138、発情期3
俺の放ったブレスは、音もなく虹色の輝きを放ち、高速でアキリアの胴体を軽々と貫通した。
自慢じゃないが、過去一の威力を出せたと思う。
レベル1なのに、過去高レベルだった頃の破壊力を超えていた手応えがあった。
少しだけ狙いが上にそれたせいで、アキリアを貫通し、空へと消えていった。
もしも地面に炸裂していたら、きっと素晴らしい爆発が見れたはずだ。
………………いや、アカン。
危なく自分の生まれた街に、災害をもたらすところだった。
「ふぅ。いっぱい出た」
スッキリ。
………何もかもわからなくなったかと思いきや、
渾身のブレスを放ち終わると同時に、頭は冴え渡った。
冴えた頭で状況を確認する。
人間三人は腰を抜かしてその場にへたりこんでいる。
アキリアはポカンとした顔で、自分のカラダに一瞬だけ空いて塞がった穴の跡をみている。
『あ、あ、あ、アホ〜〜〜。なんて事をしてくれる。なんて事をしてくれる。なんて事をしてくれる』
アキリアが発狂していた。
だけど気にしない。
「いっぱい出た」
満足だ。
なんかスッキリ充実感していた。
『巫山戯んな〜。いっぱい出たじゃ無いよ。僕に、なんてモノ撃ち込むんだ?』
「自業自得って言葉を、知ってるか?」
『僕は君が本能のままに人間をてごめにして、正気に戻ったあと後悔する姿が見たかったのに〜』
お、お前。
何処が慈悲深き女神だ。
「結果アキリアに謎の何かをぶつけたけれど、後悔はしていない」
『巫山戯るな〜。後悔しろよ〜。僕に変なもの撃ち込みやがって、なんか汚い。ってか僕に、何を撃ち込んだ〜?』
何を?
と言われても、正直俺にもわからんね。
「いや、もう辛抱たまらなかったから、取り敢えず全部使えるスキルを使って、下半身から出るもの全部をドラゴンブレスとしてバベルの塔から撃ってみました」
………スッキリした。
『最悪だ。最悪のドラゴンブレスだ。てか絶対にブレスじゃないよね。それ』
「………何が、はなたれたのか? 俺にもさっぱりわからない、けどいっぱい出た」
『巫山戯んな』
「虹色で綺麗な粗相だった」
汚いかどうかと聞かれれば、正直微妙。
虹色で綺麗は綺麗だったが、何か訳のわからない、得体のしれないものが放たれたのは確かだった。
『そ、粗相って………ホントに巫山戯んな』
「海神の加護、発情期、竜変幻、ブレスのスキルを混ぜて撃ったから、ある意味半魚人とアキリアのおかげで出来た合体技だね」
素晴らしい威力だった。
『………な、なんてモノを撃ち込んでくれるんだ。僕が精神体じゃ無かったら、ただじゃすまなかった』
「精神体って何だ?」
『変幻スキルを使用して、肉体から解き放たれ昇華した状態さ。失敗すると死ぬけどね』
ほう。
半魚人との戦いを、そうやって逃げたのか?
と言うか
「お前、そんなスキルを、俺にもホイホイ配ってたのか?」
『本来次の上位存在に昇華する為のスキルを、君らがゴッキー変身に使う姿が楽しくて』
「お前の方が巫山戯んな」
『猫に小判みたいな使い方をする、君らを見るのが楽しくて』
やっぱりコイツ邪神かなんかだろ?
「そんな事やってるから、俺から性欲とか排泄物とかイロイロ混ざった物を撃ち込まれるんだ」
『今なんて???』
「いっぱい出た」
『………巫山戯んな。キタナ。やっぱり汚いヤツじゃん、それ』
「いっぱい出た」
『最悪だ』




