百六転生したらヒャッハーだった件十
目の前にいるクジラ。
そのあまりの巨大さに圧倒される。
体育館くらいのサイズの生き物。
半魚人が、我々を利用して作り出そうとしていたモノの正体がこんなものだったとは。
何かエグいな。
危ない所だった。
あんなのに、間違ってもなりたくは無い。
ペタペタ
「吾輩が到着したのである」
うぉっと。
空飛ぶ俺。
その遥かに下の地上、何か暗闇から声がする。
暗闇の中………木に半分隠れて半魚人が立っていた。
暗闇で何かヌラヌラしてる。目はまん丸でサメの目をしてないから、そこまで怒ってないか?
でも平凡な風景に、こんなん出てくると違和感半端ないな。
存在感が巨大で異質。
………もうホラー映画だ、コレは。
「お前何で、その姿のまま、こっちに来れてるんだ?」
「………?」
「アキリアは依代に神器の中に入らないと、こっちに来れないみたいな事言ってたぞ。今も黒い像の中に閉じ込められてるし」
「アキリアは我輩との殴り合いで、身体捨てて逃げたので、今は精神体であるからして。我輩達にとって肉体か精神体かは、大差ないのである」
どっちでもいいんかい?
まぁ俺もホイホイ身体取り替えてるし、あいつ等もやろうと思えば、身体ホイホイ変えれるのかね?
「お前は肉体派と?」
「我輩は、コッチで裏切り者の使徒三人しばいて、縄張り取り返さなければならないから、肉体必須であるからな」
半魚人は馬鹿でかいクジラを振り向いて………
ポカンとだらしなく口を開いた。
「なんだ?そのマヌケヅラは」
「ゴキブリに顔の事でとやかくいわれたくないである。………あの姿は?ん〜〜〜何か強力な魔物クジラの力を取り込んでたであるか?」
「クジラ?」
「我輩の設計とは別物の、化物に仕上がったである」
クジラ?………取り込む?
そう言えば、高レベルクジラの肉を大量に食べた気が………
あれ?俺のせいか?
………クジラ食った俺を、ヒャッハーが食べたから
………ま、食われた俺じゃなくて食ったあいつが悪い。
地上でクジラの姿って、もう罰ゲームだ。
移動するだけで手一杯っぽい、クジラの正体を現した今なら、デイジーカッター無しでも勝てるんでないかな?
考えろ俺。
今の俺は半魚人から何されるかわからない緊急事態。
あいつ倒して、レベルアップして、半魚人から逃げきれる?
かな?
それとも奴に半魚人が気を取られてるうちに逃げる?
いや?
不気味な追跡スキルで追われたら逃げ切れないか。
奴の力を取り込めば、半魚人から逃げ切れるくらいには強くなれるのか?
そんな事を考えていたのが不味かった。
そんな無駄な時間を使っているうちに、
すさまじいスピードで半魚人が駆ける。
残像?
半魚人は真っ直ぐ走っているだけなのに、半魚人がぶれて見える。
そのまま巨大な櫛羅に突っ込み、
クジラが空に打ち上げられた。
そして、爆発した。
瞬殺。
つええ。思ったよりもヤバイ強さだ。
「ああああ。俺が弱らせた莫大な経験値が」
目の前で全てを半魚人に持っていかれる。
しまった。
さっさとトドメをさしておくべきだった。
そうすれば、選択肢は格段に増えたのに、
もう、半魚人と戦うのはむりだ。
逃げるか?誤り倒すか?騙すか?
………そんな事を、考えていると、巨大クジラの血にまみれた、サメの目をした半魚人と目があった。
戦闘をして興奮気味したせいか、目がお怒りモード? だ。
………あかん怖い。
あんなんと戦うのも、会話する勇気も無いわ。
半魚人と反対の方向へ、
一目散に翼をはためかせて逃げ出した。




