壱百四転生したらヒャッハーだった件八
勇者。
勇気ある者。
勇者とはなんぞや?
他人は? 自分は勇者かどうか?
どうやってそれを判断するか?
「地を這うゴッキーは、ただ嫌われるだけだが、空飛ぶゴッキーの恐怖は、ドラゴンのそれに匹敵する」
空飛ぶゴッキーに、恐怖せずに立ち向かえるものがいたら、それは、きっともう勇者だろう。
「つまりは半魚人。お前って勇者だったんだな?」
「我輩ゴッキーに馬鹿にされたのは初めてである。口惜しいである。汝アキリアが、我輩を馬鹿にする為に送り込んだ、尖兵であるか?」
きっと半魚人様は鮫のような目になって、地団駄を踏んでお怒りである。
「違う。だが、ゴッキーの脳味噌等はこんなものだ。多分ゴッキーの身体と脳味噌に、俺の知能とか感情が引っ張られてる」
「なんと」
「つまり、ゴッキーに魂入れた、勇者半魚人のせいだ」
『汝が、ゴッキーでも良いと言ったである。我輩のせいじゃ無いである」
「そうだっけ?」
「汝の頭どうなってるであるか?」
「おかげで楽しいぜ。馬鹿な半魚人の使徒になって頭悪くなったおかげである。ありがとう。馬鹿になるって偉大だな」
………
あれ?何か半魚人から返事が無くなった。
まぁいい。飛行を楽しむ作業に戻るか?
と思ったら、底冷えのするような声で、
「………ようし、待ってろ。その喧嘩買うである。こんなに馬鹿にされたのはアキリア以来である」
「か、海神様。落ち着いてください」
「セーラ、はなすである。あのぶっ壊れ竜ゴッキーしばくである」
「ゴッキーに海神様が触るのはやめてください。海神様の手がバッチクなります」
「………ハウア! 確かにそうである。セーラ賢いである。ゴッキーになんて、触りたくないのである」
「そうか、俺はいつの間にか、素手攻撃無効化耐性を持ったようなものだったか? 最高だなゴッキー」
「馬鹿である。汝、馬鹿である。ゴッキーを最高だとか馬鹿である。汚いである」
「俺、海神様の使徒のゴッキー。ヨロシクね。海神様ってゴッキー使徒にする趣味があるんだよ」
何かアキリアにも言ったきが?
まぁいい。
「ハウ! そんな趣味無いである。しまったである。使徒をゴッキーにしたの大失敗である」
「ちょっとアキリアのとこに行って挨拶してくるわ。半魚人好みのゴッキーの姿にされちゃったって」
「やめるである。そんな紹介されたら、我輩の名誉がズタボロである」
「………それが嫌なら、翼のあるドラゴンの身体くれないか?」
名誉と竜の体の交換だ。
「わかったである。やっぱり今から汝を消滅させて、証拠隠滅するである」
「え? 」
あかん。コイツ人の話を聞かない馬鹿だった。
「海神様。落ち着いて」
「よく考えたら、既にヒャッハーは弱ってるから、我輩の力を消耗する事なくとどめさせるである。二人まとめてしばくである」
「おお、素晴らしい。その後俺を、翼の生えた竜の身体に転生させてくれたら、完璧だ」
「そんなの、やるわけ無いである。お仕置きである」
「ゴッキーよりも下の体があるだろうか? あったとして、それがお前の使徒になるである。俺が竜に戻るのは、お前の名誉の為でもある。winwinだ」
「………………………お前最悪である。コレは罠である。何でこんなの拾ってしまったであるか? 我輩」
「お前は俺に、空飛ぶ竜の体を与えるために、存在しているのかも知れない」
「………もういっそ、汝、裏切ってくれである? 」
「海神様がいらないなら、あの竜私に下さい」
セーラの弾んだ声がする。
「セーラが欲しいなら、あげるである。しばいて罰を与えてから、セーラにあげるである」
「やった〜」
「おいおいおい、やめろ。おれの運命を勝手に決めるんでない」
「きゃ〜嬉しい。とびきりイケメンの人間に転生させて下さい」
「ヤメロ。翼の無い人間はヤメロ。空飛ぶ快感を覚えた今。もう、地を這う生物にはなりたくない」
福音スキルを通して、半魚人がヌラリと嗤った気配がした。
「解ったである。セーラが喜び、竜が嫌がるならば。竜を我輩に似た超イケメンの人間にしてやるのである」
『それはやめて(ろ)〜』
俺とセーラの叫びが響きわたった。




