0007.野人の惑星へ
丸い航宙艦から出てすぐ。
『では次元間移動を行う』
「ハイっす」
鈍い振動があり、ぶわっ と風景が歪んだ。
俺はつい目を閉じてしまった。
『マスター、到着した』
恐る恐る目を開けると、目の前に青と緑のコントラストが美しい惑星が大きく広がっていた。
「おおっ! とても綺麗っす」
俺は素晴らしい自然を持っていそうな地球型っぽい惑星見る事でより宇宙に居る事を実感する。
「それで、1000年前と比べてどんなっすか?」
『幾分かエーテルの密度が濃くなっているようだが、誤差に近いな。だが、少し強い魔物の発生も有るかもしれないな』
「へ~」
『後は、多種族の知的生命が生息しているようだ。
カエルと魚の中間の様な人型種
土竜の様な人型種
犬と熊の間の様な4足種
ウサギと爬虫類の間の様な人型種、など発見した。
知的生命体と言っても野人に毛が生えたぐらいの進化度だな』
「知性体ってことは、言葉を話したりするっすか?」
『話す可能性は高いだろうな』
「でも、言葉分かんないだろうから、関係ないっすかね~」
『いやそんな事はないぞ、マスターには自動翻訳能力が付加されているので、幾らか聞いてるうちに理解が出来るようになる』
「へっ! へ~」
なんだそれは、俺の頭にもいろいろ細工がしてあるのか? 気持ち悪いぞそれは……。
『近くで魔物が倒されれば、エーテルを吸収できるので、どれかの種族と一緒にいれれば効率も良いな。そして,戦闘に参加すれば身体も進化できるぞ』
「戦闘っすか? それって全周囲レーザーで掃討して回るんじゃないんすか?」
『当機のレーザーは最低出力でも一発で弱い魔物から収集できるエーテルの10倍以上エーテルを使うぞ。エーテルを集めに来ているのにそれではまずいであろう? 又、大気圏突入でかなりエネルギーを消費するのでしばらくは飛べもしないぞ』
(なるほどな、マスターの安全を優先するならその手があったのだな。強き物はおごり鈍くなる、と言うが。我にも当てはまるようだ。マスターの強化にばかりとらわれていた。我も結構ポンコツだな。)
『すまなかったマスター、我はマスターの安全をもっと考えるべきだったようだ、戦闘機で掃討できる装備を、我が提案すべきだった。特に今の我は簡易版で判断能力がない。大気圏突入が終われば少しの間しかまともに動作できない、休止の状態になるのだ。マスターの位置情報ぐらいしか把握できていないはずなので、危なくなれば我を呼ぶのだ。できるだけ対処する』
……まじか~。こんな戦闘機に乗っているのに白兵戦か~!
剣や銃の特訓なんか緊急事態対応の為だと思っていたよ~
『そう言えば、マスター、この位エーテル濃度が有れば、魔法が使える様になるはずだが、惑星に降りる前に練習するか?』
うん、いつまでも落ち込んでいても仕方ない。
魔法ね、魔法。
よしテンション上げていこう。
「じゃあ、魔法の使い方教えてほしいっす」
『ではまず、マスターのスピリットの中で魔法制御に使えそうな余剰SPをエーテルとして活性化してみるので、その感覚を覚えるのだ』
「ふおっ! なんじゃこりゃー」
体のあちこちがちょっと温かい、これがうわさに聞く魔力!
そして体の芯からビリビリ来るような痛みの様な苦しみの様な感覚、これが限界な気がする?
『今感じているエーテルが今使える最大量だ。それを超えるとスピリットが壊れる。その痛みはスピリットからの警告だ。感覚をよく覚えるのだ。……だが、それほどのエーテルを消費したのでは何週間も気を失ってしまう。次に、これがその半分だここまで使えるようになれば一人前だ』
体の温かい部分が少なくなっていく。なるほど、楽になった。
『そして、今使っても少し気分がすぐれなくなる程度で済む魔法を使える最低値がこの程度だ』
先ほどまでより暖かい部分がかなり小さくなった。
『その感じているエーテルを一点に集中させるのだ。そして、集中して考えろ! どんな現象を起こしたいか? その現象とは何なのか? を』
集中、集中、おおっ修行っぽい、おっと離れていく、集中…………
右人差し指に集中させていく。集中…………
「点火っ!」
ぽっ!
小さい炎が一瞬現れた。
「やったうっぷ……うげっ吐きそうだ。気持ち悪い……」
でも、すげー俺魔法使えちゃったよ!
自分で指先に火を起こしたのだ。
『今のは我が分かり易いように手を貸したから簡単にできたのだ。すぐには出来ないかもしれないが、練習していれば必ず出来るようになるので頑張ってほしい』
俺がえづいている間戦闘機は惑星の周回軌道をずっとまわっている。
『どうだ、そろそろ落ち着いたか?』
「はい、だいぶいいっす」
『では、どの種族に合流するかね』
先ほど言ってた種族の姿が、スクリーンに投影された。
さて、どれにしようかな。
カエルと魚の中間の様な人型種
土竜の様な人型種
犬と熊の間の様な4足種
ウサギと爬虫類の間の様な人型種、
どの種族もごっついなー。
怖いわ。
ふむ、カエルとモグラは無いな。
暮らす場所が水の中とか土の中とかになりそうだ。
熊は足が長く犬耳でとても素早そうだ。
そして人に顔が寄っている。
だがどう見ても熊だった。
食われそうで怖い。
最後ウサギは、ウサギ耳にしっぽ、背中などに鱗を持つ力強そうで背が高い。
しかし、最も人よりだ。
今回も選択の余地なんてなさそうだ。
「ウサギと爬虫類のあいのこの種族に決めるっす」
『了解だ。集落の一つの近くに降りよう』
超小型航宙戦闘機は惑星の周回軌道からゆっくり外れていき、大気圏への突入を開始した。
ビリビリビリ ガタガタガタ
振動と音が凄い。
まー大きさ軽四だから仕方ないよね。
炎が凄いスピードで後ろに流れていく。
なぜ燃えるのか、ギガに聞いてみたら、大気が圧縮されて燃えるとのことだった。そして、対熱シールドも有るので本機は安全だ、とのことだ。
そう言えば地球の大気圏突入カプセルもそう大きくは無いんだっけ?
グググッと減速の荷重を感じると目の前に青空が広がった。
大森林が広がる緑の大地の向こうに青い海も見える。
これまた絶景だな。
現在時速50km、ヘリでもないのにこんな低速度で飛んでるよ。
山の中腹の少し開けた土地が近づいてきて、着陸態勢に入り着陸用脚2mくらいを出して、ゆっくりと降りていくと沢山の人々がこちらに近づいてくるのが見えた。
『着陸完了』の声を聴いて間もなく。
ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガン! ガン!
機体を何か固いもので叩きまわす音が響きまわったのだった。
明日も投稿にゃ
「最弱の吸血鬼?が生き残るには?【最弱では死にそうなので毎日せっせとダンジョンに通い、最強になってしまったので悠悠自適に生きれる】」も連載中ですのでよろしくね