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2.2人の関係


 婚約者であるアイザックが剣術の訓練中に頭を打ったと聞いたのはつい先ほどだった。婚約者なのだから顔を合わせることも必要だろうとのイヴァーノの言葉で恒例となった、アイザックとの茶会のためにブライアント邸に到着したと同時に聞かされたのだ。

 茶会はひとまず取りやめにしてお見舞いをしようとアイザックの部屋に向かい、ノックをしようとした時にその言葉は聞こえてきた。

 つい先ほど起こった出来事のはずなのに、随分と長い時間が過ぎた様な気がする。

 婚約者がいないとはどういうことだろうか。


 レティシアとアイザックは婚約者同士であった。恋愛を経ての婚約――ではなく、王家から公爵家へと婿入りしたアイザックの祖父、イヴァーノの強い願いによるものだったと聞いている。

 イヴァーノとレティシアの祖母、サーシャは当時恋仲であった。しかし、サーシャはエイヴァリーノ伯爵家の1人娘であり、婿取りをしなければならなかった。

 王族であったイヴァーノが伯爵家に婿入りするなど周りが許すはずがなく、2人は泣く泣くお互い別の人生を歩むこととなった。

 それでもサーシャと何かしらの繋がりが欲しいと願ったイヴァーノは自らの子の代で婚姻を結ばせたいと願ったのだ。

 生まれる前より決まっていたその婚約は、本来は息子――レティシアとアイザックの父の代で結ばれる予定だったが女性が生まれなかったため、父の代を経てレティシアとアイザックで婚約が結ばれたのだという。エイヴァリーノ家に女児が誕生したと聞いた時、イヴァーノは涙して喜んだらしい。


「伯爵家との婚約が不服だったのね」


 自宅へと向かう馬車の中でぽつりと呟く。

 公爵家の嫡男と伯爵家の令嬢など(はな)から身分が違うのだ。釣り合っていないのはレティシアが一番分かっていた。

 女性として生まれたその時点で決まっていた婚約。公爵家からの申し出に伯爵家が断れるわけもなく、しょうがないと諦めていた。

 しかし、婚約を結んだからにはと公爵家に嫁ぐにふさわしい女性となるために礼儀作法から勉学まで努力をしてきたのに。


(何も言わなかったけど、()()()()嫌だったのね)


 いくら祖父の願いであろうと公爵家の嫡男であるアイザックが伯爵家との婚約を望んでいたなど考えられない。


(()()()()()()()()()()()()()()())


 馬車の窓から見える外を眺めながらため息を零した。

読んでくださりありがとうございます。

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