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114転生したらヒャッハーだった件18



「オギャー、オギャー、ヒャッハー。オギャーオギャーヒャッハー」


 何だ? 

 この限りなく可愛い鳴き声に聴こえて、その実耳障りな泣き声は?

 要所要所でヒャッハーと泣く赤ん坊の声が聞こえる。


 俺は眠っているのか?

 ………………体が重い。

 閉じた目を開ける事すら億劫だ。


『おきろ。早くおきろ。急げ』

「バブバブ、ヒャッハー」


 ん? 何か俺の口からありえない言葉が……… 


『違う。そうじゃ無い。福音スキルで会話するんだ。絶体絶命の大ピンチだぞ。急いで目を覚ませ』


 福音?


『お前誰だ?』

『目を開けろ。目の前に俺がいる』


 むぅ。

 目を開けるのも億劫だが、謎の声に急かされるままに、重いまぶたを苦労して開ける。

 

 目の前はぼやけていたが、じょじょにはっきりと見えてくる。

 目の前には奴がいた。

 ………一歳くらいの赤ん坊?

 それはいい。

 問題なのは、その赤ん坊の髪型がモヒカンな事だ。

 なんだ? この生き物。


『もしかしなくてもヒャッハー?』

『そうだ。ようやくコンタクトがとれた』

『なんの事だ?』

『俺たちゃ生まれるはずの無い、自我のない赤ん坊の中に魂を突っ込まれた』

『なるほど。それはいい。が、モヒカンの赤ん坊ってシュールだ』

『お前。………言っとくがお前もそうだぞ』

『へ?』


 なんだそれ?


『お前も赤子でモヒカンスキルと、ヒャッハースキル持たされてるから当然だ』


 な、ん、だ、と。

 自分の両手を見てみる。小さい。

 人間の赤子の手か? これは。

 自分の頭を触ってみると、トサカみたいな髪が生えてた。

 ………これがモヒカンスキル?

 最悪だ。


『嗚呼、半魚人め、本当にやりやがった』

『良いか、モヒカンはもう仕方ないが、ヒャッハースキルは凶悪だ。極力喋るな』

『どういう事だ?』


 なぜだ?

 意味がわからない?

 理解出来ない。


『話す言葉にヒャッハーが自動で入る駄目スキル。そんなモノ持った赤ん坊なんぞ、運が悪けりゃ捨てられる』

『そんな馬鹿な』

『俺は前世で体験済みなんだよ〜。結構良いところに生まれたのに、ヒャッハースキルのせいで、捨てられた』


 なんと、こいつは前世では、そんな苦労してたのか?

 そりゃ酷い。

 ヒャッハースキル。

 なんてスキルなんだ。


『とすると、絶体絶命のピンチと言うのはそれか?』

『いや、違う』

『え?違うの?』

『ヒャッハースキルは注意すれば、ある程度リスクを避けられる。が、これからココに化物がやって来る。それをお前に知らせたかった』

『化物?』

『お前が寝てたままだと、俺が化物にやられるからな。後はまかせた』


 そう言って。ヒャッハーは目を閉じた。


『おい。なんだそれ?おきろ。なんか嫌な予感がするぞ』

「バブバブヒャッハー。バブバブバブヒャッハー」


 福音スキルを使っている間も、俺は無意識でバブバブ言ってた。

 そのせいか、


「はいはい。どうしましたか〜?」


 パタパタと足音をたてて、女が近づいて来る。

 ………なんだ? この生き物は

 優しそうな母性溢れる柔らかい雰囲気。

 長い黒髪でかい胸。

 ………天使かな?


 いや、待て。

 ヒャッハーは化物が来るとか言ってたけど、どういう事だ?


「あらあら、お腹が空きましたか? すこし待ってくださいね。奥様を呼んでこなきゃ」


 パタパタと軽快な足音を残して天使は去った。

 その時。俺の目の端にモヒカン姿の赤ん坊が、邪悪に微笑むのが映った。

 なんだ?

 ………


 ………パタパタとした足跡の他に、ドスドスと重い音がするぞ。

 

「ああぁ。私の可愛い天使達。お腹が空きましたかぁ?さぁさぁご飯にしましょうね」


 俺の目の前に、2メートル近い、大きくデカイ二足歩行の豚が立っていた。

 豚は服をはだけ、………授乳の準備をしているのか?

 誰に?

 俺か?

 俺が、あれの母乳を飲むの?

 俺は混乱していただきます?


 ………もしかしなくても、あの豚が母親か?

 あの豚は人間なのか?

 ヒャッハーは人間の赤ん坊に見えたが、俺達は人間なのか?

 豚なのか?

 謎は深まるばかりだった。


 とにかく授乳は拒否する。

 断固ノーだ。

 

 ………………

 ………その後俺は生まれ変わって初の敗北を味わった。

 敗北はミルクの味がした。

 無理やり授乳させられたんだ。

 生まれ変わった直後に心が死にかけた。


 その時。俺の目の端にモヒカン姿の赤ん坊が、邪悪に微笑むのが映った。

 奴は天使から授乳されてた。

 あれは乳母だったのか?


 何が何だかよくわからなかったが、一つ分かったことがある。

 俺はヒャッハーに再びはめられたのを悟った。

 俺の心にヒャッハーへの復讐心が芽生えなったら、俺はここで気死していたかもしれない。





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