13.迷子(47、もっかい手直し必要)
一直線に走りつづける。
後ろから狼が、ついてきてるかも。
くそう。
休憩すらとれない。
でもアレ?
いくら走っても全然疲れない?
どうした、俺の体?
人間離れした速度で走る爽快感。
なんだ?
この体は?
「アキリア。俺ってさ、さらに強くなってない?」
「そう?」
「なんだか飛躍的に、身体能力が伸びてる気がするんだけど」
「え? そうなの?」
「狼の勇者との激戦で、なんか覚醒したりしてる?」
「まさか」
「6個目のスキルとか生えてない?」
なんかパワーアップした感ある。
基礎値が上がったって言うか?
「あれを激戦って」
「激戦だ」
「君がただひたすら、狼を追いかけ回してたあれかい?」
「激戦だ」
あれは負けイベントだが、激戦だった。
何か開放されても不思議じゃあない。
「あんなんで、6個目のスキル枠開放するわけないよ」
「そうか。やはり6個目のスキル枠開放するためには、奴ともう一度戦わねばならないか?」
かの狼とは再戦の約束をした。
いつかくる再戦の日にむけ、備えなければならない。
「いや違う違う。狼なんかと何度戦っても、意味ないよ。君のカラダ強くなってるのは、たぶんレベルアップの影響」
「レベル上がってた?」
「それか変幻スキル。よりいっそう強くなろうと願ったからさ」
「強く願ったっけ? 俺?」
心当たりが全くない。
にしても。
願うだけで強くなる?
まじか?
変幻スキル、便利で強力。
チートすぎるチートスキル。
「たぶんマッマの影響でも受けたんでしょ。強くなろうとしたんじゃないの?」
マッマ?
あぁ。
そうかな?
そうかも
「たしかに。名前貰ったったし。そうだ………。きっと火力発電太という、強い名前。そのおかげ」
「え?」
「俺、名前にふさわしく。強い男になろうとしたんだ」
亡き母(父)に誓う。
ドラゴンらしく、より強く。
むぅ。
もしも世界一を目指すべき野望があったなら。
もしも原子力発電男の名前を選んでいたなら、
………いや、違う。
火力発電太。
燃える男の熱い名前こそ、
最強種ドラゴンにふさわしい。
「ま、変幻スキルは、世界を狙えるスキルだしね」
「ホントに? そうは思えないけど」
「思いの強さで、自分を変幻させる」
「なんか怖いわ」
「そういう強力なスキルだからね」
「でもさ。ぶっ壊れの割には、弱くね?」
少なくともドラゴンゾンビ状態に比べると、
明らかに弱い。
マッマが使った切り札スキルに比べてさえも。
だがアキリアからは、不気味な雰囲気が福音スキル越しに伝わってくる。
何だかアキリア。
わくわくしてるような。
「君のココロが、まだ弱いんだよ」
「前よりは、強くなったのに」
「君のマッマが、もし変幻スキルを使用していたらさ」
「うん?」
「わりかし世界の何分の一かを、破壊していたかもしれないね」
うっそ〜。
そんな強力なの?
変幻スキル。
そんなに強力なスキルを………
それは俺が持ってて良いものだろうか?
「本当に? 凄いやそれ」
「ドラゴンだしね。真正の」
「て事は、結局手持ちスキルで、捨てて惜しくないのは、デイジーカッターだけか〜」
デイジーカッター。
使うと自分諸共に、周囲をぶっ飛ばす爆弾。
そんなの呼び出す、壊れスキル。
だけどなぁ。
実質自爆スキルとかいらんて。
「そのデイジーカッタースキルさ。自爆しそうだから、いらない」
「でもそれ、君が元いた世界では、最強武器の一つだよ」
最強?
最強と聞くと心が踊る。
「うそ………まじか」
「うん。連発できれば、世界取れるかもね」
「凄いや。使ってみたい〜」
「まぁ爆風の余波で、今の強さだと、確実に君死ぬけどね」
「だめじゃないか」
結局規模が違うだけで、ただの自爆じゃないか、
使うと死ぬる最強クラスのスキル
そんなん持て余すわ。
猫に小判。
「君は今でも最強なんだ。自爆覚悟ならね」
「そんな覚悟ない」
「たぶん魔王も倒せるよ」
「マジ? そんなにデイジーカッター強いの?」
「城ごと潰せるね。魔王城までたどり着ければね」
「駄目なやつだ。それ」
「城にたどり着く前に、魔王の部下と相打ちだね」
「ますます意味ね〜」
「いやいや魔王の部下、数万人とか道連れさ」
「凄くね?」
「魔王本人がいれば、魔王ごとね」
ソレは、実質。
俺が新しい魔王爆誕ではなかろうか?
俺最強ってか最狂。
開き直れば、もうただのやべ〜奴だ。
ただの爆弾じゃん。
俺
俺みたいに理知的で、紳士な竜には
やっぱり不要のスキルじゃあるまいか?
「やっぱそれ、いらんかな」
「ええ?」
「使いこなせる気がしない」
「強いのに」
「ま、適当なスキル手に入ったら、入れ替える候補かな」
そんな事を話しながら、
緑が徐々に増えてきた荒野を駆け抜ける。
たまにジャンプとかしてみる。
高い、高い。
4M、5M位は跳べるんじゃあるまいか?
メッチャクチャ気分が良い。
その辺に生っている果物らしきモノを、とる。
モグモグしてみると………
む、美味い。
手当たり次第に、その辺になっている、食べれそうな物を味見をする。
毒とかあっても大丈夫だよな。
本体ドラゴンゾンビだし。
異世界の果物は、
新鮮でジューシーな味がした。
狼共の気配は無い。
ふりきったか?
だが一難去ってまた一難。
実は少しばかり困った事になっていた。
狼との死闘の最中に、馬車の車輪の跡を見失っていたのだ。
ぶっちゃけると、
どっちに進めば街につくのか、全然わからない。
だが、ドンマイ心配するな。
困ったときこそ、持ってて良かった福音スキル。
神様的な何かの、
なんかてきと〜なアドバイスを聞けば、
ナントカカントカ………なるだろう。
福音って神のお告げだしね。
「アキリア、街の方向ってわかる?」
「あ、迷ってたんだね」
「もしかして、気がついてた?」
「どんどん街の方角から離れていくから」
「おい。教えろよ」
「迷子かな〜とは思ってた」
気がついたなら、そのとき言えよ。
なんのための福音スキルだ?
「なぜ教えてくれないんだ?」
「ん〜君が街でね。スキル、デイジーカッター使って自爆したらね」
「やらないよ」
俺を何だと思ってやがる?
爆弾魔でも、自爆は、なかなかしないのに。
「もし、やったらさ。街の住人の大量の魂を、近くにいる僕が処理することになるんだ」
「あ〜〜〜」
「面倒くさいじゃないかって、気がついた」
なんてこった。
思ったよりも駄目な理由だった。
コイツ………。
「俺を信じろよアキリア。俺は平和主義だ」
「………」
「そんな事しないよ」
「………………」
「いや、俺まだ一匹もモンスターすら倒してないし」
なんだろうな。
実は平和主義どころか、
すべてを破壊する気はあるのだけれど、
持ってるスキルは自爆スキルばかり。
だから使えない。
「ああそうだったね。狼から逃げてたし。でも前世の君を知ってるとね」
「あれはしょうが無い。負けイベントだ。前世?」
負けイベントは仕方ない。
前世って何だ?
だがアキリアは、前世の話題をスル〜した。
「正直、僕は大量虐殺をする奴は好きじゃ無いんだ」
「なんからしく無いな。壊すの好きとか言ってたのに」
「大量の魂を処理するのが、面倒なんだよ」
そんな理由か。
納得した。
「アキリアは、めんどくさがりやだな」
「僕に限らず皆そうさ」
「そんなもんなん?」
「だから神々は、大量虐殺しそうな、魔王とかドラゴンをさ。勇者を送り込んで積極的に狩ってるんだよね」
「魔王って、そんな理由で狩られてたのか?」
衝撃の事実だ。
神々がサボりたいから狩られる魔王って。
何だかイロイロ残念だ。
「おっと真っ直ぐ進んじゃ駄目だよ。海に出る」
「海はまずいの?」
「海に出ると、半魚人のテリトリーにぶち当たる」
「そんなのもいるんだ」
「二足歩行するデカイ魚だ」
「おもしろそー。見てみたい」
海の生き物には興味あるな。
「想像よりキモイから、行くのはやめて。見たくない」
「俺はちょっと見てみたいな」
「そっちに行くなら絶交だ」
ん?
何か拒否反応凄い。
アキリアらしく無いな。
「嫌いすぎじゃないか?」
「そっちの地域では、福音スキルは繋がないよ」
「おいおい、そんな嫌わなくても」
「そっちには僕の嫌いな、半魚人の親玉いるしね」
「そんなのがいるのかぁ?」
「北に進むんだ。戦いが君を待っている」
戦い?
なんだ?
ソレは
………血が………騒いだ。