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第五十五話 決勝のルール

○午後4時、緑山神社、甘味茶屋○


 緑山ダンジョンでの探索を終えた俺達は、神社内にある例の甘味茶屋で休憩を取ることにした。

 理由はいつものMP切れなのだが、お昼も軽かったので丁度良かった。

 しかしそうなるとペットである小太郎には、その間巾着の中で我慢を強いる事になってしまうのだが、まあその点は後で埋め合わせするとしよう。


ガラガラガラ


「いらっしゃいませ。あっ、勇者様、来て下さったんですね。」


「こんにちは。」


「えっ、周りに美女が3人も・・・早くもライバル出現の予感、私ピ~ンチ。」


 う~ん、感情ダダ漏れですよ、マドモアゼル。


 店の中に入ると、ボックス席に腰を下ろし、早速注文をしていく。


「俺は焼きおにぎりに玄米茶。あと帰りに焼きとうもろこしを2本、お持ち帰りで。」


 小太郎の分の焼きとうもろこしも買っといてやらないとなぁ・・・拗ねてるだろうし。


「はい、畏まりました。」


「あとサービスで私のお持ち帰りもできますけど、帰りに如何ですか?」


ブフォッ!


「いやぁ、今日はもう疲れちゃったんで。って冗談きついなぁ、あはは。」


 さっきから何言ってんだ?この巫女さん。

 ・・・そういうのは、俺が一人で来たときにお願いします。


「そうですかぁ、ガックリ。」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○午後5時、クローバー拠点部屋○


 甘味茶屋で小1時間ほど過ごすと、MPもようやく回復。

 拠点部屋へと帰還した。


「ほら、小太郎、待たせて悪かったな。ご褒美の焼きとうもろこしだぞぉ。」


ニカッ!


ムシャムシャ


 うんうん。


「それにしても賢斗君も隅に置けないわねぇ。

 あ~んな可愛い巫女さんを夢中にさせちゃっていたとは、流石のかおる先輩もビックリよ。」


「夢中ってなんですか、先輩。あんなの客商売の彼女からしたら、顔見知りのお客さんに対する軽い冗談に決まってるでしょ。」


「そうかしらぁ?あの娘カウンターからずっとこっちに熱い眼差しを送っていたわよぉ~♪」


 はいはい、ホントだったらいいすねぇ、それ。


「でもお土産にたい焼きくれたから、良い人だよ~。」


「とても楽しそうな人でしたね。私、ガックリって声に出して言う人、初めて見ました。」


「で、賢斗君は後から一人であの店に行って、こっそり彼女をお持ち帰りしちゃうのかなぁ~♪」


「そっ、そんな訳ないでしょ。」


「うんうん。プロ探索者なんだから、ファンの娘に手を出しちゃダメよねぇ。あはは。」


 ったく、からかいやがって・・・。

 みんなを連れてあそこに行ったのは間違いだったな。


「そんなことより、このカプセルモンスターどうしますか?」


「あ~、そっちはね、悪いけどオークションにでも出しましょ。

 クローバーとの契約上、オークションへの出品は条件付でOKだったと思うし、普通に買取に出すよりその方がお得よ、きっと。」


「何でオークションなんですか?先輩。これは小太郎が欲しがってたやつなんですから。なあ小太郎。」


「何のことかにゃ?」


 おいっ、忍びの嗜みはどこ行ったんだよ。


「まあ、賢斗君。私にもちゃんと理由があるから聞いてくれる。」


 はいはい聞きますとも、折角苦労して手に入れたレアアイテムだし。

 と俺が頷くと先輩が言葉を続ける。


「そのカプセルモンスターってレベルアップさせる必要があるし、今後一緒に戦っていくなら当然EXPシェアリングを使いたくなるわよね。」


 うんうん。


「でも、それには私があのグロテスクなカエルの魔物の手に、キスをしなくちゃダメじゃない。」


 あっ、そうだね。


「そ~んな罰ゲームを、賢斗君は毎回私にさせる気なの?シクシク。」


 うん、事情は把握したから、その嘘泣きは止めろ。


 確かに俺達パーティーの一員として誰かを加えるには、先輩のEXPシェアリングによる経験値共有が可能であることも条件の一つ。

 そしてその可否基準が先輩の独断に委ねられてしまうというのもまた、避けることができないのである。


 折角の新戦力だが、小太郎のやつもあの調子だし、次のオークションにでも出して、大金を手に入れるのってのも有りか。

 それに俺もどうせ育成するなら、カエルなんかよりもっとかっこいい魔物が良いしな。


「桜と円ちゃんも、それでいいのか?」


「かおるちゃんがそう言うなら、仕方ないね~。」


「そうですねぇ。私は小太郎が居れば十分ですから。」


 んじゃ、売る方向で異議なしだな。


「小太郎、じゃあこのカプセルモンスター、今度のオークションに出すことにするけど、それでいいか?」


「蝦蟇カエルは忍びのたしなみなのにゃ。」


 ちっ、今頃思い出したのかよ、ったく。


 そんな小太郎に円ちゃんが、鋭い視線を送る。


「小太郎、大蝦蟇は妖術で呼び出すのが、忍びの嗜みですよ。

 そんなカプセルモンスターに頼っていては、一人前の忍びにはなれません。」


「にゃっ!わっ、分かったにゃ。」


 おっ、円ちゃんも『猫語』を取得したんだな・・・

 猫人化してないのに、会話できてるし。


 まっ、何にせよ・・・


「はいじゃあ決定。このカプセルモンスターは次回のオークションに出品することにします。」


「あっ、そうだ。それを次回のオークションに出品するなら、入るお金で他のアイテムを落札しちゃいましょうよ。」


「あっ、じゃあ私、エアリアルシューズが欲しい~。」


「桜、オークションというのは、毎回出品されるアイテムが変わるのですよ。」


「そうなんだ~。」


 まあ、それも良いかもな。

 今度は落札できない恐怖に付き纏われる事なく、気楽に楽しめそうだし。


「まあ次回のアイテムオークションは1か月後のはずだし、その辺はまたモンチャレ決勝が終わってからゆっくり考えよう。」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○6月2日日曜日午前9時、クローバー拠点部屋○


 今日は誕生日を6月10日に控えた、円ちゃんの探索者資格試験受験日。

 ここ拠点部屋では、今朝円ちゃんから預かった小太郎が部屋の巡回警備をする中、3人でモンチャレ決勝に向けた対策会議を開いていた。


「じゃあちょっと対策を練る前に、みんなのステータスを確認しとこう。」


 モンチャレ決勝に向けた特訓メニューを練るにも、まずはここから始めねばなるまい。


「い~よ~。」


「あら、恥ずかしい。」


 はいはい、っと、まずは俺から・・・


~~~~~~~~~~~~~~

名前:多田賢斗 16歳(169cm 56㎏ C88 W78 H86)

種族:人間

レベル:8(78%)

HP 22/22

SM 17/17

MP 24/24

STR : 14

VIT : 9

INT : 14

MND : 20

AGI : 19

DEX : 13

LUK : 7

CHA : 12

【スキル】

『ドキドキ星人LV10(-%)』

『ダッシュLV10(-%)』

『パーフェクトマッピングLV10(-%)』

『潜伏LV8(1%)』

『視覚強化LV10(-%)』

『解析LV10(-%)』

『聴覚強化LV10(-%)』

『念話LV4(2%)』

『ウィークポイントLV6(67%)』

『短剣LV4(25%)』

『忍び足LV2(18%)』

『空間魔法LV7(93%)』

『隠蔽LV10(-%)』

『限界突破LV6(46%)』

『感度ビンビンLV2(32%)』

『九死一生LV7(4%)』

『回復魔法LV2(34%)』

『MP高速回復LV6(96%)』

『雷魔法LV7(67%)』

『猫語LV3(23%)』

『瞬間記憶LV1(4%)』

『魔力操作LV4(12%)』

~~~~~~~~~~~~~~


 次のレベルアップまであと22%か・・・

 出来ればもう2つくらい、決勝前にレベルアップしておきたいとこだな。


 次は桜・・・


~~~~~~~~~~~~~~

名前:小田桜 16歳(152cm 42kg B79 W54 H80)

種族:人間

レベル:8(70%)

HP 18/18

SM 16/16

MP 29/29

STR : 3

VIT : 4

INT : 28

MND : 12

AGI : 3

DEX : 6

LUK : 123

CHA : 18

【スキル】

『ラッキードロップLV10(-%)』

『念話LV6(11%)』

『限界突破LV7(43%)』

『視力強化LV10(-%)』

『火魔法LV9(55%)』

『感度ビンビンLV7(45%)』

『MP高速回復LV10(-%)』

『魔力操作LV8(51%)』

『猫語LV2(77%)』

『ウィークポイントLV1(34%)』

~~~~~~~~~~~~~~


 おっ、凄ぇ、もう今日あたり、火魔法をカンストしそうな勢いだな。

 それに魔力操作がレベル8に、MP高速回復に至っては既にカンスト状態・・・

 INT値もかなり高いし、これだけ魔法に長けてる高校生なんていないんじゃないか。


「桜は『MP高速回復』をカンストしてるけど、回復量はどのくらいなんだ?」


「えっとね~、3時間くらいで全快するくらいかな~。」


 となると『MP高速回復』はカンストした場合、通常の2倍のMP回復速度くらいか、ふむふむ。


 で、お次は先輩。


~~~~~~~~~~~~~~

名前:紺野かおる 17歳(158cm 49kg B86 W58 H84)

種族:人間

レベル:8(87%)

HP 21/21

SM 15/15

MP 16/16

STR : 14

VIT : 9

INT : 12

MND : 17

AGI : 10

DEX : 22

LUK : 12

CHA : 27

【スキル】

『キッスシェアリングLV10(-%)』

『弓術LV7(75%)』

『索敵LV3(64%)』

『念話LV10(-%)』

『リペアLV10(-%)』

『感度ビンビンLV10(-%)』

『視力強化LV10(-%)』

『聴覚強化LV10(-%)』

『潜伏LV5(42%)』

『セクシーボイスLV2(3%)』

『限界突破LV5(65%)』

『風魔法LV6(4%)』

『水魔法LV3(31%)』

『MP高速回復LV3(66%)』

『裁縫LV2(8%)』

『ウィークポイントLV1(75%)』

『ルンルン気分LV1(31%)』

~~~~~~~~~~~~~~


 おっ、セクシーボイスがもうレベル2・・・

 まあ流石にあれだけの個体数を相手に発動すれば、レベルアップするわな。

 それに水魔法も中々・・・


「先輩、水魔法がもうレベル3っすか。早いっすねぇ。」


「まあね。私だって桜みたいにもっとみんなの役に立ちたいもの。」


へぇ~、それはそれは良い心掛けですなぁ。


 という訳で、ステータス確認終了っと。


 それではモンチャレ決勝DVDを拝見させて頂きますか。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○モンチャレ決勝のDVD視聴中○


『決勝1回戦、パーティーレベル11のソードダンス。

 レベル15の魔物1体、レベル13の魔物2体を見事に撃破ぁ!

 27ポイントが加算されます。』


 へぇ~どのパーティーも1回戦目は大体レベル3~4上の魔物を召喚して貰ってる感じか。


「先輩、この決勝でのポイントってどうやって算出してるんですか?」


「それはパーティーレベルと召喚された魔物のレベル差平均×10が獲得ポイントになるの。」


「出て来る魔物のレベルって、こっちで指定できるんですよね。」


「そうそう、召喚される個体数は出場するメンバー数と同じだけど、魔物のレベルはこちらから事前に申告して高ポイントを狙うのよ。」


 ふむふむ、となると俺達的には、レベル12以上の魔物辺りを倒せれば、まあ及第点といった感じでいいのかな。


「でもあんまり無茶な申告をして、撃破失敗なんてことになったら失格になるわよ。それに5分間という制限時間もあるし、長期戦みたいな作戦もNGね。」


 なるほどぉ、となると『ポイズンエッジ』を使った長期戦は基本無理・・・純粋な火力勝負で倒さなきゃならない訳か。


「でも一番の問題点は、決勝は3回戦まであるけど、その間隔は大体1時間。予選と違って違う日に行う訳じゃないって点よ。」


「それのどこが問題なんですか?」


「ちょっと賢斗く~ん、それ本気で言ってるのぉ?」


 先輩は少し呆れた調子で俺を見る。


 えっ?


「だってほら、うちは魔法主体のパーティーでしょ。」


 あっ・・・。


「決勝は1戦ごとに、自分達の限界に挑戦する戦闘、そうなれば当然MPだって使い果たすでしょ。

 でも次の戦いまでの間隔が1時間じゃ、満足にMPが回復できないもの。

 MPポーションなんて便利なもの、決勝じゃ使っちゃいけないのよ、賢斗君。」


そうだった・・・これはかなり俺達にとって不味い。


「それにまだあるわよ。」


 えっ。


「スキルシェアリングのクールタイムが6時間だから、スキル共有できるのも1回きりになっちゃうのよ。

 つまり前回のサンダーストーム威力マシマシ作戦が使えるのは、3回戦のうち1回だけってこと。」


「どう?MP枯渇にクールタイムという2つの大きな問題点。

 少しは賢斗君にも現状が把握できたかな?」


 うん、このルールじゃ普通に俺達が優勝するなんて無理だろ。


「ああはい、すいません。俺達にとって、かなり不利なルールってことっすね。」


 まあせめてもの救いは、限界突破のクールタイムが1時間で、3回戦とも使えるってことくらいか。


 さてルール的な事も含めて現状把握は出来た。

 後はこれを元に決勝対策を練っていく訳だが・・・


 MP問題のある俺達パーティーの決勝での基本戦略としては恐らく、1、2回戦はなるべくMPを節約しておき、他のパーティーの獲得ポイントを様子見。

 そして迎える3回戦で、そのポイント差を考慮して優勝ラインとなる魔物のレベルを指定し、全力で倒す。

 とまあこんな形にならざるを得ない。


 しかしそうなると、今迄みたいな魔法に頼りきりな作戦じゃ恐らく無理。

 3連戦を戦い抜くには、MPを効率良く運用する方法の構築、それに加え、武器による攻撃力アップが必要不可欠。

 まあ魔法専門の桜はさて置き、俺と先輩は武器スキルのレベルアップにも重点を置く方向で、決勝までの特訓メニューを考えていくしかない。


「ところで賢斗君。決勝への特訓だけど、その前にやっぱり私は『魔力操作』を覚えたいわ。」


 ん、どういうこと?


「私の場合、今のままじゃ弓と魔法のどっちも中途半端だし、矢に風魔法を乗せた攻撃を完成させて、決勝までにその辺を解消したいのよね。」


 なるほど・・・先輩も既に俺達のやるべきことを理解している。

 この先輩が仲間でホントに良かったと、こういう時は素直に思える。


 そして結局今俺達が置かれた現状は、細かい部分に於いては何もかもが手探り状態。

 俺も負けずにあらゆる可能性を模索し、有効な手段と思しきものは一つづつ試して行くしかない。


「分かりました、先輩。円ちゃんが帰ってきたら、白山ダンジョンに行ってみますか。」

次回、第五十六話 『羽化登仙』と『マッサージ三昧』。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 決勝楽しみになってまいりましたー ただ、瞬殺ばかりで熱いバトルにならなそうなのがちょっと残念だ
[良い点] 久々の更新ありがとうございます! 待ってました! 決勝戦のルールがいいですねぇ。 今までのようなタイムアタックは微妙でしたから、やっぱりポイント制が一番だと思う。 あと小太郎のそんなの…
2019/12/20 23:26 退会済み
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