第19話「約束」
視点、途中で切り替わります。
一方、彼らの向かう先では、灰色の獣数頭が小屋を囲んで唸り声をあげていた。
予想通り、昨夜彼らが泊まった山小屋だ。
その周囲を半円状に取り囲み、灰色の獣らが今にも飛び出さんと態勢を低めながらじりじりと包囲を狭めていく。
だが、決定的な一歩を踏み込んでは来ない。
いや、踏み込めないのだ。
唸る獣らを威圧し、小屋へと近づけさせないモノがいるからだ。
『とく去れ、ケダモノども。死にたくなければな!』
その場に気迫のこもる念話が響く。
小屋を守るように、白くて巨大な猛禽が獣らを威嚇していた。翼を広げれば3 m以上ありそうな巨鳥だ。魔力を帯びていることから魔物とわかる。
それが屋根から獣らに睨みを効かせ、決して小屋の方へと踏み込ませない。
だが、状況は良くなかった。
獣らの数は5頭。体長は小型とはいえ、1 m以上はある。中にはリーダー格なのか、2 m近い個体もあった。
身体が大きいぶん白い鳥の方が威圧感はある。しかし、その体重まで考慮すれば獣の方が数倍だった。もし鳥が隙を見せ、獣に伸し掛かられればひとたまりもない。また、獣らには数の利もある。
普通の獣なら巨鳥の威圧に本能的に耐えられないが、灰色の獣らも生憎、魔力を纏う魔物だった。魔物ならばある程度知能が高い。鳥に隙さえできれば均衡が容易に崩れると分かっているのだ。
やがて、ひときわ体格の優れた個体が一瞬早く駆けた。
当然、巨鳥もそちらに反応する。
だがその次の瞬間、鳥の視界から外れた獣2頭が小屋へと走り寄り、距離を詰めた。こちらが本命なのだ。
出入り口や窓などは他よりも造りが脆い。数回獣に体当たりでもされれば壊れるだろう。
1頭が進入路をつくり、2頭目が室内に入り込み、それだけで室内は血の海になる。
巨鳥は誘導にひっかかったことにすぐさま気づいたが、既に割り込むだけの猶予はない。
更には残りの3頭もそれぞれ距離を詰めていた。特にリーダー個体は巨鳥に飛びかかろうと身をかがめる。
なすすべなく巨鳥が敗れるかと思えたが――。
『“切り裂け”!』
羽ばたき一閃。
それによって巻き起こった突風が魔力によって鎌鼬となり、獣らを襲う。
あたりに血しぶきが舞い、獣の悲鳴があがった。
巨鳥の魔法だ。
たまらず獣らは後退し、しかしそれでも懲りずに巨鳥を威嚇する。
異常な執着ぶりだった。
さすがに形勢不利と判断しそうなものだが、一向に獣らの戦意は削がれない。最悪の場合、他にも仲間がおり、それを頼みに食い下がっているのかもしれなかった。
『・・・必ず――。』
――守り抜いてみせる。
巨鳥は再び獣らを睨み下ろす。
手傷を負わせたとはいえ状況は変わらずギリギリだ。だが、巨鳥には絶対に退けない理由があるのだ。
――友にかつて誓った約束を。
『奴の宝に手出しはさせん。』
巨鳥は喉を震わせ、威嚇の声を上げた。
==========================================================================
全力疾走で十数分。
俺とアルが魔力の発生源に辿り着けば、灰色の魔物数頭ととデカい猛禽が交戦してた。
鳥の方はオオタカ、かな。ただしシルエットだけ。配色が違うし、めっちゃデカい。
背側の羽が真っ白で、腹側の羽毛が黄みのかった白だ。対照的に嘴と足が真っ黒で、細部はよく見えんが、中々カッコイイ。
灰色の方はウルフだ。
マジで二手に分かれてたんだな。
『おいおい、なんだよあれ。』
「鳥型と獣型の魔物が交戦してますね。」
『それは見りゃわかるよ。』
俺は思わず呆れてしまう。
今のは答えを求めて訊いたんじゃねえんだよ。
「なら、なぜ鳥型が小屋を守って戦っているのか、ですか?それは僕にも不明ですね。」
『だろうな・・・。』
アルちゃん、律儀だよね。
不用意な事言った俺も悪かったけどさ。
『で、どうする?』
「人を助けます。」
最速で急いできたけど、見たところ緊急性は低そうだ。あの鳥型がいるからな。
オオカミも小屋の方には手を出せてない。
ま、多勢に無勢で押し切られるのは時間の問題だろうが、アルが守りにまわれば鉄壁だ。
『んじゃあ、そっちは任せた。俺は白い方に味方して暴れてくる。』
「・・・程々に。」
なんかアルの微妙な表情が気になるけども――。
「ハクっ!」
『下がっていろ!』
あ、やべえ。
鳥型がオオカミに飛びかかられて体勢崩した。
ついでにシリンさんが飛び出してきて・・・!
わあ、ちょっと待って、待って。
今俺たちが助けてやるから、早まらないで!
第19話「約束」




