0021.部族の長と族長
何やら激しく言い争っている。言葉は通じてないはずなんだけど。
ああそうか、雰囲気だけなら意思疎通魔法で分かるのか。
「おめーはそれども族長か? ビビりよって」
「お主こそ、長か? 膝が震えてるぞ」
「この野郎」
「なんだコラー」
ガギンッ!
まるで石が当たり合ったような音とともに両手が激突し力比べが始まった。
「むぐぐ」
「うぐぐ」
両者譲らない迫力のある戦いだ。
顔が怖い。
しばらく拮抗していたが。
おっゾムン族長の身体強化が上なのか?
段々ゾムン有利な体制になっていく。
「うぐぐ、せいっ」
ゴンが手を放し右ストレートを顔に向けてはなった。
「うりゃ」
ゾムンも負けずに左ストレートを顔に当て、
ズガンッ!
相打ちだ。
ズサー!
少し離れた二人はニヤッっと不敵な笑みを口元に浮かべ、迷わず間合いを詰め近距離の打撃戦へと移行した。
ボガッ!
ゴスッ!
ビシュッ!
殴る、蹴る、受け流す、頭突き、投げや砂かけまで、スマートさや複雑な技は無いが、まるで近接戦闘の見本のような戦いが恐ろしいスピードと威力で行われている。
時々入るフェイントとそれに対応するテクニック、ほぼ避けるが時々当たる音が凄い。
その迫力にそこに居る皆が魅了されていた。
「おおーすげーがんばれ族長!」
「おららも負けんずら、勝てー長ー!」
「族長やれーーそこだ~ぶっ殺せー!」
「長ーー素敵~けっぱれーー!」
「頑張れなのーー!」
応援合戦も白熱だ。
戦いは長く激しく一時間以上も続いただろうか。
流石に二人ともスタミナが切れ魔力も切れ、肩で息をしている。
動きも最初に比べるとかなり緩慢になり泥仕合を呈してきた。
応援も疲れたのかシンと静まった中殴り合いの音がゆっくりと響く。
互いに動きを止め、隙を伺い合っている。
「ゴクリ」
誰かの咽が鳴った。
「うだら~」
「おら~」
二人の右ストレートが互いの顔へヒットし、二人はもんどりうって倒れた。
ダブルノックダウンだ。
二人ともピクリともしない。
が胸だけは呼吸で上下していた。
よかった生きてる。
「ダブルノックダウン試合終了。引き分けだ」
俺はそう宣言した。
「族長、大丈夫か」
「長しっかりしてけろ」
「ううん、ワシは倒れたのか? 奴はどうなった?」
見ると熊犬の長も目を覚ましていた。
「おお、オデは負けたのか?」
「いんや、引き分けだで長」
二人は起き上がり睨み合いながら接近していく。
二人とも満身創痍だ戦う力など残っていないだろう。
しかし、ピンっとした緊張感が周りに広がっていく。
まだやる気なのか。
二人は今にもくっつくかと思えるほどの距離で睨み合っている。
「がっはっはっはっは~」
「ぐわっはっは~」
二人は大きな声で笑い始めた。
以下ケンタ訳。
「兎鱗の、おめー強いな、オデとこれほど戦える奴は他に知らねー」
「ワシもここまで戦ったのは初めてだお主も強いな、わっはっはっは~」
そういってがっちり肩を組んだのであった。
あ~これが強敵と書いて強敵と読むってやつか。
あまりのべたな展開に見えたが、周りは皆感動にむせび泣いていた。
そっかーここは石器時代の様な物。
まあ精神的文化はかなり進んでいる気もするが、この時代から見れば昭和なんて超未来的なことだよな。
「分かった、おめーが言っからには、その子は神の子なのだろう。認めよう。だが、なして神の子がいるだ?」
「ふむ、30日程前だ、ケンタ様を乗せた神の乗り物がやってきて神は仰ったのだ「我が子を一年預けることにした。生活や狩りなどを教え守りなさい」と、そうわが部族が選ばれたのだ」
「そっただ事がな、わがっただ。神に選ばれし部族としてオデだちは敬意を払うだ。ケンタ様、倒せずの魔物の討伐に感謝の意を示すだ」
長ゴンは、土下座の様な礼の姿勢をとった。
「感謝を受け取った。頭を上げよ」
「ははっ」
ゴンは神妙な顔? で何か考え込んだ。
少し考えてから口を開き。
「オデだの部族からも、ケンタ様の従者を出したいだが、二人ほどいいだか?」
そんなのいい訳があ
「よかろう」
えええ~いいの?
「だば、里に帰って選出するだ。後でそちらの里へ出向くだ」
「ああ、楽しみにしてるぞ。まだ討伐行をする予定なので10日後を目安に来い」
ケンタ訳ここまで。
最後に族長たちはゴンッと右こぶしをぶつけ合い。
熊犬族たちは去っていった。
「ふー」
終わった。
「ケンタ様通訳ありがとうございました。多種族とは接触があっても、コミュニケーションができないので、今まで交流が全くなかったのです」
「殺し合いにならなくてよかったね」
「そうですな。時々は有るんですよ殺し合いも。全く無駄なんですが、何言ってるか分からないと、揉め易いくて」
全く無駄か、その考えは無かった。
仕返しとか考えないのかな。
こう、この野郎××の敵だ、みたいな。
異文明との接触は双方に害意が無くても、意思疎通できなくて揉めそうでは有るが。
害意がある場合が多いのが、いやそれは地球の歴史か。
俺の世界観ではどうなるのかさっぱりだな。
そう言えば歴史の授業は戦争の発端ばかりだな。
なぜ平和裏に戦争回避した場合の方法はどうだったかを大々的に教えないのか?
実はほぼないのか。
そう見えても後から騙し撃ちみたいのばかりだし、どちらだろう。
この星はまだそこまでの発展は無いと考えるべきなのか、地球が黒すぎるのか、果たしてどっちかな?
ふう、知恵熱でそう。
そう言えば通訳大変だった。
『ねえ、ギガ~簡単に通訳する方法は無いの。全員言葉分かるみたいな~』
『マスターいくら我でもそこまでは出来ない』
『がっくり、ほかに方法はないの』
『代案はある、里の主要メンバーの頭に自動翻訳のインプラントを埋め込めばマスターが忙しくなることは少なくなる』
『俺にも入ってるのそれ?』
『いやマスターは作成時に機能として盛り込んであるのでちがう』
『なるほど、それは便利だね、どうやって入れるの?』
『インプラントの入ったカプセルを飲ませればよい。かなり簡単な物を作るので3年位でエネルギーは切れ排出されるがな。エネルギーが切れてもある程度使った言葉であれば覚えているだろう』
『うんそれでいいよ、あの熊犬族の言葉はまた学習するの』
『その必要はない。それと、兎鱗族のも入れ込んでおこう』
『やったあ、じゃあ、用意してくれる?』
『ああ20個くらい用意して異次元接続庫に入れておこう』
『ありがとギガ』
「ケンタ様、今日はもう部族の里には行けないでしょうな」
「そうなんだね」
「ここにはあまり居たくないですな、出発しましょう」
出発して少々歩くと森に到着した。
なんかほっとするね。
ゴブリンがすぐさま襲ってきたが難なく排除し、野営の準備に入った。
2回目となると手順もわかっているので、テキパキと進めていく。
「族長、今回みたいに、通訳するのは大変だから、3年だけ使える自動翻訳と言う能力を何人かに付与したい、どうだろうか」
「おお、それは我々には勿体無いほどの思召し、ありがとうございます。願ってもない事です。どのような方法で頂けるので?」
「この、カプセルを飲めばいい」
そう言ってカプセルを一つ手のひらに出して見せる。
「これを飲むか族長」
「はい、ケンタ様ありがとうございます」
族長は何の疑いもなくカプセルを飲み込んだ。
族長は器がデカい。
俺ならつい疑り深い目で見てしまいそうだな。
後でアイラとプラムにも飲ませよう。
その日の食事は族長と熊犬族の長との戦闘の話題で盛り上がったぐらいで昨日と変わらない。
そしてお楽しみの夜がやって来た。
うん良かった。
今晩もとても素晴らしかったと言っておこう。
昨夜も夢じゃなかった。
明日も投稿
「最弱の吸血鬼?が生き残るには?【最弱では死にそうなので毎日せっせとダンジョンに通い、最強になってしまったので悠悠自適に生きれる】」も連載中ですのでよろしくね




