0011.モテモテ?
「おおおっおお~!」
兎鱗族皆は燃え上がる炎を前にして畏れの声を上げている。
俺は燃え広がる前に短剣で一番上の丸太の側面を四分一程削ぎ、縦切りにしてよさげな太さの棒を幾本か作った。
「皆、火は必要以上に畏れる必要はない。取り扱いを間違わなければ、非常に便利な物だ。周りに燃える物がなければ、簡単には燃え移ったりはしない」
それから俺は火の取り扱いの注意を言って聞かせるのだった。
それは俺たちの住んでいた地球では当たり前のことばかりだ。
密室では酸欠で危険、風の日は延焼が発生するため危険などだ。
ま~一度では行き届かないだろうから何度でも説明してやる、族長にだが。
せっかく教えたのだから皆が覚えて事故があまりないようになればいいな。
俺はさっき作った棒(松明)の先に火を点けて見せ別の棒を差し出し族長に言った。
「これをどうぞ、火を点けてみてください」
「こっこれに火をですか。わかりました。これでも一族最強の男だ逃げはしない」
族長はおっかなびっくり及び腰で松明に火を点けた。
「おお~点いた。火が点いたぞワシが一族で最初に火を制したのだ」
「おお~さすが族長だ~!」
「やっぱり、族長はすごい!」
「勇気あるな~!」
おおっ族長への賛辞でいっぱいだ。
俺には何もなかったが。
神だから出来て当たり前、そう思われているのだきっと。
「では、住処に一緒に持って入ってみましょう」
「持って入っていい物なんでしょうか?」
「この程度であれば大丈夫だ我を信じよ」
あれっ? 俺って時々しか威厳ある態度出来て無くね?
いや大丈夫だ。もともと俺には威厳など無い。しかし追い出してやろうとまで、考えている素振りを彼らには感じない。きっとこのままでも大丈夫だ。
住処に入ると、そこに居た皆は松明の明るさに驚きと称賛の声を大にした。
族長の機嫌はとても良くなり、にこにこ顔でとてもいい感じだ。
「次は肉の調理だ」
肉を一人一切れ分ぐらいそろえることと、かまど用に石を積んでコの字にするように頼んでから、また木を三本ほど切って乾燥。薪と肉を刺す長い串を大量に作り、薪をくべ串に肉を刺し焼いて見せ、させてみせると。
皆、美味しい美味しいと喜んで食べたのだった。
よし、中々にうまくいったのではないだろうか。
これくらい貢献すれば追い出されないどころか人気も上がるのではないだろうか。
「ケンタ様そろそろ狩りに出るぞ」
一人悦に入ってるとホルンが声をかけてきた。
「当分は俺の後をついてこい。そして仕事を覚えるのね。それに子供なので無理に自分で狩ることはしないでいいね」
「うむ、分かった」
狩りをしてる近くに居ればエーテルを集められるだろうからそれは願ってもなしだ。
狩りに出ると皆の耳がピンと立つ。
緊張してる証なのだが、かわいい。
道中ホルンは結構気を使い、狭かったり滑り易かったりするところを事前に注意してくれる。細い道や崖のそばなどは手まで引いてくれるのだ。
狩りは結構機能的だった。
魔獣や野獣はとても多く生息しているので獲物の発見が早い。
早速牛の様な野獣の群れを発見したとの報告だ。
皆で走ってその場に向かう。
結構遠くからでも確認できた地球で言うヌーの大移動の様な大きな群れだ。
「ムブモの群れだ、あれは美味しいぞ食べるのを心待ちにしろよ」
ほっほー美味しいのか。
「それは楽しみだ。あれは強いのかい?」
「不用意に近づくと蹴られたり突進を受けたりするが、気を付ければ安全に狩れる野獣だ」
群れを発見したら、まずは二人ずつに分かれ気配を消して周りを囲み始め、群れから少し離れている個体を探す。
ゆっくりと静かに獲物にばれないように獲物と群れの間に入っていく。
まず群れの側から襲い掛かり逃げてきた獲物を横から叩きつけて狩るのだ。
狩った獲物は一人か二人で住処に持って帰る。
その間は獲物を探しながら待つ、といった具合だ。
皆の気配の殺し方、合図の出し方など、聞いてもよくわからないほどだった。
もしかしたら魔法が絡んでいるのかもしれない。
ムブモの群れからは2頭ほど狩り別の獲物探しだ。同じ獲物を必要以上に狩らないように見えた。
「ケンタ様、あれが魔獣だ」
「あれが、魔獣なんですね。どこで見分けるんですか」
「いや魔獣はとても嫌な気配を感じるのだ」
「なるほど」
わからん。
気配ってなんぞ?
「この辺りは野獣が多く魔獣は少ない、が他所では魔獣がダントツで多い。そしてもっと厄介な魔物もでる。そして魔獣、魔物は見つければ狩れるものは必ず狩る」
魔物と魔獣何が違うのだろう。そんなことを考えていると、そいつはどんどん此方に迫ってくる。
それは、狼に似ていて角が生え体も大きく牙も鋭く爪も長かった。
そして単体で行動していて、此方を見つけると凶悪な顔つきでよだれを垂らしながらすぐ襲ってきた。
だが強さ的には少し強い程度で頭の悪そうな分決着は早かった。
皆で囲みこみ袋叩きである。
しかし、狩りが思った以上の速さで進んでいく。
これ程とれるなら確かに農耕なんかする気にはならないだろうし、弓矢なんかを工夫する必要もない。
16頭ほど狩った所で狩りを終え住処に帰ってきた。
魔獣も野獣も地球の野獣とそれほど大差が無い。
増える速度を除いてだが。
この惑星では知的で有るか無いかは魔法的な意味合いで大きなアドバンテージになっているね。
たぶん地球とは比べ物にならないほど生きやすそうにその時は見えた。
住処に帰ってからは、火の点火方法だ。回転摩擦式を教えた。
そう、棒を板に回転させてこすりつけるあれである。
現代人にはかなりの無理ゲーだけど、こいつらなら出来るんじゃないかと踏んだのだ。
思った通りすぐ煙が出始め、乾いた枝の葉っぱを近づけたらすぐに火が点いた。
「ワア~~」
皆から歓声が上がった。
「ケンタ様ありがとうございます」
族長が涙ながらに言った。
ふと、広場の端の切り株が目に入った。
今朝切った切り株である。
そして驚愕する、すでに芽が出るどころか20㎝はあろうかの高さに育っていた。
いくら何でも育ちすぎじゃね?
筍でもそんなには伸びねーよ。
その日の夕食から焼いた肉が出されるようになった。
松明を持ち込んでるので明るい時間が少し伸び皆それぞれの時間を過ごしていた。
俺は魔法の練習としてエーテルの活性化を練習だ。
何と無く分かるような気もするが出来なかった。いや、そのうちに絶対使ってやる。
さほど松明が長持ちもせず周りが暗くなって来たので周りを見回すと、女性陣の視線がとても冷たいことに気づいたのだ。
目を向けるとすっと目をそらしそっぽを向く。
なぜだ、俺って役に立ったんじゃないの?
くぅ、こっちだってそんな奇乳に興味は無いやい、よれば臭いし萎えるんだよ!
しくしく。
とてもがっくりしたが、出来るだけ気にしてないように振る舞い横になる。
『ねえ、ギガ聞いてよ、今日ね~……』
そして、今日の出来事をギガに伝えた。
その話の中で、俺は女性たちに冷たい目で見られることを愚痴っていると、ギガはこう言ったのだ。
『マスターそれは良かった。間違えても女性にモテモテ? になってはいけない。強さをひけらかしてもいけない。実権を奪われそうになったり、女性の関心を奪われた男達は何をしでかすか分からない。最悪事故を装って殺されるだろう。そして我にこう言うのだ。“我々は精一杯お守りしましたが、ご子息は、偶然の事故でお亡くなりになりました。どうにもならなかったのです。どうぞお許しを”とな、だから役に立つ神を演じるのは良いが、やり過ぎを避けよ』
危ない!
とんでもないババを引くところだった。
自重せねば。俺はビビりまくり震えて眠るのだった。
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まさか、マスターが他種族の女性に興味があるとはな。
ま~相手は他種族には興味ないと考察できるので、大丈夫なはずだ。だが対策は考えておこう。
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「それでホルン、ケンタ様はどうだった?」
「あれは何だな神と言うほど強くはないな。だが子供としては身体能力が高いね」
「ふむ、いやそうではなく、人となりだよ?」
「そうか、中身はまるで大人だな。神だからと言えばその通りだが、その割に経験が圧倒的に足りないな。ちぐはぐだ。おっと、人柄だったな。かなりお人好しなんじゃないかな。どれだけ平和なとこから来たのか分からんが、後ろから刺すのはわりと簡単そうだ」
「なるほど、ワシもそう思うよ。経験はなさそうだが知識はある。そんな感じかね~。修行に出されるのもわかる気がするな。今の様子なら毒にはならんか」
「あれの親、神を名乗るやつはかなりやばいね。いつでも我々を皆殺しにする凄みを感じたね。騙すなど以ての外だ。疑われるだけで即滅ぼされそうだね」
「神と言うより悪魔だな。ふっ、どちらにしても、ケンタ様には無事で終わってもらわないとだな。危険の無いよう二人で気を付けようではないか」
「そうだな部族の存続のためにはケンタ一人くらい面倒を見るのはお安いことだからな。せいぜい気を付けるさ」
これはホルンにも言えんのだが。
ケンタ様、神というだけあってなんと言うか美しい。
ケンタ様は男だとは思う、しかし何とも言えない庇護欲を刺激するのだ。
だから出来るだけ良い思いをして帰っていただきたい。
ワシは個人的にはそう思うのであった。
明日も配信
「最弱の吸血鬼?が生き残るには?【最弱では死にそうなので毎日せっせとダンジョンに通い、最強になってしまったので悠悠自適に生きれる】」も連載中ですのでよろしくね




