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第九十七話 勇者と魔法少女

○7月3日水曜日午後5時 クローバー執務室○


 クローバーの執務室内に中年紳士と少年少女の姿が突然現れると、その部屋の主が早速声を掛ける。


「お帰りなさい、みなさん。

 一応お伺いしますが、依頼の方は上手く行きまして?中山さん。」


「ああ、勿論ですよ、中川さん。

 こいつ等の顔を見りゃ分かるでしょ。」


 満面の笑みの少女と顔の筋肉が緩みっぱなしの少年。


「そうですわね。

 じゃあ2人には後で話を聞かせて貰うから拠点部屋に戻っていて頂戴。

 それと緑山さんにこの部屋に来るように言っておいてくれるかしら。」


「ほ~い。」


「ふぁ~い。」


バタン


 2人が退室すると女性と中年紳士はソファに腰を下ろした。


「では早速依頼報酬であるジョブに関する情報のお話をしましょうか。

 と言っても、あの2人の様子を見たあなたならもう既にある程度の推察は出来ているとは思いますけど。」


「まあねぇ、ダンジョンコアにあんな機能なんて今まで無かったはずなんだが。

 といってもそれはそれ。

 早速そちらの持ってるジョブに関する情報を一から話して頂きましょうか。」


 中年紳士は鋭い視線を女性に飛ばす。


「ええ、分かっていますわ。

 まずこのジョブという力は3日前の深夜0時を境に神がこの地球に新たに導入したものの様です。

 そしてこのジョブの効果内容として今現在我々が把握しているものとしては、ジョブ自体の基本効果の他に関連スキルのレベル上限の解除。

 またスペシャルスキルの取得といったものがあります。」


 男性が頷きを一つ返すと女性は続ける。


「次にこのジョブというモノを取得する条件ですが2つほどあります。

 それはそのジョブに関連するスキルを取得している事とそのジョブを取り扱っているダンジョンのコアに触れる事です。」


「ふっ、どうりで俺には魔法少女や勇者なんていうジョブの選択肢が無かったはずだ。

 いや、悪い。続けてくれ。」


「はい、それで今回あなたへの報酬として我々が提示したジョブを取得するまでの道を示すという件ですが、我々ギルドクローバーにはジョブ診断をするスペシャリストがおります。

 彼女の能力があれば、貴方の所持スキルから取得可能なジョブを診断し、また何処のダンジョンでそのジョブが取り扱われているかという情報を得ることが出来ます。」


「なるほどな。それでようやく話が見えて来た。

 つまり桜嬢ちゃんと賢斗の奴はそのジョブ診断に従って、今回秋葉原ダンジョンと富士ダンジョンにまで行ったって訳か。」


「はい、ですから中山さんもこのジョブ診断を受けさえすれば、御自身の取得可能なジョブとそれを何処のダンジョンで入手できるかという情報を得ることが出来ます。

 まあそれには中山さんの所持スキル情報もこちらに開示して頂く事になってしまいますけど。」


「俺の所持スキル情報を晒さにゃならんってか・・・まっ、この際仕方ないか。

 美人鑑定士さん的にはスキル情報の守秘義務辺りは当然守ってくれるだろうしな。」


「ええ、それは勿論。」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○クローバー拠点部屋○


「お帰りなさい、賢斗さん、桜。

 ジョブを取得されに行かれたと聞きましたが、上手く行ったのでしょうか?」


「うん、私魔法少女になったんだよぉ~、円ちゃん。」


「ふっ、俺は勇者のジョブを手に入れたよ。」


「本当お2人とも羨ましいです。」


「円ちゃんも空中遊泳を取得すれば魔法少女に成れちゃうかもよぉ~。」


 おっ、先生、今日は良い事言うねぇ。


「はて、私が何時魔法少女になりたい等と申しましたか?

 私は魔法少女とは違う形で高ランクジョブの高みを目指す事に致しましょう。」


 いやさっき羨ましいとか言ってたよね?お嬢様。

 にしてもそこまでおんぶチャンスが大事かぁ?

 SSRランクのジョブ取得の方が比較にならんほどの価値があるだろうに。


「やっぱり勇者さまは勇者さまでしたぁ。何だか見ているだけでキュンキュンしてきますぅ。」


 いえ、見た目は変わってないですよ、巫女様。


「あっ、緑山さん。中川さんから緑山さんに執務室へ直ぐ来るように言ってくれって頼まれたんだけど。」


「そうなんですか?折角勇者さまがお戻りになられたというのに。しょぼ~ん。」


 肩を落とした少女は部屋を出て行った。


「それで賢斗君。そのすんごいSSRランクジョブの能力ってどんな感じなの?」


 ふっふっふ、聞いちゃいましたね?先輩。


「それじゃあみんなに分かり易い様、今日は俺もパソコン使ってプリントアウトしてあげましょう。」


 なんてったって今日は俺が勇者になった記念日。

 嘗てない程に今の俺はご機嫌ですからねぇ♪


カチカチカチ・・・ウィーン


 ほい。


~~~~~~~~~~~~~~

『勇者LV1(0%)』

ランク :SSR

ジョブ効果 :全ステータスパラメータ10%上昇。

【関連スキル】

『片手剣LV3(9%)』

『限界突破LV8(22%)』

『魔力操作LV7(77%)』

『回復魔法LV3(20%)』

『九死一生LV10(0%)』

『明鏡止水LV1(25%)』

【スペシャルスキル】

『勇者オーラ』

種類 :アクティブ

効果 :全ての攻撃を防ぐオーラをその身に纏う。効果時間3分。クールタイム24時間。

『極限勇者チャージ』

種類 :アクティブ

効果 :意識を集中しその集中力の高まりに比例して自身の攻撃力を上げる事が出来る。発動条件はHPが10分の1以下。

~~~~~~~~~~~~~~


 さあみなさんご覧あれ、この紛う事無き正真正銘の勇者能力。

 全ステータスパラメータ10%上昇という基礎能力に加え、完全無敵状態になる勇者オーラ、そしてピンチになると大攻撃を繰り出せる極限勇者チャージという2つのスペシャルスキル。

 この上無く勇者チックに仕上がったジョブに拙者も絶賛大満足中でござるぅ♪


「ねぇ、賢斗君。この九死一生がレベル10で習熟率が0%に戻ってるけど、これがレベル上限が解除されたって事を意味するの?」


「ああ、それはそうなんじゃないですかねぇ。」


 でもジョブを取得して直ぐこの辺の確認が出来るのは解析持ちくらいだろうなぁ。

 鑑定じゃこの習熟率は分からない訳だし。

 となるとうちのボスのジョブ診断を商売として成立させる構想には、解析スキル持ちも居た方が良いかも知れない。

 スキル取得講座でもステータス鑑定がセットになってたし、ああいうアフターケアは結構助かるしなぁ。


「でもそうなるとレベル10になってるスキルをそのままにしておくのは何か勿体ない気がしてくるわねぇ。

 賢斗君、次の攻略目標は襟裳岬ダンジョンよっ。」


「いやあそこはCランクですから、今の俺達じゃ門前払いを喰らいますって。」


「え~だって私も早くジョブが欲しいのよぉ~。」


「分かりました、先輩。では早速白山ダンジョンに向かいましょう。

 セクシーギャルが・・・うっ。」


 瞬間少女の鋭く冷たい視線が少年を貫いた。


 いや、冗談ですから・・・そんな怒らなくても。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○クローバー執務室○


「EXRランクにLRランク、それで今回桜嬢ちゃんと賢坊の取得したジョブは8段階中上から3番目の高ランクであるSSRランクって訳か。」


「ええ、そしてまた傾向として高ランクジョブ程そのジョブを取り扱っているダンジョンの攻略難易度も高くなっているようです。」


ガチャリ


「中川さん、お呼びでしょうか?」


「ええ、緑山さん。待ってたわよ。

 早速で悪いんだけど、こちらの男性のジョブ診断をお願いできるかしら?」


「あっ、はい。良いですよ。今日はまだキュンキュンパワーに余裕がありますから。」


「おいおいここのギルドの女性は美人と美少女しか居ないのか?

 ったく、世の中の探プロにはむさい男連中ばっかのとこが多いってのに。」


「あら、お気に召しましたか?

 Sランク探索者の中山さんなら何時でもこちらに遊びにいらしてくれて構いませんわよ。」


「おっ、そうかい?」


ペチッ、クルッ


 少女は中年紳士の両頬に掌を当てるとそっぽを向いた顔を自分に向けた。


「少しこちらを向いていて下さいませ。」


「おっ、おう。」


 少女は男性の額に掌を当てると瞼を閉じた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○クローバー拠点部屋○


「賢斗ぉ~、私の魔法少女も解析してみてぇ~。」


「おう、任せとけ。」


 えっ・・・これまた凄すぎない?


 少年は少女に一枚のプリントを渡す。


~~~~~~~~~~~~~~

『魔法少女LV1(0%)』

ランク :SSR

ジョブ効果 :レベルアップ時の成長型が魔法特化型になる。

【関連スキル】

『杖術LV2(3%)』

『火魔法LV10(0%)』

『水魔法LV3(31%)』

『空間魔法LV6(44%)』

『限界突破LV8(73%)』

『MP高速回復LV10(0%)』

『魔力操作LV10(0%)』

『空中遊泳LV3(33%)』

【スペシャルスキル】

『オリジナル魔法:魔法少女変身』

効果1 :姿かたちが少女となり、イメージした魔法少女専用コスチュームを装着する。効果時間3分。クールタイム6時間。

効果2 :変身時は魔法攻撃力、魔法防御力が通常時の2倍になる。

効果3 :変身時、動作にキラキラエフェクトが入る。

~~~~~~~~~~~~~~


 う~む、ここで特筆すべきは魔法少女に変身するとコスチュームチェンジによる装備強化で魔法攻撃力が2倍になる点だろう。

 この効果により恐らく現状俺達の最大火力であるマキシマムの威力が更に2倍に跳ね上がってしまうだろうしな。

 でもこんなジョブを手に入れてしまっては、一気に高ランクのダンジョンの攻略をさせられてしまいそうな気がしてならないんだが。


「なんかこれ一気に戦力アップしてませんかぁ?

 これならもっと高いランクのダンジョンも攻略できそうですねぇ。

 この件は先生にもしっかりお伝えしておかないと。」


 くっ、水島さん・・・何時の間に。


「へんし~ん。」


ピカ―――


 うわっ、眩しいっ!


 何やってんだ?先生、こんな部屋の中で。


 眩い光が収まると魔法少女が現れた。


 お~、全体的に薄ピンク色のパステル調に変化。

 額には金色のティアラを装着し、トップの衣装は胸の谷間と肩まで露出するサービス振り。

 下は薄ピンクのフリフリミニスカート仕様と絶対領域を形成する膝上まである白いロングブーツ。

 羽織った薄紫のマントは下の方が大きくジグザグにカットされ、手には星型のオブジェが付いたステッキ。


 これは絵に書いた様な魔法少女だな、うん。


「賢斗ぉ~。どっかなぁ~、これ。違うデザインにもできるけど。キラッ。」


 おおっ、今ニコッとした時何か光ったぞ。

 これがキラキラエフェクトって奴なのか?

 ・・・実にあざとい。

 まあそれはそれとして、このコスチュームって桜が自分でデザインしたって事なんだよなぁ。

 何処の魔法少女をイメージしたか知らんが、ここまで露出度アップのサービスをしてくれるとは・・・


「うん、それで・・・いやそのままが良い。」


「そっかぁ~、賢斗が気に入ったんならこれにしとくぅ~。」


 ここは素直に感謝しておくとしよう。

 が、できればこの姿を他の野郎共にはお見せしたくないな、うん。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○クローバー執務室○


「はい、診断は終わりました。こちらをどうぞ。」


 男性は少女から差し出されたプリントを受け取る。


「ふむ、俺の取得可能な最高ランクのジョブはSSRランクのソードマスターって奴か。」


「はい、そちらの取扱ダンジョンは山口県の巌流島ダンジョン、日本国内ではそこだけになっていますよ。」


「おう、有難うな、嬢ちゃん。

 でもそういやあそこはまだ攻略してなかったっけ。

 この後ちょっと行ってくるか。」


「ではこれで契約報酬のジョブに関する情報は以上という事で宜しいでしょうか?」


「ん、まあそうだな。

 ジョブに関する情報としてはこれで満足した。

 が、一つ聞いていいか?

 確か桜の嬢ちゃんと賢坊の取得したジョブもSSRランクだったよな?

 あいつ等ってまだどう見積もっても探索者に成って2月やそこ等だろう。

 Sランクのこの俺でさえやっとSSRランクジョブの関連スキル条件を満たしているというのに、あの2人の所持スキルはどうなってんだ?」


「その質問にはお答えしかねますわね。

 その件はジョブに関する情報には含まれないお話ですし。

 でもまあどうしてもと仰るなら、中山さんにも我々のギルドに入って頂く事になりますけど。」


「そういう事ならその話は遠慮しとこうか。

 そこまで他人のスキルに興味があるって訳でも無いしな。

 まあ別嬪さん揃いのこの事務所には魅力を感じるが。」


「それは残念。でもSランクの貴方なら何時でもこちらは歓迎させて頂きますわよ。」


「ふっ、まあまた新たなスキルを取得した時にはこのジョブ診断って奴を受けた方が良さそうだし、近い内に寄らせて貰う事もあるかもな。」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○クローバー拠点部屋○


 少年はふとテーブルの上に置かれた一枚のプリント用紙に目をやる。


「なあ、そのジョブ診断結果は誰のだ?」


「それは賢斗さん達が居ない間に茜さんに小太郎を診て頂いた結果です。」


 ほう、小太郎?

 子猫にもジョブなんてものが・・・


********************

≪選択可能ジョブ≫

【ランク SSR】

『猫仙人』 必要スキル:羽化登仙


【ランク HN】

『下忍猫』 必要スキル:忍術

********************


 あるんだな、ちゃんと。

 つか飼主がRランク止まりで飼い猫のジョブがSSRランクってどうよ?


「この猫仙人ジョブの取扱ダンジョンは中国の湖北省にある赤壁ダンジョンで取り扱っているそうです。

 いつかそこへも小太郎の為に行ってみなくてはいけなくなりましたね、賢斗さん。」


 あっ、そう・・・と言われてもなぁ、どうせそこもAランク相当のダンジョンだろぉ?

 しかも日本じゃねぇし。


「小太郎、お前もジョブが欲しいのか?」


「おいらは何時でも欲しがりさんだにゃ。」


 う~ん・・・


「食い物じゃねぇぞ。」


「にゃっ・・・じゃあ要らないにゃ~。」


 やっぱ勘違いしてたか。

次回、第九十八話 ジョブレベルの上げ方。

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[良い点] キャラが魅力的。みんな好き。 インフレ具合が適度でいい。主人公が活躍した方が楽しめるけど、俺ツエーだけだと世界全体の凄さが下がっちゃって面白くない。そのあたりがちょうどいい。 [気になる点…
[良い点] 流石SSRジョブ なかなかのぶっ壊れ性能ですね。 むしろぶっ壊れ性能だからこそのSSRジョブかな? まあ、普通の人ならスクロール購入しないと獲得出来ない魔法スキルや、運良く恩恵習得出来…
[一言] TSは男の夢
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