0027.独りで
『マスター、マスター。しっかりしろ』
「ううん? あっおはようギガ」
『寝ぼけている場合ではないぞ。現状を思い出し周りを確認しろ』
「えっ!」
そうだ、思い出した。
俺はキレツに落ちたんだ。
ここは狭い洞窟の中だ上に穴が開いてる。
あそこから落ちて来たのだろうか。
『なんで助かったんだ俺』
『それは、ベルトのバックルが非常用の瞬間半重力反発装置だからだ。エーテル満タンで10回に限り、瞬間発動可能だ。あちらこちらに当たったのでもう回数はあまり残っていないがな』
『そんなの知らないぞ』
『こういうのは知っていると無茶をするから出来たら知らない方がいい。それよりも早く戦闘準備をしろ』
へっ?
俺は周りを探知すると。少し離れた所に大量の魔物が居て、こちらに向かってきているのが分かった。
俺は銃と剣を準備しながら、ギガに聞いてみることにした。
『ギガ、俺を里まで戻してよ』
『今の我にはそこまでは出来ない』
『ほら、次元庫に物を入れたりしてたじゃないか。あの要領で出来ないの?』
『あれは、異次元接続収納庫の中に制作機器が有るからできたのだ。制作指示は空間を繋げなくても出来るのだ。遠くに大きな穴をあけるにはマスターの腕についている次元制御装置では出力が足りないのだ。異次元接続収納庫の中から穴をあけられんし、外から開けるにも10m先が精いっぱいだ』
『じゃあ、俺が戦うしかないと?』
『そうだ』
ひえ~あんなに沢山迫ってきているのに。
「うっそだろう~?」
俺戦闘苦手なんだよ。
訓練はしたけど。
俺は子供のころから平均よりも体が大きく力も強かったし、そして見た目も凶悪だったのだ。
なんで、それで戦闘が苦手なのかと言うと。
例えば他の悪ガキに叩かれた仕返しに、ちょっとでも人を小突けば皆から非難の嵐なのだ。
先生や親から長くてつらい説教をされ、周りからは悪党として後ろ指を指されるのだ。
いつの頃からか俺は何をされても暴力で反撃する事が出来ない。
争いが怖くてへらへらと周りを伺っては、出来るだけ穏便に済まし、言葉尻は“~っす”とへりくだった感じで話し方をするようになっていた。
だから、自分が強くなること自体も嫌だった。
ここに来て強くなる決心はしたし訓練もしたが、決して戦闘が得意になったわけではない。
だが、ここに至ってそうは言っていられない。
生き延びるためには頑張って戦わねば。
キッシャー!
大型のムカデに似た魔物が大量に襲い掛かって来る。
「ちきしょう、やってやるぜ死にさらせ」
精神的には限界で最早繕う余裕などない。
これが俺の本性か、意識の奥で俺は俺を嘲笑する。
それでも俺は生きるために、小型レイガンで生物の天敵であるマイクロ波ビームを連射しムカデを掃討していく。
が、狙いが定まらず結構な頻度で的をはずす。
当たれば体中が沸騰して即死だ。
「情けない男だぜ俺は。これ程のチート武器を持ちながらこの様だ」
落ち着け、落ち着いて狙うんだ。
横から来るムカデに大きい炎の球をぶつけるがひるみもしない。
「こいつら、魔法に耐性が有るのか?」
ムカデは大きいので銃での対処がメインになるが、くっ、いつまで撃てるか?
このムカデいったい幾らいるのか?
周りに死体の山が出来てくる。
このままでは数に押しつぶされる。
後ろに逃げながら連射していると。
“ピピピピ”
警告音が鳴りエネルギーが切れた。
ハンドレイガンに持ち替え、広範囲攻撃でかなりの数を一掃すると、少し余裕が出て来たので周りを探知すると左はキレツの様だ。
後ろも少し離れたところから何か多数近づいてくる。
右の方もいるようだが、数が少なそうだ。
右に向かって走っていくとデカいカマキリの集団が居た。
すでに俺に気づき、攻撃しようと向き直している。
結構散開しているので、広範囲攻撃は効率が悪そう。
なので中央の奴を突破だ。
奴ら体が細いので、銃では狙いにくいし、エネルギーも節約したい。
自動照準だと視界がとられて、走り回れそうにないし。
「やってやるぜ、伊達に訓練したわけじゃないんだ」
最近作ってもらった長剣を抜き、身体強化を最大にして中央の巨大カマキリに飛び掛った。
この長剣は鞘から抜くと更に長く伸び、普通よりも長く細身な上、見た目よりかなり軽い。
俺みたいなやつにも使いやすい親切設計だ。
カマキリは思ったより素早く剣を避け、鎌を振ってくる。
剣で鎌を受け止めるつもりで出したらスパンと抵抗も無く鎌が切れ、抜けてくる鎌を避けられないかと思ったぜ。
やっぱり実戦は大切だよな。
訓練の流れでつい受けようとしてしまったぜ。
カマキリの避ける先に魔法の炎を飛ばすと、奴はそれも避けるがそれを予想している俺はその避ける先に剣を振りぬいた。
カマキリの頭が飛んでいく。
流石この星に切れぬものは無い、とギガが自慢していただけの事はある。
高周波ブレードだけでさすがの切れ味だ。
隣りに有った岩もついでに切り裂いている。
まだヒートブレードの機能は使ってない。
首を切られたカマキリは鎌を振り回しながら、真っ直ぐに進んでいった。
頭を飛ばしてもすぐは死なないのね、恐ろしい。斬る所を考えないとな。
ただ、少し時間をかけ過ぎたようで他のカマキリが迫ってくる。
「上等だ! 掛かってこい。俺の強さを試してやる。うおおおお~!」
まずは右で鎌を振り上げているカマキリに魔法で牽制し、左に迫るカマキリの銅を両断する。
「カマキリには魔法が効くな。かすった所は焦げてるぜ」
この剣切れ味がいいから切りたい場所を振りぬくだけでいいな。
左のカマキリを斬った勢いで、右のカマキリも斬り飛ばす。
「俺にもやれるぞ」
魔法と剣でカマキリを翻弄しながら斬り伏せていくが。
ワサワサ
後ろからはムカデが迫って来る。
ムカデに魔法は効き目があまりないので、右手に剣を左手にレイガンを持ち対処していく。
「くうっ、まだまだムカデ沢山いるな」
ウギョウウ!
グガッガラガ!
横穴から突然何かが飛び出しムカデを蹂躙し始めた。
どうやらムカデには逃げると言う選択肢は無いようで。
全虫でそのでかい壁の様な何かに向かって行く。
これは、大ミミズか?
でかいぞ直径5mは有りそうで巨大な口を八方に広げさらに大きく見える。
長さはさっぱり分からない。
カマキリは慌てて逃げていく。
俺も別方向に逃げる。
が、ムカデの掃除が終わると次は俺が標的のようだ。
こちらに向かってくる。
「何で? カマキリの方に行かないんだよう」
もう、ハンドレイガンのエネルギーの残りは少ない。
剣で斬るにはミミズはでかすぎる。
「一か八かだ。残りのエネルギーをすべて使った荷電粒子ビームで頭を消し飛ばせれば」
そう、カマキリは逃げたし、ムカデはこいつが食った。
このミミズさえ何とかできればいい。
俺はレイガンを構え奴に向けて荷電粒子ビームを撃った。
ドリュリュリューー!
青白く輝く極太の荷電粒子ビームはミミズの頭を20m位溶かし消し飛ばした。
「ふう、やったか?」
大ミミズはその巨体をクネラせ、もんどり打っている。
バッコーン!
ドカン!
豪音とともに周りの岩が砕け飛び散る。
すごい迫力だ。
キシャーー!
なんだ? どこから聞こえた?
キョロキョロ探すと大ミミズの後ろから新たな頭がやってくるのが見えた。
「何だと! こいつ双頭だったのか」
レイガンはどっちもエネルギー切れだから、攻撃方法が無いんですけど。
ここは、逃げるしかないと、一目散に逃げに入った、が。
げっ、突き当たりだ。
これでは逃げられない。
振り返ると、大ミミズが迫って来るのが見えた。
これでは食われてしまう。
うわああ~。
「もうだめだ、炎よ」
俺はやけくそで魔法を放ったら、すうっと力が抜ける感覚の後、ガツン! という衝撃とともに、俺は意識を手放した。
ざわざわ。
なにかうるさい中で目が覚めてきたが、目覚めきれない。
浅い目覚めの中周りの音を聞いていた。
『マスター、聞こえるか』
これは何の声だったろう?
思い出せそうで思い出せない。
頭に直接声が響き辛い。
『うるさい! 誰だ?』
『マスター無事で何よりだ。これより欠損しているデータを送る』
欠損だと?
いったい何のことだ。
頭に出来事などが浮かんでは消える。
ああそうか、お前はギガなんだな。
ホルンやアイラ、ゾムン、咲女やプラム、皆の事を思い出していく。
『スピリットの記憶を制御する部分が少し損傷していた。そこの部分をバックアップデータで上書きしたので元通りだ。魔力の使いすぎだな。もう少しでスピリットが崩壊するところだ。だがよく生き延びたな見なおしたぞ、マスター』
そう言えばあのミミズはどうなったのだろう? しかし、周りがうるさい。
『マスターがあれらを自力で倒したので、今のマスターは予備エーテルが3倍ほどになっている。次はあの程度では苦戦しないだろう。あれらは強い個体では無かったが沢山いたのでな。ハンドレイガンの予備も作っておいたし、長剣も改良版にしておいた。これほどの接近戦闘をしたマスターは我の長い歴史でもいなかったからな』
『まあ、する必要性が有るほどピンチにはならなかった、て事だよね』
『そうだな、今までのマスターは我の持つ最強の装備で身を包んでいたのでな』
なんてこったい。
今日も読んでいただいてありがとう
明日もよろしくね
「最弱の吸血鬼?が生き残るには?【最弱では死にそうなので毎日せっせとダンジョンに通い、最強になってしまったので悠悠自適に生きれる】」も連載中ですのでよろしくね




