0026.熊犬族の二人
スライム討伐から帰って少し経った頃、熊犬族の作太と咲女の二人が俺に仕える為に兎鱗族の里にやって来たのだった。
「熱くてうっとおしいでし。ちょっと狩ってくるでし」
そう言って、止める間もなく咲女はさっさと里を出ていってしまった。
さすが熊犬族素早い。
咲女にワンピースを着せたのは失敗だったのかな~。
「作太の方はどうだい」
「部屋の居心地も最高だす。この腰巻もばっちりだす」
そう言って厚い胸板をどんと叩くのであった。
瞬く間に咲女は狼を2頭も狩って来た。
なかなかの狩人だな。
鋭い爪と牙でもって解体し毛皮を噛んでなめしセパレートタイプの服を自分で作り
「これがいいでし。動きやすいし熱く無いでし」
達磨がビキニ着ているみたいで似合わなかったが、本人がいたく気に入ってるようなので、あえてなにもコメントはしなかった。
「僕これ解体場へ持っていくなの」
「すまないでし、あたいも持っていくでし」
「一緒に持っていくなの」
「はい、でし」
どうやら仲良くやっていくようだ。
夕方になりプラムが帰って来たので紹介すると。
「二人とも強そうで何よりですわ、すぐ模擬戦しましょう」
えっ咲女も強いの? あんな子供なのに? と疑問の視線を向けていたら。
「あたいは大人だって言ってるでし」
と咲女はかんかんになっていた。
沸点低いなおい。
俺の予想と違って咲女はプラムと互角の戦いを繰り広げ。
作太に至っては、ホルン副長と引き分けゾムン族長とも接戦を繰り広げた。
聞けば一族内で一、二を争う程の強さなんだそうだ。
「作太は熊犬族の副長はしないの?」
「おらはああいう仕事は向いてねえだす。他のやりたい奴に譲っただす」
「強い魔獣が出る事が分かったこの時にうれしい援軍だね」
ホルンとゾムンはとてもうれしそうだった。
「あたいはもちろんケンタ様を守るけど、最優先は子種を持って帰る事でし」
あの長、何考えてるんだよ。
こんな子供にそんな事をさせるなんて。
「あたいは子供じゃないでし! 大人だと何回言わすでし!」
うへえ! 何で考えてる事がわかるんだ。
「ケンタ様、言いにくいのですが、表情を見れば大体わかりますよ」
そんな馬鹿なー。
あっ魔力漏れてら、これじゃ簡単な意思疎通魔法使ってるのに近いわ。
「ケンタ様は正直者なの~」
遠回しに馬鹿って言われてる気がしなくもないな。
魔力増えてくると制御が難しくなってくるのね。
勝手に漏れるなんて信じられない。
だが、素直に成長の結果として喜ぶとするよ。
最近魔法の発動が簡単になって来たんだよね。
「熊犬族ってさ、寒くなると長期に寝たりしないの」
「ケンタ様よくご存じで。おららは寒くなってくると住処で暖かくなるまで寝るだす」
「へーそうなんだ」
冬眠するとは。
これはもう、犬は無くて熊だけでもいいんじゃないだろうか。
手足が熊にしては長いけど。
夕食の時間が来て焼かれたお肉の匂いに、二人はよだれを垂らして待っていた。
「これは嗅いだ事の無い匂いでし。待ちきれないでし。手伝ってくるでし」
そう言って咲女は調理している所へ駆けていった。
「咲女は落ち着きが無くて、申し訳ないだす」
そわそわしながら言っても説得力が無いよ作太。
「美味しーでし。こんなの初めてでし。でもなんか足りないでし」
「咲女、塩味が足りないだす」
「えっ、熊犬族の里には塩があるの?」
「ケンタ様は塩を知ってるでしか?」
「咲女、ケンタ様に何聞いてるんだすか。神様なんだすから知っていないはずがないだす」
「すみません、ケンタ様でし」
「ケンタ様、塩って何ですかなの?」
「ああ、塩ってね白い粉上の物で、食べると辛いんだが、料理の味付けに使えるんだ」
「そうでし、塩をチョットかけると美味しくなるでし、揉みこむと長持ちするでし」
「ケンタ様、僕味わってみたいなの」
「私も興味あるわね」
2人とも目が輝いていて、いまにも探しにいきそうだ。
「塩は何処で取れるの?」
「豪熊森林の向こう側でここからは結構距離があるだす」
「そうか~、それは残念だな」
「里には少々ですが塩が有るだす。里におらが行って持ってくるだす。2日ほどお待ちくださいだす」
「いや危ないし、そこまでしなくてもいいよ」
3人の視線が突き刺さるが、知らない振りをする。
『ギガ~、この辺りでに塩って無いの』
『ちょっと調べてみるので少々待て』
「近くに見つかれば採取に行こう」
「えーそんなのあるなの?」
「わかったわ、見つかるまで待ちましょう」
「プラム、見つかると思うなの?」
「温泉を見つけられたのはケンタ様ですよ。きっと見つけて下さるわ」
「温泉を見つけるなんてすごいでし」
中々のプレッシャーを掛けて下さる。
しかし無い物は見つからないので勘弁してほしい。
探すのはギガで俺じゃないんだけどね。
その夜も幸せに過ぎていった。
咲女はあれで結構大人で柔らかくて抱き心地は最高だったな。
『マスター、岩塩が近くにある事が分かったぞ』
起き抜けにギガから報告があった。
『そこから西の地割れを超えて少し下った所にある洞窟をさらに下った先に元塩湖だった所があった』
だがそれって距離は近いけどすぐには行けないよね。
「へ~この向こうにね~。ああ~これは深いや。底が見えないし。ここを渡るのは無理かな」
西の地割れ、こと大キレツは北の岩山の山肌の崖すら割込み、南へと割れており隣山とこちらを分断している。
山肌沿いにはトイレやゴミ捨てが有り、大岩山一族はこの亀裂を便利に使っていた。
外はまだ暗く皆まだ寝ていたので、起こさずに一人で渡る方法を思案しながら大キレツを覗いていると。
どんっ!
後ろから尻を誰かに蹴り飛ばされた。
「へっ?」
気づいた時にはもう遅かった。俺は空中に蹴り出されていた。
「そんなばかな~」
俺は奈落の底に真っ逆さまになって落ちていった。
「なに、ケンタ様が居ない? だと」
ゾムン族長は大声を張り上げ、大岩山部族の里は朝から大騒ぎになろうとしていた。
「咲女、お前鼻が一族一効くと言ってただすな、匂いを追えないだすか、おらは今鼻詰まりだす」
「こんな時に使えない奴でし、作太は。ここはあたいに任すでし」
「頼むぞ、咲女」
咲女はケンタのベッドに鼻をつけて匂っていたが、入り口に向かって4つ足で移動し。
「ケンタ様は起きて外に出てるでし」
咲女は外に向かい。
「あっちに行ったでし」
「むっ、そちらは大キレツが有るぞ」
「ここで、匂いが途切れているでし」
そこは大キレツの端であった。
「まさか、ケンタ様は大キレツに落ちたのか?」
「ほぼ同じ時間にここに居た他の奴の匂いがするでし」
「族長皆を集めるね」
「そうだな、知っている奴が居るかも知れんな」
住処前の広場に皆が集まってくる。
「もう知っているものも多いかと思うが。今朝ケンタ様が行方不明になった。誰かケンタ様の行方を知っているものはいないか。知ってる者は手を挙げよ」
「知ってる者は素直に手を挙げるのね」
誰も手を挙げたりしない。
「仕方ない。咲女、匂いで探すね」
「分かったでし」
咲女はそこに居る皆の匂いを嗅いで回った。
「ひっあっち行け」
「こいつの匂いがしたでし」
「うん、お前はアロ」
そいつは以前ケンタにスライムから助けられた運搬係二人組の内の一人だった。
「俺は知らん」
「でもこいつの匂いが残ってたでし」
「俺は知らん。この女は嘘を言ってる。族長は俺よりもこの新入りの女の言う事を信じるのか?」
「お前、ケンタ様を悪く言ってたね。だからケンタ様を落としたのかね?」
「いいえ、ホルン様。俺は知りません。信じてください。ホルン様」
「これは、困ったな」
「神様に聞いてみませんこと」
「おおウネ、良い考えだ。空を飛ぶ乗り物の所へ行って聞いてみよう」
「ああ、ケンタ様心配なの」
「ケンタ様はきっと大丈夫だわ」
「プラムありがとうなの」
「神様、ケンタ様が行方不明になりました。お許しを」
「我は神である。ケンタの居場所は分かっている。西のキレツの奥で無事である。だが、ここへ帰ってくるには、少し時間が掛かるであろう。しばし待つが良い。しかし、我もずっと見張っているわけでは無い。が、皆の者がケンタに良くしてくれている事は分かっている。時々は見ているからな。今回は見ていない時にこのような事態になった。以後このような事の無いように我は望む」
「はっはー、そのお言葉心に深く刻み、精進いたします」
「ケンタ様が無事でよかった」
「でも、ケンタ様心配なの」
「ケンタ様の事だ、きっと無事帰って来るさ」
「あたいは、ケンタ様を探しに出たいでし」
「咲女、ケンタ様がどうやって? どこにいていつ帰って来るか分からないだす。だから、すれ違ってはいけないだす」
「俺も探しに出たいね。でも神様が帰って来ると言っていたんだね。ケンタ様を信じて待つね」
「うん、そうするでし」
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明日も投稿! 果たしてどこまでやれるのか?
「最弱の吸血鬼?が生き残るには?【最弱では死にそうなので毎日せっせとダンジョンに通い、最強になってしまったので悠悠自適に生きれる】」も連載中ですのでよろしくね




