0008.神の子として
ガンッ!
カン!
ガーン!
ガンッ!
機体をたたく音が響きまわり、俺はと言うとビビっていた。
背丈が2m以上は有りそうな筋肉隆々な奴らに囲まれているのだ。
「がやがやがや」
と、大きな声で何かを話す声も聞こえていた。
『この程度の攻撃では、当機はかすり傷一つ負うことはない』
ま~そうは思うけどね。
髪の毛や、髭を伸ばし放題にし簡単に毛皮をまいただけのような小汚い連中は正直言って怖い。
後ろの方で何やら相談してるように見える者たちや、近くで石で叩いたり投げたり、こん棒で殴ったりしている者たちなどの様が見える。
100人以上はいそうだ。結構人数多いよな。
「****、固い、****」
「なんだ、*****」
「****、****、分からね~」
おや?なんだ部分部分、聞き取れるようになって来たぞ。
「こんな物、初めて見る」
「なんだ、これ」
「これだけ、叩いた、壊れない」
おおっこれが自動翻訳能力! 不思議だ。チートだ。
「でも、これって、船から降りても周りからタコ殴りにされるだけっすよね~?」
『我によい考えがある。任せてもらえるか?』
「じゃ~よろしくっす」
「皆の者! 静まれ! 静まれ~」
ギガの声が大音量でこの辺り全体にひぎきわたった。
さすがにびっくりしたのか、野人たちは静かにこちらを見上げてきた。
「我は、神なり」
あれれ~、何言いだしちゃてるんですか。
このAIは。
「なに、言ってるんだ? これ?」
「変な物だ 」
ざわざわし始めた。そりゃあ、そ~ですよね。
「黙れっ! これを見よ。神の怒りを知れ!」
機体が白く輝き始めいつもの赤い矢印が機体から、ちょっと離れた高さ幅ともに8mはありそうな岩に向かっていき表示された。
“全周囲レーザー最低出力で発射“
とコクピットに表示が出た。
シュビッ
ジュワ~
標的の岩が跡形もなく溶けて、周りの木も幾本も消滅していた。
うっわー凄い威力!
あれで最低出力?
「これでも、まだ我を疑うか? 我の怒りが頭上に落ちる前に態度で示せ!」
皆、目をひん剥いて岩のあったところを見ていた。
そして皆、ウサギの様な耳が折れていた。
戦闘機を叩いていた時にはピンっとこちらに向いて立っていたのに。
そのうちの一人が、「はっはー」と土下座をした。
すると、周りに土下座の波が拡がり、
全員が土下座をしたのだった。
最初に土下座をした野人が言った。
「神よ、お許しを、お願いです」
代表者なのかな。
「ふむ、今回は我もヌシたちに願いが有って来たのだ。先のことは許そう」
俺はふと神話ってこんな風にできるのかねーと思った。
「はは~、ありがとう、ございます」
「この度、我に子ができたのだ。まだ、生まれたばかりなので権能も小さく皆より弱い。
が神の子として、下界のことも知らねばならぬ。その修行の場にヌシらの一族を選んだのだ。我が子を一年預けることにした。生活や狩りなどを教え守るのだ!」
「はっ、引き受け、ました。お任せを」
「我を、忘れることなかれ…………、我を、裏切ることなかれ…………、我を、侮ることなかれ………………」
平気で嘘つくなこのAI。
『では、マスター、彼らの前に出すぞ。威厳ある態度で最初は接っするよう心掛けろ。そして、我は休止する。我からは呼び掛けたりは出来ないが、用があるときは声を出さず呼ぶのだ。遠慮はいらない』
『分かったっす』
『うむ、それでいい』
ギガの様な感じでしゃべったらよいかな?
そして俺は戦闘機の下へ降りていき、光をまとい野人たちの前へ降臨するのであった。
つまり、これは神の振りして全力で寄生しろってことだよね。
そうでもしないとすぐコロコロされそうではあるが。
これはクルものがあるな~、でもしょうがないんです。
許してください。
すみません。
死にたくはないんです。
ちょっとの間、面倒を見てください。
よろしくお願いします。
さすがにこれはひどいと思った俺は心の中でくどいほど許しを請うた。
だが、この状況では流れに乗らないと即死。
俺は覚悟を決めた。
嘘には嘘を重ねるしか無いのだと。
「頭を上げよ。わっ我は、田中賢太、神である! ケンと呼ぶがよい。よろしくするのだ!」
うっ、なんか失敗したっぽい。
皆の視線がおかしい。
雰囲気が先ほどまでとは違う。
ウサギ耳もこちらを向いて立ち不安げに揺れていた。
「はっ、私は、族長の、ゾムン、です、神よ、歓迎、いたします。こちら、こそ、よろしく、お願い、する、です」
族長の発言でまた雰囲気が変わった。
少し、緊張感が出てきた。
族長の力は、結構すごいらしい。
「良きに計らへ」
「ははっ、では、我らが住処へ案内します」
おっ、はっきりと話が分かるようになってきたぞ。
「こちらへどうぞ」
強面の、族長がにこやかに言った。
****
天気の良い、いい日の午後だった。
狩りが順調に終わった。
皆で住処の前で獲物を解体していると、真っ赤な大きな鳥がこちらに向かってくるのが見えた。
これは“とんでもない魔物が来たに違いない”と思ったワシは皆に声をかけた。
「女子供は住処に! そして、戦士は武器を持ちワシに続け!」
自慢の石斧を持ち先頭に立って魔鳥の降りてくるところへ走った。
魔鳥は、ゆっくりと長い足を出し、ワシらの前にゆっくりと降り立った。
「皆の者、攻撃せよ」
ワシの合図のもと、皆はその魔鳥を叩き始めた。
“うん、なぜ反撃がない?”
ワシは不思議に思い、隣で見ていたホルンに声をかけた。
「あれは、いったい何だろうか?」
「族長、俺にもさっぱり分からんよ」
「皆の者! 静まれ! 静まれ~」
大きな声が響きまわった。
「我は、神なり」
「何を下らん、攻撃を続けろ」手を休めてしまった皆に言った。
「黙れっ!これを見よ、神の怒りを知れ!」
赤い何かが大きな岩を示すのが見えたとたん
シュビッ
ジュワ~
っと、その大きな岩が溶けて消える様を皆が見た。
「っ!」
「これでも、まだ我を疑うか? 我の怒りが頭上に落ちる前に態度で示せ」
これは、ヤバイ! 本当に神かどうかは置いておいて“敵対すれば皆殺しにあう”そう考えたワシは。「はっはー」と恭順の態度を見せた。
皆もそう思ったのか、同じく恭順の態度を示した。
「神よ、お許しをお願いします」
「ふむ、今回は我もヌシたちに、願いが有って来たのだ、先のことは許そう」
おおっ許された。
よかった。
「はは~、ありがとうございます」
「この度、我に子ができたのだ。まだ、生まれたばかりなので権能も小さく皆より弱い。
だが神の子として下界のことも知らねばならぬ。その修行の場にヌシらの一族を選んだのだ。我が子を一年預けることにした。生活や狩りなどを教え守るのだ!」
ワシらは神に選ばれた。
これはいい! 使えるぞ。
「はっ、引き受けました。お任せを」
ワシらは神に選ばれた。
その事実は他の部族や集落に対してワシらが上である最高の理由に出来るぞ。
一年神の子とやらを守れば最高の権威が示せる。
「頭を上げよ。わっ我は、田中賢太、神である! ケンと呼ぶがよい。よろしくするのだ!」
なんだこいつは?
光とともに現れて神聖に見えていたが、何か情けないぞ。
いかん、こいつには神の子として頑張ってもらわねば。
「はっ、私は族長のゾムンです、神よ歓迎いたします。こちらこそ、よろしくお願い、いたします」
これはこの先フォローが大変かもしれないと、不安が頭をよぎるのだった。
明日も更新
「最弱の吸血鬼?が生き残るには?【最弱では死にそうなので毎日せっせとダンジョンに通い、最強になってしまったので悠悠自適に生きれる】」も連載中ですのでよろしくね