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第六十一話 決勝対策の成果と最終確認

○6月7日金曜日午後0時30分、お昼休み教室内○


 今朝の担任の話では、今日の昼休み、職員室前の掲示板に前回の中間テスト上位成績者が発表されるそうだ。

 といっても個人結果の方は既に渡されているので、自分の順位だけはもう皆知っている。


 そして何を隠そう俺は今回学年9位・・・

 幾らバカ高校とはいえ、1学年150名ほどいる中でのこの順位、なかなかのものではないだろうか。

 まっ、瞬間記憶のお蔭だし、自慢はできないけど。


「ただいまっしょー、賢斗っち~。」


「おい、多田。君が僕より成績が上とはどういう事だ?」


 あ~こいつ等、教務員室前までわざわざ上位成績者をチェックに行って来たのか。


「そうそう、学年9位とか、うちのクラスじゃ委員長の次の好成績っしょー。」


 へぇ~。


「ちなみに委員長って、何位だったんだ?」


「そりゃ当然、1位に決まってるっしょー。」


「おお~、流石ですなぁ、うちの委員長様は。」


ゾワッ


「多田君もあんなに勉強できるだなんて、ちょっと意外だったわよ。」


 ・・・急に人の後ろに立つの、やめて貰っていいですか?


「そうそう、てっきり賢斗っちはお仲間だと思ってたっしょー。」


 入りたくないもんだな・・・そのお仲間とやらには。


「うむ、でもまあ貴様の事だ。やはり何か裏があるのだろう?

 これでも口は堅い方だ。是非俺にだけその方法を教えてくれ。」


「おう、徹夜で勉強しとけ。」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○午後1時30分、体育館、激励集会開催中○


 今日は午後から体育館にて、モンチャレ決勝に出場する俺と先輩の為に、激励集会なるものが開催されていた。

 先輩と2人、ステージの上に立たされ、今現在校長の長~いスピーチの真っ最中。


「え~、今回のモンスターチャレンジ大会決勝進出は、我が校にとって初めての快挙であり・・・」


(先輩先輩、この後俺達も何か喋らされるんですかね?)


(あったり前でしょ。ちゃんとスピーチの内容を考えておくようにって言われなかった?)


(いや俺だって一応は、考えて来てますよぉ。)


 それより俺には、この緊張感の方が問題なんだって。


(あっ、そっか~。賢斗君はこういうの苦手だもんね。期待してるわよ。ウフ♡)


(止めて下さいよっ。何、変なフラグ立ててるんですか。)


(だってほらぁ~、久しぶりに平安貴族さんに会えるかもっ♪わくわく。)


 しまった・・・この人の性格忘れてた。


「それでは今回の主役であるお2人に、大会へ向けての意気込みでも伺ってみることにしましょうか。」


 あっちゃ~やばい、本気で緊張してきた・・・

 このタイミングでスピーチなんかしたら、まず失態は避けられない。


「じゃあまずは3年の紺野さんから。」


 セーーーーーーフッ。


 一先ず先輩からで良かった・・・

 今の内にこの緊張しきった精神を立て直すとしよう・・・う~む。

 よし、ここはひとつ、先輩のスピーチに集中して聞き入ることで、緊張感を忘れる作戦といこう。


「こんにちは、みなさん。3年A組の紺野かおるです。

 今週の月曜日に、あの垂れ幕が屋上から掛けられていた時には、本当にビックリしましたが、それからというもの、本当に多くの人達から応援のお言葉を頂き、感謝の念でいっぱいです。

 そして今日は、このような激励集会まで開催して頂き、うちの高校でよかったなあとつくづく思ってしまいました。

 決勝大会では、優勝を口に出来るほどの自信なんてありませんが、皆さんのこの激励にお応え出来る様、決意を新たに、全力を尽くしてくることをお約束したいと思います。

 最後に、先生方、そして全校生徒の皆さん。本日はお集まり頂き、どうも有り難う御座いました。」


ワァ~パチパチ~


 お~かなりの雄弁なスピーチ・・・流石外面が良いだけのことはある。

 つーか今回の作戦、見事に失敗だったな。

 先輩のスピーチが見事過ぎて、後に控える俺のプレッシャーが更に増してる。


「紺野さんありがとう。それでは次に多田君、お願いします。」


 あ~もうこうなったら・・・


「あっ、どうも1年C組の多田賢斗です。

 え~~~、入学して初めてのモンチャレ大会で、決勝まで行けるなんて夢のように感じています。

 このチャンスを何とかものにし、皆さんの期待に応えられるよう精一杯頑張って来ようと思いますので、決勝の応援、よろしくお願いするでごじゃる。」


 あと一歩足りなかったか・・・いや寧ろ頑張った方だろう。


「あはは、多田君は少し緊張しちゃったかな。決勝大会では、是非ともリラックスして頑張ってくださいね。」


ワッハッハッハ~、パチパチ~


(期待通りよ、賢斗君。グッジョブ。)


 良いからそっとしといてくれ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○午後4時、クローバー拠点部屋○


ガチャリ


 拠点部屋のドアを開けると、まだ誰も居なかった。


 ふっ、今週最後の登校日、大方学校の仲間達に囲まれ、直ぐにはここに来れないのであろう・・・俺は大丈夫でしたけど。


 とまあそれはさて置き、決勝はいよいよ明後日。

 明日には、会場へと前のりで出発の予定となっており、今日が実質上の決勝対策最終調整日。

 今週はあれこれと色々な検証作業、また決勝に向けた各種レべリングを平行して行って来た。


 みんなが来る前に少しその辺の事をおさらいしておくとするか。


*検証結果のご報告1*


 先ず検証その1となるのは、『限界突破』の共有。

 各自が持つスキルをさらに他から共有した場合、どうなるのかという意味合いもあるこの検証。

 通常のステータスが2倍になる『限界突破』スキルの効果が、なんと4倍に・・・

 な~んて甘い夢を見て臨んだ訳であったが、結果の方はまあ失敗と言った方が良いだろう。


 何故なら、4倍にはならなかったから。


 この検証で起こった事象としては、まず『限界突破』スキルを共有した場合、スキルは一つに融合され、スキルレベルがカンストした。

 まあでもこのカンストした理由は、ある程度俺達の『限界突破』スキルのレベルが上がっていたせいである。

 レベルの低いスキルを共有して2つ所持した状態になっても、レベルがそれなりに上がるだけで、カンストはしないという点にはご注意願いたい。


 そして最初に失敗と言った理由は、『限界突破』はカンストしても、ステータス2倍の効果は変わらず、効果時間が1時間と飛躍的に伸びただけの効果であったことを、ここに付け加えておく。


*検証結果のご報告2*


 検証その2、『ラッキードロップ』を共有した場合の確率発動型特技への影響。

 俺の短剣スキルの特技は10%で発動するタイプのものが多い。

 この確率で制御された特技効果に、『ラッキードロップ』により+100以上に上昇したLUKパラメータが如何に影響を与えるか?という疑問に答えるのがこの検証である。


 発動確率が上昇してくれたら・・・

 しかし確率というものは必ず収束するとどこかで聞いた事もあるが果たして・・・


 そんな期待と不安の中行われたこの検証は、結果としてまずまずの成功を収めた。

 なんと確率5割に届くかといった勢いで、『パラライズエッジ』の効果が発動したのである。


 これだけなら大成功・・・


 しかしこれは同時に、ラッキードロップのスキル共有終了後に、パラライズエッジの無発動状態が元の確率に収束するまで続くという弊害を引き起こす事もまた確認されてしまった。


 純粋に確率が上昇したとは言えないが、大事な場面では切り札として使える。


 これがこの検証をまずまずの成功と評価した理由である。


 一方この結果、『ラッキードロップ』所持者である桜が、仮に『短剣』スキルを取得すれば、恐らく恒常的にこの確率上昇状態が続くと容易に推測できる。

 そしてそれはつまり『ラッキードロップ』スキル所持者の非凡さを改めて感じさせ、桜は正に確率の神に愛された選ばれし者ということなのだろう。


 さてここからは、直ぐ判明した検証なので、結果だけを簡潔にご紹介していく。


*検証結果のご報告3*


 検証その3、ウォーターバルーンアタックの際、着火魔法として雷魔法のサンダーボールを使っても、水蒸気爆発現象は起こらない。


 これは恐らく、熱量不足といったところが原因と推測される。


*検証結果のご報告4*


 検証その4、同じく着火魔法として、ファイアーボールをダブルやらトリプルといった形で使うと、爆発の威力自体も落ちてしまう。


 こっちは着火魔法である火魔法の威力が落ちれば、ウォーターバルーンアタックの威力も落ちるといった単純な話である。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○午後4時15分○


ガチャリ


 そうこうしていると、他の皆も拠点部屋にやって来た。

 軽く挨拶を交していると・・・


「じゃあ、賢斗君、桜。武器を出して。決勝前にメンテしてあげるわよ。」


「あっ、どもっす、先輩。」


 俺は自分の短剣を先輩に手渡した。


 さて、この待ち時間の間に、残るレベリング結果の整理をさっさと終わらせてしまおう。


○各種レベリングの成果のご報告○


 先ず身体レベルについてだが、これは現在、俺達全員レベル10まで上がっている。

 まあ決勝までの現実的な目標としていたレベルでもあったし、この結果は上々といえよう。


 次、先輩の『魔力操作』。

 これは先輩の頑張りにより、何とかレベル4までレベルアップしている。

 形態操作、軌道操作、発動数操作、速度操作の4つまで修得するに至り、正に予定通り。


 次、3人共通の『水魔法』。

 水魔法に関しては、俺と桜がレベル4、先輩に至っては、レベル5までレベルアップしている。

 これでウォーターバルーンアタックを使った新戦術の準備も、整ったと言って良いだろう。


 ちなみに先輩がレベル5で覚えたのは、この間ジャイアントブルースライムが使っていたと思われる『ウォーターヒール』という魔法。

 これはHPとSMを同時に癒す魔法で、俺以外にも回復役ができたメリットは、今後の俺達パーティーに、大いに役立ってくれるだろう。


 最後は俺の短剣スキル。


~~~~~~~~~~~~~~

『短剣LV5(92%)』

種類 :アクティブ

効果 :短剣装備時、STR10%上昇、AGI10%上昇。習得特技の使用可能。

【特技】

『ポイズンエッジ』

種類 :アクティブ

効果 :攻撃時の10%の確率で敵を状態異常毒にする。敵HP5%ダメージ/30s。

『パラライズエッジ』

種類 :アクティブ

効果 :攻撃時の10%の確率で敵を状態異常麻痺にする。

『ストライクエッジ』

種類 :アクティブ

効果 :攻撃の威力が上昇する。ATK+5。

~~~~~~~~~~~~~~


 とまあレベル5にレベルアップし、内容はこんな感じ。

 そんなに変わり映えはしないが、短剣装備時のSTR値とAGI値が5%上昇から10%に基本効果が上昇した。


 ふぅ、ようやく頭ん中の整理もついたな。


「賢斗君、メンテ終わったわよ。はいこれ。」


~~~~~~~~~~~~~~

『魔鉄鋼のライトニングダガー』

説明 :魔鉄を使用して打たれたダガー。電属性(弱)。STR+7。

状態 :80/80

価値 :★★

~~~~~~~~~~~~~~


 おっ、雷属性のエンチャントは変わっていないが、STR+1、最大耐久度+10と基本性能アップしてる。


「あっ、先輩。サンキュっす。」


 よしっ、後の決勝対策は今日の最終確認を残すのみ。

 そろそろ清川さんに出発するとしますか。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○午後5時、清川ダンジョン2階層大部屋前○


 大部屋内を先ずは覗き見。


 おっ、今回は特異個体化はしていないな・・・ほっとしたような、残念なような。

 とはいえレベル14は14。

 こいつら3体を問題なく倒せれば、最終確認は終了、準備万端という事で良いだろう。


~~~~~~~~~~~~~~

名前:ブルースライム

種族:魔物

レベル:14(2%)

HP 40/40

SM 19/19

MP 20/20

STR : 12

VIT : 15

INT : 11

MND : 15

AGI : 7

DEX : 19

LUK : 12

CHA : 8

【スキル】

『酸吐出LV7(7%)』

『物理耐性LV7(9%)』

『触手LV2(1%)』

【強属性】

水属性

【弱属性】

火属性

【ドロップ】

なし

【レアドロップ】

『スライムジェルの瓶詰(ドロップ率0.01%)』

~~~~~~~~~~~~~~


「じゃあウォータバルーンアタック作戦、開始っ!」

「ウォータバルーン・アンリミテッド。」


ポヨーーン、プカーーーーーー


「ウォータバルーン・アンリミテッド。」


ポヨーーン、プカーーーーーー


「ファイアーボール・アンリミテッドッ!」


ドォ~ン


バシャーン


「ファイアーボール・アンリミテッドッ!」


ドォ~ン


バシャーン


 これで1体殲滅っと。


「ウォータバルーン・アンリミテッド。」


ポヨーーン、プカーーーーーー


「ファイアーボール・アンリミテッドッ!」


バシャーーン


「ウォータバルーン・アンリミテッド。」


ポヨーーン、プカーーーーーー


「ファイアーボール・アンリミテッドッ!」


ドォ~ン


バシャーーン


 2体殲滅。


「ウォータバルーン・アンリミテッド。」


ポヨーーン、プカーーーーーー


「ウォータバルーン・アンリミテッド。」


ポヨーーン、プカーーーーーー


「ファイアーボール・アンリミテッドッ!」


ドォ~ン


バシャーン


「ファイアーボール・アンリミテッドッ!」


ドォ~ン


バシャーン


 よしっ、最終確認完了っと。

 これなら1回戦あたりは問題ないだろう。


 にしてもこのウォーターバルーンアタック・・・やっぱり着火役の桜のMP消費に負担が偏ってしまう点が、少し気になってしまうな。

 と言っても現状、今から火魔法覚えるのも間に合わないし、俺たちの中じゃ、最大MPとMP回復速度に一番優れた桜に頼るしかない・・・


 う~ん、まあそこは何とかやり繰りするしかないか。

次回、第六十二話 富士ダンジョン。

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