壱百五転生したらヒャッハーだった件九
東洋竜と西洋竜の違いが云々されるけれども。
何故か?
理由は単純に指してる物が違うから。
東洋竜は自然現象を指してて。
西洋竜は海賊のことを指す。
西洋竜(海賊)は空を飛ぶように、海を越えてやってきて、財宝や美女を奪い、逃げる際に街を火で燃やす。
炎で街を燃やせば、防衛隊は街の消火作業に追われて、海賊は追撃を受けずに楽々と逃げ切れる。
お金を溜め込んだ教会を襲う事から教会の永遠の敵、古代の西洋教会に、竜の彫刻が敵対者として残っていて、語り継がれるのはそのためだ。
そのうちに西洋竜(海賊)達の中に裏切り者が出始めた。
街を襲うよりも、王や貴族を倒して、街を支配。自分達が王や貴族になり、税金を取り立てたほうが良いと。
そして竜(海賊)の王様や貴族が生まれた。
その結果皮肉なことになった。王や貴族になった竜。
それが王や貴族になる事を選ばなかった、他の竜(海賊)に襲われる。竜対竜の激突だ。
王や貴族になった竜は、かつての同胞を恐れた。
いつの日か、かつて自分達が古い王や貴族を追い出して権力を握ったように、自分達が他の竜に、とって変わられるのでは無いかと。
古い西洋の家系には、ドラゴンの名前をもじった家名をもつ貴族王族がある。祖が海賊であることをしめしている。
先祖が海賊である事を隠している家もある。が、そんな家系には、大抵が隠し名として、自らの一族の事を「竜の血を引く一族」と名乗ったリしてる。
それも大抵が祖が海賊だ。
例外として、竜の血を引く一族の意味を知らずに、その一族の誰かに憧れ、あるいわ、その名を利用する為に、勝手に名乗る偽物もいる。
「と、言うわけで、この国の王族は竜の血を引く一族である。汝の望みを一部叶え、次は、この国の王族の体を与えるのである」
半魚人が無茶苦茶言い出した。
こっちの希望は、空を飛べる竜だったはずなのだけれど。
それはガン無視された。
「いらない。それってタダの人間じゃん。翼も無いし、俺の希望条件、何も叶って無いし」
「イケメンに、チビ竜さんを、人間基準のイケメンにしてください」
いや、コイツ等ホントに人の言う事聞かないな。
「安心するである。タダの嫌がらせである。コレは罰である。罰であるからして」
「顔は………顔は、どうせなら私にデザインさせて下さい」
「………まぁ顔はどうでもいいので、セーラの好きにさせても良いである」
「やった〜」
「だからお前達は、言っても聞かないだろうが、俺の竜生を勝手に決めるんじゃない」
この二人は俺を何だと思っているんだ?
「今から我輩が行くである。お仕置きである」
ペタペタペタ。ペタペタペタ。ペタペタペタペタ。ペタペタペタ。
へ?
空でホバリングする俺の耳元に、
いや
何か頭の中で、ペタペタと何か音が聞こえる。
何だこれ?
「おい?半魚人。何をした」
「我輩のスキルである。どんなに離れた相手のもとにでも、百八歩、歩けば着く便利スキルである。目をつぶるである」
へ?
目をつぶる?
言われた通り試しにやってみた。
真っ暗なまぶたの中、遠くに半魚人がいた。
こっわ〜。
「何だこれ?きっしょいわ」
「吾輩が歩くと、目を閉じた汝の中の吾輩がDonDon近づいて、汝を捕まえるである」
「おい。何だその最悪なスキル。もうストーカーじゃないか?」
ペタペタ耳障りな音と、まぶたを閉じるたびに脳裏に写る、間抜け顔の半魚人。
もうホラーか喜劇かわからんな?
「吾輩が汝のもとに行く前に、汝ヒャッハーのもとへと行くである。二人まとめてお仕置きである」
「………」
なんか怖い事言ってる。
「もしも吾輩が汝のもとに到着したとき、汝がヒャッハーのもとへと、たどり着いていなかったら、お仕置き二倍である。スキル2回使うのは、面倒だからして」
「ちょっとまて〜」
「待たないである」
ペタペタペタペタ。
半魚人の間の抜けた足音がする。
いや、これはヤバイ。
多分アイツ本気だ。
空中にホバリングしていた俺は、
竜の翼をはためかせて、ヒャッハーのもとへ………?
アイツどこにいるの〜?
………
暗闇の中、周囲を見渡すと、デイジーカッターで吹っ飛ばした、爆心地からでる煙が見えた。
「あそこか。あの辺にいるはずだ」
全速力で空を翼をうつ。
瞬きする毎に、目の中の半魚人が、だんだん大きくなって暗闇から近づいてくる。
怖い怖い怖い。
急げ。急げ。最高速だ。
今出来る限界速度まで、スピードを上げて、デイジーカッターの爆心地を目指す。
………………その時。
俺は何かを超えた。
翼から生まれる浮力。
軽々と体を浮かせ、スピードを上げる事ができる翼。
そこから矢のように放たれた俺は、
俺の脳は、何かの快楽物質を解放した。
………高速で空をかける。スピードの中、俺の中、脳の中、脳内麻薬か電流か?
何かが更に脳内を高速で駆け回る。
何という爽快感。周りが止まっているかのように見える。思考回路がやけにクリアで、最高に気分が良い。
ペタペタペタペタと余計な雑音さえ、瞬きの際に半魚人が見えさえしなければ、間違いなく俺は絶頂したであろう。心地良さ。
くわ〜おしい。
半魚人め〜。
余計な事を。
しかし、それでも最高に気分がいい事に違いは無い。
空を高速で飛ぶスピードのスリルか?
「む、ヒャッハー発見?って何だあれ?」
俺の使ったスキル。デイジーカッターの爆心地そばに、
全長数十メートルはあろうかと言う、巨大な青色のクジラみたいな生き物が、傷だらけで、のたうち回っていた。
「大怪我してるな。………あれがヒャッハーか?」
とんでもない化物になってた。
一歩間違えれば、自分があんなのになっていたかと思うと、ゾッとした。
ん???
いま俺ゴッキーだったわ。
竜の翼なかったら、あっちのほうが遥かにましだった。




