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0033.土竜里アゲイン

「皆、離れて!」


 短い間だったとはいえ一緒に戦ったピッケの死に俺はムカついていた。


「ケンタ様、魔法を先に試させてなの」


 そうか、いくら魔力が高くてもこんなに動作が遅い相手なら魔法が当たるだろう。


「ああ分かった。そこから撃ってみて」

「分かったなの。炎よいくの!」


 明るいオレンジで威力のありそうな炎の玉がクワガタめがけて飛んでいく。


 パシュッ! 


 しかし、当たりはしたが何のダメージも与えられず炎は拡散した。

 魔法も効かないのかこいつ! 


「やっぱり俺がやる!」


 俺はレイガンを構えレーザーで狙い打つ。


 シュピッジュッ! 


 熱っ! 


 撃ったレーザーが俺の頬にかすった。

 レーザーが反射されたのだ。


 えっ何で? 


 ビームでなくてよかった。

 ビームが反射されたら頭なくなっているよ。

 いやビーム跳ね返せるか知らんけど。

 しかしレーザーでも狙いが数センチずれていたら死んでいた。

 跳ね返される可能性があるならレイガンはよく考えて使わないとやばいな。


 くそっ! 


 なら剣で切るのみ! 


 スラッと剣を抜き放ち胴へと斬りかかる。

 クワガタは斬撃をかわそうと身をひねるがあくびが出そうなほど鈍く俺の斬撃をよけきりはしない。


 ガスッ! 


 剣は刺さった。

 だが5㎝ほど斬り込んだが両断は出来ない。


 まさかこの剣でも斬れないなんて! 


「グフェエエエ!」


 しかしクワガタには効いたようで痛みに叫び羽を広げ飛んで逃げようとする。


「逃がすか!」


 俺はあまりに切れ味が良すぎるために封印していた高周波を起動しもう一度斬り込む。


 シュキイーーーン 


 僅かに聞こえる甲高い音と共に必殺高周波ブレードの起動だ!


 ズバッ!


 今度は手ごたえをあまり感じることなく切り裂くことに成功した。


「やったなの! タカ様凄―い!」


 アイラが勢いよく抱き着いて来て後ろにこけた。


 俺の体は未だに子供サイズだ。

 逆に兎鱗族は皆体が大きい戦闘種族だ。

 兎鱗族としては小柄なアイラにだが簡単に吹っ飛ばされてしまうのは仕方ない。


「ごめんなさいなの~」


 アイラは苦笑いをしながら俺を抱き起してくれた。


 しかしレイガンが通じない相手が居るとはな。

 とんでもない奴がいたものだ。


『マスター先ほどのエーテルで必要エネルギー量に達した。1時間も有れば剣は出来るだろう』


 おっそうかやったね! 


『ギガありがとう。先ほど高周波ブレードでないと切り裂けない魔物が出たよ。レーザーも跳ね返された』

『それ程の魔物が出たか。なら先ほどのエーテル量にも納得がいく。どうやら一時的にこの地域のエーテル量が増えているようだ。我的にはエーテル収集の効率が少しでも上がるので良い事だが、敵も想定外に強くなっているかもしれない。マスターは気を付けるように』


 えー想定外って止めてほしいなあ。俺弱いから死んじゃうよ? 


「さあ急ぎ兎鱗族の集落まで帰ろう。そしてオーガキングを討つ!」


 ピッケの遺体は土竜族の集落に連れ帰り土竜族の慣習に従い埋めて弔う。


 そして走る様に洞窟の中を戻っていく。

 流石に来るとき殲滅しながら来たのでほぼ魔物は現れなかった。

 なので1時間も立たず兎鱗族の集落まで帰ることが出来た。


 もしもまた集落が襲われていたらと多少不安だったがそんな事はなく平和そうで良かった。

 さてもう夕方だ暗くなってきている。

 オーガ討伐は明日だな。


「おおっケンタ様が帰ってこられたぞ」


 兎鱗族の集落の広場には熊犬族を含め大勢の人たちが集まっていた。


「何でまたこんなにたくさん?」

「各地でオーガが暴れたようで、各地から避難民が集まってきているようです。ケンタ様のいるここが一番安全じゃないかと噂になっていまして、こんなにも集まった次第です」


 族長が俺に寄って来て教えてくれた。

 なるほどよく見れば女子供の数が多い。


『マスター。剣が完成したので次元庫から取り出せるよう設定する』

『ギガ、ありがとう』

『マスターの持つ剣ほどは切れないが、魔力を籠めれば高周波ブレードが起動しオーガキングを切り裂けるだろう』


 オーガキングを切り裂けるのか。


 石器の武器では普通のオーガさえほぼ傷をつける事が出来なかったことを思えばかなりのチート武器を与えたことになる。

 俺がいなくなった後この武器をめぐって戦争とか起きそうで怖い。


 だがこの先もオーガキングと同程度の魔獣が生まれる事もあるだろうから彼らの種族維持のためには渡しておく必要があるだろう。

 ここまで面倒を見てもらったんだ。

 愛着位わくのである。

 滅ぶことなく頑張ってほしい。


「えっとッ剣が完成したみたいなので出します」


 ということで次元庫から20本の券を出し並べていく。

 どれも鞘に入っていてよかった。

 高周波を起動しなくても凄い切れ味の剣だからね。


 俺が剣を並べていると兎鱗族族長のゾムンと次長のホルンがやって来た。


「ケンタ様これですか? 凄いですね」

「ぐふふ、これで奴らにお返しできるね」


「各部族あまり偏らないように分けて使ってほしい」

「なるほど分かりました。なら早い方がいいですね各部族集めて即配ります」


 使う武器などまだ石器なのに超特殊鋼材で出来た剣がどんな物かはピンとこなさそうだ。

 俺が使っていて切れ味がいいことぐらいは分かっているが、その価値なんかは想像すらできていないだろう。


 まあ俺にもたぶん地球ではまだ再現不可能な凄い剣くらいしか分からないから偉そうに言える身分でもないがな。


「うおー! すげー切れるー!」

「どうよ、石斧の方が強いんじゃないのか? 細くて頼りなく見えるが」

「おお細いのに強い! 石の斧なんか比べ物にならんぞ」

「なんか光って綺麗だ!」

「不思議な材質だ! 石とも木とも全く違うぞ!」


 まっそうだよな。

 青銅器も無いのにいきなり超特殊合金だものな。


 少々では傷みそうもないから聖剣としてあがめ続けられるかもな。

 にしては飾りっけがさっぱりないけど。


「皆の者。これは神剣だ。恐ろしく切れるから気を付けて使えよ! 俺達の体など水を切るが如く真っ二つになるぜ」


 族長は洞窟の壁を切り裂いて見せた。


「おっおう」


 少しチャラけていた雰囲気がピリリとしまった。

 おいおい、もし岩が切れず折れたらどうするつもりだったんだ? 劣化版なので俺の剣よりは切れないはずだし、まだ使い方を説明していない俺は冷や汗をかいてしまっていた。


「えっと、みんな聞いてくれ! これは魔力を通すことでもっと切れるようになる」


 俺が剣に魔力を通すと剣はシュィーンと静かな音をたてる。

 そして俺は転がっている少し大き目な石を放り上げ十字に切り裂いた。

 その石は下に落ちてから四分の一に綺麗に割れる。


「おおーすげえ切れ味だ」

「あんなことが可能なのか?」


 流石に強さで選ばれた20人だけあって放り上げた物を切り飛ばさずに切る行為がどれだけ凄い事なのかくらいは皆分かったようだった。


 とっさにやっては見たがちゃんと切れてよかったと俺は内心ほっとした。


 そして彼らは皆それぞれ剣に魔力を流そうと試行錯誤を始めた。


 シュイーン 


 俺の剣よりも少し大きな音が鳴り響きゾムン族長の持つ剣が高速振動を始める。


「おっできたのか?」


 ゾムンは壁に剣先を向けるとゆっくり差し込んでいく。


「おおー! 手ごたえをほとんど感じない。ずぶずぶと入っていく」


 それを見ていた皆も次々と剣に魔力を流し込む事に成功し切れ味を試し始める。


「くふふ、じゃあ奴らを征伐にいくね」

「そうだな。時間がたつだけ強さが増す可能性があるのだったな」

「そうだそうだ」

「やろう。いけるよな皆」

「おおー!」


 もうすでに外は暗くなってきているがどうやらやる気のようだ。


「ケンタ様オーガキングの居場所をお教えください」

「よし分かった。ちょっと待て」


『ギガ。オーガキングの居場所は特定できているか?』

『少しエーテルの消費はあったが特定できた。皆に分かるよう地図を表示する』


 まずは兎鱗族の里の様子が皆の前に表示されそこから拡大表示に移りオーガキングの居場所が矢印によって示された。

 地図など見た事の無い皆には実写風表示によって感覚的に分かり易く工夫されているようだ。

 他のオーガたちも赤い点で表示されている。

 流石ギガ気が利いているな。


「ほう、さほど遠くはありませんな」

「オーガは2体ずつ分隊化してあちこちを攻めているようだな」

「ふむどうするかね」

「各地に散っているオーガは後回しにしてオーガキングを叩くべきだ」


 オーガキングの周りには8体の雌オーガが付いている。

 こちらに分隊化して戦力を割く余裕など無いだろう。


 襲われている部族には悪いがまずは頭を叩いた方がいい。

 雌オーガがどんどん子を産んで増えるのとか勘弁してほしいしね。


 まあ魔物が生殖で増えるのかどうかなんて知らないけど。

 雄雌がいるようだし無意味に雌ばかり残しているわけでもあるまい。


「この剣さえあればオーガなど敵ではないね。オーガキングのを叩いてから救出部隊を分けるのが確かに理にかなっているね」


 いやオーガの動きもすごいからいきなり雑魚扱いってわけにはいかないだろ。


「さすがはケンタ様だ」

「少し距離は有るが最短を突っ走っていくね。出発だー! やるねー」

「おー!」


 士気も高く出撃の準備を始めるのだった。

「最弱の吸血鬼?が生き残るには?【最弱では死にそうなので毎日せっせとダンジョンに通い、最強になってしまったので悠悠自適に生きれる】」も連載中ですのでよろしくね

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