120 バブバブ、ドラゴンキラーⅡ
リスクは恐れても怯まない。
既に何度も失敗は繰り返した。
コレクションルームに無造作に飾られた、ドラゴンキラー。
これには何かしらの防犯装置か、呪いでも、かけられているのだろう。
でなければ、もっと警備は厳重か、今まで盗まれなかったはずは無い。
そんな事はわかってはいたが、それでもコレはアキリアを解き放つ為に必要だった。
アキリアを開放したら返せば良い。
そんな気でドラゴンキラーに触れた。
直後。
剣から手を伝わって、頭に直接強いイメージを打ち込まれた。
「バブ? ヒャッハー?」
何だコレは? 魂?
剣の中にドラゴンの魂が宿っている?
その魂の記憶。
この国の初代国王と共に国を作り。
初代国王が死んだ後に、二代目国王に殺された。
その時使用されたドラゴンキラーの中に、魂を封じられているドラゴン。
その記憶を、ザラっとした負の感情と共に魂に打ち込まれた。
精神の弱い者なら、思わず剣から手を離しただろう。
衝撃的な記憶と感情を魂に撃ち込まれる。
コレは一種の防犯機能か?
手にした者の精神にダメージを撃ち込む呪い?
だが、こちとら転生者。
しかも前前世はドラゴンだ。
こんなモノに怯むものか。
剣に向かって逆に吠える。
そもそも、お前は二代目国王に、わざと負けたのだろうと、こちとら前前世はドラゴンよ。
人間に万全な竜が殺される事など、あり得ないことを知っている。
チビ竜ですら、圧倒的だったのだ。
人間相手なら、最低でも逃げる事は出来たはずだ。
それが出来なかったと言う事は、それは竜が望んだ死に違い無い。
「バブバブヒャッハー」
初代国王への殉死か?
理由はともかく、竜なら竜らしくグダグダ済んだことに騒ぐな。
大人しく俺に使われてろ。
と、言いたかったが、口はバブバブしか喋れない。
だが、剣に、うっすらと嗤われた気がした。
そして剣は大人しくなった。
ふう。危なかった。
罠があるとは思っていたが、剣自体が罠だったか。
使い手を選ぶ、ある意味呪われた剣だな。
竜の魂が入ってて、意思ある剣とか、厄介。
ま、この体は父親、がこの剣の使い手の第三王子だし、何とか使えるだろうとは思ってたけどな。
第三王子は、この剣のイメージを、魂に撃ち込まれ続けたので、竜好きになったのかもしれない。
小さな手で、むりくりドラゴンキラーを構えてみる。
剣は、ただ持っているだけでも、輝く黒黒ととしたオーラを発している。
そして俺の体にも力が漲る。
ば、馬鹿な。
何だ? この溢れる力は。
まるでドラゴンゾンビであった頃を思い出す様な、圧倒的な力が、この身に満ちる。
………いや、あかんあかんあかん。
こんな赤子の体に、この力はあかん。
赤子の体が、内側から弾け飛びかねない程の力が満ちる。
というか、第三王子。
これだけの力を持った武器を持ってて、セーラに負け続けたのか?
豚皇女の尻にしかれてるのか?
アイツは阿呆か?
こんな武器持ってれば、勝ち確だろうに。
どうすれば、この剣持ってて人間相手に敗北するんだ?
ヤバイ。
この武器はヤバイ。
コレは手に余る。
この力を自分の物と勘違いすれば、俺は狂うだろうか?
人を容易く狂わせる。
それだけの威力と魅力を剣は持っていた。




