0030.帰還
「ガアア――!」
「グオオー―!」
バシイッ!
ドシュッ!
オーガのうなりが響き、格闘音が響く。
「くそう、こいつらはたった三体のくせに強すぎるね」
「ですが、下がるわけには」
「そうね、下がれないね」
40名ほどの屈強な兎鱗族の戦士が囲んではいるが、オーガは大きく早い。
しかも、偶にしか当たらない石斧や棍棒で殴りつけても、あまり効かないとくる。
頑丈な兎鱗族であっても、皆、どんどんと傷つき、深手を負う者も続出し始めた。
その結果、疲弊しじりじりと後退しているのだ。
「たー」
プラムが前面に突っ込み。
「うおりゃあー」
その隙をついてホルンが全力で殴った。
ガイ~ン
まるで岩盤でも殴っている音がする。
「皆、すぐ加勢が来るね。頑張って抑えるね」
とはいっても、こっちの攻撃でほぼダメージを与えられないのでは、加勢ごと負けそうではある。
そして、今、一人の兎鱗族が頭に横殴りの直撃を食らい、千切れ、潰れた頭がポーンと横に飛んでいく。
ドシューッ!
首から血が噴き出て、ゆらーっとしパタンと倒れた。
「くっ、一撃でこれとはね。皆気を付けろ」
掠っただけでも大きく戦闘力が減衰していく。
細かく早く動き回っていて暑いはずなのに、ホルンの額には冷や汗が流れた。
「離れた位置の者は魔法だ。魔法を放つね」
「炎よ」
「風よ」
だが、オーガは魔法など簡単によけ、魔法を撃った者の隙をついて襲って来る。
「うわあっ!」
狙われた兎鱗族は何とか攻撃を避け、後ろに飛びのいた。
「だめです。魔法は当たりません」
「けん制でもいいね。撃った後に気を付けながら、撃て!」
だが、彼らのつたない魔法では、ほぼ隙を作れない。
「うぬぬ、うおおおおー」
魔法を避けたオーガに一瞬のすきを見て石斧を振りかぶった。
そして、ホルンは見た、オーガの口元が一瞬歪むのを。
「しまったね」
ホルンは必至で避けたが、カウンターとなっているため避けられず。
オーガのパンチが額にかすりすっ飛ばされてしまった。
ホルンが生きているのは、その類い稀で強靭な身体能力故であろう。
歴戦のホルンらしからぬミスであった。
さすがのホルンも気がせいてしまったのかもしれない。
しかし、すっ飛ばされながらもホルンは叫んだ。
「隙を作るな! 負けられはしないのだ」
その時だった。
「皆伏せろ!」
ホルンはその懐かしくも愛おしい、声を聴きニヤリと笑い、安心して気を失った。
皆が伏せ始めるのを見るとすぐに。
ピュン、ピュン、ピュン
俺はオーガに向かってレイガンを放った。
「がっ、うが」
一体の胸と腕に当たり、ほぼ行動不能に追い込んだが、他のオーガは両肘が地面に付くほど身をかがめ、レーザーを避ける。
そして、その低い姿勢のまま左右に体を揺らすようにしながら、此方に向かって、走り始めた。
あれで射撃されたことに気づくとは、魔物の割には器用で機転が利く奴らだ。
なぜ俺が射撃苦手なのを知っているのか問い詰めたくなる動きだな。
距離も近くなったのでレイガンを一端仕舞い、両手で剣を握り、横一線振りぬいた。
ズバンッ
伸縮自在の剣な為、多少の距離は関係ない。
二体のオーガがこちらを見るために上げていた頭を目のあたりから両断してやった。
すると二体は煙のように消え去る。
が、最初にレイガンで撃った奴はまだ生きていて、うごうごし、隣に伏せている。
そして兎鱗族に手を伸ばそうとしていたので急ぎ魔法を飛ばし焼いてやったら消えていった。
危険は去った。
そう判断し声を掛ける
「皆、大丈夫か?」
「ケンタ様っ」
プラムが飛び起き、俺に抱き付いてくる。
「うわあ、本当にケンタ様だわ。うれしいよう、無事だったんだね。うわあーーん」
まさかの、プラムのガン泣きである。
「すまんな、遅くなってプラムは大丈夫か?」
「らいじょうふれす~、らいじょうふれす~、わあああん」
その姿にビビッときて押し倒したくなったが、さすがに明るい時間に外で衆人環視の中なので我慢した。
だって、キレツに落ちてからこっち禁欲生活だったもんでね。
ムラムラしても仕方ないと僕は思うんだな、うん。
「おーいどうなったんだー、無事かー」
と叫びながら、他の皆が追いついてくるのだった。
「しかし、オーガが三体もいたとはな」
族長の言葉に俺は腕を組み考え込む。
「ふむ、奴らがつるんで行動するとは聞いた事が無いね」
ホルンも浮かない顔だ。
「おらも、聞いた事が無いだす」
「作太もか。俺が思うに、もしかすると、オーガキングでも居るのかもな」
「ふむ、チックもそう思うか?」
「ゾムン族長、我々土竜族の伝承によると。昔、オーガキングが出た時には他にもたくさん種類の種族が居た。色々な部族はほとんど滅び、そいつが消えるまで平穏な時は無かった。と伝わるな」
「チックさん、オーガキングは消えたんですか?」
「ああ。どうやってかは伝承には無いが、勝ったわけではたぶんないのだろうな」
俺とゾムン族長と、ホルン副長、チック頭領、作太が集まって今回の顛末と今後について話していた。
「おららの部族にも似たような伝承があるだす」
へ~熊犬族にもか。そんなにはっきり昔の伝承が残っているとは凄いな。
まあ、よっぽど大変だったのだろうな。
「なんにしても、後手では被害が出るだけだな」
「ふむ、族長、打って出るかね」
「確かに、決定打が有るケンタ様が居られる内に攻めたいが。だが、どこにいるかすら分からないぞ?」
「そこは、俺が調べてみましょう」
『ギガ、オーガキングの居場所わかるかい』
『調べよう、少し待て』
「ふむ、すると、どうやって倒すかだな」
「石斧も棍棒も、奴らには傷一つ付けられんね」
「切り裂ければ、勝てますか?」
「いやどうだろうね、力も早さもあちらに分があるね。だが、無力ではなくなるね」
「では、なぜ、生き延びられてたんですか、皆?」
「ほほう、ふむ、なるほどね」
「ホルン、何が分かったんだ?」
「いやね、族長。戦ってみてわかったんだが、奴らは確かに強いが、結構バカだったなとね。瞬間的には時々とんでもなかったがね。そこを突いて、避けたり当てたりできていたんだなあと思い出してね」
「なら、決して勝てないわけでは無いと言う事じゃな」
「戦闘経験で上を行けるなら、奴らが経験を積まない内に、そう、決戦は早い方がいい」
「ケンタ様、おらもそう思うだす。でも、切り裂けないだす」
『ギガ!』
『ああ、今の状況は把握している。奴らを切り裂ける剣が有ればいいのだな。材料が乏しいのであまり数は用意できないが。そうだな、20本なら用意できるだろう』
「皆、オーガを切り裂ける剣20本まで準備出来そうです」
「ケンタ様っ! ううっ、我々の為にそこまでして下さるとは、このゾムン終生の服従誓いますぞ」
「ふふ、20本も有れば戦える。戦えるね! 戦えるね! 今度は負けないね。くっくっく。やられたらやり返すね。みていろよ、オーガめ、目にもの見せてやるね!」「おらも、やるだすよ! 役に立つだすよ」
「世界の危機だな。土竜族もやれるぜ」
戦うことが決まったので剣が完成するのを待つこととなった。
『ギガ、どの位で剣は完成する?』
『今の状況であれば三日間ほどかかる』
『早くするには?』
『少しでも魔物を狩って、エーテルを補給していただきたい。なれば、速く完成する。マスターが止めを刺すのが最も効率が良い』
「魔物を俺の近くで狩ればいい。ただ俺が止めを刺した方が効率がいい。俺が魔物を多く狩れればそれだけ早く完成するので明日から狩り三昧だ」
「ケンタ様が止めをさせるようにすればいいんだね」
「そうだ。俺が見える範囲内なら止めを刺してもかまわない」
「なら魔物探知に優れたものを集めよう」
「土竜族はケンタ様に続くぜ」
「おら達も頑張るだ」
その夜、俺は今までのたまった思いの丈を、アイラ、プラム、咲女にぶつけたのだった。
俺はハッスルし過ぎてすっかりと疲れ、しかし興奮冷めやらず、なかなか寝付けないで目をつむっていた。
「ケンタ様、はりきってましたね」
「そうなの、3人でないと相手しきれなかったなの」
「あたいはすっかり満足したでし。もう寝るでし」
「あはは、咲女はもう寝ちゃったなの」
「ケンタ様が来てもう、10カ月くらいたつけど、最初見た時はなんて弱々しい神様かと思っていたよ」
なるほど、そんな風に見てたんだな。
まあ、確かに俺弱かったし。
「僕は子供部屋にいたから見て無かったんだけど。初めて見て、その美しさにこの人だこの人に、いえ、この神様に仕えたいって思っちゃったなの」
「美しいねえ? アイラは強さじゃない所を見ていたんだねえ」
「うん、僕、筋肉隆々の暑苦しい男がどうにも好きになれなくてなの」
「今ならアイラの気持ちもわかるよ、里の男どもには無い魅力に溢れているよねケンタ様は」
「うん、素敵なんだケンタ様はなの」
「それに、今では里のどの男よりも強いよケンタ様は。今日助けてもらっちゃって、キュンと来ちゃった。うふふ」
「そうですよね。美しいままに最強になられましたなの」
うわー、照れるな~。
なんか、聞いてると眠くなってきたよ。
段々と二人の話し声が遠くなっていく。
明日もきっと更新
「最弱の吸血鬼?が生き残るには?【最弱では死にそうなので毎日せっせとダンジョンに通い、最強になってしまったので悠悠自適に生きれる】」も連載中ですのでよろしくね




