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11.名前がつきました


 アキリアがマッマから、何か遺言を預かった?

 何だか嫌な予感もするけれど。


「それでマッマは、最期になんて言ってたんだ?」

「ん〜。君の名前を預かってきた」

「なまえ? 名前。名前かぁ」

「なかったでしょ」

「そういや。俺には名前なんて無かったな」


 予想だにしなかったな。

 前世の名前は失われてるし。

 ドラゴンに名前っているのかな?


「無いと不便だよね〜」

「ま、どうでもいいけど」

「キミは本当に、………まぁいいや。そんな名前の無い君に、君のマッマからプレゼントだ」

「どんな名前か聞かせてくれ」


 親からの名前かぁ。

 キラキラネームじゃなければ、何でもいいや。

 今まで無くても特に気にしなかったしね。


「君が女の子なら、自然とともに生きて」

「ほうほう」

「環境に優しいドラゴンに、なって欲しい」

「ふむ」


 自然は大切だよね。


「そんな願いを込めて、水力発 電子に」

「ちょっと待て」


 なんてこった。

 センス凄すぎだ。

 キラキラネーム? 

 いや、それともちょっと違う痛さがある。


「君が男の子なら、火のように強く育って欲しいと」

「うむ」

「火力発 電太に」

「火力発電太!」


 むぅ。

 強いな。

 パワーワードだ。

 名字と名前の区切りはそこか???


「もしくはドラゴンらしく」

「ほほう」

「すべてを滅ぼす最強を目指すならば」

「ふむ」

「原子力 発電男と名乗ってくれとのことだ」


 なんてパワフルな名前だ。

 どれも強力だ。

 こんな名前を持つものは、

 その生涯を名前に引っ張られるに違いない。


「水力発電子は却下だ」

「だよね〜気に入らないよね〜」

「俺は男だからな」


 女の名前をつけるなんて、とんでもい。


「いや、おかしいのそこじゃないよね」

「さて問題は、残る2つのカッコイイ名前のどちらを選ぶかだ」

「カッコイイ? 本気?」 

「あぁ。カッコ良すぎる」

「この2つから選ぶの? 本気で?」


 アキリアは驚くが、何を驚く事がある。

 マッマから貰った大切な名前だそ。

 最高にカッコイイじゃないか。

 燃える男の熱い血潮的な。


「う〜む。よし火力発電太に決定だ」

「え? いいの。それで」

「原子力って最強とか言われても、ピンとこないから」


 火力、水力はわかる。

 原子力って何だ?


「ねえ? ホントの本気なの。名前それで良いの?」

「ああ」

「僕がもっと良いのをつけてやるからさぁ。他の名前にしない?」


 今迄に無いほど本気で驚くアキリア。

 失礼な奴だ。

 何が気に入らないんだ?


「アキリアは、たまに訳わからない事言うよなぁ」

「センスが………」

「マッマのセンス最高じゃん」

「ドラゴンのセンスはわかんないよ。は、まてよ」

「なに?」

「と言う事は、僕は火力発電太の、飼い主になるのかい」


 うん。

 凄いセンスだ。

 実は知ってた。

 知ってたけど、名前とかどうでも良いし。

 竜なんて種族名が名前みたいなものだしね。


 でも俺の名前。

 俺の事をアキリアがペット扱いするならば、

 皆きっとアキリアがつけたと思うよね。


「良かったね」

「駄目だ、ソレは駄目だぞ」

「なぜだ?」

「僕のペットに、僕が、そんな名前をつけたとか思われたら………」

「センスが良いね」

「………ソレは駄目だ。絶対に僕のセンスが疑われる」

「ベットじゃないけどね」


 オッス俺ドラゴン。

 名前は火力発電太ヨロシクね。

 飼い主と名付け親はアキリア。


「最悪だ。このペットの事は、秘密にしないと」

「秘密?」

「隠れてペット飼うとか、いつ以来だろ」

「そんなんしてたんだ?」

「バレても怒られないけど、バレたら恥ずかしいやつだコレ」

「おいおい俺はバター犬かなんかい、そんなに悩むなよ」

「悩むよ」

「取り敢えず変幻発動」


 変幻スキルを発動して人間へと変幻した。


「あらら。人間になっちゃった」

「死体の山の中に、ドラゴンいたらヤバイだろ」

「犯人。君確定演出だね」


 その時何が起こるか、考えたくないな〜。

 きっと指名手配とかされる。


「だろ。ましてや攻撃用スキルが、自爆スキルのデイジーカッターだけなんだぜ」

「そだね」

「人間に見つかったら、すぐに狩られちまう」

「犯人確定プラス、竜素材はお宝だからね」

「もしくは、戦って自爆の二択だよ」

「それもそうだね」

「人間形態のステータスは、どんなもんかな? 竜眼発動」


 しかし竜眼は発動しなかった。


「だから人間状態だと、竜眼は使えないって」

「そうだった。地味に不便だな」

「まあね」

「この状態でも使える鑑定スキルが欲しい」

「まぁ、それはそだね」

「スキルは変わらないから良いとして、強さどんなもんだろ? 全然わからん」

「人間でもレベル38あれば大丈夫じゃない?」

「そうか。レベル一気に38か」

「その辺の死体から武器も、もらっちゃいなよ。人間は装備が無いと貧弱だからね」

「ああ、そうだな」


 沢山の人間の死体が転がっている。

 手頃な死体から武器を物色したが。

 それにしても、およそ50人の死体の山は、見てて気分悪くなるな。


「毒にやられてるから、食べちゃだめだよ」

「食べないよ。ん? もしかして、これ食べたら自分の毒で死んだりするのか?」

「うん。毒スキル手放しちゃってるからさ」

「あ〜そうか。免疫もなくなってる的な奴か?」

「たぶんだけど死ぬよ。試す?」

「怖いからヤダ」


 とか言ってたら。

 ギラギラした光を放つ、高そうな剣が特に目についた。

 アレは多分。

 討伐隊が持っていた、ドラゴンキラーの一振りだな。


 強そうだが、アレは却下だ。

 下手に持ち出すと足がつく。

 それに戦闘中にドラゴンゾンビ形態に変幻したら、

 武器は手放す事になるだろう。

 自分の手を見る。

 人間の手よりもかなりデカイ。

 この手のサイズ妥当、人間の剣を持てそうに無い。

 その後、手放したドラゴンキラーを敵に拾われたら最悪だ。

 アレ使われて負けそうだ。


 ………切り札が、自爆技しかない今。

 普通にあれ持ってゴリ押しされたら、勝てそうにない。

 人間に負けるか自爆になりそう。


 サイズ無視して、無理くりドラゴンキラーを手に持ってみた。

 何か嫌。

 生理的に受け付けない。

 俺がドラゴンだからかな?

 大きく振りかぶり、適当な場所に向かって思いっきり投げる。

 こんな物は、ない方がいい。

 ドラゴンキラーなど、ドラゴンには不要。

 あ、穴掘って埋めたほうが確実だったな。

 まぁいいや。


 もっと、どこにでも在りそうな、

 量産品の剣とナイフを、念入りに選んで腰に装備した。

 ついでに足の付きそうにない金目の物を物色する。

 てきと〜に金貨とかのコインを集めるのは、

 ドラゴンに無い人間の本能だよね。


 この場にヒゲもじゃがいたら、死体あさって大喜びだな。

 運のない奴め。

 いや、マッマの毒に巻き込まれなかっただけ、

 運が強いのか?

 沢山お金ゲットだ。

 価値はよくわかん無いけどさ。


「ようし、取り敢えず街の方へとレッツゴー」

「道はわかるのかい?」

「なんとなく馬車の車輪の跡を辿ればつくだろ」

「ああ、そうだね火力発電太」

「………あ、そうか、俺の事か」


 誰の事かと思ったわ。

 他人から自分の名前聞くと新鮮だな。

 いろんな意味で、背筋が震える。


「やっぱりやめようよ。この名前」

「なんで?」

「この名前言いにくいし、ポチとかコロとかにしよう」


 巫山戯んな。


「だから人をペット扱いするんじゃないよ」

「僕のペットは反抗期。いずれ発情期を迎えたら去勢しよう」

「おいおい、恐ろしい計画をたてるなよ」


 アキリアによる、俺の大事なバベルの塔崩壊計画。

 あっさり実行しそうで怖いんだよな、コイツ。

 そんな事を考えながら、

 テクテク荒野の、荒れた道ともいえぬ道を歩く。

 ドラゴン状態の時とは、比べ物にならない程とろい速度。

 それでも、何だか気分は良かった。

 太陽の光。

 自然な森。

 人の体で体感する自然は素晴らしい。

 だが。


「全く生き物がいないでやんの」

「君のマッマが広範囲に猛毒をばら撒いたからね」

「そうだった。どれだけ広範囲に被害がでたんだろうな」

「ま、そこまで広いエリアではないと思うよ」

「そなの?」

「君のレベルも33しか上がって無いからね」

「33しかって。十分チートじゃん」


 一発でレベル33って。

 うまく使えてりゃ、新たな魔王の誕生も夢じゃなかったかも。


「ま、都市の中で戦って都市ごと潰していれば、数百レベルアップも夢じゃなかったね」

「そりゃ凄いな」

「だからドラゴンは最大限警戒されて、チャンスがあれば狩られるんだけれどね」


 あぁなるほど。

 ま、それは当然か。

 あ、なんか見つけた。

 ………狼発見だ。なんか後ろからついてくる。


「アキリア後ろから狼が、仲間になりたそうについてくるんだけど、名前つけてパーティーに入れようか」

「それは隙をうかがって、奇襲のすきを狙われてるんじゃないの?」

「マジでか」


 狼は思ったよりも友好的じゃなかった。


「狼は奇襲が上手いからね」

「へ〜」

「たぶん君に勝てるほどの仲間が、集まるのを待ってる」

「おお、賢いな」

「獲物が転んだりして、すきを見せるチャンスうかがうんだよ」

「ズルいな」

「賢いモンスターは、ローリスクで勝ちを取りに来るから。注意してね」

「仲間を呼ばれる前に、人間の体がどれだけやれるか性能をためしてやる」

「戦えるの?」

「そういや、はじめての戦闘だわ俺」

「だよね〜」

「卵だった時はノーカンだ。敗北して目玉焼きにされた黒歴史は、俺の戦績には加えない」


 剣を抜いて、振り返り狼にむかっていく。

 だが狼はこちらが近づくと距離を取って離れる。

 俺は剣を振りかぶり追いかける。

 逃げられる。

 あれ?

 当たらない。

 なんで?

 ………………剣を振り回すものの………


「畜生、まったく当たる気がしない」

「下手くそ」

「狼、なんて強敵だ。生涯のライバルを見つけたかもしれない」

「ええ〜。ただの野生の動物だよ」


 俺と狼の初陣が始まる。







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