145、発情期10、リスク取らない危険?
上空からブレスを吐くだけの安全な狩り。
必勝の狩りスタイル。
しかし。
「くそ〜。嫌な感じだ。どうにもヒャッハーに殺られた時と同様の感覚が………」
ハードは強くなっても、ソフトは劣化しているかのような。
単調でリスクを下げて狩りをした結果。
ミスや好機に甘くなっている。
………拠点とした巨木から戦場を見下ろしながら、新たに戦闘方法を模索する。
戦場には、たまに各種族の上位種かエリート。
明らかに格が違う魔物が混ざっていて、そういう奴等を未だに一匹も仕留める事が出来ていない。
単純にレベルが上がれば倒せるようになると思ってたが、甘かった。
この戦場にでてくる強者は、百戦錬磨の猛者。
俺と違い、それはフィジカルだけの物では無い。
知能が高い。
技術が高い。
したたかだ。
奴等に、なかなか大ダメージを与えることが出来ない。
しかも最終的に逃げられる。
なんとなれば、好機を伺って、コチラのスキや弱点を探してるフシすらある。
「何だかムカつく」
しかも頭にくるのは、それだけでは無い。
この戦場には、稀に人間達も参戦していた。
冒険者らしいのが、ちらほらいる。
それだけなら、まだ良いが。
人間達は俺を見つけてから動揺。
それから先が頭痛い。
明らかに俺狙いの行動をとる馬鹿者がいた。
弓でコチラを、狙ってきたり。
まぁ、それはいい。
単発の弓など、当たらないし。
当たった所で、並の弓では竜の鱗は貫けない。
が、
落とし穴を仕掛けて、餌にバナナをおいてた罠。
それを見かけたときは頭にきた。
精神的にダメージ受けた。
馬鹿にされてるか?
「俺は猿か何かかい?」
ドラゴン取るのに、バナナは無かろう。
俺を何だと思っている?
馬鹿は味方につけると腹立つが、頭良い人とは喧嘩しても面白いっていうし。
腹が立つから、あいつ等は、きっと馬鹿者だ。
狩るか???
「………人間達狩るとな〜。賞金とか、かけられそうだし〜」
ま、戦場で狩りしてる人間達は、しばらく放置で良いか。
それよりも大物魔物仕留めたい。
………
ゾロリとドラゴンキラーを鞘から抜く。
黒く黒く黒い剣。
黒いオーラも、だだ漏れている剣。
頭がおかしくなりそうな、衝撃が全身を貫く。
初めて見たときは、怖くて仕方が無かった剣。
慣れてしまった今となっては、恐怖よりも快感を感じる。
ヌラヌラと禍々しく輝く黒い諸刃の刀身。
思わず目を奪われる。
魂すらも持ってイカレそうになるが。
「イカンイカンイカン」
ブルブルと竜頭を振って正気に戻る。
剣を鞘に納めた。
「この剣慣れてきたら、魅入られそうになっちゃうんだよなぁ〜」
このまま行くと、辻斬りになっちゃいそう。
「でもコレを使えば強者にも勝てる。使い慣れとく必要もあるし。使うかな?」
再び剣を鞘から抜く。
剣は見ない。
綺麗な剣。
心持っていかれる可能性があるからな〜。
イカれたドラゴンキラーを手に、狩るべき獲物を見定める。
できるだけ強い魔物。
鑑定スキルが無いので、出来るだけ大きなサイズで、強さを判別するしかない。
「………見つけた」
遠目からでも、軽く高さ3メートルを超える大きな豚人間。
それに狙いを定めて、巨木から飛び立った。
青い翼をはためかせて、獲物へ一直線。
スピードを上げて風を全身に感じる快感。
何時もなら、ここからブレス。
俺の存在に気がついて慌てる魔物達。
回避行動か、防御行動を取る魔物達。
が、
コチラに気付いても既に手遅れ。
何故ならば。
何時もと違い、俺の手にはドラゴンキラー。
防御行動を取る大物の豚人間。
俺は、すれ違いざまに、横一文字にソレを切り落とした。
手応えもなく、するりと魔物の身体を通過して抜ける剣。
二週間の間、あれ程倒せ無かった、魔物があっさり沈む。
ゾッとするような。
冷たい氷を触ったかのような、痺れる快感が、手から脊髄を伝わって、俺の脳味噌に届く。
モット
モットモット
モットモットモット
「もっと斬りたい切りたい伐りたいキリタイ」




