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俺達がワイワイ揉めてると、一人落ち着いていた男の冒険者が。
「おい。おい。おい。そんな事よりも、周りに魔物が集まって来てないか?」
「え? 言われてみれば、確かにそうさ」
「あ〜。俺、ここ暫くドラゴン形態でこの辺の魔物相手に猛威をふるってた。多少なりとも避けられる存在になってたからな〜」
「え?」
「え?」
「ん………」
「人間の姿に戻ったから、脅威が無くなったと判断して魔物がよって来たんだろ。巨大な焼鶏もあるし」
焼きかげんが微妙な鶏の丸焼き。
未完成料理を親指で指さして俺はそう言った。
「あ、アンタそう言う大事な事は早く言うさ」
「ヤバいぞ。どんどん集まってくる」
「アルマ先頭に立って。囲まれる前に突破するさ」
「ん………。無理。武器壊れた」
アルマは、柄そばから壊れたドラゴンキラーだった物を、軽く振った。
たしかに、あれじゃあ武器にならないな。
「仕方ない。義兄さん先頭を頼むさ」
「駄目。ん………疲れたから、イケドラは私を抱えて走る」
「御意」
「御意って、義兄さんアンタ」
カルナを無視して、アルマをお姫様抱っこする俺。
アルマの言う事は絶対。
絶対なんだ。
ちっこいアルマは軽いけど。
もしも落としたら大変だから、両手でしっかり抱きかかえる。
「駄目だカルナ。俺の両手がふさがってしまった。これじゃあ、まともに戦えない」
「ちょっとアンタ等。この中で最強の二人が、何をやってるさ〜」
「ん………。私の剣を壊したイケドラが、私を守るのは当然」
「御意に。仕方ない。コレは仕方ない事なんだ」
「アンタ等………」
何だろう。
カルナの眼が虫ケラを見るような目をしている。
「うおお。魔物がどんどんどんどん増えてきてる。死ぬ。このままじゃあ死ぬぞ」
「早く突破するさ〜」
「二人がやらないなら仕方ない。俺が先頭に立つ。カルナよりはマシだ。俺もカルナから護衛に雇われてる身だしな」
「私は、なんでアルマなんか雇ったさ。運良く他にもドラゴンスレイヤーは、何人もいたのに」
「同性が楽とか言うから………」
「こんな事ならイケメンドラゴンスレイヤー雇えば良かったさ〜」
絶叫して頭を抱えるカルナ。
でもなカルナ。
きっとアルマ雇って正解だったぞ、きっと。
「それはそれで、アルマでなかったら、俺はきっとそいつ殺してたぞ。てか殺す。見かけたら殺す」
「なんでさ〜〜〜」
「アルマ達が最近仕留めたドラゴンは、俺の親だ。アルマ以外は見かけたら殺す」
「え………」
「え………」
「ん………。駄目」
アルマに復讐反対された。
親の敵なのに、復讐なのに。
アルマに反対されたら仕方ない。
けど………
「アルマ、殺しちゃ駄目か?」
「殺すとか怖い事言っちゃ駄目。可愛らしく、転がすか、キルすって言って」
「御意」
「絶対アンタ等、頭おかしいさ」
「アルマ二人にかまうな。とにかくここを切り抜け無いと」
「わ、わかった。それもそうさ」
ワラワラと全方位から群がってくる、もはや見慣れた3種の魔物。
3種同士で殺し合ってて、連携が取れてないのが救いか。
アルマが細身のレイピアを二本構えた。
レイピア二刀流。
しかもレイピアは魔剣っぽい。
相変わらず、装備は凄そうなのつけてる。
金持ちって凄い。
男のほうは魔剣では無いが、片刃のゴッツイ剛刀だ。
一目散に、魔物へ突っ込んでいく。
「おお。やるなぁ。モブ男」
モブ男は重戦車のように魔物を弾き飛ばしている。
何だ、強いじゃないか。
「そりゃあ。私は護衛に雑魚は雇わないさ」
「はぁ。イケメンにお姫様抱っこ。良い。コレは良い。シチュも最高」
「アルマ。アンタ、本当に後で覚えとくさ」




