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0022.他部族の実情

 討伐行も3日目ともなれば出発準備も早い。


 4m位のスライムを1体討伐し午前中には別部族の里に近づく。

 そこはこんもりとした岩山と言った所で近くに川が流れていた。

 そうか、井戸を掘る技術は無いので、川の傍にしか住処を作れないのね。


 前方から、敵意のない一団が近づいてくるのが分かった。


「そこの、一団どこの誰か」


 と聞いてくる連中は兎鱗族だ。

 どうも見た目が大岩山の皆よりげっそりしている感じがする。


「ケンタ様、私の後ろへ」

「我らは大岩山の部族、ワシは族長ゾムンである。ここに御座す(おわす)神の子ケンタ様の力で倒せずの魔物を討伐する為にここまで来た」

「なんだと神?」

「倒せずの魔物って?」

「気でも狂っているのか?」


 小声で相談しているが俺には丸聞こえだ。


「皆静まれ、それは遠い所お疲れ様です。我々が族長の所まで先導しましょう」


 ふむ、彼が責任者か。

 頭の回転が速そうだ。


「デン、それはいいのか?」

「奴ら信用できるのか?」

「お前たちよく考えろ! 彼らが来たのはあの伝説の魔物が居る方向だぞ」

「ああ、そうかこちらから人が来るなんて」

「確かこの先にも別の倒せずの魔物が居たはず」


「すみません、みっともない所を見せてしまって」

「いや、疑うのもわかります。そうだ近くに他の倒せずの魔物が居る場所が分かれば案内を頼めますか? こちらで討伐しますので」

「おおそれは助かる。では案内しよう。こちらだ」


 少し離れたところにそいつは居た。6mは有りそうな大きなスライムだ。

 だが、俺の敵ではない。


 シュボン! 


 レイガンの一撃で奴は消えた。


「おお凄い本当に倒せずの魔物が」


 デンたちは驚愕していた。


 その後大量の魔獣とゴブリンと闘いながら23体のスライムを討伐し住処へ到着。


 他のゴブリンなんかも併せてなんだか今までに比べめちゃめちゃ多かったんだが?

 住処の周りをぐるっと1/3以上回った感じだ、さすがに皆疲れている。

 ほぼ5分に一回以上戦闘があった。戦闘はほぼ秒殺です。


「こんなにも倒せずの魔物が湧いているとは! これでは満足に狩りが出来まい」


 なるほど彼らは皆げっそりしているはずだ。

 彼らの里は食糧不足なのだ。


「久しぶりだな、ゾムン族長歓迎するぞ」


 その立ち振る舞いからどうやらこの里の族長らしき人物が現れ挨拶を始める。


「相変わらずだなクラム族長、元気そうでよかった」


 二人は拳をぶつけて挨拶をした。


「今回は、ここに御座す神の子ケンタ様の力で倒せずの魔物を討伐する為にここまで来たのだ。さ、ケンタ様」

「うむ、我が神の子、田中賢太である」


 もうケン呼びは諦めたのだ。


「俺は盛岩の族長クラムだお見知りおきを」

「クラムよ解体場所に案内してもらえるか。獲物のお土産がたくさんあるのだ」

「どこにも見当たらぬが?」

「ケンタ様の神の力で運んできている、ケンタ様が持っている間は解体していない状態でも痛まないのだ。痛む前に早く解体できた方がよかろう。ここに出すと運ぶのも大変だぞ」

「分かった案内しよう。おいお前解体できるものを解体場に呼び集めろ」「はい」

「ケンタ様、あの大蛇と、ここまでに取れた獲物の1/10程ずつ解体場に出していただきたいのです。半分までここに置いていきましょう」


 1/10でもすごい数になりそうだがよいのだろうか。


「ここが解体場だ」

「ではここへお願いします。ケンタ様」


 俺は8体の獲物を出した。

 最初は皆唖然としていたが、段々正気を取り戻してきて。


「おおー緑大蛇が居るぞ」

「ムブモも居る。やったぞ」

「やっとお腹いっぱいに食べられる」


 人がどんどん集まってきてお祭り騒ぎだ。

 中には泣いている者もいる。

 解体作業係があっという間に逆さ吊りにして血抜きが始まった。


「すごく冷たい。臭くない。こいつら今止めを刺したみたいに新鮮だぞ」

「ゾムンこれほどとは思わなかったぞ。ありがたい」

「いやなに、全てケンタ様のおかげよ。これでもまだ一部だぞ」


 族長がどや顔で自慢している。


 おい、どや顔お前がするんかい。

 血抜きが終わるのを見計らいながら、1/10ずつ半分まで出した。

 その夕方は外で宴会になった。

(この世界に酒はまだ無いので酒無し)


「いやーケンタ様のおかげでこの里は生き延びることが出来ましたぞ」


 俺の背中を叩きながらクラムが上機嫌だ。


 しかし、範囲魔法が無いとスライムは倒せない。

 このままだといずれ滅びる時がくる。

 それは大岩山の部族だって熊犬の種族だって同じことだ。


 この気のいい連中がスライムに滅ぼされる。

 自然に任せるのがいいと思って躊躇(ためら)っていたが。

 俺はどうもそれに耐えられそうも無かった。


『ギガ~、そう言った訳で魔法を教えるのっていいのかな』

『そのあたりはマスターの好きにすればいい』

『ありがとギガ』

「族長」


 二人の族長が俺を見た。


「何でしょう? ケンタ様」

「このまま倒せずの魔物、名前で言うとスライム。そのスライムを放置すれば俺が居なくなった後スライムに皆滅ぼされてしまう。俺は、皆さんが自然に覚える方がいいと思っていましたが間に合いそうもなさそうだ。なので、スライムを倒す方法の糸口を教えましょうか」

「そんな方法があるのですか?」


「アイラ、皆さんに練習した火魔法を見せてあげて」

「ハイ、なの~」


 アイラはその場に立ち上がり右手を前に出して手のひらを上に向け唱えた。


「火よ」


 ボッと3cmくらいの赤い火の玉が手のひらの上に浮かんでいる。

 それを見ている者たちの目が丸くなった。


「それっなの~」


 アイラは火の玉を岩壁に向かって投げ、火の玉は壁に当たり消えた。


「なっなっ、なんじゃそれは! アイラ?」

「火魔法なのー。でもとっても疲れるの~」

「ケンタ様あれは?」

「族長たちは戦う時に力を強化できる、また離れた仲間となんとなくですが意思を疎通できる。それは全て魔力を使った魔法なんですよ」

「おおー、なるほど?」


「力を強化するのは外に存在する魔力を自分の魔力で内側に引き込んでエネルギーとする。意思疎通は外の魔力に自分の魔力で意思を流して遠くに伝える。火魔法は自分の魔力を使って外の魔力を集め燃やす。この様にね」


 俺は手を上げその上に2mもの大きさの青い火の玉を浮かべた。

 火の玉が周りを照らす。


「「おおおお」」


 皆かなりびっくりしてるな。

 むふっ。

 最近いいとこ無かったからねー。

 うれしいよ。


「行けっ」


 火の玉は岩壁に飛んでいき、黒い焦げ跡を残した。


「この火魔法を何人も覚えて皆で囲んで撃てばスライムを倒せずの魔物を倒せるかも。と言う話です」


 その場がシンと静まった。

 クラム族長がはっとなって口を開いた。


「まさか、生きている間に倒せずの魔物。名前はスライムだっけ、を自力で倒すなんて話を聞くとは思わなかったぜ。まさに我らの救世主だな。我々はこの恩を忘れない。我々に出来ることは何でもしよう」

「ケンタ様、そこまで我ら種族の事を考えていただけるなんて」


 ゾムンが感激して泣き始めたよ。

 やりすぎたかな。


 お楽しみの夜が終わって次の日の朝から俺とアイラを講師とした魔法講習会が始まった。

 討伐隊のメンバーと盛岩から8名の精鋭が参加した。


「魔法に使う自分の魔力は魂の力を削って使うので、使いすぎると魂の破壊が起こり死んでしまう事もある。これ以上はまずいと思う魔力を使ってはいけない」

「どのくらい使ったらいいのか指標は無いのですか」


「指標は有るが、たぶん分からないと思う。が一応教えておこう。魂の力の1割まで、それ以上使うと魂が分解を始める。俺の個人的な感覚としては、体の芯からビリビリ来るような痛みの様な苦しみの様な感覚、これが限界付近。そこまで使うと普通昏倒してしまい、それ以上は使えないが。無理に使うと死んでしまうだろう。通常使えるのはすごく修行して5分辺りまでと知っていてほしい。最初は5毛も使えば気持ち悪くなるよ」


 1時間ほど基礎を教えて後は自習とし講習は終わった。

 それは、まだ大量にいるスライムの討伐を優先してほしい、後で余裕ができれば大岩山に習いに来る、とのことだ。

 デン達と昨日の続きでスライムを狩って回り。

 10体ほど討伐したところで。


「我々はこの辺りで次の部族の所に行きたいのだが」

「はい、ここまでありがとうございます。ここまでスライムを討伐できれば当面は困らないでしょう。困るようになるまでには火魔法を使えるように頑張ります」

「ふむ、精進しなさい。ではまたな」

「はい、また会いましょう」


 デン達は手を振り俺たちを見送ってくれた。


「次は崖の部族だ。行くぞついてこい」


 族長が力強く指示を飛ばす。


「はい」


 皆やる気に満ちていて元気いっぱいの様だった。

毎日投稿

終わりまでこの調子で行けないかもごめんね

「最弱の吸血鬼?が生き残るには?【最弱では死にそうなので毎日せっせとダンジョンに通い、最強になってしまったので悠悠自適に生きれる】」も連載中ですのでよろしくね

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