうにもならんわな」

「ああ」

「当時笑い話にはなってたさ。豚に真珠とか」


 酷い言いようだけど、まぁアレは実物見た限り、なんと言われても仕方ないか。


「揉めにもめた挙げ句に、王国流の解決方法に委ねられることになった」

「王国流?」

「力ずくさ。王国は強い者が正義で、戦力保ってる国だから」

「とんでもないね」

「まぁまぁ」

「勝った者の望みを叶えるってことで、豚公女と第三王子の一騎打ちさ」


 カルナは疲れたように呟いた。


「そんな勝負よく受けたね。負けたら大損じゃないか?」

「自信があったんだよ。豚公女は国歴代最強の猛者だし」

「王国の第三王子の方は国宝の魔剣を持ち出したさ」

「魔剣ってコレか?」


 俺はヤバイドラゴンキラーを指さした。


「実物は見たこと無いけど、たぶん」

「うん。ソレ。王国の建国竜殺しの魔剣さ。王国の人間は、まさか、それを持ち出して負けるとは思ってなくて………結果。あんな不幸せな結婚に………」


 カルナは、ちょっとなんとも言えない表情をした。


「げぇ。コレ使って負けたの? マジで?」

「マジで。俺等公国の人間には不思議でもなんでもねぇ。豚公女が負ける姿は想像出来なかった」

「私等王国の人間にとっては晴天の霹靂さ。なんせ元々舐めてた公国の人間に、しかも、竜にも勝てる。それ国宝の不敗魔剣使って負けたのだから。国のプライドズタズタさ」


 いやぁ。

 気持ちはわかるけれども。

 そうか、不敗同士の戦いだったわけか。

 それにしても。


「さっき見てたと思うけど。コレ、アルマのドラゴンキラー、簡単に壊せるくらい強いんだけど、どうすりゃ人間に負けれるんだろう?」

「さぁ?」

「さぁ、って。知らないの?」

「何せ王族同士の色恋絡み。大人気の組み合わせだったから、俺みたいな一般人には見れる試合ではなかったなぁ」

「カルナは?」


 カルナなら見てたんじゃないか? 

 カルナ大商人の子供だろ。

 期待をこめてカルナを見ると。


「私は第三王子が圧勝すると思ってたから、見てないさ」

「ああ。そう」

「第三王子の名声は地に落ちたさ。だけどさ。その後の結婚生活があまりにも悲惨すぎて、同情されちゃって………」


 なんじゃそりゃ?


「そ、そんなに」

「結婚以来。毎晩第三王子の悲鳴が王都に響きわたったとさ。義兄さんアンタ、その結果産まれた子さ」


 ………………


「………………悲しすぎる。それ。俺、罪の子かなにかじゃないか?」

「義兄さん。アンタはアイツの汗と涙と血と悲鳴と屈辱とかの結果に産まれた罪の子さ」

「うう。なんか禍々しいパワーワード混ざってる」

「人間が産まれてきたのが不思議なほどさ。それがこんなにもイケメンが誕生するとは………神の皮肉を感じるさ」

「俺のこの顔はセーラが作ったんだけれど………」

「………」

「………」

「姉さん。あの人本当に何やってるさ」

「俺に聞くなよ。アレはお前の肉親だろ。どうして俺の額にも3っつ目の眼とかつけたんだ? 三つ目のイケメンとかワケワカラン」

「女心は謎だらけさ」




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