141、発情期6
「くっそ。アキリア速えぇ」
アキリアとの距離を、どんどんが離されていく。
どんどん小さくなっていく黒い霧のアキリア。
それに向かって小さく毒づいた。
「取り敢えず、剣を固定する方法を考えないとなぁ」
翼をはためかせるたびに、剣の鞘がペチペチ体にあたる。
その度にバランスが少し崩れる。
超強力なドラゴンキラーだ。
鞘に入っていても結構効果があるのかも。
そのせいで、空飛ぶバランスが崩れてるっぽい。
何処かで剣の鞘の紐を調整するか?
ま、それか、そのうち慣れるのを待つか?
そんな事を考えていた。
そのスキにアキリア見えなくなっちゃった。
まぁアキリアの消えた方向はわかる。
このまま同じ方向へ飛ぶか?
アキリアが元々いた、妙な赤い空間が何処にあるのか?
とか
今アイツは何処に向かっているんだ?
など
多少の好奇心はあった。
だけど、空を飛ぶ事に比べると些細な事である。
正直空を飛んでると、チョットでも油断すると、アキリアとかどうでも良くなってくる。
油断すると、空から墜落しそうだしね。
空飛ぶのは楽しいけど、まだ慣れない。
ヨタヨタ飛んでると、ゴツゴツした岩山の間に、開けた平野。
その地表に何かが蠢いているのが目に入る。
「んんん? 何だ? アレ」
大きな蟻が蠢いて、ワチャワチャしてるようにも、見えるけれど。
気になるな〜。
………………アキリアには、もう追いつけそうもないし。
アキリアが飛んでった方角だけ覚えておいて、大きな蟻っぽいの見てみるか?
不意に見かけた怪しげな集団。
空の上から見下ろしながら、興味をそそられる方へ。
………興味があったら即座に行動。
気まぐれに、面白いもの。
綺麗なもの。
楽しいものに心を惹かれる。
体は惹きつけられる。
それが最強種ドラゴンのメンタリティ。
いや、最強種のはずが、メッチャクチャ勝率悪いけど。
コレも好奇心のなせる技。
元々強いから、警戒心とか無いので負けやすいだけ。
勝ちに徹せず価値に徹する。
それが我等ドラゴンの生きる道。
誰に教わったわけではないけれども。
本能的に引き寄せられてしまう。
そんなドラゴンの本能のおもむくままに、下に蠢く物に気を惹かれ。
空からゆっくり近付いて行くと。
残念。
外れだ。
げんなりだ。
そこには見覚えのある奴等が群れていた。
豚人間
小鬼
大鶏
三つの種族が、血で血を洗う戦争を繰り広げていた。
デジャヴ。
めちゃくちゃ見覚えある。
「ないわ〜。あいつ等、まだ戦争の決着ついて無かったんかい」
よく見ると、なんとなく見覚えのある地形。
見覚えのある三種族が戦争していた。
「よくまぁ飽きもせず。決着もついてなかったか」
………前回は、この戦争の数の暴力に押されて負けた。
ゴッキー化して逃げた記憶が蘇る。
むらむらと敗北感と復讐心を滾らせる。
最機種のプライドがくすぐられる。
俺は前回とは違う。
空も飛べるし、武器も桁違いだ。
今度こそドラゴンの真価を魅せてくれよう。
翼をはためかせて急降下。
ワチャワチャと戦っている、数百匹の上空を飛ぶ。
上空から、下へとブレスを吐き出す。
「ははは、どうだ。空からの攻撃はかわしにくいだろう。こっちに攻撃する手段もほぼ無いだろう? 圧倒的にしとめてやる」
調子にのって、戦場の上空から、立て続けに、ドラゴンブレスを撃ち込んでみたが………。
「あれ? 思ったよりも効果が薄い。てか爆発が、しょぼぉい」
ドラゴンブレスに全然威力がないでやんの。
どういう事だ?
下の戦場では、空飛ぶ俺に気がついて、迎撃しようと石を投げる者もいる。
だが、大半は戦争状態を継続していた。




