負け続けている幼馴染(女)に何とかして勝ちたいっっっ!
「今日のところも私の勝ちね! おとといきやがれだよっ、ゆーくん!」
「くっ… ま…参りました。」
この日までの通算勝敗記録、125戦125敗。幼馴染のあーちゃんに負け続けている俺は今日もつぶやく。
「こんなはずじゃ無かったんだけどな…」
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きっかけは10年前。
我が家の隣に、同い年の女の子がいる家族が引っ越してきたことが始まりだった。
同い年の子どもがいるからか、両親はすぐに意気投合。その結果、小学生だった俺はあーちゃんと一緒に遊ぶ時間が増えていた。
遊び始めた当初はおままごとを楽しむ普通の幼馴染だった。しかし、遊び始めてすぐに事件が起きた。
その日、当時小学4年生だったボクは1人、遅くまで学校に残っていたんだ。
別にボクがいじめられていたという訳ではないよ。
居眠りしていたことが先生にばれたこともあり、先生から雑用を押し付けられていただけ。
(当時はパワハラ・セクハラなんて概念はあまり無かったから、意外とマシな方かもしれない。今では立派なパワハラ案件だが。)
そういう経緯で、ボクは1階の保健室の掃除をしてたんだ。
もう少しで掃除も終わりそうで、家に帰ったらゲームでもやろうかなと考えた時。
「ドンッ!」
という物体が落ちた音が保健室の外から聞こえてきたんだ。
落ちてきたその物体は、なんと、我が幼馴染のあーちゃんだった。
「あーちゃん、大丈夫?!?!」
ボクは慌てて彼女に駆け寄った。
幸いにも彼女に大きな外傷は無かったみたい。
しかし、彼女は大粒の涙をこぼしながらこう言ったんだ。
「…私、もう負けたくない。」
俺は、今でもあの時のあーちゃんの泣き顔をはっきりと覚えている。
後で聞いた話によると、あーちゃんはいじめっ子と取っ組み合いの大喧嘩をしていたそうだ。
その原因はいじめっ子があーちゃんの親友をいじめていたことらしい。親友へのいじめに怒ったあーちゃんは、いじめっ子と殴り合いの大喧嘩をし、その途中で、窓から落ちてしまったらしい。いや、どういうこと。
まあ、とにかく。この日の出来事がきっかけであーちゃんは「勝ち」に対して異常なまでのこだわりを見せるようになった。そして、この出来事がきっかけであーちゃんと俺は月に1回、勝負をするようになった。
そして、あーちゃんに今日まで一度たりとも勝てたことがないのである。
ここらで、勝負の中身について説明しなければいけないだろうか。
本当は説明したくないんだけど…
ひとまず、先に俺とあーちゃんについて説明させてほしい。
石島裕也。通称「ゆーくん」。先日、20歳を迎えた超絶イケメンであるっ!
…ごめんなさい、しょうもない嘘をつきました。
容姿は10人いたら、1人が「好きな顔かもしれない」と言ってくれるレベルである。残念ながら、お世辞で言ってくれている可能性の方が圧倒的に高いので、圧倒的なフツメンである。ちょっと自分で言ってて悲しくなるな。。。
そんな俺には、他の追随を許さない身体的特徴がある。
それは、、、
身長155センチメートル、体重35キログラムと、小柄な体を持っているのだっっっ。
そんな俺に対し、あーちゃんこと榎木明日香はまごうことなきモデル風美女である。身長は170センチメートルもあり、顔がちっちゃく、足がとても長い。
その容姿は黒髪ロングの清純派の王道をひた走る20歳であり、美少女フィギュア化されてもおかしくないレベルの子だった。艶やかな黒髪のことを「緑の黒髪」と言ったりするが、まさに彼女のための言葉だったりする。
だって、あーちゃんの髪は少し緑っぽく見えるんだもん。とっっってもきれい。
彼女の魅力はそれだけじゃない。幼馴染だからこそ把握しているのだが、彼女、いわゆる「隠れ巨乳」なのだ。
幼馴染だからって胸部装甲の度合いを把握するなんて無理だろと思ったあなた!
甘い、甘すぎる…!
胸部装甲とは、これすなわち母性の象徴。男という生き物は、異性の母性を嗅ぎ分けることのできる上品な生き物なのだ…!!!
…こんなこと言ってる時点で、低俗ですよね。ごめんなさい。
実際は身長の問題で、あーちゃんを見上げる際、あーちゃんの人形さんのような整った顔を見ようとしても、盛り上がる胸部装甲が目に入ってしまうだけなのである。
ちなみに、体重はリンゴ3個分らしい。
中学生の時に体重も聞いたことがあるはずなんだけど…
なぜだろう、そこから先の記憶が無いや。
そんな俺とあーちゃんは、
毎月1回、「ある勝負」をしており、ここまで125戦125敗なのだ。
その勝負とは、、、「手押し相撲」なのだ。
俺は…女の子相手に手押し相撲で125連敗を喫しているのだ…
いや、確かに初めの方は手加減して負けてあげてただけだよ?
あーちゃんが異常に勝ちにこだわるから、何となく勝ちを譲ってあげてただけだよ?
そうこうしていたら、急激に彼女は強化され、俺は弱体化してしまったのだ…!
彼女は早めの成長期が来て、身長も急激に伸び始め、装甲の装備も充実。
一方、俺はと言うと…
あーちゃんを見ると、彼女の泣き顔がちらつくようになり、「あーちゃんを傷つけたくない」という想いが日増しに強まってしまっていたのだ。
その結果、ここぞというタイミングで押しきれなくなってしまった。
だが、そんな日は今日で終わり。
なぜなら、俺にはとっておきの秘策があるからである!!!
その秘策は、20歳の誕生日がきっかけで生まれた。
そう、20歳の誕生日である。つまり、酒である。
え、飛躍しすぎだって? 異論は認めよう。
とにかく、俺はアルコールの力に頼ることにしたのである。
20歳の誕生日に大学の友人達と飲み会をしたところ…遠慮という概念を失う酔い方をすることが分かったからな。
俺はあんま覚えてないけど、みんなそう言ってたから大丈夫でしょ。
「あーちゃん、乾杯!」
「かんぱ~い! ゆーくんと2人でお酒飲むの初めてだね~」
というわけで。
俺の家で宅飲み会を開催することにしたのだった。
「ゆーくんの家、久しぶりに来た気がする!」
「確かにな。最後に来たのは…確か中学生の時だったか?」
「そうそう! ゆーくんが寝ぼけて「ママ…♡」とか言いながら私に抱きついてきた日!」
「んな訳あるか! ………え? 本当に俺、そんな事してたの…?」
「んー、どうだったでしょう~」
なんでもないことを話すみたいに、重大な嘘を平然と言うの、ホントにやめてください。
本当に嘘かって? 嘘ったら嘘なの!(焦)
「ところで、ゆーくんママとゆーくんパパは今日いないの? いたら挨拶しようと思ったのに…」
「あぁ、あの2人は突然温泉旅行に行ったよ。」
「ゆーくんの家って突然旅行とか行く人達だっけ?」
「そうなんだよな… あーちゃんの言う通り、普段だったらそんな事絶対しないんだけど。あーちゃんと宅飲みするっていう話をしたら、夫婦で温泉に行くとか言い出したんだよな… 結局、今日は泊まりみたいだし。さっき写真で、なぜか旅館の晩ごはんの写真が送られてきたわ。赤飯うまそうに食べてるやつ。」
「へ、へぇ~、そ、そうなんだ。(ゆーくんのご両親、絶対私たちの仲を誤解してるでしょ…! わ、私はともかく、ゆーくんは絶対メッセージの意味に気付かないからなぁ…)」
「ん? 今、小声で何か言ってなかったか?」
「き、気のせいじゃない? 赤飯いいなーって思っただけ!」
「丁度良かった! うちにお赤飯あるから、一緒に食べよう!」
「(ゆーくん家は、変に準備がいいんだから…)」
赤飯をつまみに、お酒を飲む2人だった。
~1時間後~
「わーい、あーちゃんが2人いる~ どっちのあーちゃんも美人さんだぁ」
酔っ払いモードのゆーくんが爆誕していた。
「ゆーくん、お水を飲んでね~ わー、お水を飲んでるゆーくん可愛い~♡」
酔っ払ってはいないが、姉モードのあーちゃんも爆誕していた。
「あーちゃん、今月の手押し相撲対決、しよっ! 今ならあーちゃんに勝てる気しかしないよ~!」
「ん~、いいけど、なんでそんな自信あるの~?」
「んー、それはねぇ、あーちゃんのことが大好きだからだよ~」
「………………ゆーくん、私のこと大好きなの?」
「ん! あーちゃんには、ボクのお嫁さんになってほしいなぁ~」
なんかふわふわしてるけど、しょうぶしなくちゃ!
いまならかてるはずだし!
「お姉さんと勝負してもいいけど、ゆーくん、一個だけ条件付けてもいい?」
「いーよー」
「この勝負で勝った方が、負けた方の言うことを1つ聞くこと! いいかな?」
「いーよー」
「それじゃあ始めるよー …よーい、スタート」
いままでのボクとはちがう!
せんてひっしょう!!!
「あっ!」
酔っ払っていたのもありバランスを崩してしまった、危ない!
( ・ω・)モニュ?
「ドンッ!!」
「「あ…」」
正気に戻った俺が見たのは、あーちゃんの魅惑の溝でした。。。
「ゆーくんがこんな大胆だったなんて…」
「あ、あーちゃん! 色々と申し訳ございません…」
「とろあえず… ゆーくんの声が胸に当たってくすぐったいから一旦離れてくれる?」
「ひゃい!」
ひとまず暖かいお茶を飲んで落ち着くことにした。今はこれこそが最善の手段。それにしてもお茶を飲むと落ち着くなあ。
「「ふぅ…」」
あーちゃんとタイミングが重なって少し恥ずかしかったけど、さっきのルパンダイブに比べたら全然ましなのですぐに落ち着いた。…嘘です。魅惑の溝から放たれるあーちゃんの香りを思い出して、逆にそわそわしております。
「それにしても、ゆーくん。初勝利おめでとう。」
「え、嘘…! 俺、あーちゃんに勝ったの?!」
「そうだよ、ゆーくんの勝ち。ゆーくんよりも先に足が動いちゃったからね。」
「そうなんだ、やった…!」
俺は10年目にして、ようやく幼馴染の高い壁を乗り越えられたことの感動に打ち震えていた。
「それでね…ゆーくん。勝負の前にした約束、覚えてる?」
「約束? 酔っ払ってたから覚えてないな、ごめんね。」
「そっか… じゃあ、そんなゆーくんに聞いてほしいものがあるんだ! はい、どうぞ♪」
『「ゆーくん、私のこと大好きなの?」
「ん! あーちゃんには、ボクのお嫁さんになってほし…』
「………@pぁ@prcj+いmd@え;&$%!!!!!
酔っ払うと俺って幼児退行するのかぁぁぁぁぁ!!! というか俺、あーちゃんに何てこと言ってるんだぁぁぁぁぁ!!!」
そうか…!
あいつらが言ってた、「遠慮という概念を失う酔い方」ってこういうことだったのか…!
「色々言いたいことはあるけど、まず! 何で録音してるの?!」
「ちょっと静かにして、ゆーくん。まだ続きがあるんだからっ!」
「は、はい… スミマセンデシタ。」
『「お姉さんと勝負してもいいけど、ゆーくん、一個だけ条件付けてもいい?」
「いーよー」
「この勝負で勝った方が、負けた方の言うことを1つ聞くこと! いいかな?」
「いーよー」』
「という訳でゆーくん! 勝負に勝ったんだから、責任取ってゆーくんは、私のことをお嫁さんにしてね♡」
…どうやら僕は、1回勝ったくらいでは、将来のお嫁さんには敵わないみたいです。(終)
王道のラブコメを書こうと思ってたら、なぜかショタに行きついていた件について。(混乱)
評価・コメントの方、よろしくお願いします。今後の活動にも影響してきますので…