第二部 プロローグ
彼が居なくなって数ヶ月。
組織の様子は変わらない。
ただ、それは表面のこと。
実際は、彼が抜けた穴はかなり大きい。
今まで彼一人が請け負った任務が、多数の機関員を投入してこなさなければならないのだ。
ただでさえ人手不足気味の組織。今や、まだ練度の低い機関員を投入する始末だった。
だが、今は一段落もついた。
組織では一応、彼は行方不明になってはいる。しかし、もう死んでいるだろうという声がチラホラと聞こえているのも事実。
果てには、同行した仲間と駆け落ちしたという話がある始末。こちらの話は、主に女子機関員の中での話題だが。
彼の行う任務は特殊過ぎたのだ。
だが、死亡という扱いにならないのは、彼がそう簡単に死んだとは思えないからだろう。死体を確認しない限り。
そう……だから、生きていると信じている。
そして、今日。
その知らせを聞いた。
――彼は生きている。
電話口で、単身で探しに行った彼女は言った。
だが、彼女が言うには記憶を失っていたらしい。
つい最近、記憶が戻ったが、何故記憶を失ったのか覚えてないらしい。
話によると、発見された時に、頭部を怪我していたらしい。
頭を強くぶつけたかによる記憶喪失。
これが意味するのは、彼が任務中に攻撃をまともに喰らったということ。
彼の戦闘スキルは組織一。
相手は相当の手練れか、同行した仲間か。
そう、特殊任務に随行した仲間も行方不明。
もしかしたら、組織内に何らかの裏切り者がいるかもしれない。
これは、まだ上に通さない方がいい。
だが、何かあったら心配だ。護衛がいる。
……なら、近くで守れば。
そうと決まれば、彼女も連れて行こう。
何せ、彼女は一番彼に忠実だ。裏切る訳がない。何も考えてないのだから。
「という事で副長、今まで使わずに余りに余っている有給とか使って、しばらく休みます」
「……は? 今? 冗談よしてよ」
すみません。
もうしばらくかかりそうです。