100、転生したらヒャッハーだった件4
馬鹿な半魚人と話していても、埒があかない。
それよりも先にヒャッハーだ。
半魚人の協力がえられるなら、無限ゾンビアタックの恐怖を見せてやる。
覚悟しろヒャッハー。
「ふ、ふふふふふふふふふふ」
「あ、あの?チビ竜さん?大丈夫ですか?」
「ほっとくのである。戦闘力の高い動物は、傷を負う前は優しく無害なものが多いであるが、一度でも傷を負うと、好戦的になって、頭おかしくなるである」
「え?じゃあヒャッハーに傷を負わされて?」
半魚人は首を横に降った。
「違うである。セーラに傷を負わされて、あの竜、狂ったである。ヒャッハーの次はセーラが殺られるである」
「………嘘?」
「自然界では、当たり前の事である。賢いセーラたまに馬鹿になるであるな」
………なんか悪口を言われてる気もするが、そんなに外れてる訳でも無い。セーラにも後で、お仕置きだ。
ヒャッハーのあとにな。
「半魚人。やってくれ。俺をもとの竜の身体に」
「吾輩海神である」
文句を言いながらも、半魚人は俺を生き返らせてくれる。
ふふふふふふふふふふ。
光る光る目が光る。
ドラゴンの死体の目に再び光が灯る。
それは狂った光。復讐と怒りを楽しむ光。
正直、復讐だの怒りの感情は、楽しくて仕方がない。
ゾンビの身体だと特にな。
命を捨てる覚悟を持つと、こうも楽しく生きれるのは、なんかもうイロイロと欠陥があるな。
欠陥が生物にあるのか?
世界にあるのかはわからないけれども。
口の端が三日月にあがる。
辺りは暗い。
夜か?
パチパチと焚き火の音が聞こえる。
焚き火に目をやると、ヒャッハーが焚き火のそばでコチラを見ながら肉を食べていた。
「何だ?生き返ったのか?お前の竜肉美味いぞ。一緒にたべないか?」
コイツも大概頭がオカシイな。
俺に俺の肉を勧めるか?
しかし、俺が生き返ったのに驚く様子も動揺する気配すらない。
とんでもない事だ。
凄まじい自信。
こりゃあ、とんでもなく強くなっているのが、自信から見て取れる。
「お前。俺が怖くないのか?殺した相手のゾンビ。しかもドラゴンゾンビだぞ?」
「怖くないね。ヒャッハーから解き放たれた俺に恐怖など無い」
「なんだ?その理屈?」
「お前にはわかるまい?ヒャッハーがどれほど恐ろしい呪いか、などな」
深刻な声と顔のヒャッハー。
一瞬絶望的な表情になる。
彼奴の歩んできた絶望的な人生が、一瞬見えたような気がしたりしなかったりしたが、不味い。
このままコイツと話していると、好きになってしまいそうだ。
そうなる前に、一気にケリをつけなければ。
「ミギャン」
ブレスを躊躇いなく発射。
半魚人には、ほぼ効果ないと言われていたが、実験だ。
バチリ
「へ?」
渾身のブレスは、ヒャッハーに片手で弾かれて、上空へ消えていった。
あ、あれ?
思ったよりも、コイツ強くないか?
これじゃゾンビアタックを仕掛けて、何度も挑んでも無意味だな。
ここまで力の差があるとは思わなんだ。
「気が済んだか?無駄だと、わかったら諦めて去りな」
「ん?俺をほっとくのか?」
「別に恨みがあるわけでなし、前回殺したのは、単純に力が欲しかったからだ。お前も気にするな」
「………………気にするわ」
獲物を横取りされて、殺された。
さらっと流せると?
しかも竜が?
「つっても力の差は歴然。俺の今の力は神に迫りそうなくらいだ。クラス疑神とかになってるぞ。どうしても挑みたければ、力をつけて出直しな」
「擬神?そんな事になってたのか?」
そりゃ凄い。
どうすごいか知らないが、なんか強そうだ。
「んで?どうするんだ?殺るのか、諦めるのか?」
「こうする」
そう言って俺は、今の今まで使わなかった、使えなかったスキルを発動した。
「デイジーカッター」
が、
一見して何もおきない。
「どんなスキルも無駄だと思うぞ」
「一応もといた世界での最強兵器の一つだと神は言ってたけど、お前知らないのか?」
「もとの世界って?」
「お前も異世界転生者だろ?」
「異世界?いや、俺の前世はこの世界だ。この世界の転生者だ」
え?そうだったのか?
俺とは同郷ではなったか?
ヒュ〜〜〜と言う音が空から聞こえてきた。
そして………爆音と共に、
「おかえりである。汝は無茶苦茶である」
半魚人の所へ戻ってきていた。