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124/306

124、バブバブ、酒場




「その赤子に酒飲ませてみろよ」

「お、良いな。面白そう」


 言葉も放せない赤ん坊に酒を飲ませようとか、この酒場の客層は終わっている。


「バブバブヒャッハー」


 俺は首を左右に振って、再びミルクを催促する為に、テーブルを叩く。


「酒じゃない? やっぱりミルクか? まさかミルクを注文してるのか?」

「バブヒャッハー」


 流石酒場のマスター、人を見る商売人だ。

 俺はミルクをクレと頷いた。


「ぷ、こりゃあたまげた。この酒場を始めて結構たつが、赤ん坊にミルクを注文されたのは初めてだ。ちょっと待ってな」

「バブヒャッハー」


 再び頷く俺。

 

「スゲエ。まるで言葉が理解出来てるみてえだ」

「誰の子供だ?」

「クックック。この頭の良さと、髪型、服装、剣のセンスは並じゃね〜ぞ。どんな父親だ?」

「お、高そうな剣じゃね〜か。どれどれ」


 む、ガラの悪い男が、俺のドラゴンキラーに触ろうとした。

 なので。

 その手を思いっきり叩くと同時に、その男の顎をパンチで撃ち抜いた。


 ………この剣は、誰にも渡さない。

 別に呪いじみた効果のかかった、この剣を、ホントに取られるとは露ほども思わない。

 並の人間じゃあ、このドラゴンキラーを、触っただけでも竜の魂に心を乱され失神コースだ。

 だけれども、他人に触られるだけで腹が立つので、触らせない。

 俺はギラギラと嫉妬に狂った様な目で、剣に触ろうとしたならず者を睨みつける。

 が、ならず者は、既にのびていた。

 ………情けない奴め。

 せっかくヤル気になったのに、俺のヤル気をどうしてくれる。


「ミルクお待ち」

  

 む、タイミングが良いのか悪いのか、騒ぎを見ていないマスターが、ミルクをもって来てしまった。

 俺はミルクに手を付ける前に、倒したならず者の側にヒラリとおりる。

 そしてならず者の服に手を入れ、財布を抜き取る。

 その財布を酒場のマスターに、投げ。


「バブ。ヒャッハー」


 と、頷いてみせた。

 一連の俺の行動の異常さをみて、その場の全員が凍りついた。

 ………………………静まり返る店内。

 それを気にもかけずに、ヒラリとカウンターへ飛び乗りミルクを飲む。

 

「な、何だ? この赤ん坊は?」

「いやいやいや。流石にあり得ない」

「この子、何者だ?」

「お、おい。あの子よく見たら、顔に青い鱗が生えてないか?」

「人間ではないのか?」


 ざわつく酒場の客を尻目に、ミルクを一気に飲み干した。

 ゲップゥ。

 美味かった。

 ささくれ立っていた気分が落ち着く。

 どうやら腹減って気がたっていたから、人間を一人殴ってしまったらしい。

 体調に気分と行動を茶友されるとは、俺もまだまだ修行が足りない。

 ………にしても、顔に鱗だと。

 自分の顔なんて気にもして無かった。

 髪型モヒカンのじてんで、ルックスなんて気にしても仕方ないし。

 

 しかし、鱗かぁ。

 顔をペタペタ触って見ると、左目の周りに何かザラっとした手触りがある。

 鏡が無いかと酒場の中をキョロキョロしてみるが、見当たらない。

 転生してから、鏡見たことないから、自分の顔がどんななのか知らないな。

 ………ま、良いか。

 赤子の顔なんて、大差無いだろし。

 鱗が目立ちすぎるようなら、布かなんかで隠せば良いし。

 

 腹が満ち、考えがまとまると、酒場のカウンターからヒラリと、おりる。

 そのまま、何事も無かったかのように、上機嫌で酒場をあとにする。

 

  呆然と酒場にいた人達は俺を見送った。



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