0010.神として見られたくて
神に見えなくなったら、あっという間に切り捨てられるだろう。
一年、こんな全く分からない強い存在ばかりの世界。
生きていける気がしない。
人は一人では生きられない、群れて生きる物だ。
などと、考えながら自分のすることを正当化している。
いや、こんなことがわかっていたら、剣や銃をもっと練習しておくべきだったのだ。
戦闘機の性能でなんとかできるなら、相談してそんな設計になるようにそうすべきだったのだ。
後悔は先には立たない。それを、実感していた。
俺はなんて馬鹿なんだろう。
そしてこれからも、馬鹿な判断とわかっていてもやめられないくそ野郎だ。
無理にでも明るく考えないと気がめいって仕方ない。
それでも腹は減るのだ。
そう、くそ野郎なのは、分かっている。
だが、俺は少々リアリストで、自分勝手で、小心者でかつ、目立ちたがり屋で、スケベなのだ。
ふふふ、こんな好機逃せるか? いや逃せないね。
****
おっ、肉が焼けてきたな。
一口食べてみる。調味料がないのでシンプルな味だが、薬よりは絶対美味しい! 砂がじゃりじゃりするが生よりも美味しい。これなら生きられるよ。
「族長、味見をしてみるか?」
「いえ、神様の物をいただくわけにはいきません」
「まあ、そう言わずに一口だけだ、気にするな」
「そこまで、言われるのでしたら、ありがたく頂かしてもらいます」
俺は一切れフォークにさして、族長に渡した。
「これは、変わった道具ですね」
石器時代に金属のフォークだからなそりゃ変わっているだろうな。
そう言いながら族長は肉を口に入れた。
「おおっこれは美味しい! 柔らかくて食べやすい。ケンタ様、良ければ作り方をお教え下さい」
「明日、火の扱い方を教えよう」
「はっはー」
族長は土下座をしたのだった。
食事を終わりゆっくりしているとまた族長がやってきた。
一人じゃなく何人かつれなってやってきた。
「ケンタ様、ワシの妻たちと、明日から狩りに行くときにご一緒させていただく者を紹介するのにつれてきました」
族長は恭しく頭を下げる。
「まずは妻から紹介します。右から、ウネ、トウ、シア、ムウ、モイの五人です」
右側の女性が一歩前へでた。
「私は、妻のウネです! よろしくお願いいたします。ゾムンの居ない時は私たちにお声をおかけくださいね。」
「「「「よろしくお願いいたします」」」」
五人ともデカい、胸部と臀部が尋常じゃなくデカい。
「五人も妻がいるのですか、すごいですね」
「いやいや、ワシなど、他の族長たちの中では少ない方ですよ」
ふ~ん。
多妻制なんだね。
「左にいる男は次長のホルンだ」
「俺はホルンだ。神様、明日から狩りに行くね。一緒に来て学んでくれ」
「我はケンだ! 明日はよろしく頼む」
「はっ、分かりました。ケンタ様」
しかし、誰もケンって呼ばないな…………
そして皆、敬語とかちぐはぐだな。
使うことがほぼ無いのかもな。
ほんとは敬語なんていらないのだから、どうでもいい事なんだけど、ちょっと気になった。
外が段々と暗くなっていき、小さな窓からの光もなくなってほぼ真っ暗になると静かになるのかと思ったら違うようだ。
あちこちで始まり、一時間くらいは嬌声でとてもうるさかった。
真っ暗だとわかるがそれでも周りが見える。
俺の目は一体どうなっているんだろう。
まあ高性能な分には構わないか。
ただ何をやっているのか如実に見えてしまい、さすがに刺激が強かったので非常に寝にくかった。
少し明るい気がして目が覚めた。
人間、結構臭いのにはなれる物だな。
なかなかに熟睡できたようだ、気分がいい。
あまりにもうるさかったので、一人で処理してしまったのは内緒だ。
寂しいなんて思ってないからな。
「おはようございますケンタ様。ウネです。えっと、昨夜はよく眠れましたか?」
何か、表情が微妙だ。まさか、ばれているのか?
「ああ、よく寝れたよ。ここではどんな感じで一日過ごすんだい? 教えてくれよ」
「はい、簡単でよければ」
ウネさんの言うことをまとめると
朝は2,3時間ほど自由時間なのだそうだ。
朝食、昼食は無くて、夕方に一食だけ。
狩猟は男女混合10人一班ぐらいの当番制みたいな感じで、順番に10~15班くらいが、1日の内に15体を目標に狩る。
残りは、住処の拡張や、獲物の解体、子供の面倒、雑事をやるみたいだ。
少し山を下りれば、魔獣や野獣など種類も頭数も豊富で獲物に困ることはないらしい。
獲っては運んでまた獲りに行くを、繰り返すと言う。
解体した獲物は住処奥のそのまた奥の下の方に元々ある洞窟があってそこが大層冷たいのでそこに保存する。
目標分狩ったら訓練や雑事、などをこなし夕食となる。
なお、暗くなったらフリー〇〇〇だそうだ。
ただしお互い拒絶しなければだ。
だが族長と次長の妻は別で手を出すと殺されるらしい。
厳しい実力階級の世界だ。
結構無茶でも理由があれば強いものが弱いものを殺しても罪にはならないらしい。
それなのによくバランスが取れているな。
不思議だ。
なお無理やりは難しい。
皆で雑魚寝状態ではすぐばれる。
いい女は実力者が囲い込む、ほしければ殺し合いだ。
決闘で殺してもやはり罪にならないらしい。
強い奴がすべてをがめるには良い決まりだ。
強い奴はモテる為ほぼ拒絶されない。
そして弱い奴には誰も寄ってこない。
キビシーねー。
生まれた子供は皆で育てる。
建前は誰の子でも関係なしだ。
お年寄りと子供と妊娠中の女性には、別の部屋を掘ってあるみたいだった。
「ありがとう、ウネさん」
「いえ、どういたしまして」
いい笑顔で去っていった。それにしても結構えぐい話だったな。
『ギガ、聞こえるっすか』
『マスター聞こえるぞ』
『聞いたようなハイペースで狩りを続けたら、獲物なんてすぐ枯渇しそうだけど、どうしてやれているんすか?』
『マスターのいた惑星は、かなりエーテル濃度が薄かったらしいな。生命の多さはエーテル濃度の影響がかなり大きいのだ。この惑星位のエーテル濃度が有れば、特に感情Lvが低い生物はどんどん生まれるぞ。魔物や野獣にかかわらず』
あ~地球って資源の乏しい厳しい星だったのね。
さて、火を起こす準備でもするか。
住処の近くに立っている直径40㎝ほどの木の根元にやってきた。
まっこれくらいの太さならちょっと長めのこの短剣(40~50cm)でも切れるだろう。
短剣の切れ味を試しつつ、焚火用の木を調達するつもりだ。
生木なのは仕方ない。
「さて、高周波振動無しでどこまで切れるかな」
短剣を右肩上に掲げ袈裟懸けに切りつけた。
ズバン、ズザザザザザ~ドオッン
こんな風に木って切れるもんなんだな。
次は、屈んで水平に切ってみた。
ズガン
途中で刃が止まったようだ。
さすがにこの体勢では俺には無理か。
技量と力が無いからな。
では、振動をオンにしてと。
ブッウウンと剣が小さくうなった。
先ほどと同じように水平に切った。
スパンッ
ほぼ手ごたえもなく木は切れていたのだった。
「オオオーー」
いつの間にやら、皆が見ていたようだ。
「さすがはケンタ様です。大人でもそれほどの木を一閃できる者はほぼない、ましてや横切りで出来る者は伝説の中でもほんの一握りですよ」
「そう? ありがとう。では、この木に火をつけて取り扱いを説明するよ」
って彼らにも切れるのかよ、そう言えば魔力で強化するんだっけ、この人たち。
むっ、女性たちの見る目が、ひとレベル上がった気がする。
まあ、元が蔑みの眼差しだったので、普通に近くなった程度だが。
「あそこの空き地を使ってもいいかい?」
「はいどうぞお使いください」
さっと、済ますか。
1mぐらいの長さに剣をすっすっと振りながら切りそろえていく。
枝をパパっと払って時計を付けている左手をかざすと次元庫にすべてしまい込んだ。
おっさすがに皆、驚いた顔をしている。
ムフッ、これはさすがに神に見えただろう。
尊敬の眼差しが増えた気がする(当社比)。
住処の前の少し広いところに、丸太を井型に組んだ状態で出し、その中に入るように枝も出した。
次元庫(異次元接続収納庫)すごく便利だ。
取り込む物も、出す時の位置も見て意識するだけで指定可能だ。
有効距離は腕時計から通常5mほどの様だ。
エネルギーを多く使うとともっと遠くまで出来るとの事だ。
これではかなり近寄らないと出来ないがな。
普通の倉庫から、冷蔵、冷凍、果ては物質振動停止庫まである。
ちなみに物質振動停止庫に生物を入れると死んでしまうそうだ。
実は左手をかざす必要もない。
だが欠点もある。
ある程度以上の速度で動いてるものは、俺の位置認識が間に合わず収納されない。
昨日の夜静かになったからと言って、すぐには寝ずに色々試してみたのだ。
そう言えば、木を乾燥する方法とか無いだろうか?
『ギガ、生木を乾燥させる方法とかないっすか』
『マスター、生木の乾燥とか……変な事ばかり聞いてくるな。ちょっと待て考察する』
ほほーすぐは答え出ないか。
『レイガンでマイクロ波ビームを使えば出来ないことはなさそうだ、しかしやりすぎると炭になって暴発するので、出力と様子に気を付けてやるがいいだろう』
『ありがとうっす』
「皆ちょっと離れてね」
では、乾燥っと。
レイガンでマイクロ波ビームを照射すると、湯気がぶわっと出始めた。
「ケンタ様、これは、いったい何が起こっているのでしょうか?」
「ちょっと待って」
慎重に観察していたが、よくわからない。
水蒸気の量がかなり多くなってきたので、怖くなって撃つのをやめた。
「これはね、木の中に水分が多いと燃えにくいので乾かしていたのだ」
「ふむ、水分?ですか」
「そう、皆がやるときは、もっと細かく切って、雨に濡れないところに長く置いておけば乾燥するよ」
中に詰めてある枝や葉っぱ付近を狙ってレーザーを撃つと勢い良く燃え上がった。
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