0004.戦闘機シミュレーター
「そう言えば、魔法が有るって言ってたっすよね? 魔法の練習とか出来るっすか?」
気になるー気になるー魔法気になるー♪
『魔法はエーテル濃度がもっと高い宙域でないと使えない。使えるほど濃かったらマスターに不便はさせていない』
何にも言わないから、そんなもんじゃないかって思ってたよ!
「ほかには、気分を変えられる物、何かないっすか?」
『小型航宙戦闘機の訓練用シミュレーターでゲームっぽい事でもやってみるかね?』
ほほ~それは面白そうだな。
「やるっす! で、どうすればいいっすか?」
『ではコクピットへ』
部屋を出て前にコクピットから来た方へ向かった。
コクピットの出入り口は黒い壁だ、覚悟を決めて手を伸ばして触れてみた。
ズッ
手が吸い込まれていく。
「おっおっお!」
ズブズブブとそのまま体ごと中に入っていった
お~来た時の宇宙空間に浮いてる感じだ! なにかずいぶん前の様な気がするよ。
しかし、突っ立っていたんじゃ操縦してる様には感じにくいな。
『マスターは戦闘機の操縦経験があるか?』
「いえ、ありませんです」
『何か希望は?』
「えっと、操縦桿とか椅子とかはないっすか」
『ではそのような仕様のプログラムを起動しよう』
あ~ 無い場合もあるのね。
ふっと椅子に座ったような感じがして操縦桿も前に現れた。
民間機の様なハンドルに近い形だな。
足元には、ペダルが二つ。
『できるだけシンプルな物を選んでみた。操縦桿には二つのスロットルがあり、右のスロットルをひねると前進用のスラスターが、左のスロットルをひねると後進用のスラスターが推力を増す。操縦桿のハンドルは切った方向に頭を振る、前に押すと頭を下に、後ろに引くと頭を上に行くようにスラスターが起動する。上下にも動き、上で垂直上昇、下で垂直下降だ。左右のペダルは、ロール用だ。必要な情報は逐次表示される』
あれだな、バイクのスロットルが縦になっていて、左右に、二つ付いてるような感じだな。
動かしてみる。
うむ、ぴしっとフィットする感じだ、動かしやすい。
足のペダルも踏み込みやすい。
各種表示が空中に表示されている。
今はレーダーっぽいのと、地図と、デジタルなスピードメーター、船の上下を示した表示が視界内に収まる。
「船の上下って、どうやって決めてるんすか?」
『通常は惑星が近ければ惑星の方向、惑星が遠くて母艦があれば母艦の上下に合わせる形だ。何もなければ行きたい方向に向き、その時の船体下の方向にセットすればいい』
「母艦がロールした場合は?」
『母艦も発進前に上下を何かに合わせ決めるのでそれに合わせるのだ』
ふむ、飛んでいて訳が分からなくなりそうな気もするな。
『慣性は、実機並みにあるので気を付けるように、では、シミュレーターを起動する。まずは好きに飛べ』
よしっ、やってやるぜ。
俺は右スロットルをゆっくり開いてみる。
思ったほど加速感がない。
スロットルを戻して速度メーターを見る。
32音速!
こんなに出ているの?
「慣性はこんな感じなんすか?」
『実機も慣性制御されているのでそのくらいだが。弱すぎるか?』
「いえ、こんなもんでいいっす」
『操縦桿の左側のレバーで加速度比を変更できる。今は2に設定されているな。ちなみに4だと亜光速、音速でいうと80万くらいまで加速可能だ。そうだな、まずは1で練習してはどうか』
俺は親指で加速度レバーを操作した。
右スロットルを開き加速する、ぐっと後ろに引かれる慣性がかかる。操縦桿を上下にするとまるで、ジェットコースターの様だ。
「うおーー!」
思わず叫び左ペダルを蹴ればくるくると横にロールだ反対のペダルを蹴ればピタリとロールが止まった。
すげーリアルだ。
自由自在だ!
「ひゃっほー!」
ふと、スピードメーターを見たら32.12マッハだった。そう言えば加速度2で加速して減速してなかった。
そうか加速時及び減速時にしか慣性は起こらないからよく考えて使わないとなー。
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「いや~これはいいっす! 楽しいっす!」
まだ。加速度は1しかまともに操船できないが、設定された輪を潜ったりするだけで大興奮だ!
世の中にこんなに楽しいことが有るなんてね~。
80万マッハも出してみたが、対象物がないのでよくわからなかったよ。
でへへ。
あの宇宙空間をまるで生身で飛び交う感覚! これは病みつきになるね。
ぐぐ~~
あ~また食事の時間か~
急に冷めて暗くなりながら部屋へ戻った。
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また、気力が減退したな。すぐどうこうではないが、気力の減退はスピリッツの崩壊に通じる。
気力を出してもらわねば。
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食後、俺はまた気が抜けてボ~ッとしていたら
『マスター、次はレイガンを使ったシューティングゲームはどうだ?』
「えっっとガンアクションか……やってみようかな」
『机の引き出しにレイガンが。そして、クローゼットにガンベルトが入っている。確認してくれ』
俺、体でかくて人相悪かったから、㋳に間違われる事がよく有って、銃とか刃物とか持ってそう、とか噂されたりして銃や刀には少し忌避感があるのよね。
まったくのパンピーだったのに。
引き出しに入っていたレイガンは見た目は小さい銃らしい形をしていた。
だが側が柔らかく鈍器としては使えそうになかった。
『弱い魔物程度なら、一撃で倒せるくらいの威力がある。そして、マスターの意思で許可しないとマスターにも撃てない』
そうか~? 魔物もいるのか~? なんかやる気でないなー。
まだ、ボーっとする。
クローゼットからガンベルトを取り出し着けてみた。
「ガンホルダーが無いんだが?」
『レイガンが腰の部分に張り付くのだ。これも、マスターの意思がなければ外れない』
ほほー抜く必要がないのか~。
『では、射撃場へ案内しよう』
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そう言えばレイガンって某サイボーグ漫画では、腰だめにして撃っていてカッコよかったな。
えっなに、お前いくつだって? 俺は爺さんっ子だったので知っているのだ。
えっあれはレイガンじゃないって? 細かいことは気にするな禿げるぞ!
射撃場は普通の部屋だった。
横長いテーブルで的と区切って在り、そのテーブルをパーティションでブースにしてある感じだ。
的のある所は広い。
まーコクピットみたいな感じだ。
映像なのかな。
『的を、用意したので、撃ってみてくれ、撃とうと意識しトリガーボタンを押すと打てる』
5m10mと、距離の書かれた黄色い板が、いくつか並んでいる。
俺は、レイガンを腰だめに持ち、近い的を狙って撃った。
音もしないし、見えないので撃ったかどうか分からない。がすぐに軌道線が表示され消えた。全く違うところに撃っていた。
「まあ、初めて撃つんだし、こんなもんっすよね!」
なぜか、言い訳をしながら続けて撃ってみた。が全く当たらない。
『基本的な撃ち方の見本を隣に表示するので、それを真似てみるといい』
お前は説明しないのかよっ! と突っ込みを入れていると
某バーロー君の犯人役みたいな陰人が隣に現れた。
レイガンは反動がないので半身か?
足を肩幅に開き手を前に伸ばしている。
銃の背から目に向かった線があり的の所まで伸びている。
そりゃあ、いきなり腰だめはダメか~。ま、なんとなくは分かっていたけど。
「ありがとうっす」
では、隣を参考にっと。撃ってみた。
「おおっ!」
かすったよ! 今。うんうん、基本は大事よね。
でも、なかなかちゃんとは当たらない。端のほうには当たったりするけども、真ん中には全然当たらない。
ピピピピッ
「何の音っすか」
『エネルギー切れだな、時間がたてば周りのEPで回復する、ダミーレイガンも有るし剣を使った戦闘シミュレーターとか有るがどうするか?』
「地味だな~。戦闘機のほうがおもしろいっすね」
『では、戦闘機のシミュレーターにするか?』
「はいっす」
(この判断は間違いだったと、後でとても後悔することになるのだった。)
「最弱の吸血鬼?が生き残るには?【最弱では死にそうなので毎日せっせとダンジョンに通い、最強になってしまったので悠悠自適に生きれる】」も連載中ですのでよろしくね