0001.俺は死んじまったよ、宇宙に行ってきたよ
本当はこちらを先に投稿し立ったのです
だがSFは難しく、筆の進みが……
楽しんでいただければいいな~
グ~~っ! お腹の虫が腹減ったと暗い洞窟の中で響いて行く。
目の前には血が滴るような巨大な生肉! 生肉だよ! ナイフフォークどころか箸も何もない。
他の皆は素手でつかみ美味しそうに口に運び豪快に食いちぎっている。
試しに俺も噛んでみるが筋張っていてとてもじゃないが食いちぎれない。
これを嚙み切れるとは! 見た目はそうも変わらないのに凄い顎の力だ。
いったいどうしてこんなことに!?
そう、あの日俺は朝一番から建設中の高層ビルで鉄筋を組む作業中だった。
いわゆる鳶職というやつで最上階での鉄骨を組む作業だ。
高所作業ってさあ、結構な時給なんだぜ!
危険だけど慣れれば何ともない。
普通のバイトだと生きていくだけでかつかつだけどさ、これ始めて少しは娯楽や貯蓄に回せるようになったよ。
鉄骨の上を歩くなんて怖いだろ普通。
慣れるまでは苦労したんだぜほんと!
家賃も、電気代も、スマホ代も半端ないからな。
このバイト始めてよかったよな!
「ん~んふんふんふん~~んん~♪」
俺はご機嫌よく鼻歌を歌いながら、手足を大きく振り鉄骨の上を歩いていた。
鉄骨の上を難なく歩けることが、カッコよく思えうれしかったからだ。
確かにその時俺は調子に乗っていたのだろう。
馬鹿だね本当に!
調子に乗ると碌な事無いのにね。
「親方、この鉄筋どうするっす?」
「俺は親方じゃねえ! 先輩だっつってんだろうが。乙祭先輩と呼べこの野郎! そして真面目にしろ! 仕事中だぞ!」
俺のいい加減な返答にもちゃーんと応えてくれるまじめないい人です乙祭先輩。
乙祭先輩も俺と同じ強面だから普通に付き合えるしな。
「はいはい~分かったすよ、そんなに怒ると血管きれるっすよ。親方」
「全くもう、こいつは、言っても聴かね~! 最近の若い奴はこんなのばっかだ!」
ようは俺が適当な高校を適当な成績で卒業したら、就職できず適当な現場でバイトしているってだけだけどな。
強面なので友達は少ないが現場は強面も多いし、幸い体も大きく力が有り高い所も苦手じゃなかったので無理なく仕事はできていた。
強面な上本当は内気なので女性には全く縁がない。
怖くて高いお風呂などにも行けず、悲しい賢者に一直線で向かっている。
まっ現場仕事なのでよっぽど遅れが無ければ残業なしで、ゲームなどをやる時間はとても多いのがいい所だね。危険じゃあるけどブラックな職場ではない。
なので休日はエロゲーアンドエロ動画祭りになる日も少なくない。
だが次の日には“俺って何やっているのだろう?”と落ち込みもするのだ。
精神のバランスをとりながら生きるのは本当に辛いと思う。
「その鉄筋はあっちの床の補強に使用する」
先輩は指さしながら言った。
「じゃーあっちに持っていくっすね」
短めに切られた鉄筋だからそれほど重くはないので気合を入れ鉄筋を持ち上げようとしていた。
「よっと、せー!」
「まて、馬鹿野郎! そんな重い物一人で運ぶんじゃねー」
先輩が怒鳴っている。
振り返りながら
「大げさっすねー。このくらい平気っすよー」
と振り返り無理な体勢になったとたんだった。
グラッ、と重心がずれた。
「おっと。あっ。やべっ?」
バランス感覚には自信があった俺だが、前日に降った雨で濡れたままの鉄骨の上で鉄筋を持ったまま足を滑らせてしまった。
「おう、うわぁぁ~~!」
げっ安全帯が!
キンッ・パチーン!
作業に慣れてきたせいもあって慢心もあったのだろう。
安全帯がちゃんと掛かってなく外れてバランスが本当に保てなくなり建物の外へ向かっていく。
持っていた鉄筋は周りの柵に当たってその場に残ったが俺は違った。
そのまま下に向かって勢いよく落ち始める。
落ちながら。
(安全ネットから上にあがるの大変そうだなー)とか(これって怒られるよなークビかなー?)などと気楽に思っている。
しかし!
バリバリバリ!
落下防止ネットが、痛んでいたのかどうだか知らないが、何故かあっという間に破れて俺は抜け落ちてしまったのだ。
「うっそだろ~~!、そんなバカナ~~~!」
ビューーー!
風切り音が耳にひびく。
暗くなっていく視界の中でその浮遊感を(まるで宇宙にいるようだ)と考えながら意識が遠のいていった。
『えっええ~!』
死んだと思ったのに、ふと気づくと周りに見えるのは満天の星空……宇宙空間にいた。
体は……感じられない! と言うか無いな。
360度見えるというか感じられるが、音は聞こえない。
どうやら俺は死んだようだ。
暗い中にすごい数の星々が見え、とても綺麗だ。
死んだら宇宙に来るのか~! とボーっと考えていると。
目の前に巨大な金属壁が近づいてくる事にやっと気づいた。
いやっ俺が近づいているっ?
どうやら俺が動いていることに今まで気づいてなかったのだ。
『うわ~~! ぶっぶつかる~~!』
ヒュンッと何かをすり抜ける感覚とともに、また意識が飛んでしまったようだ。
度々ですまないが、気づくと宇宙空間に浮いていた。
おやっ! 今度は体が有る気がする。
さっきのは夢? 今も夢?
なにか体が小さい様な……。
だが、暗くて星以外見えないんだけど!
少し手を動かしただけで体がぐるぐると回った。
ひええ~誰か止めて~! 気分が悪く……おや? ならないな。
お腹を中心に固定され回っているような感じだ。
回っていた体が何故かぴたりと止まり声の様な物が響く。
『目が覚めたようだな』
びっくりした!
誰だ? どこから聞こえるんだ?
『我はAIだ。頭脳に直接話しかけておる。ここは航宙船のコクピットだ。わかるか?』
え~と
「航宙船? ……」
『宇宙を移動するための乗り物だ。これでわかるか?』
「なんとなくわかるっす」
『再度自己紹介をしよう。我は疑似生命航宙船《False Spirit Organism Space Ship》の管理AIである』
ほほーどこのSF映画の話だ。
『汝は魂。スピリットとなってこの航宙船にやってきたのだ』
やはり俺は死んだらしい。
『この航宙船にはマスターになれる生物はいなかったので、誠に勝手ながらマスター候補として肉体を作り蘇生させてもらった。マスターになれないならば、すまないがご退場いただく』
蘇生? ですと~!
『我は無限に湧き出るエーテルをエネルギーとして活用する航宙船である』
エーテルねー。
そういえば聞いたことがあるような? 無いような?
『では一応聞いておこう。汝はこの航宙船のマスターに、我の持ち主になるか?』
一応ってまた。
そうやね、これマスターのところが例え奴隷でも何でもほぼイエスと答えるしかない質問やん!
せっかく生き返ったのに、宇宙空間に放り出されてまた死ぬのは嫌やし。
『マスターになっても我を強制的に従えるわけでは無いが我は色々サポートをする。
マスターには行動指針を決めていただく。これは我が行動指針を決めることが製造者によって禁止されているためだ』
さすがに地球で“ドッキリ”にかかっているわけではない事はわかる。
俺みたいなやつにこんな壮大なドッキリを仕掛けるメリットなど無い。
俺は建設中のビルから落ちて死んだのだ。
これは再度人生を送れるチャンスなのだ。
胡散臭い!
……けども。よ~し
「俺は航宙船のマスターになる!」
右手を握りしめ振り上げ言った。
『よろしい。では我に名前を付けよ。船の名前だ』
反応が寂しい。
“何言ってんの? 頭おかしいんじゃない! どこの海賊だよ。”とか、突っ込んでほしい。
「名前を考えてほしいっすか?」
『そうだ我にふさわしい名を頼みたい、時間はどれほどかけても構わない。なお我の気に入らない名前は却下する』
「と言われてもイメージがさっぱり湧かないっすね」
ピピピッっと音が聞こえ
巨大そうに見えるカッコいい宇宙船の様なものの“立体映像”が目の前に現れた。
本当にそこにあるようだ!
すげーーぞこれ!
そして壮大そうな音楽が流れ始める。
『ふむ、我は星系級航宙艦だった。もっと分かりやすく言うとだな、超巨大機動戦闘母艦、全長約150億kmだった』
「だった? ……」
これって詐欺師の手くさい。
壮大な映像と音楽の非現実感でけむに巻きその気にさせるのだ。
俺は疑い深そうな眼をして映像を睨んだ。
次々とその宇宙船から小さい宇宙船が出てくる様が表示される。
『遠距離操作戦艦等を何億隻も搭載し、その大きさからは信じられない機動と攻撃力で、たとえ複数星雲系規模国家ですらあっ』
「“だったっ”て、なんすか?」
ピッと音がして大きく見えるが、ただの金属球が表示された。
『うむ、1000年ほど前不幸な事故があってな。今は直径700m程度の装備がほぼない、移動すらできないボール状の航宙艦だな』
「え、ええ~! ……それってなにも出来ないって事っすか?」
『端的に言えばそうだ』
俺はこの世の終わりの様な顔をしてさけんだのだった。
「なっ、なんだって~!」
自分のことながら、この状況でふざけられるとか結構余裕あるな?
『まあ落ち着け、今はマスターの生命維持に余剰エネルギーのほとんどを使っているが、少しずつだが貯まってはいる。エネルギーが貯まればできる事も増えていく。エネルギー効率もよくできるし、時間さえかければ元の星系級航宙艦に復帰することもできる』
まっ、うだうだ言ってもしょうがないか。死んでいたのが生き返っただけでもめっけもんだしね。
死んだのも自分のバカなミスからだし。
『我に名前を付ければマスターと本契約なり、我の機能すべてを使うことが可能となるので、それなりに早く考えた方がお得になる』
説明がひと段落ついたのか自称AⅠとやらは静かになった。
落ち着いて回りを見回してみると、宇宙空間に裸で浮いているとしか見えない。
ここがコクピットだってのが信じられないよ。
どうやって操縦するのだろうね~?
びっくりしっぱなしだ! なんか疲れたよ。
「宇宙を彷徨っているようで、落ち着かないっすが。なんとかならないっすか?」
『では、部屋に案内しよう』
後ろにぐっと引っ張られる感じがして、何かぐにょっとする物にあたり、
ズブッズブブブ
液体とも個体ともわからない感じの壁を押しのけてすり抜け異様に白い空間に出た。
おお~これはSF映画とかでよく見るような、金属っぽい何かで出来た宇宙船の廊下だ。
よく見ると言っても武骨な方でお世辞にも優美とは言えない。
色は真っ白で新品なのだが、密閉感だけは宇宙船で飾りっ気のない有様はそうまるで貨物船の通路だな。
結構奥まで長く続いてそうだ。
まあ、なんだかんだ言っても超科学的な空間にテンションを上げていると空間に赤い矢印が浮いていてある扉を指していた。
「おおー! ハイテクっぽい」
『我を呼んだか』
「いや呼んでないっす!」
『そうか何かあったら呼ぶがよい』
びっくりした。反応が良いな。暇なのかな?
扉の四角いボタンの様なものを矢印が指していたので押してみると、
プシュッ!
と音がして扉があき中が見えた。
ベッドがあり机や椅子もある思ったより普通な部屋だった。
無重力になる場合を想定してかとがった部分は無い造りだが、それだけだ。
入ると自動で扉が閉じた。
俺はベッドを見つけると周りを見る余裕もなくすぐベッドにダイブし横になるとあっという間に睡魔が襲ってきて耐えられなくなったんだ。
次話は明日投稿予定です!
「最弱の吸血鬼?が生き残るには?【最弱では死にそうなので毎日せっせとダンジョンに通い、最強になってしまったので悠悠自適に生きれる】」も連載中ですのでよろしくね