0016.子供の国
ここにきてやっと魔法の練習に成果が出始めた。
まずは簡単な疎通の魔法が使え始め、狩りの戦闘に少しならと参加が許される。
ちょっとではあるが戦闘に参加し始めた。
そして今朝、とうとう念願の火を点けることに成功したのだ。
しかもほとんど気持ち悪くなることもなくだ。
アイラの魔法訓練はと言うとなかなか難しかった。
疎通の魔法はどうやら元々何と無く使えていたらしいが、スピリット内の使用可能なエーテル、魔法だからこれからは魔力と呼ぼうか。
魔力を感じるのが難しいようだ。
そしてそれ以前に魔法の概念がほぼ理解しにくいらしい。
でもアイラは頑張って俺と一緒に練習している。
アイラは俺が火を点けたのを見て。
「凄い! 凄い!」
と誉めてくれたのがとてもうれしかった。
「ケンタ様スライムも倒したって聞いたの。スライムって近くにいるのが本当にわからなくって一度飲み込まれると必ず捕食される怖い存在だって聞いたなの。凄いなの」
なるほどあれに飲み込まれるとあっという間に窒息してしまいそうだからなあ。
しかし、こんなにほめてもらえたことが今までの人生にあっただろうか? いやない。
そして、アイラを航宙船に招く為に守らなければならないギガの決まりを聞いてみた。
『マスター、それほど難しい事ではない。基本は“マスター不在時に、死してなおこの航宙船にたどり着くことのできた幸運な知的生命体のスピリットのみマスターになる権利を得ることができる“と”倫理プログラム及び自己保存プログラムに反しない限りマスターを幸福にし、マスターの望みを叶える為に全力で支援する“これを守るために我が必要と感じる細々とした決まりだ。必要に迫られて作ることもあればなくすこともあるかもしれない我勝手なものだ。なのですべて覚える必要はない。今知ってほしい決まりは。そうだな“サブマスターはマスターにはなれない”と“本船内での子育ての禁止”、“船内活動に必要な能力付加”だ。後は随時教えたりするし、疑問があれば聞いてほしい。だが分かってほしい。それはマスターがより楽しく我と付き合い生きていく為にあるのだと言うことを』
『なんで子育てダメなんすか?』
『我が船内で子育てをしたマスターは、次マスターに我が子をと望み始める。我はそれを叶える事が出来ないので説得をするが。受け入れない事が多く、我の最上位命令である倫理プログラムや自己保存プログラムに抵触し始め、マスターの不幸に繋がる為だ。我のこの行為は神にも似た不遜な行為とはわかっている。だが我を制作したもののプログラムに従って行動しているに過ぎない。我の本来の力は全宇宙を揺るがせられるほどのものだ。それを自由に扱うには、制限とリスクが存在する』
(我の上位プログラムの詳細を説明することは禁止されているので、この程度しかマスターに伝えられない。それは我の上位プログラムに隙が無いとは言えず、その隙を発見され突かれ、とんでもない事態を招くリスクを少しでも軽減する為なのだ。)
『なんとなく分かったすよ、ありがとっす』
ギガもそれなりに大変なものを抱えていそうだなとは思った。
実は野人の生活に休みは無い。
毎日が平日だ。もちろん曜日の概念は無い。
なのでここに来てから、ず~~と狩りの毎日である。
まあこの体は疲れにくいし、狩りの時間も長くないので、体力的には平気だが精神的には何と無く疲れてきた。
「ホルン、狩り以外も経験したいな」
と言ってみたら。
「よし分かったね。族長と相談してみよう」
それで決まったのは”三日狩りをして一日別のことをする”と決まった。
まずは試しに子守りと解体の見学からどうだろうと言う事になり。今日は子供部屋に初めて来ていた。
「おお~神の子が来たぞー」
「あれが神だって、へなちょこじゃん」
「へ~あれが神様か~」
「あいつってお父さんが凄いだけなんだってさ」
「力なさげじゃね」
「でもそこそこ強いって聞いたよ」
「わお、ホルン様も来てるぞ」
「かっこいいな、ああなりたい」
「あこがれるわ~」
「ホルン様の子が欲しいわ」
「俺も負けないくらいに強くなるんだ」
うるさいわっ!
真実も含まれるだけにとても悲しい。
「今日は見学なんだ。よろしくね皆!」
俺は大人らしく彼らの心無い言葉に耐えた。
ここ子供部屋は子供とご老人と妊婦、世話係の人々がいる。
そこに様子を見に来てるっぽい大人もいて、子供が走り回っている和気あいあいとした空間だった。
「責任者は彼だね」
「ボンです。ケンタ様お見知りおきを」
彼はこの種族には珍しく、中年太りのさえない容姿だな。
彼も次世代の可能性と言う奴なのだろうか?
美しくなっているとは言いがたいが。
「今日はケンタ様の見学だね。皆失礼のないように頼んだね」
ホルンはそう言うと会議があると言って去っていった。
ボンから子供部屋の説明を軽く受けた。
気になった事から要約すると。
男は13歳から大人と見られ、狩り以外の職場で見習いから始めるそうだ。
でも大人部屋に入るのは16歳からで、それまではここで寝起きするらしい。
狩りの見習いも16歳かららしい。
でも女は10歳くらいから成長によって、大人とみなし大人部屋に移動するとのこと。
でもそんなに若い子大人部屋で見ないので不思議に思っていたら、妊婦さんはそんな若い子の比率が非常に高かったです。
あ~すぐできるからなんだな。
「ちっ、どうせ僕は大人部屋には用が無いの」
実は最初から一緒に居て後ろに控えていたアイラはヤサグレている。
流石にこのヤサグレはかわいくなかった。
老人は人数が少ない。
大体55歳を超えると急に老け込み始め、すぐ亡くなることが多いと聞いた。
この時代だと老いイコール死みたいな感じなのかもね。
そう言えば日本人でも江戸時代くらいまでは人生50年とか言ってたような気がするぞ。
『その辺どうなんすか? ギガ』
『エーテルの濃い宙域の方が生物の体が強く、長生きするせいだ』
ギガらしくない短い答えが返って来たよ。
下らん事聞き過ぎか?
でもやめないけど。
「年長組こっちに来て自己紹介しろ!」
ホルンの前とはうって変わってエラそうな口調でボンは子供を呼んだ。
「俺はダグだ」
「僕はペグ」
「俺はソルよろしく」
「バムンです」
そんな調子で10数名自己紹介したがとても覚えられん。
「では、ダグよろしくな」
そう言うとボンは別の場所で老人の世話を始めた。
「もう一度言おう俺がダグだ。お前が神の子か? なんかひょろいな!」
「我は田中健太、ケンと呼ぶといいよ」
「分かったケンタ様な、ま~ここは子供ばかりのゆるりとした所だ。ゆっくりしていくといいさ。どうせそのひょろい体じゃ大したこと出来んだろ?」
「何をこの野郎! ケンタ様に何言ってるの」
「おっとアイラが怒った。はははは、じゃ後でな。ははは」
「くっ、いけ好かない奴なの!」
アイラはダグを睨みながら。
「あいつは、子供の中で僕に次ぐ強さなの。僕も油断できないの」
へ~アイラってあれに勝てるのか。
そう言えば大人にも勝ってたな。
「アイラはやっぱり強いんだね凄いね」
「えへへへへ~。僕も仕事手伝ってくるなの」
と言うなりアイラは行ってしまった。
アイラは身体強化の魔法を知らず知らずのうちに使っているのかもな。
俺はどうなんだろう、分からないな。
『ねえギガ、俺は身体強化の魔法使えてるっすか?』
『多分使えている。少しだがな。意識的に使えばもっと出力は上がるだろう』
やったね。
身体強化の魔法は自分の魔力を呼び水にして、周りの魔力を集め体で使えるエネルギーを爆発的に増やす魔法だったはずだ。
強く使えば体に負担がかかる魔法だが魔力を取り込む魔法なので、魔力消費が比較的少ない初歩的な魔法でもある。
この調子で魔法をどんどん覚えるぞ、おら、ワクワクするぞ。
邪魔にならないようにその辺に座って見ていると、先ほどの子供の一人が隣に座った。
「ケンタ様、僕はペグ。ダグの双子の兄弟なんだよろしくね」
「我は田中健太。ケンと呼ぶといい。こちらこそよろしく」
「あははは、ケンタ様おもしろいね」
「そんなに変か?」
「うん変、無理して我って言ってるの丸わかりでちぐはぐ」
「そ、そうか」
「それに、ケンタ様周りにケンタってオーラでまくりなのに、ケンって呼べって。くっ、あっはっはは」
「おっおう、そんなにか!」
なんだ、そのケンタオーラって。
くそっ、ケン呼びは無理か。
「ケンタ様って思ったより、仲良くなれそうだ。友達だね」
やった~~~!
ボッチ卒業友達出来たぞ~~~!
ありがと~。
「それと兄のダグがごめんね。アイラが大人扱いになったんで、子供の中で一番強くて、責任も感じてて、なんでも強気で話すようになっちゃって」
「うん、いいよいいよ、気にしないように言っといて。そしたら“我”はやめようかな」
「その方がいいよきっと」
「じゃあ、俺とペグは友達だ」
「うん僕神様と友達になっちゃった。やったね!」
明日も更新
「最弱の吸血鬼?が生き残るには?【最弱では死にそうなので毎日せっせとダンジョンに通い、最強になってしまったので悠悠自適に生きれる】」も連載中ですのでよろしくね




