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《メモリー!》4

「な、何ですかこれは!?」


驚愕。


「あなたの結界と似たよーなものなの」


そんな彼女を、ナインはふるふると見下すようにして頭を振った。


「まぁ、水溜まりとインド洋ぐらい比べものにならないぐらいのレベルの差なの」


いまいち意味の分からない例えは置いといて。


「とりあえず、やっとくか」


春樹はスッと開いた手のひらを上空に向けた。

そして、放出。

エネルギーの塊といっていい『何か』が、空に向かって放出される。

それは、彼女や薫の知る、魔力とは違う何か。


魔素マナなの」

「魔素……?」


ナインは、話にならないと言いたげに首をフルフル。


「魔力の源。魔法は、魔素を体内で魔力に変換して行使されるの」


そして、無表情でフッと鼻で笑い、


「そんなことも知らないで魔女っ子とは、聞いて呆れるの」


やがて、魔素の放出を終えた春樹は、晴れ晴れとした表情で戻ってくる。


「いや、久々だからスカッとした」

「なら、とっとと戻すとするの」


灰色の世界から、色が戻る。


非日常から日常へ。


「それで、あなた達はまだ私達と争いますか?」


奏は春樹が投げ出した愛銃の確認をしながら、太もものレッグホルスターにしまった。

スカートの中が見られないように。


「春樹君が記憶を取り戻した限り、あなた達には勝ち目がありません!」


人差し指を突き出し、自信満々に言い放つ。


「偉そうなの」


ナインは銀色のハンマーで奏を殴りつける。


「なにも出来ないぺーぺーの癖に、生意気なの」

「す、すいません……」


やはり、奏はナインに適わないみたいだった。

全く、何やってんだか。


「さて……」


呆れていた気持ちを切り替え、薫達を見据えた。

その鋭い目に、油断はない。


「それで、どーするんだ会長達は?」


戦闘の継続か、否か。

本来の監察官の彼女なら、躊躇いなく戦闘継続の選択をしていただろう。

だか、疲弊した彼女には戦う力は残されいない。

例え残っていても、一撃を与えることすら適わないだろう。

そして、元々薫はこの任務自体に疑問を感じていた。

正義の名の下に行われた、この暗殺計画を。

本来なら、魔法関連の事を一切知らない春樹を、魔力ゼロのイレギュラーな生命で、世界に影響を与える可能性のある魔物化け物の類いとして、問答無用で抹殺するはずだった。

結局のところ、失敗しているけど。

だが、それが本来に正義か?

問答無用で抹殺することが。


(違う……。正義、じゃない。私の信じた正義は!)


答えは決まった。


「……私は……私は、戦わない」

「なっ、薫さん!?なにを――」

「監察官。私はあなたがやり過ぎだと思います。あなたの正義は……私の正義と違いすぎる」


監察官の彼女が小さく唇を噛むのを一瞥し、薫は春樹の方へ歩き出す。


「それは、私達に対する裏切りと捉えますよ」


薫は歩みを止め、


「どうぞ、ご勝手に」


軽く一瞥し、春樹のもとに行った。


「いいのか?」

「えぇ、私は私の信じる正義を貫く」

「それもどうかと思うの」


バッと薫がナインの方を見る。

ナインは、何事もないようにハンマーを肩にかけていた。


「フフフ、いいでしょう。こちらも今度は全ての力で潰してあげます」

「無駄なことなの」


当然というような態度が癪に触ったのか、彼女は頬をひきつらせた。


「無駄?どこがですか?」

「全て」


その言葉は酷く冷たかった。


「ふざけるな!」


その言葉が、彼女の琴線に触れる。


「なら、古の魔女同盟全員連れてこればいいの。それでも、あなた達が勝てる見込みはゼロなの」

「そんなこと分からない!」


激昂する彼女を、フッと鼻で笑い、首を振る。


「戦って気付かないとは……とんだ馬鹿なの」

「――ッ!」


飛びかかろうとするが、疲弊で脚に力が入らない。

その場で片膝をつく。


「教えて上げるの。彼の力を」

「…………」

「彼の力は、『吸収』と『変換』なの。」

「吸収?変換?」

(なら、彼が魔力を吸収したのはそのため?)

「そうであり、そうでないの」

(思考を読まれた――!?)


薫は愕然として、隣に佇む少女を見る。

この少女、何者なのかと。


「彼はちょっと特別なの。魔素を吸収して魔力にするのと逆なの。魔力を吸収して魔素にするの。だから、他の生命体とは違って魔力は持たないの」


銀色のハンマーの柄で、屋上のコンクリートをカツンと叩く。


「そう、昔から続く計画の中で生まれたプロトタイプ。作られた人間なの」

「それがどうした!だったら吸収しきれなくなるまで攻撃して自滅させてやる!」


再び、ナインは首を振る。


「無駄なの。彼の吸収の力は無限の力と言ってもいいの。だから、魔力を使って勝つのは、無理なの」


そして、頷く。


「そう、彼を殺すには物理的にやるしかないの。エクスキャリバーや、村正、黄泉の三八とかの呪具か神器なら、頑張れば腕くらい持っていけるの」


有名な聖剣と伝説の銘刀。最後の物は、薫には分からなかった。

奏も知らないようで、首を傾げている。


「魔法で倒そうなんて、愚の骨頂なの。彼は、魔力が強い相手ほど、強くなるの」


こくこく。


「それでもやると言うなら、私は止めないの。勝手に死ねばいいの」

「……くっ」


彼女は、笑う脚を手で抑えながら何とか立つ。

そして、背中を向ける。


「絶対にこのままでは済まさない」


ポツリとそう言い残し、彼女は消えた。

残された最後の力だろう。


「まったく……甘チャンなの」

「ま、いいんじゃないか?どうせ無認可組織なんだし、明日には行政監査が入って潰れるだろ」

「世知辛い世の中なの」





くそ、くそ、クソぉ!!


なんだ黒い戦闘服のアイツ等は!


いきなり本部に押し掛けきたと思えば逮捕だと!

しかも、国家組織らしいし、この国はどうなっている!


仲間はほとんど捕まったか無力化された。

いとも簡単に。

そう、幹部ですら歯が立たなかった。

魔法で攻撃しても、それ以上の見たことのない魔法で無力化される。


まさに、悪夢。


古の魔女同盟は壊滅した。

悪の組織でもなく、この国によって。


「くそぉぉぉ!!」


拳で木を殴る。

痛い。血が出てる。

だが、怒りが勝る。


逃げれたのは偶然。


偶々、本部を出ていたのだ。


「これも、きっとアイツらが……!」


昨日の記憶。

異端児。

イレギュラー。

そしてバックの謎の組織。


このままで済まさない。

古の魔女同盟は自分しかもういないが、やり返す方法はある。

なりふり構っていられない。

一般人が巻き込まれようと知ることか!

アイツらの責任だ。


手から流れる血で描く幾何学模様の魔法陣。

ありったけの魔石。


「〜〜〜〜〜〜っ」


そして詠唱。


魔物を呼び出す召喚魔法。


魔法陣が光を放つ。


そして……、


現れる魔物達。

スライムやら触手やら狼やら蟻やら……。


うようよと。


異常なまでに。


(――!多すぎる!)


魔法陣からはまだ魔物達が出てくる。

術式中止しても、魔法陣は一人で展開する。

暴走していた。


そして、魔物の波は迫り、


「きゃあぁぁぁぁ……」


彼女を飲み込んだ。


しばらくすると、魔物の波は突如止まり、


――パン


魔物達が粒子と消えた。


残ったのは、怪しく光る魔法陣。

そして黒の三角帽子にローブ。彼女が身に着けていた衣服だけだった。

どうもお久しぶりです。


今回で、第一部は終了です。


まじっくがつく癖に、なんで魔法が出て来ないんだよ、と最初の方に思った方はすみません。


本当は、頭の中にあったストーリーは第二部なんです。


正義の味方を混沌に陥れる主人公、と行った感じで。


ああ、作中に出てきた可哀想な名もなき魔法少女。

いや、ほんとは名前つけるつもりが、出すタイミング見失っただけなんですよね。


さあ、次は第二部。

予定では新キャラ三人!

そして、前作と繋がりを!


なんて構成してます。


目指せお気に入り登録!


一話が長いとか短いとか、あと誤字……は分かってるからよしとして(よくない)、感想とかあったらお願いします。


やだと言う人はポイントだけでも……。


流石に、半年近く感想ないのは悲しい……。

いや、腕ないから仕方ないとは思ってますけど。


よし、感想が書かれるような小説にしよう!

日々精進!

就活なんか気にするな!


……無理、就活の合間に書こう。


当分、不定期更新です。

では、次のあとがきで!

多分、5月くらいか!?

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