144、発情期9
兎にも角にも、もうちょいくらいは強くなりたい。
そして空を自由に飛べるようにならねば。
強敵に出会えば、現状死にかねない。
死ねば半魚人の元へ送られ、また何をされるか?
「ぐぐぐ、それだけは避けたい」
高い巨木から、魔物が争う様を見下ろしながら、せめてあれぐらいの敵の群れを、恐怖のどん底に落とせるくらいの強さを取り戻したいと思う。
ドラゴンキラーを使えば、前世や前前世の自分にもワンチャン勝てるかもだけどね。
やはり武器に頼らぬ力も欲しい。
一度でも手にした力を失う事を、完全に容認するのは酷く難易度高い。
そんな事を考えながら、三種族の魔物戦争を特等席から高みの見物。
休憩がてら魔物達を観察する。
徐々に仕組みがわかってきたように思う。
小鬼は食欲が非常に旺盛だ。
自種族、他種族にかかわらず、死体に群がりそれを食べている。
持ち帰ってもいるようだ。
小鬼にとっては戦場は食料確保の場のようだ。
大鶏は兎に角、他種族を殺す事に執着しているように見える。
豚人間は大鶏を集中的に狙っているようだった。
観察してみて思ったのだが。
「魔物って、もしかして。それぞれ目的が違うのか?」
殺し合いの戦争をしているように見えた。
他種族を殺し尽くすのが目的かと思ったのだが………。
実際は食料確保の為の狩りや、その他の生活の一環なのかも知れない。
彼等なりの食物連鎖と言うか?
ここは実際は牧場的な何かなのかも知れない。
そんな仕組みで戦場は成り立ってる。
そんななのかも知れないな〜?
とか思った。
「まぁ、俺が荒らすんだけれどな」
………環境破壊。
ドラゴンは環境破壊する生物である。
ドラゴンは、きっと生態系に優しくない。
存在自体が一種の環境だ。
他の生命にとっては災害だ。
………そんな竜に生まれ変わった筈の俺が、半魚人に振り回され。
竜の身体を失い。
アキリアに弄ばれる。
「ちくしょー」
竜生、人生とは不条理だ。
なんとなく神を呪いながら、やる気が出たので戦場へと向かう。
もっともっと俺は強くなる。
それは定められた運命だ。
スキルで化けた偽物の竜体とはいえ。
弱いドラゴンなど、ありえないし。
あってはならない。
巨木の上部を拠点に、積極的に戦場で狩りを行う。
狩りを始めて一週間。
大鶏を狩り、ブレスで焼いて食べる。
豚人間も美味い。
けれど、何だか抵抗感があって、あまり食べない。
「ウマウマ」
一週間も狩りを続けると結構なれた。
徐々に戦場の癖のようなモノがわかってくる。
結論から言うと。
この戦場で狩りをしているのは俺だけでなかった。
戦場に集まる、全ての魔物。
それ等全てがレベルアップを目指しているようだった。
強さを求める事に貪欲だ。
狩りを始めて二週間がたつ。
新たに気がついた事がある。
ここに集まる魔物達は死を恐れていない。
魔物達は飽くなき強さを求めて、この戦場にいる。
自分も含めて………。
それが妙に心地良かった。
この二週間。
安全地帯である空から、一方的に攻撃を仕掛けてひたすら勝ちを重ねた。
強くはなっている。
レベルは確実に上がっているが………。
問題も、いくつかある。
魔物が俺の攻撃方法に、対応してきている。
空を飛ぶ俺を見かけると、逃げたりバラけたりする。
結果。
俺のブレス威力も効果範囲も上がっている。
なのに仕留めれる魔物の数は減ってきている。




