第六十四話 モンチャレ大会決勝1回戦
○6月9日日曜日午前10時○
モンスターチャレンジ決勝大会、開会式。
ドドドドカ~~~ン
突然中央スペースの四隅から火柱が上がる。
おお凄げぇ。
ドンドンドッドドドンドドッドドンドンド・・・・♪
アップテンポの音楽が流れ出したかと思うと、チアガール達の華麗なダンスが始まった。
会場のボルテージは最高潮に達し、大きな歓声が上がる。
ウォォォォーパチパチ~
いよいよ開幕・・・モンチャレ決勝。
チアガール達のダンスも終わり、音楽がフェードアウトすると、一際会場内も静けさを取り戻す。
そんな中、中央スペースの簡易ステージへと、一人の女性が静かに登壇していった。
「みっなさ~ん、こんにちは~。やっほ~う。」
ブフォッ!
何故ここで蛯名っち?
ウォォォォーパチパチ~
「モンスターチャレンジ大会委員長の蛯名遥で~っす。」
マジか・・・
ウォォォォーパチパチ~
「それではお待ちかね、これより第22回高校生モンスターチャレンジ決勝大会の開会をここに宣言いたしま~っす。」
ウォォォォーパチパチ~
『それでは選手の入場です。選手入場口をご注目下さい。』
会場に流れる場内アナウンス。
「各パーティーの皆さんは、予選順位の順に会場に入って、定位置にお並び下さ~い。」
現場職員の言葉に、中央スペースへの入り口に整列していた俺達参加者にも緊張が走る。
チャーラチャラララ、チャーラチャラララ・・・・・・・・・
そしてどこぞのブラスバンドによる生演奏が始まると、俺達参加者も中央スペースへと入場行進。
ウォォォォーパチパチ~
ほどなくパーティー毎に隊列を組み、川の字状に整列し終えると、服部が簡易ステージへと登壇した。
「宣誓、我々選手一同は、日ごろの鍛錬の成果を余すところなく発揮し、自身の誇りと名誉にかけて、精一杯戦い抜くことを誓います。6月9日、選手代表、服部高貴。」
ウォォォォーパチパチ~
『それでは選手の方々は選手待機席へとご退場願います。』
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
○午前10時30分、選手待機席○
開会式を終えた俺達は、スタンドに設けられている選手待機席の一角に戻ってきた。
いや~ビックリした・・・まさかの大会委員長。
ったく、あいつどんだけ設定盛れば気が済むんだよ。
「え~お配りのモンスターレベル指定用紙は、公正を期すため10分以内での提出をお願いしま~す。」
あ~、これはあれか、1回戦が始まる前に出さなきゃいけないってことか。
確かに予選がある程度進んでから提出ってのをOKしていたら、後のパーティーが戦略上かなり有利になってしまうからなぁ。
「ほら、賢斗君、一回戦目のモンスターレベルの指定はどうするの?」
「1回戦は予定通り3体ともレベル14を指定しましょう。」
俺達のパーティーレベル+4だし、前大会のDVDからこの辺を指定しておけば、先ずは問題無いはず。
「え~、今提出して頂いたレベル指定の変更は、原則として認められませんので、よろしくお願い致します。
それでは、1回戦第1組ソードダンスの方々は、会場中央スペースへお進みください。」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
○決勝1回戦1組目○
『さぁ~いよいよ始まります、第22回高校生モンスターチャレンジ決勝大会っ!
会場のボルテージも、最高潮となって参りましたぁ。
そして今登場してきたのは、本大会の予選通過順位第1位。その名も『ソードダンス』だぁっ!』
服部達が中央スペースに出ていくと、実況解説が会場全体に響き、徐々に観客のボルテージも一気に上がる。
ウォォォォーパチパチ~
『奇しくも現在決勝大会連続2位という成績ですが、前回優勝パーティーが卒業した今大会では紛れもない大本命。
前回からパーティーレベルを2つも上げ、レベル13での参戦、果たしてどんな戦いを見せてくれるのでしょうかぁー。
そして開始を告げるカウントダウンがいまぁーーー、始まりましたぁ。8,7、・・・・2,1,ゼロォーッ!
注目の召喚モンスターはぁ~、何とレベル18で巨人のトロールが出現っ。』
うわっ、トロールでかっ。
『残りもレベル17の大型の狼、シルバーワイルドウルフ。そしてレベル16のパワフルゴリラと強力だぁー。
さぁぁて『ソードダンス』のメンバーは、この強敵をどう攻略していくのかぁー。
っとまずはお家芸の飛ぶ斬撃『五月雨スラッシュ』を、3人同時に右側のパワフルゴリラにお見舞いだぁ。
まるで絨毯爆撃のような攻撃が、パワフルゴリラに決まっている。まずは1体撃破なるかぁ。
っとここで左側に居たシルバーワイルドウルフが、3人目掛けて突っ込んできたぁ。
これには堪らず3人とも攻撃を止め、素早くバックステップで躱す躱すかわ・・・。
なっ、なにぃー、これは驚き、服部君へと突っ込んで行ったシルバーワイルドウルフの首が、何故か突然吹き飛んだぁー。』
おっ、凄いなありゃ・・・かっけ~。
『ここからでもよく分かりませんでしたが、カウンタースキルか何かでしょうか。全く以て驚かされます、リーダーの服部高貴君。
これでまずは、シルバーワイルドウルフを1体撃破っ。まだ時間にも余裕があります。』
ウォォォォー
「賢斗君、今の分かった?」
「ああ、あれはきっと『居合』スキルだと思いますよ。カウンター技を覚えるスキルって情報がありましたから。」
「ふ~ん、凄いわねぇ。」
「そっすねぇ、あのスキルは習熟方法自体は知ってても、その方法は危険を顧みず実戦を重ねる必要がありますから、想像以上に取得難易度は高いはずですよ。」
「そうじゃなくってね、ちゃんと分析できてる賢斗君を凄いって言ったのよ。」
「お~、先輩が俺を褒めてくれるとは、雪でも・・・。ってそれどころじゃないですよ。先輩。」
『さぁ、残り時間は3分をきって、残すはレベル18のトロールのみ。
一気に畳み込むことができるでしょうか。
っとここで3人一斉にトロールへと突撃っ、そして右膝に攻撃を集中だっ。
巨人のトロールに対し、先ずは膝をつかせる作戦か。
あぁぁ、トロールの左拳が迫るっ。しかし3人も素早く回避成功。ここは全員冷静です。
そして再度、右膝への攻撃を開始する。
おーっと、ここでようやくトロールの膝が崩れ落ちたぁ。
『ソードダンス』のメンバーも、直ぐに攻撃目標を頭部へと変更。巨大な棍棒を振り回すトロールの攻撃を躱しながらも、首へ頭へ目へと攻撃を繰り返していくぅ。
これはもう決着は時間の問題かぁーーーー。
あぁぁぁぁ、トロールの野太い首から大量の血液が溢れたぁ!そしてその身体はゆっくり前方へと倒れていくぅ。』
ドゴーーーン
『トロール、起き上がれません。そして今、静かに霧散していったぁぁぁぁーーー。
けっちゃーーーくっ!ソードダンス、見事に初優勝への狼煙を上げたぁ―っ。』
ウォォォォーパチパチ~
『これにより、ソードダンスは40ポイントを獲得しましたぁー。』
ワァァァァァ―――
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
○決勝1回戦2組目○
「すっごい盛り上がるねぇ~。」
「そうだなぁ。」
「皆さん、ただいま帰りました。」
「ああ円、買い出しありがとう。」
「はい、私は出場できませんから、少しはお役に立ちませんと。賢斗さん、はい、これ。」
ん、チョコバナナ?
「昨日小太郎が食べちゃった分です。」
別にそんなの気にしなくても良いのに・・・まあ貰っとくか。
「サンキュ、円ちゃん。」
にしても服部達は40点か・・・まあなんとか想定内ってところだな。
モグモグ
俺達の指定レベルも倒せれば40点獲得できるはずだし、まずは順調、うん。
ってあれ?チョコバナナが急に重くなったんだが・・・
手に持ったチョコバナナを見ると、小太郎がチョコバナナにしがみ付き、噛り付いていた・・・
ニカッ
「隙ありだにゃ。」
口の周りをチョコ塗れにして得意げにこんな事を言う子猫か・・・
なんとアホ可愛い。
にしてもこいつ・・・昨日で懲りてないのかよ。
まあ昨日『毒耐性』に『無病息災』なんてスキル取ったし、もう食中毒にはならんだろうけど・・・
こういう人の食べ物に手を出す所業には、躾というものが必要だろう。
俺が小太郎を反対の手で掴み上げると・・・
なっ!薪木っ。
どこいった?小太郎っ。
と思いきや・・・
食い過ぎで仰向けの状態から起き上げれない小太郎を発見。
「あにきぃ、ちょっと起こしてくれないかにゃ?」
俺は小太郎の首根っこを摘まみ上げると言って聞かせる。
「おい、小太郎、お前人の食べ物を盗み食いするのはもう止めろ。行儀が悪すぎだぞ。」
「そんな事分かってるにゃ。」
「じゃあ何で俺の食い物ばっかり、いっつも付け狙ってるんだよっ。」
「これも修行のためだにゃっ。強い奴を見つけると、まずは挑んでみたくなるにゃ~。」
ん、なんだぁ?
やってる事は決して褒められたもんじゃないのに、そのちょっとかっこいい台詞。
「お前、そんな事言って、食い意地が張ってるだけだろぉ?」
そして返答に困る小太郎・・・
『あ~~っと、ここで決め技の『刺突乱舞』が炸れーーーっつ!
けっちゃーーーくっ!これにより『シュヤリーズ』は35ポイントを獲得しましたぁー。』
ウォォォォーパチパチ~
小太郎は右前足を耳裏に当てる。
「にゃあ?」
いやちゃんと聞こえてただろっ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
○決勝1回戦3組目○
『さぁ~お次は武器としては珍しい魔法銃の使い手、『ガンマニア』の登場です。』
「ナイスキャッチさ~ん、そろそろ準備の方お願いしま~す。」
「はい、3人は出番みたいですよ。」
「皆さん、頑張って来てください。」
「行ってくるね~、円ちゃん。」
「はい。学校のみんなも今頃体育館に集まって、スクリーンの前で応援していますよ。」
「そういえばうちの高校でも、そんな事するって言ってたわね。」
へぇ~、折角の日曜日なのに、なんて勿体ない。
「賢斗さんには円がちゃんと付いていますから、しっかり頑張って来て下さい。」
「はいはい。頑張って来ます。」
『っとここで、2人ともグレネードランチャーを持ち出したぞぉーっ!
ああっ、ロックゴーレムの頭部が吹っ飛んだぁー。』
ウォォォォー
『決着、決着です。これで『ガンマニア』も40点を獲得。暫定順位1位タイとなりましたぁー。』
ワァァァァァ―――
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
○決勝1回戦4組目ナイスキャッチ戦闘シーン○
前の組の『ガンマニア』のメンバーと入れ替わるように中央スペースへと足を踏み入れる。
確か叔父さん達の席はあの辺り・・・おっ、居た居た。
さて・・・ちっとは良いとこ見せないとな。
「2人とも、相手は格上で、しかも何時ものスライムと違って素早いぞ。ウォーターバルーンが外れたらかなりヤバイ状況になるから、ロックオンするの忘れないこと。」
「わかってるわよ。」
『さぁ~次は予選4位通過の『ナイスキャッチ』の登場だぁっ!
この春結成したばかりのパーティーでありながら、初出場の今大会を破竹の勢いで勝ち進み、何と決勝大会まで駒を進めて参りましたぁー。
果たしてその勢いは、決勝大会でも台風の目となるのでしょうかぁ。』
ほっ・・・成金云々の件は入っていない、よしよし。
『そして開始を告げるカウントダウンがいまぁーーー、始まりましたぁ。8,7、・・・・2,1,ゼロォーッ!
注目の召喚モンスターはぁ~。』
・・・何が来る?
『何とレベル14のストーンゴーレムが出現っ。
そして次に、レベル14のビックリモンキー。
最後はこれまたレベル14のオーガだぁー。
さぁぁて『ナイスキャッチ』のメンバーは、この強敵をどう攻略していくのかぁー。』
「賢斗君っ。」
「じゃあみんな、作戦は予定通り。これよりウォーターバルーンアタックを開始する。」
「おっけ~。」
「わかったわ。」
「ウォーターバルーン・アンリミテッド。」
ポヨーーン、プカーーーーーー
「ウォーターバルーン・アンリミテッド。」
ポヨーーン、プカーーーーーー
『お~~っと、これはなんだぁー。3人の前に大きな水風船が2つ出現したぁ。
ゆっくり前方の敵に向かっていますが、一体何をするつもりでしょうかぁー。
あ~~っと、ここで素早いビックリモンキーが動きだしたぁー。
そしてこの2つの水風船の間を抜けてぇ・・・』
「迎撃システム発動っ!ロックオン。」
『あーーーーっ、なんと突っ込んできたビックリモンキーを急加速した水風船が包みこんだぁー。』
よしっ。
『ビックリモンキーは呼吸が出来ず、水風船の中でもがいております。
やりますナイスキャッチ、上手くビックリモンキーの動きを封じることに成功だぁぁぁーー。』
桜、いけっ。
「ファイアーボール・アンリミテッドッ!」
ドォ~ン
バッシャーーーーン
『えっ・・・・・・・・・。
なな、なぁんとぉっ、凄まじい爆発が起きたぁ―。
これは一体どういう事でしょぉ―。』
よしよし、まずは順調。
『解放されたビックリモンキーは堪らず後退していくぅ。』
「ウォーターバルーン・アンリミテッド。」
ポヨーーン、プカーーーーーー
『そしてまた新たな水風船が出現したぞぉ。
っと、今度はオーガが突っ込んでくるぅー。』
「いくわよ、ロックオン。」
『っとまたも水風船がこれを迎撃したぁー。』
「ファイアーボール・アンリミテッドッ!」
ドォ~ン
バッシャーーーーン
『そしてその水風船がまたもや爆発ぅ。
オーガは堪らず後退。』
「もう一丁、ロックオン。」
『と同時にもう一つの水風船がストーンゴーレムへと急発進っ。』
「ファイアーボール・アンリミテッドッ!」
ドォ~ン
バッシャーーーーン
「ウォーターバルーン・アンリミテッド。」
ポヨーーン、プカーーーーーー
「ウォーターバルーン・アンリミテッド。」
ポヨーーン、プカーーーーーー
『そしてまた紺野さん、多田君の両名が水風船を作りだし、3人の前に配置されたぁー。これは驚き、正に攻防一体の戦術だぁ。』
「よし、ある程度削れたから、一気に行こう。
あの猿の後の処理は俺に任せてくれ。その間に桜は順次あの2体の着火作業。先輩は次の爆発後の止め担当ってことで。」
「ほ~い。」
「わかったわ。」
「じゃあ、あとよろしく。ロックオン。」
「ロックオン。」
「あ~っと、2つの水風船急速発進っ!」
「ファイアーボール・アンリミテッドッ!」
ドォ~ン
バッシャーーーーン
『そしてまたもや爆発っ!』
音速ダッシュ。
『っとここでリーダーの多田君が飛び出しているぅー。』
せやっ。
シュピンッ
シュピンッ
『そして手負いのビックリモンキーに、短剣による斬撃を浴びせていくぅー。』
「ファイアーボール・アンリミテッドッ!」
ドォ~ン
バッシャーーーーン
『その一方で、今度はオーガが爆発だぁー。
オーガ、堪らず膝をついたぁーー。』
ヒュンヒュンヒュン
ドスドスドス
『そこへ止めとばかりに3本の矢がオーガのこめかみに突き刺さるぅー。』
シュピンッ
グサッ
『ピロリン。スキル『短剣』がレベル6になりました。特技『クリティカルエッジ』を取得しました。』
おっ、ラッキー。
『そしてこちらでもビックリモンキーが力尽きているぅー。
これは2体同時撃破だぁー。
序盤のゆったりとした流れがまるで嘘のよう。
息もつかせぬ展開に、実況も追いつきません。』
「ファイアーボール・アンリミテッドッ!」
ドォ~ン
バッシャーーーーン
『そして最後に残されていたストーンゴーレムも今爆発したぁー。
これではストーンゴーレムも・・・いや、崩れません。固い装甲が功を奏し、ストーンゴーレムは未だ健在ですっ。』
ヒュンヒュンヒュン
『がしかし、今度は止めとばかりに3本の矢がストーンゴーレムに飛んで行くぅ。』
キンキンキンッ
『ああーっとダメだぁ。これもまたストーンゴーレムの装甲に弾かれたぁー。』
ウォォォォー
あっちゃ~、物理じゃ無理かぁ?
といってもこれ以上MP消費したくないんですけど・・・
まあそうも言ってられないかぁ~。
ってあれ、あんなところにヒビが・・・
壁面ダッシュ。
シュタシュタシュタ
クルッ
グサッ
『っと今度は多田君、ストーンゴーレムの背に駆け登ると、持ち手を変えて短剣を一刺しぃー。』
ん~・・・グリグリ。
ガラガラガラー
『あーっとストーンゴーレムの身体が崩れ去ったぁー。
けっちゃーーーくっ!『ナイスキャッチ』これはお見事っ!
レベル14のモンスター3体の撃破に成功したしたぁー。』
ウォォォォーパチパチ~
『そしてこれにより、『ナイスキャッチ』も獲得ポイントが40ptで、暫定順位も1位タイ。決勝大会でもその勢いは止まりませんっ。』
ワァァァァァ―――
次回、第六十五話 モンチャレ大会決勝2回戦。




