表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

122/306

122



 バタバタと慌ただしくなる屋敷。

 ここは第三王子の本拠地であるとともに、王都の城の端っこ。

 戦いとなれば、城の外郭扱いされる防御拠点でもある。

 本格的に防御体制をとられたら、脱出は困難になるかも知れない。

 まだ、俺が行方不明になったと知られても、部屋の中を探して誘拐などの大事にはなってない筈だ。

 もしも誘拐なら、ヒャッハーも攫われてるはずだからね。


 しかし、時間がたって俺が見つからなければ、本格的に脱出の難易度は跳ね上がる。

 今はチャンスなのだ。

 人員の殆どが、元俺がいた部屋に集まって、そこを中心に捜索してるはずだから笊だ、笊。

 それに、前回の時よりも、兵士の質が思いっきり下がっていた。

 前回いた近衛兵の鎧を着た精鋭が全くいない。

 有象無象に近い兵隊の目を盗みながら、一階の窓から外へと逃げる。

 あんまりアッサリ脱出出来たので拍子抜けしてしまった。

 



 建物の外に出てしまえば、こっちのものだ。

 発見される危険も、捕獲される危険も激減する。

 とりあえず、建物から離れる。

 城からちょっと離れた王都の城下町へとナントカGO

 城下町の人気の無い場所まで移動して


「バブバブヒャッハー」


 脱出成功。

 ドラゴンキラーを抜き放ち、月に向かって、

 密かに勝利の雄叫びを上げるのであった。


 夜の城下町。

 闇夜に紛れて怪しげな宗教団体へと、怪しい記憶を頼りに、怪しい剣を担いだ、怪しいモヒカンの赤子が、地面を這う。

 上等な服はガンガン汚れていくが気にしない。

 冒険者は薄汚いほうがカッコいいのだ。

 ………俺冒険者じゃないけど、


 町中の人気の無い場所を選んで移動していると、自分と同じく、後ろ暗そうな奴も、みかける。

 そいつ等は周囲を警戒しているものの、それは自衛のものだ。

 他者へ攻撃的なものではなく、自分に危険の無い物事には、酷く無関心。

 その意味では俺にとっても、他の後ろ暗そうな者達にとっても好都合なのだ。

 が、

 流石に俺は人気の無い、道を歩く後ろ暗そうな者達にとっても、少々異質すぎたらしい。


 目があった。

 ………道端にたつ煙草を吸う女。

 地味だがスタイルを強調する服を着た………娼婦かな?

 人気のない裏道に立ってる時点で、相手も普通の女ではあるまいが、

 

「な、なんで、こんな所に赤ん坊が」


 俺よりも、相手の方が、もっと驚いていた。

 俺は、にこやかに笑い。


「バブ、ヒャッハー」


 と、片手をあげて挨拶した。

 女の顔が引きつる。

 ………しまった。

 ヒャッハースキル持ちだった。

 黙ってりゃ良かったのに、女の警戒心がガチ上がりするのがわかる。


「ま、魔物?」


 おい。

 ちょっとまって。

 それは違う。

 発想が飛躍しすぎだぞ。

 くぅ。ヒャッハーが、ヒャッハースキルは凶悪だと言ってた意味が今わかった。

 こりゃコミュニケーション取るの無理だわ。

 町中で、いきなり魔物判定食らうとか、難易度ハードモードだ。


 踵を返して、一目散に逃げ出す。

 このままここにいると、どうなるのか、わかったものじゃない。

 そして、下手に他人と、ヒャッハー言葉でコミュニケーションを取るのも危険だと思い知った。

 この世界には魔物がいる。


 俺は怪しすぎて魔物認定されるのさ。

 ハハハ。

 笑けてくる。

 立ち回り方間違えると、一気に詰みかねないな、これは。

 半魚人め、なんて呪いをかけやがる。

 より慎重に立ち回らねば。

 人間では無く、魔物判定食らうのか?


 ………だが、だがな。

 このスリルは悪く無い。

 妙にハリのある緊張感は、本性さえ現せば、なんとでもなると竜生舐めてたドラゴンゾンビ時代には、味合うことが出来無かった、醍醐味だ。

 スリルが楽しい。

 クツクツと、つい嬉しくて嗤う。

 

「くっくっく。クツクツヒャッハー」


 闇夜に怪しく嗤う、剣を背負った赤ん坊

 傍から見れば、魔物と思われても仕方ないかも知れない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ