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第七話 三人目のパーティーメンバー

○2つの特技の運用方法○


 午後5時半、賢斗は白山ダンジョン協会支部に居た。


「すいませ~ん、進入申請お願いしま~す」


 昨日の探索を終えてからも賢斗はアパートや学校でドキドキエンジンとドキドキジェットを発動しその検証を続けていた。

 そして得た検証結果は以下の2つ。


 ドキドキエンジン・・・効果時間30分、クールタイム1時間。途中でドキドキジェットを発動するとその終了時間とともに終了する。

 ドキドキジェット・・・効果時間3分、クールタイム5時間。発動はドキドキエンジンの効果時間内に限られる。


 結果からしてこの2つの特技の運用に於いてはドキドキエンジンの効果時間終了3分前にドキドキジェットを発動するのが一番効率が良い。


「はい、探索者証の方はもう結構ですよ」


「それでは帰還予定の方が午後8時ですね。お気をつけて」


 この時点の賢斗はそんな一つの答えにもう既に辿り着いていた。

 そしてこの運用方法は彼の今後のダンジョン活動に於いて常に頭に置かれる様になる。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○白山ダンジョン 大岩ポイント○


 時間的にはこれから探索者の帰還ラッシュが始まる頃合い。

 目的の大岩ポイントまでは入り口から50m程であるが、早くも通り掛かった1組の探索者パーティーを賢斗は潜伏スキルでやり過ごしていた。


 おおっ、目の前通ってんのに結構ばれないもんだな。

 まあ出口手前であっちの気が緩んでるってのもありそうだけど。


 その後大岩ポイントに到着すると早速岩陰に身を潜める。


 常時発動型のパッシブスキルについては、習熟といっても敢えて何かするという必要は無いよなぁ。

 潜伏については大岩前の通路に通行があった時だけ発動すれば良いし。

 となれば通行人がいない時間は解析スキルの習熟に充てるか、うんうん。


 頭の中を整理しスマホの時計を確認すると賢斗はテンションタイムをスタートさせた。


 20分を過ぎた頃になると彼の頭にアナウンスが聞こえた。


『ピロリン。スキル『解析』がレベル2になりました。』


 おっ、やった。


チラッ


 25分か・・・ちょっと早いがそろそろ行っとくか。


 ドキドキジェット、発動っ!


ドッドッドッキィィィィィィィィ・・・・・・・・・・・・・・


『ピロリン。スキル『パーフェクトマッピング』がレベル4になりました。』


『ピロリン。スキル『潜伏』がレベル3になりました。』


『ピロリン。スキル『視覚強化』がレベル3になりました。』


 いや~やっぱり発動と同時にスキルがレベルアップするこの感じは最高ですなぁ。

 とはいえもう一っこくらい解析も上げときたいところだな。


 それっ。


『ピロリン。スキル『解析』がレベル3になりました。』


 わぉ♡


 もう一回。


 ・・・流石に無理か。


 っといけない、このままでは聴覚強化を習熟取得する時間が無くなってしまう。

 ハイテンションタイムのお手軽感を知っちゃうとテンションタイムでスキルを習熟取得する気にならないもんなぁ。


 賢斗が聴覚強化の習熟行動を始めると直ぐに脳内アナウンスが訪れた。


『ピロリン。スキル『聴覚強化』を獲得しました。』


 うんうん・・・まあ視覚強化と同じ要領だし、楽勝楽勝。


ドッドッドクドク、ドクン、ドクン、ドックン、ドックン


 ハイテンションタイムは上々の結果の下に無事終了。


 にしても次は何を取得しよっかなぁ・・・ちょっと良さ気なのを考えとかないと。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○幽霊部の噂○


 翌日の高校のお昼休み。

 賢斗は自分の席で菓子パンをパクつきながらそれをコーヒー牛乳で流し込む。


 ゴブリンの魔石は1個400円。

 月の生活費の最低限度額8万円を貯めるには200体のゴブリン討伐が必要。

 う~ん・・・とても現実的じゃないな。


 昼食を取りつつ思案に暮れていた賢斗にモリショーが声を掛けてきた。


「賢斗っちは、部活決まったっしょ~?」


 この現実を前に部活など有り得ん。


「そういうお前はどうなんだ?」


 この分じゃ間違いなく月末アウトだし。


「ふっふ~ん、俺はなんとこの学校の3年に学校一のマドンナが居るという強力な情報をゲットしたっしょー」


 どっからだよっ。


「で、それの何処にお前の部活選びとの関係があるんだ?」


「そりゃ勿論マドンナと同じ部活に入ればワンチャンあるかもしれないっしょ~?」


 ある訳ねぇだろっ、そんなもん。


「でもその部活にちょっち問題がありましてぇー。

 なんでもスキル関連の部活らしいんだけど存在自体怪しい幽霊部で、何処で活動しているか全く情報が掴めないっしょー」


 なんだろう、その部活、知っている気がする。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○美人の先輩とダンジョンでするちょっぴり恥ずかしいこと その2○


 放課後前日約束した紺野と校門で待ち合わせた賢斗は一緒に白山ダンジョンへと向かった。

 そしてダンジョンに入ると今回の目的に於いて最適と彼が判断した何時もの大岩の陰に彼女をご案内。


「ふ~ん。結構いいポイントね。周りから見えないし丁度いいかも」


 そうでしょうそうでしょう。

 ここなら二人きりで恥ずかしいことをし放題ですぞ。


「はい、俺もこのポイント気に入ってるんですよ。

 潜伏スキルとかの習熟にもかなり良いポイントなんで」


「えっ、潜伏スキル?」


「はい、理由はここに居れば分かりますよ」


 そこにタイミング良く大岩前の通路を探索者パーティーが通り掛かった。

 気付いた賢斗は口に人差し指を立て彼女に沈黙を促す。

 そして探索者達の足音が遠ざかっていくと彼の沈黙ジェスチャーも終わりを迎えた。


「今のが潜伏スキルの習熟方法なの?」


「ええまあ多分。

 この方法で俺は習熟取得できましたし恐らく間違いないです」


「・・・なんか今、凄い借りができちゃった気がするんだけど」


 紺野は少し困った顔で賢斗をじっと見つめた。


「あっ、いや気にしないでください。

 ここに連れてきたのは俺なんですから」


 少し気遣ってみせる賢斗だったが、依然として彼女の顔は晴れていない。


「う~ん、見たところ、君の武器はその棍棒なのかな?」


「えっ、あっ、はい。

 武器を買うお金がまだなくてゴブリンのドロップしたこれを使ってるんすよ」


 あ~やっぱこんなゴブリン棍棒使ってると気になっちゃいますよねぇ。

 そんな奴と一緒にダンジョン入るとか嫌がる人だって居そうし。


「だったら私のお古で悪いけど、前に使っていた短剣を君にあげる。

 今度持ってくるから今回の対価として受け取って」


 えっ、嘘っ、この美人の先輩が使っていた短剣だと?

 そんなの新品の短剣より全然価値が高いだろっ。

 なんたる幸運、らっき~♪


 って待て待て。


 あんな簡単な潜伏の習熟方法の対価が何万円もする短剣つぅのは流石にどうなんだ?

 俺の感覚からしたらあり得んのだが・・・


 となるとこれはやはり真面な武器も買えずゴブリン棍棒なんかを使っている俺を哀れんで・・・あ~何か悲しくなってきた。


 コロコロと変わる賢斗の表情を紺野は楽し気に見つめていた。


「クスッ、そんなに気にしなくて良いわよ。

 私はもうあの短剣は使わないし」


「いやでも何か悪いですよ」


 対価として全く釣り合いが取れてないこの申し出、めっちゃ欲しいがここは遠慮しとくのが普通だよな。


「先に借りを押し付けてきたのは君の方なんだぞ?

 だから断っちゃだぁ~め。ウフッ」


 いや俺だって好きでお断りしているわけでは・・・

 う~ん、ホントに貰っちゃって良いのかな?

 しかしこれでは逆に俺の方がかなりの借りを背負わされてしまった感じに・・・


 言葉に窮する賢斗を微笑ましく見つめていた紺野。


「はいはい、それより早く今日の本題に入りましょ」


 彼女は彼の返事を待つことは諦め、もう既に話は終わったとばかりに話題を次に進めるのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○美人の先輩とダンジョンでするちょっぴり恥ずかしいこと その3○


 さてその本題である念話スキルの習熟へ移行すると紺野は賢斗の両肩に手をやり二人は大岩の陰で向き合う形になった。


「じゃあちょっと目を閉じててくれるかな?」


 えっ、嘘っ、ホントに?

 念話スキルの習熟方法の正体はキス?

 いやでもちょっぴり恥ずかしいとか言ってたしこのシチュエーションは間違いない。

 そしてこんな美人さんが俺のファーストキスのお相手とか俺って果報者だな、うんうん。


「早く目を瞑って」


「はいっ♪」


 硬く目を閉じる賢斗。


 いや~、緊張して来ちゃいましたぁ。


ドキドキドキドキ・・・・・・・・・・


 それに対し紺野は左手で彼の前髪を上に押し上げる。


 初めてなんでよろしくお願いします。


 少し背伸びをした彼女は賢斗の額に自分の額を優しく触れさせた。


 あれ・・・これキスじゃないじゃん。

 折角心の準備をしてたってのに・・・いや待て。

 今ってどんな状況だ?

 何か・・・凄くいい匂いがする。


 賢斗が薄目を開けると目前には目を瞑った紺野の顔。


 うわっ、顔近過ぎっ。


 小さな息遣いまで感じる程の距離。

 少し顎を突き出せば容易に彼女の唇を奪うことができるだろう。


 ゴクリ・・・こっ、こんなの絶対惚れちまうだろっ。


 健全な青少年であれば誰であれこれだけの美少女にこんなことをされては我慢できないだろう。

 必死に自分の欲望を押さえつける賢斗。

 しかしその欲望は否応なしに彼の両手を突き動かし眼前の美少女の身体を抱きしめようとする。


 もうダメだぁ~。


「動いちゃダメ」


 気配を察知した紺野が小さく囁くと賢斗の両手はピタリと止まった。

 しかしそれは単なる条件反射。

 今の言葉で彼女の吐息が賢斗の口に直に伝わり、その高純度の色気が彼を更なる欲望の高みへと蝕んでいく。


 うぉ~、これは新手の拷問かっ?

 だってこの滅茶苦茶可愛い先輩にこんなことされたら普通我慢できないでしょ~。

 あ~やっぱり駄目だ。


 抱き締めちゃってもいいっすかぁ?


 いいともぉ~♪


 キスしちゃってもいいっすよねぇ?


 勿論よぉ~♪


 OK、レッツゴー♪


 彼が心の叫びを忠実に再現しようとした正にその時であった。


(ぷふっ、だぁ~め。)


 頭の中に紺野の声が響いた。


 えっ、何? 今の。


 驚きと戸惑いの中、頭にはいつものアナウンスが聞こえてくる。


『ピロリン。スキル『念話』を獲得しました。』


 おっ、やった。スキルを取得できた。


「はい、お終い。

 ちゃんと取得できたでしょ?」


 額を離すと紺野は作業の終了を告げた。


「えっ、あっ、はい。

 ありがとうございます」


 スキルをゲットできたのは良いとして、さっき頭に響いた先輩の声はいったい?

 う~ん、まさかとは思うが・・・


 先程の心の叫びが紺野に筒抜けになっていたのではなかろうか?

 そんな疑念が賢斗の脳裏を過る。


 いやでもそうとしか考えられない返答だったよなぁ? チラッ


 紺野の様子を窺うと、手うちわで紅潮した顔を冷ましつつしたり顔で賢斗を見ていた。


 こっ、これはまずい。

 考えてみれば念話スキルは交信系、額を合わせて相手の思考を読む的なことができてもおかしくない。

 つかそうでなきゃあんな顔にはならんだろっ。


「あのぉ、先輩? もしかして・・・」


 とはいえ最終ジャッジは受けねばなるまい。


「なぁ~にぃ? 賢斗くぅ~ん。

 私に惚れちゃったぁ? キスしたいのぉ? このとぉ~っても可愛い先輩に告白でもしてみるぅ? ぷふっ」


 やっぱりかぁっ!

 くぅ~~、いたたまれない。


「うふふっ、まあまあそんなに怒らないで。

 私も綺羅くらいにしかこの方法使ったことなかったから、男子の場合だとどうなるか分からなかったし。ぷふっ」


 くっそぉ~、そんなこと言ってメチャクチャ楽しそうじゃねぇかっ!


「ああ、そうっすかっ! なら今後は気を付けてくださいねっ。

 先輩程の美人が男にあんなことしたら間違いなく襲われちゃいますからね」


「そうなの?」


「そうっすよっ!

 相手が俺の様な紳士だったから大事に至らなかっただけの話で普通は我慢なんかできません」


「アハッ、そうなんだぁ♪

 君はとっても立派な紳士なんだねぇ。

 あっ、でもその割にはもうダメだぁ~とか音を上げてた気もするけど。ウフ♡」


 くそっ、ホントに襲っちまうぞ、ったく。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○三人目のパーティーメンバー その1○


「それにしても賢斗君ってとっても優秀なのね。

 綺羅の時は1時間くらい掛かったのに、10分くらいで取得しちゃうなんて」


 ア~それに関しちゃさっきは心臓バクバクだったし、心当たりがあり過ぎて何も言えない。


「偶々じゃないっすか」


 流石にドキドキ星人スキルのことは人に言いたくないし。


「ふ~ん、偶々ねぇ。

 まあいいわ、私も賢斗君に嫌われたくないし追及はしないでおこうかな。

 ってことで用事も済んだしそろそろ帰りましょうか」


「あっ、先輩は先に帰ってください。

 俺はもう少しここでスキル練習をしてから帰るんで」


「ふ~ん、賢斗君がそう言うなら私も付き合っちゃおうかなぁ。

 潜伏スキルの習熟に良いんでしょ? ここ」


 まっ、別に良いけど。

 ドキドキジェットを発動しようが見た目上俺に変化はない。

 先輩が近くに居ようがスキルの発動を気付かれることもないだろうし。


「別に俺は構いませんけど」


 にしてもさっきのアレを境に随分遠慮が無くなってきたなぁ、この先輩。

 呼び方も見事賢斗君に昇格、まっ、こんな美人の先輩に親しく接してもらえるのは悪くない気分だけど。


 と紺野の前でハイテンションタイムの消化をすることになった賢斗だったが・・・


 あっ、しまった。


 そういや今日のハイテンションタイムで取得するスキルをネットで調べるの忘れてたな。

 急に考えたって、中々良いのが思いつかんし・・・う~む。


「先輩って何か今欲しいスキルとかありますか?」


「ん~私の場合は回復魔法かなぁ」


 あ~魔法ね。

 そりゃ誰だって欲しいだろうけど、あれはスキルスクロールじゃなきゃ無理だしなぁ。


「魔法以外では?」


「そうねぇ、鑑定とか速読とか高速思考、う~ん、それに新しい所ではラッキードロップとかかな。

 あっ、そういえばドキドキ星人なんて面白い名前のスキルがあるらしいのよ。

 賢斗君知ってた?」


 ブフォッ! 今なんと?


 いや待て、落ち着け落ち着け。

 先輩が俺のスキルや桜のスキルを知ってるのはおかしい。

 ここは素知らぬ振りして、少し探ってみるのが上策だろう。


「いっ、いえ先輩、なんすか? そのドキドキ星人って」


「えっとねぇ、ラッキードロップもだけど、今回の探索者マガジンで新しいスキルとして紹介されてたわよ。見る?」


 ・・・マジか。


 紺野が鞄から取り出した雑誌を受け取ると賢斗は食い入るように見つめる。


 なっ、なんだよ。脅かしやがって。


 そこに掲載されていたのはスキル名とレベル1のスキル効果のみ、所持者の情報等は一切掲載されていなかった。


「なんでも3月のスキル取得講座で発見された新しいスキルみたいよ。

 ラッキードロップに関してはドロップ率とレア率が上昇する誰でも欲しがる感じのスキルねぇ。

 そこへ行くとドキドキ星人の方は心拍数が上がるだけで話のタネにおひとつどうぞみたいな感じのお笑いスキルかな。」


 話のタネにおひとつどうぞみたいなお笑いスキルか。

 ・・・何気に殺傷力が高いな。

 そしてこの雑誌のせいで俺のドキドキ星人スキルが全国の笑いものに・・・

 う~ん、にしても鑑定士の守秘義務はどうなってんだ?

 これはもう個人が特定されなければ良いという問題ではないぞ、ったく。


 通常個人が鑑定士に依頼し鑑定を受けてもそのスキル情報がこうして雑誌に掲載されることは無い。

 しかし探索者協会のスキル取得講座に於ける鑑定情報は協会のデータバンクに登録され、その情報サービスは誰でも利用可能といった違いがある。


 またこの内容は講座の鑑定申込用紙に小さく記載があり、協会での鑑定料がリーズナブルなのもこのためだったりするのだが、賢斗も含め大方の若者達は安い鑑定料ばかりに目が行き申込用紙のこの様な記載等あって無いが如し。

 怒りを他者に向けている彼だがその実自業自得なだけの話である。


 あ~もう何か色々腹立たしい。


「ねぇ、賢斗君。

 ドキドキ星人を取得した人ってどんな人かな?」


「ブフォッ! なっ、なんでそんなことを俺に聞くんですかっ」


 まるで好きな女子を友人に言い当てられたかの様に動揺する賢斗。


 こっ、この女、俺をショック死させる気かっ!


 耳の先まで真っ赤にして紺野に食って掛かっていた。


 とはいえ俺が所持者だという事は桜と中川鑑定士しか知らないはず。

 ここは何食わぬ顔でやり過ごすのが大正解なのだが・・・

 くそっ、そんなの今は無理だ。

 顔が熱いし赤面状態なのが自分でも分かる。


「あら、普通に気にならない?

 こんな面白いスキルを持った人がどんな人なのか」


 この動揺を隠すには最早雑誌を食い入る様に読んでる風を装いこの赤面顔を隠し続ける他ない。


「いっ、いえ、全く気になりませんよ、そっ、そんなの」


「ふ~ん、きっと凄いアガリ症の人よねぇ、ドキドキ星人って言うくらいだし。ウフッ」


 紺野はお気に入りの玩具でも見つけたかの様に賢斗を眺め始めた。


「あっ、その本よかったらあげるわよ。

 私読んじゃったし、部室にももう1冊あるから」


「ひっ、あっ、はい。ありがとうございます」


「どうしたの賢斗君、なんだか変よ?」


「なっ、なんでもごじゃりません」


 あっ、しまった、噛んでる。


「ふふっ、君は平安貴族さんなのかな? ぷっ」


「そっ、そうかもしれないでごじゃる」


「アハハ~、賢斗君って最高に面白いわねぇ」


 紺野は腹を抱えて笑い、俄かにこの話題に落ちが付く形となった。


 ふぅ~、これが怪我の功名、なんとか誤魔化せたようだ・・・


 と思いきや。


「それで平安貴族さん。ドキドキ星人ってどんなスキルなのかな?」


「ブフォッ!」


 ・・・無念。


 雑誌を持ったまま賢斗はその場に崩れ落ちた。


 う~む、俺はへたくそか?

 第1級機密事項がこんなあっさり見破られるとは・・・


「ほぅら、私の恩恵取得したスキルも教えてあげるからそろそろ元気出しなさいな」


 そう言いながら紺野は崩れ落ちた賢斗を立たせる。


「私の恩恵取得したスキルだって知ってるのは家族も含めて五人くらいしか居ないのよ」


 ふ~ん、先輩が恩恵取得したスキルねぇ。

 でもどうせ人が羨む様な大層なスキルをお持ちなんでしょ。


「あっ、そうだ、ついでにもっと詳しくスキルの効果なんかの情報も交換しちゃいましょうか。

 その方がより言い触らしたりできなくなるでしょ」


 とはいえここまで来たらこの提案に乗らないという選択肢もないか。

 先輩のスキルがなんであれ他人にあまり教えていないスキル情報を俺に教えてくれるというなら確かに少しは信用できるだろうし。


「はい、もうそれで良いです。

 教えますから絶対内緒にしてくださいね」


 それにバレたのは俺の方にもいや寧ろ俺の方にかなりの非があった。

 それでいてこうして誠意を見せてくれている相手を無下にするわけにもいくまい。


「そう来なくっちゃ♪」


 賢斗は紺野にドキドキ星人スキルのことを説明していく。

 勿論取得の際のちょっとしたハプニングは都合よく丸っとスキル取得講座に於ける緊張に変換されていたが。


 するとその説明を聞く紺野の目は次第に大きく見開かれていった。


 程無く賢斗の説明が終了。

 しかし紺野は自分のスキルの説明をしようとはせず、一人「大丈夫かなぁ」などとブツブツ呟きながら賢斗の顔を繁々と眺めていた。


「いったいどうしたんすか? 先輩」


 そして怪訝そうな表情の賢斗に対し、思案顔を浮かべていた彼女は最後に一つの提案をしたのだった。


「う~ん、ところで賢斗君。

 一つ提案なんだけど、私とパーティーを組まない?」


 はい?

次回、第八話 『キッスシェアリング』。

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― 新着の感想 ―
3行目の「すいませ~ん、進入申請お願いしま~す」 の所ですが4話の2割目では ○白山ダンジョンへ○  午後1時、帰宅した賢斗は昼食を済ませるとアパートから10分程の距離にある白山ダンジョン協会支…
[気になる点] 久しぶりに読ませて頂いてるんですが、キスしてもいいかなー?の所、前と少し変わったような?なんとなく前の方が好きだった印象があってモヤモヤしてますwなにも変わってなかったらすいません記憶…
[一言] クラスのマドンナとかヒロインが「ウフ」って表現されてたり、なかなか世代が出てますなー。 連絡手段がアドレスなあたりとかも。
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