15.戦場
巨大鶏、小鬼、豚人間の三つ巴の戦争に出くわした。
竜種の血が騒ぐ。
つい戦争に突撃してしまったが、問題が二つ発生した。
まず複数の敵と一度に戦うとめっちゃ不利。
もう一つは使っていた鉄の剣が、血と油でベトベト。
刃こぼれ。歪み。折れても不思議がない状態だ。
ピンチ。
一度戦場から、少し離れた安全地帯に離れた。
鉄の剣を何とか修復出来ないかと四苦八苦するも、
切れ味は絶望的に戻らない。
このまま使い続けると、豚人間の棍棒に、
へし折られても不思議ではない。
『こんな事になるなら、鉄の剣じゃ無くて、ドラゴンキラーのほうを持ってくりゃよかったよ』
『う〜ん。自分自身の弱点持ち歩くのもどうだろね?』
それがネックなんだよなぁ。
ドラゴンになると、手のサイズがドラゴンのほうが、
だいぶ大きいから、人間の武器とか使いづらいし。
本能的にドラゴンキラーは、なんか嫌だし。
『使える武器は、折れそうな切れ味悪い鉄の剣と、予備武器の鉄のナイフと変幻スキルかぁ』
『一旦そこから離れよう。ね、そうしよう。魂ウザいし』
『やだよ。あいつ等食べて、ドラゴンゾンビ形態の大破を、回復させるんだ』
兎にも角にもドラゴンゾンビ形態をなおさないと、
うっかりドラゴンゾンビに戻るだけで死んでしまう。
『あ、そんな野望を企んでたの』
『あれだけ数がいれば、そこそこ治るだろ?』
『まぁ、ちよっとは治るよ。ただ、君に必要なのは、肉よりもエネルギーの質と量だから、大物を仕留めて食べないと、焼け石に水さ』
『大物かぁ』
『小物はいくら食べてもねぇ。誤差の範囲さ』
大物か。
ふと再戦を誓った狼を思い出した。
いずれ結着をつけてやる。
いや、今はそれよりも武器だ。
あれだけ獲物がいるのに、ここで逃げ出したら、ドラゴンゾンビの大破修理出来ないし。
死体を一つも回収してないから、戦った苦労が水の泡だ。
『おっと、お客さんだ』
ダチョウ程の大きさがある鶏が、
コケコケ鳴きながら突っ込んで来たので、
冷静に首に剣を突き刺した。
切るのは無理でも、突くのなら、
まだ鉄の剣は、切れ味をなんとかキープしている。
この鶏はもろい。
巨大鶏は刃物で首さえ狙えば、
正直コイツは問題にならないほど弱い。
刃物との相性が凄く良い、
体が小さな小鬼や、武器が鈍器の豚人間達は、
鶏に苦戦しているようだが、
人間にとっては鶏というよりも鴨だなコイツは。
小鬼も普通に弱い。
数だけ多い。
問題は豚人間だ。
アイツ等の油、骨、硬い棍棒は、
俺の武器を無力化しかねん。
そのうち剣が壊れそうだ。
刃物との相性が凄く悪い。
『アキリア。なんか武器か、豚人間に効きそうなスキルおくれ』
『武器とか、そっちに送れないよ。スキルも、あげたばかりだし、無理だ』
『豚人間共の魂を生贄に捧げるからさぁ。頼むよ』
『それはただの嫌がらせだよね。条件を満たさないと、スキルは連続で譲渡できないんだよ』
『条件ってなんだ?』
『それを自分自身で見つけるのも条件の一つさ』
『よし。わかった。あいつ等の魂を捧げてやるからスキルくれ』
『違うよ。そんな条件でスキルあげないよ。嫌がらせじゃん』
ち、ケチめ。いいアイディアだと思ったのに、
『よし、ここは豚の落とした棍棒を拾って使ってみるか』
『ええ〜ここから離脱しよう』
アキリアの言う事は無視した。
豚人間にできて、竜人もどきの俺にできないわれはない。
死んだ豚人間が落とした棍棒を拾った。
『よっしゃ。いっちょやってやる』
棍棒を手に、再び戦場に近寄り、単体の獲物を狙う。
小鬼は問題なく一撃で狩れた。
しかし、巨大鶏や豚人間には、
棍棒の一撃を入れても、余り効果は無い。
泥仕合になってしまう。
鈍器だと、あんまりダメージ通らないのな。
手こずっているうちに、豚に囲まれそうになったので、
すたこら逃げた。
『上手くいかないね』
『そうだな。小鬼だけ狩ってると、豚人間軍団が勝っちゃうだろうしな。豚の数減らしたい』
『なるほど』
『豚人間をメインに狩りたいが。どうにも相性が悪いな。こうなったら最後の手段だ』
『どうするの?』
『変幻発動、リトルドラゴン』
変幻スキルを使い、リトルドラゴンへとその姿を変える。
『ちび竜試すんだ』
『まぁね。竜眼』
竜にならないと使えない鑑定スキル、竜眼を使って、戦場を見渡す。
種族 大鶏
レベル 15
身体 弱い
種族 小鬼
レベル 8
身体 弱い
種族 豚人間
レベル 20
身体 普通、ややタフ
大体が個体差あっても、こんなもん。
思ったよりも弱かった。
魔力もスキルもってない。
『弱くね』
『まぁ、人間状態の君が一対一で圧勝してたしね』
『人間形態の俺の強さが、いまいち分からん』
『竜眼使えないもんね。ま、そいつ等を圧倒できるくらいは強いと』
自分自身のステータスは?
種族 リトルドラゴン
レベル38
レベル バッファロー並
魔力 白菜並
スキル 変幻 竜眼 福音 魂の劣化 デイジーカッター
うん、この戦場に集まっている奴等。
自分も含めて全員脳筋だな。
全員魔力すくな〜。
リトルドラゴンになって、使わない服と装備を、
取られないように隠した。
竜眼でもう一度、よく戦場を伺う。
同種族でも、若干個体によって強さ違うな。
『俺のレベル上がってないか』
『そだね。それでどうするの?』
『一本釣りだ。豚人間の、できるだけ強いやつを狙う』
『なるほど』
『種族ごとに逃げ出す際の逃走経路が、いくつかに別れてるからな、豚人間の逃げ道の一つで待ち伏せて、全滅は無理でも、せめて逃げてくる大物を狙う』
『せこいね』
『安全第一リスク管理さ』
注意深く観察をしながら、戦場に近づきすぎないように、豚の逃走路の一つを塞ぐリトルドラゴン。
あとは待つだけだ。
戦場から逃げ出したら、
逃走経路にリトルとはいえ、ドラゴンとかいたら凶悪極まりない。
豚人間の驚く顔が目にうかぶ。