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第九十四話 神界パーフェクトジョブ診断

○7月1日月曜日午後4時 クローバー拠点部屋○


 お祭りの日の翌日。

 拠点部屋には、カジュアルな出で立ちの緑山さんを囲みギルドクローバーの面々が一同に会していた。


「それじゃあ緑山さん。

 先ずは私からその神界パーフェクトジョブ診断というのをやってみてくれるかしら。」


 ようやく神界パーフェクトジョブ診断がどのようなモノか分かるのか。

 ったく、昨日は良いとこで妨害されちまったからなぁ。

 ・・・手に頬ずりするくらい何て事無かろうに。


「はい、畏まりました。

 では中川さん、少し失礼します。」


 メガネを掛けた女性が指示を出すと、少女は彼女の額に手を伸ばし瞼を閉じた。

 そしてしばらくすると少女は女性の額から手を離す。


「少しそこのパソコンをお借りして良いですか?

 記載した方が分かり易いと思うので。」


「あらそう、好きに使って頂戴。」


カチカチカチ・・・ウィーン


「出来ました。これが中川さんの選択可能ジョブの診断結果です。」


 少女が声を上げ女性に一枚のプリントを渡すと、その場に居る全員の顔がどっと押し寄せた。


********************

≪選択可能ジョブ≫


【ランク HR】

『マルチアナライザー』 必要スキル:解析、鑑定


【ランク R】

『解析者』 必要スキル:解析


【ランク HN】

『鑑定士』 必要スキル:鑑定


【ランク N】

『酒豪』 必要スキル:酒豪

『頑張り屋』 必要スキル:不眠不休

********************


 おお、これが神界パーフェクトジョブ診断の結果という奴か、ふむふむ。

 ハイレアにレア、ハイノーマルにノーマルが2つで計5つ。

 ボスは確かスキルを6つ程所持していた筈だからこれは平均的な探索者のスキル所持数と同等。

 このジョブ診断結果は、探索者的に見てもそのジョブランクや数の平均値って考えていいのかな?

 まあ一概には言えないだろうけど。

 しかしうちのボスはスキルキャンセラーなんつーレアなスキルを持ってたはずだけど・・・

 あっ、そういや緑山さんがスキルに対応したジョブが無いケースもあるって言ってたな。


「ひとつ伺って良いかしら?緑山さん。

 このジョブというものは、幾つも取得できるものなの?」


「あっ、はい。複数取得する事自体は可能です。

 ですがその際には注意が必要となります。

 仮に既にジョブの関連スキルとなっているものが含まれるジョブを新たに取得したとしましょう。

 すると既存のジョブは消滅し、そのジョブ効果やスペシャルスキル等も失われてしまいます。

 またジョブレベルに関しては、同ランクのジョブであればそのジョブレベルが引き継がれるのですが、高ランクのジョブを取得した場合には総じてそのレベルが下がります。

 とはいえ一度上げた関連スキルのレベルに関してはそのまま維持されるといった感じだそうです。」


 ふ~ん、重複スキルがあるジョブは同時取得できないって事か。

 といっても高ランクのジョブを取得し直すってのは有りだろう。

 ジョブレベルもある程度還元されるみたいだし、より強力なジョブ効果やスペシャルスキルが手に入る気がするしな。


「あら、そうなの。

 あとこのマルチアナライザーというジョブは何処のダンジョンへ行けば取得できるのかしら?」


 そういや神界星域ジョブ通信でその辺も教えて貰えるんだったな。


「はい、マルチアナライザーについては、この日本でも何か所かありますが、一番近いところでは那須ダンジョンになるでしょうか。」


 ん、那須ダンジョンってどっかで・・・ああ、モンチャレ決勝進出で貰った温泉ツアーの行先だった様な?


「そう、なら丁度良かったわ。有難う、緑山さん。」


 何が丁度良いのだろう・・・こちとら嫌な予感しかしないんだが。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「じゃあ次は誰を見て貰いましょうか?」


「はぁ~い。京子ちゃん、次私ぃ~。」


 おっ、次は桜か。

 先生は凄いスキルを色々持ってるからな・・・

 ふふっ、はてさてどんなジョブが飛び出しますやら。


カチカチカチ・・・ウィーン


「出来ましたよ。桜さんの選択可能ジョブはこちらになります。」


********************

≪選択可能ジョブ≫

【ランク SSR】

『魔法少女』 必要スキル:杖術、火魔法、水魔法、空間魔法、限界突破、MP高速回復、魔力操作、空中遊泳


【ランク SR】

『大魔法使い』 必要スキル:杖術、火魔法、水魔法、空間魔法、MP高速回復、魔力操作


【ランク HR】

『魔女』 必要スキル:杖術、火魔法、水魔法、空中遊泳

『一流魔法使い』 必要スキル:杖術、火魔法、水魔法、MP高速回復


【ランク R】

『解析者』 必要スキル:解析


【ランク HN】

『魔法使い』 必要スキル:杖術、火魔法、水魔法


【ランク N】

『念話士』 必要スキル:念話

『採取者』 必要スキル:採取

『猫愛好家』 必要スキル:猫語

********************


 うぉっ!SSRランクのジョブがあるぞ。

 それにこのジョブ数・・・流石にこれって普通じゃないよな?


「ねぇ緑山さん、このランクSSRって、どのくらい凄いのかしら?」


 あっ、でも緑山さんのジョブも確かSSRだったな。

 もしかしてそこまで凄くないとか・・・

 う~ん、サンプル数が3人という現状からして判断できる段階ではないのだが。


「あっ、はい。SSRランクのジョブ取得に到達出来る人は初期段階で数千から1億人に一人程度を想定していると神様は仰っていましたけど。」


 えっ!やっぱ凄いじゃん、SSRランク。

 にしてもじゃあ1億人に一人の逸材がここに2人も居るって事か?


「あらそうなの。じゃあもしかして、SSRの上なんかも存在する?」


「はい、SSRランクの上にはLRランク、EXRランクもあるそうです。

 でもそちらは特に導入が遅れているみたいで、これから徐々にと仰っていました。」


「ねぇ、茜ちゃん。魔法少女って何処のダンジョンに行けばいいのぉ?」


「はい、それなら日本にも一か所だけありますよ。

 東京の秋葉原ダンジョンです。」


「えっとあそこのダンジョンはBランクの洞窟型で全32階層。

 Aランク探索者の方でも攻略認定を受けた方が数人居たと思います。」


 水島さん良く知ってんなぁ・・・流石勉強しているだけある。

 にしても日本のトップクラスの探索者がようやく数人攻略できる程度のダンジョンじゃ、このジョブを取得しに行くのは何時になる事やら。


「そう、なら光、大至急そのうちの誰かを押えて依頼を出しなさい。

 うちの小田さんを秋葉原ダンジョンの最下層のダンジョンコアの部屋まで連れて行ってくれって。」


 えっ、マジで?


「ねぇ、京子ちゃん。取りに行かせてくれるのぉ~?」


「ええ、そうよ小田さん。

 是非早急にこのジョブというものを取得して頂戴。」


「やったぁ~。」


 Aランク探索者に指名依頼って、一体幾ら掛かるんだろう?


「いい?みんな。

 我がギルドクローバーとしては、ここに居る全員のジョブ取得にこれから全力で取り組んで行くわよ。」


「それって俺達のジョブ取得についても高ランク探索者への依頼といった形でバックアップしてくれるって事ですか?」


「いやまあ流石に全員は厳しいわね。

 でも可能な限りと言っておこうかしら。

 Bランクダンジョンの最下層攻略なんて、流石のあなた達でも今は無理でしょ。」


 ううん、ボス。流石とか言わないで下さいよぉ。

 全く以て無理ですからっ♪


「でも可能な所であればあなた達ナイスキャッチの出番よ。」


 えっ、これはもしかしてここに居る皆の分のダンジョン攻略を基本的には俺達が全て請け負うって話だろうか?

 何やらさっきの那須ダンジョンについての悪い予感が当りそうになって来たでござる。


「昨日解禁されたジョブシステム、この情報はまだ世間的には広まっていない筈。

 仮令たとえジョブを取得した者が現れようと、まだよく分からないこのジョブというものを最初の内は誰もが訝しむでしょう。

 そして実際に多くの人々がジョブの取得に乗り出すのは当分先になるんじゃないかしら。」


 でしょうね。


「でも私達はここまで詳細なジョブに関する情報を得て、かつ、動き出す事が出来る。

 確かにまだこのジョブというものの力がどれ程のものか分かっていない現状、将来的にこれがどのくらいの価値を生み出すのかは分からない。

 でも私にはこれが嵐の前の静けさの様なものに感じるわ。

 そしてこういう時は決まって迷わず勝負を掛けるべきなの。」


 言ってる事は分かる。

 ジョブレベルが上がればその分スキルの上限も解除される。

 勿論その恩恵がどの程度のものかまだ分かっちゃいないが、先んずれば人を制すとも言うからな。

 他の探索者より先にジョブによるメリットを享受できるならば、それは早いに越したことはない。

 にしてもうちのボスのこの勝負勘と決断力には恐れ入るよな。


「といってもそんなにうちの資金が潤沢という訳でもないし、掛かった費用分のお仕事はこれからして貰う事になるわよ。」


 まあこういうとこもある人だけど。


「りょ~か~い。」


 おい、先生、大事な返答はもっと慎重にしなさいっ。

 これから先のお仕事とかが断り辛くなっちゃうでしょ。


「という訳でどんどん皆のジョブ診断を続けて頂戴、緑山さん。」


「あっ、はい。ですがその前に・・・」


 少女は少年の手を取ると、頬にスリスリ・・・


「ねぇ、ちょっと茜。それ絶対必要なの?」


「はい、勿論です、かおるお姉さま。

 こうしてキュンキュンパワーを貯めないと私のスペシャルスキルは使えませんので。

 うふっ、なんていい子なんでしょう。キュンキュン。」


 あ~そういや服部の従妹がキュンキュンついてない奴取得したって言ってたなぁ。

 今頃どうなってんだろ。


「「「「「・・・。」」」」」


 ・・・いや俺は悪くないだろっ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○10分後○


「はい、チャージ完了です。

 次はどなたのジョブ診断をしましょうか?」


「では次は蓬莱さんを診てやって、緑山さん。」


「畏まりました。」


 おっ、次は円ちゃんか。


 としばらく待っていると・・・


「はい、円さんの選択可能ジョブはこちらになります。」


********************

≪選択可能ジョブ≫


【ランク R】

『マッピングの達人』 必要スキル:パーフェクトマッピング

『解析者』 必要スキル:解析


【ランク N】

『念話士』 必要スキル:念話

『尻使い』 必要スキル:ヒッププッシュ

『猫愛好家』 必要スキル:猫語

********************


 ハハ~、何か落ち着いちゃったなぁ。

 にしても桜の後にこれじゃ、お嬢様のご機嫌が悪くなっちまいそう。


「茜さん、これは可笑しいです。

 桜にはSSRランクのジョブが診断されていたというのに、私のには載っていませんよ?」


 いや現実を受け入れろ、円ちゃん。

 SSRランクなんてのは1億人に一人だって言っていただろぉ?

 先生が異常なだけなんです、うんうん。

 それに後に控える俺と先輩に変なプレッシャーが掛からなくなったのは寧ろ僥倖。

 いや~良かった良かった。


「ええまあそれはそうですが、これは今現在の所持スキルにおける診断結果に過ぎないものです。

 今後スキルが増えれば、また違った診断結果が出ると思いますからそう悲観される事はないですよ。」


 確かに俺達なら比較的容易にスキルを増やすことが可能である。

 そしてこの事実を前にすれば、桜の魔法少女ジョブに必要とされているスキルはどれも今後的に取得可能と言えるものばかり。

 こうしてジョブに必要なスキルさえ分かれば、能動的にスキルを取得しSSRランクのジョブですら獲得していく事も可能という事になるのだが・・・

 う~ん、いいのかな?

 俺達が1億人に一人の神様設定を崩しかねないんだが。


「そうですか。分かりました。」


 それはそうと桜と円ちゃんの診断結果を見る限り、彼女達の代名詞とも言えるラッキードロップやキャットクイーンがまだジョブ化されていない。

 これはひょっとするとこの2つのスキルは導入が先送りとなっているLRランクやEXRランクジョブに何か関係しているのかも?

 まっ、そんな保証は何処にもないけど。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「じゃあ次は誰を診て貰おうかしら?」


「あっ、済みません、中川さん。

 今日はもうキュンキュンパワーが限界の様です。

 出来ればこの続きは明日にして欲しいのですが?」


「あら、そうなの?残念ね。」


「済みません。ジョブレベルが低い間は急速チャージは1日1回まで。

 無理をすると精神崩壊を引き起こすと言われましたので。」


 精神崩壊って・・・この神界パーフェクトジョブ診断って精神的にかなり消耗してしまうものなのか。

 まあ仕組みは良く分からんが、神様と交信するってのは人への負担も大きいのかもしれないな。

 よく見りゃ緑山さんもちょっとお疲れ気味な感じがするし。


「分かったわ。そういう事ならまた明日って事にしましょ。

 でも今後もずっとこのままというのは少し困るわねぇ。

 この診断情報は間違いなく貴重なお宝よ。

 だから緑山さんにはこの力を使ってこれから多くの人々の診断をして貰い、このお宝情報を収集して欲しいの。

 勿論その為のサポートは当然するし、診断された人からもお金を取れるだろうから報酬も弾むわよ。

 でもあなたが一日3人程度の診断で音を上げている様だとこの商売を成立させるのがちょっと厳しいのよね。」


 へっ、商売?

 う~ん、流石の抜け目なさだな・・・もうそんなとこまで考えていたのか。

 とはいえ確かにこれからこの診断を受けたいって人の数は計り知れないだろうな。

次回、第九十五話 勇者ジョブ降臨。

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― 新着の感想 ―
[一言] 気づいたか魔法少女や魔女の条件に性別が無いことを つまり男でも魔法少女や魔女になれると言うことだ
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