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第五十一話 アイテムオークション

○アイテムオークション その1○


 5月31日金曜日午後3時、ようやく中間テストの日程を終えた賢斗達は久し振りにクローバー拠点部屋に勢揃い。

 早速始めたパーティーミーティングでは今後の活動を話し合うのではなく、先ずは今日の夜に開催されるアイテムオークションで何を落札するのかが議題となっていた。


 そしてオークションカタログを眺めている面々が各々欲しいと主張したアイテム達がこちら。


~~~~~~~~~~~~~~

円 出品NO3『ロケットパンチグローブ』:入札開始価格:400万円


賢斗 出品NO4『スキルの缶詰(金)』:入札開始価格:800万円


小太郎 出品NO6『カプセルモンスター(ジャイアントフロッグLV1)』:入札開始価格:450万円


かおる 出品NO8『レベルアップブレスレット』:入札開始価格:700万円


桜 出品NO10『エアリアルシューズ』:入札開始価格:1000万円

~~~~~~~~~~~~~~


 次にこの中から何を優先的に落札するかを御相談。

 その厳正な審議の結果第1候補に選ばれたのがこちらである。


~~~~~~~~~~~~~~

『スキルの缶詰(金)』

説明 :缶詰の中にスキルスクロールが一つ入っている。金ならレアスキルの可能性大。

入札開始価格:800万円

~~~~~~~~~~~~~~


 スキル共有できる彼等にとって一人しかスキルを取得出来ないという点は大した問題ではない。

 このアイテムならパーティー全員がその恩恵に与れるだろうというのが高評価の理由である。


 続いて第2候補となるのがこちらのアイテム。


~~~~~~~~~~~~~~

『カプセルモンスター(ジャイアントフロッグLV1)』

説明 :ダンジョン内で投げるとジャイアントフロッグが出現し、味方となって戦いに参加してくれる。戦闘によるレベルアップも可能だが、死亡するとカプセルは消滅してしまう。

入札開始価格:450万円

~~~~~~~~~~~~~~


 カプセルモンスターというのは10cm大の球状カプセルに魔物が1体入ったアイテムでカプセルを投げれば元の大きさに戻った魔物が飛び出し戦闘時の戦力として使える言わばお手軽なテイムモンスターである。

 これもパーティー全体に恩恵がある点がその高評価の理由だが次点に甘んじたのはレアスキルとレベル1の魔物の価値比較によるところである。


「一応候補は決めたけど状況次第で他の候補も入札に参加するかもって感じで行こうか。

 オークションなんて俺達ど素人も良いとこだからな。」


「そうね、落札できないなんて最悪の事態は絶対避けたいもの。」


 初参加のオークションで上手く落札出来るとは限らない。

 こんな対応を考えておくのも当然の事であった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○アイテムオークション その2○


 水島の車に中川も乗り込み賢斗達はオークション会場へと出発。

 車中で賢斗は暇つぶしがてらオークションカタログを手に取り眺めていた。


 これ欲しかったなぁ。


~~~~~~~~~~~~~~

『透視メガネ』

説明 :物が透けて見えるメガネ。

入札開始価格:1億円

~~~~~~~~~~~~~~


 入札開始価格が1億円とかホント男の足元見すぎだろ。パラパラ

 そしてこっちが小太郎の選んだカプセルモンスター(ジャイアントフロッグLV1)ねぇ。


 トテトテ、ポンポン、ニカッ!


「お前そんな良い笑顔で俺にアピールしたって落札出来るかどうかは分からないぞ。」


「おいらはあにきを信じてるにゃ。」


 俺を信じてどうにかなる話じゃないけどな。


「でも小太郎、どうしてそれが欲しいんだ?」


「巨大ガマガエルを呼ぶのは忍びの嗜みにゃ。」


 あ~そういや大蝦蟇を呼ぶ妖術を使う有名な忍者が居たっけ・・・

 にしてもコイツそんな情報何処で仕入れたんだか。


 とそんなこんなで2時間程車で移動した彼等は午後6時ようやくオークション会場に到着。

 今回その会場となっているのはとある大きな映画館である。


 受付でパドルと呼ばれる番号の書かれたプラカードを受け取るとスクリーンのあるホールへと入る。

 指定された席に着き一息つくとホール内には300人程の人で会場は埋め尽くされていた。


 一杯いるなぁ・・・


 入札権利者はカタログを購入者に限られるがそれ以外にも賢斗達の様に付き添いで来ている者達も多い。

 しばらく待っていると本日出品予定のアイテム紹介映像がスクリーンに流れ始めた。

 そしてその映像が15分程で終わりを迎えるとスクリーン前のステージ上に黒スーツ姿で中世貴族風の髭を生やした中年男性がマイクを持って立つ。


『みなさ~ん、大変お待たせしましたぁ~。

 私は本日のオークショニアを務めさせて頂くボンジュール長嶋。

 それでは早速本日のアイテムオークションを始めて行くと致しましょう。』


 長嶋氏はそう言ってステージ左にあったテーブルに着く。


『まず本日最初のアイテムとなるのがこちら、インビジブルクロースでぇす。』


 ステージの裾からはバニー姿の若い女性が手押し台車を押して中央に出て来る。

 ざわつく会場、それもその筈台車の上には何も乗っている様には見えない。


『皆さん御安心下さい、インビジブルクロースは確かにその上に乗っていますよぉ。』


 女性は布を広げた様な素振りを見せるとそれを自分の前に。

 するとその布の部分に覆われた女性のお腹の部分が消えた様に見えた。オオ~ッ!


『さぁ、入札開始価格は900万円から。

 我こそはと思われる方はお手持ちのパドルを上に掲げてくださぁい。』


 キョロキョロ、おっ、結構札を上げてるな。


 見渡せばその数凡そ20人程。


『はぁい、希望者多数のため、どんどん上げて参りましょう。

 はい、1200万円・・・出ました1500万円・・・更に上がります1800万円・・・っと2000万円が出ました。


 おお、あと二人か。


『おっと2100万円・・・っと2300万円もう宜しいですか?

 ・・・・・・コンコンッ、はぁい、落札ぅ。

 インビジブルクロースは127番の方に決定いたしましたぁ。』


 ふむ、こういう流れか。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○アイテムオークション その3○


『続いて参りましょう、次のアイテムはクリティカルリングでぇす。』


 おっ、これも結構良さ気だったんだよなぁ。

 まっ、10%の確率で壊れちまうのがネックだったけど。


 2番目のこのクリティカルリングもまだ賢斗達の落札候補ではない。

 とはいえ希望者多数のこのアイテムが一体どの程度まで高値で落札されるのか、興味を持って見守っていると・・・


『コンコンッ、このクリティカルリングは101番の肩(方)に3400万円で落札されましたぁ。』


 うわっ、これもう開始額の6倍近い値が付いちまってるじゃねぇか。

 う~む、ちょっと雲行きが怪しくなってきたぞ。


 そして次のアイテムがステージに運ばれてくる。


『続きましては本日3品目、ロケットパンチグローブの登場でぇす。』


 このアイテムは一応円の欲しい候補として挙がっていたのだが・・・


「みんなどうする?

 さっきの見たらこれも一応参加しといた方が良いんじゃないか?」


「そうよね、あんなに値が競り上がっちゃうんだもの。」


「ちょっと待ってください、私はもうあのロケットパンチグローブに興味はありませんよ。」


 えっ、どゆこと?


「良く考えたら私にはかおるさんから頂いた大切なグローブがありますし、あれを落札したら折角の御好意を台無しにする事になってしまいます。」


 いやまあプレゼントを大事したい気持ちは分かるが素人が作ったグローブと拳撃を飛ばせるレアアイテムとじゃ・・・


「有難う円、何時かきっとアレに負けない凄いグローブを貴女に進呈するとここに誓うわ。ガシッ」


 えっ?


「何時までもお待ちしております、かおるさん。ヒシッ」


 気持ちの昂ぶった二人はその場で堅く抱き合う。


 ・・・何だろう、この茶番。


『コンコンッ、ロケットパンチグローブは1200万円で41番の方が落札でぇす。』


 ほれ、そんな事してる間に落札されちまったじゃねぇか。

 コイツにしとけば余裕で落札出来てたってのに。


 でもこれにしたって開始額の3倍近い・・・

 これはいよいよ嫌な予感が現実味を帯びて来てるぞ。


『さてどんどん参りましょう、本日4品目のアイテムは大人気のスキルの缶詰(金)でぇす。』


 よし、これが俺達の本命・・・って大人気?

 いやまあそんな事今は気にしてる場合じゃない。


「中川さん、今のこれ入札お願いします。」


「分かったわ、2000万円まで頑張ってみるわね。」


「宜しくお願いします。」


『入札開始価格は800万円、我こそはと思われる方はお手持ちのパドルを上に掲げてくださぁい。』


 オークショニアの言葉に札を上げたのは30人程。


 ちっ、今までで一番多いじゃねぇか。


『おおっとぉ、早くも1200万円まで跳ね上がりましたぁ。』


 おいおい・・・


『1600万円・・・2000万円・・・2400万円・・・』


 なっ、くそっ、話にもならねぇ。


『コンコンッ、はぁい、スキルの缶詰(金)は4800万円で3番の方が落札いたしましたぁ。』


 俺達の第1候補が・・・

 軍資金2000万円じゃ全く歯が立たんかった。


『さぁて続きましては今回のオークション一番の目玉、透視メガネでぇす。

 入札開始価格はなんと強気な1億円から。

 我こそはと思われる方はお手持ちのパドルを上に掲げてくださぁい。』


 ハハ、無理無理。

 どうせこんなのどっかの成金親父にしか買えねぇっつの、フンッ!


『っと流石に1億では1名しかいらっしゃらない様ですね。

 コンコンッ、透視メガネの落札者は1億円で1番の可愛い御嬢さんに決定いたしましたぁ。』


 ん、可愛い御嬢さん?キョロキョロ

 おっ、確かにあれは女の人・・・


 会場の最前列には右拳を振り上げ伸ばした人差し指と中指をパチパチする若い女性の姿。


 何でお前が落札してんだよっ!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○アイテムオークション その4○


 前半5品のオークションが終わると10分の小休憩。

 賢斗は焦りの色を滲ませていた。


『はぁい、それではそろそろ後半戦に参りたいと思いまぁす。

 残すところあと5アイテム、まだ落札できていないお客様は後半張り切って参りましょう。』


 落ち着け落ち着けぇまだ候補は残ってる、気持ちを切り替えるんだ。


『それでは行きます。

 後半最初のアイテムはカプセルモンスター(ジャイアントフロッグLV1)でぇす。』


 しかしそうは言っても出来る事は入札に参加するか否かを決める事のみ。


「中川さん、これも入札お願いします。」


「了解よ、頑張ってみるわね。」


『さぁ、入札開始価格は450万円から。

 我こそはと思われる方はお手持ちのパドルを上に掲げてくださぁい。』


 札を上げているのは10名程。


『はぁい、これは少しづつ上げて参りましょうか。

 600万円。』


 よしっ、開始額も低いこれならイケる。


『800万円・・・1000万円・・・1200万円・・・1400万円・・・1600万円・・・1800万円。』


 ちっ、降りてくれよぉ。


『1900万円・・・2000万円・・・2100万円。』


『コンコンッ、はぁい、落札ぅ。

 カプセルモンスター(ジャイアントフロッグLV1)は55番の方に決定いたしましたぁ。』


 くっ、惜しかったなぁ、あと一人だったってのに。


『続いて7品目のアイテムはこちら、解析のスキルスクロールでぇす。』


「賢斗君、このままじゃ不味いわよ。」


「分かってますって、先輩。

 次のレベルアップブレスレットがダメだったらもう後がないですからね。」


「賢斗ぉ、まだ私のエアリアルシューズが残ってるじゃ~ん。」


「悪いが桜、お前のソレ多分2000万円じゃ絶対無理だ。」


 俺の予想ではエアリアルシューズもかなりの人気アイテムに違いない。

 いくら桜が強運の持ち主だとしても、俺達以外の客全員が腹痛起こして病院送りになるくらいの事が起きなきゃ絶対無理だろう。

 って待て待て、そんな事がもしホントに起こったら・・・う~む、何か逆に嫌な予感がして来たぞ。


「賢斗さん、高々2000万円程度のアイテムが手に入らないくらいで大袈裟過ぎではないですか?」


 お金持ちのお嬢様は黙ってて下さい。


『コンコンッ、解析のスキルスクロールは1400万円で55番の方に決定いたしましたぁ。』


 あっ、もう終わっちまったか。


「多田さん、ダメでも夕食くらいは皆に御馳走するつもりだから安心してね。」


 ・・・この人目が笑ってるんだが。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○アイテムオークション その5○


「さぁて、今回のオークションも残すところあと3つ。

 続いてのアイテムはレベルアップブレスレットでぇす。」


「中川さん、お願いします。」


 ここが色んな意味でも正念場っ!


「はいはい、ウフッ」


 頼むからここで決まってくれぇ~。


『入札開始価格は700万円です。我こそはと思われる方はお手持ちのパドルを上に掲げてくださぁい。』


 札を上げているのは5人程。


 よし、いい感じだ。


『900万円・・・1100万円・・・1200万円。』


 あと一人だ、降りろっ。


『1300万円。』


 降りてくれっ。


『1400万円。』


 降りて下さい。


『1500万円。』


 お願いしますっ!


『コンコンッ、はぁい、レベルアップブレスレットは1500万円で33番の方に決定いたしましたぁ。』


 おっ、やっ、やったやった、助かったぁ~。

 これで会場の人々の身の安全も・・・


「あら残念、落札できちゃったわね。」


 ちょっとボス、しっかり聞こえてますけどそれワザとですか?


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○レベルアップブレスレット○


 午後7時30分、オークションを終え会場近くのファミレスで夕食と済ませた一行は一路クローバーへの帰路に就いた。


 いやぁ~、久々に食ったなぁ、ステーキ定食。

 にしても何か精神的に疲れしたし安心感と満腹感で・・・ふぁ~あ。


 帰りの車中、睡魔が襲って来ている賢斗にご機嫌なかおるが話し掛けて来る。


「どう?賢斗君、私のレベル上がってるかしら♪

 解析で調べてみてくれる?」


 自分のお目当てが落札できたからってはしゃいじゃってまあ。


「はいはい、ステータスパラメータもそれなりに上がってるみたいなんで安心して下さい。

 それよりレベルアップ時のアナウンスは無かったんすか?」


「あったけど君に見て貰った方が確実でしょ?

 じゃあ次は桜も付けてみる?」


「つけるつけるぅ~。」


~~~~~~~~~~~~~~

『レベルアップブレスレット』

説明 :装備すると身体レベルが1つアップするブレスレット。

入札開始価格:700万円

~~~~~~~~~~~~~~


 にしてもコイツが1500万円ねぇ。

 レベルが1つ上がるだけなのにホントにそれ程の価値がありますかね。

 まっ、オークションってのは本来金持ちが行くとこなんだろうけど、ふぁ~ねみぃ。


「賢斗くぅ~ん、今度は小太郎に着けてみたから確認してみて。」


 見れば御就寝中の子猫の首にはブレスレットが首輪の様に・・・


 ったく、小太郎も満腹で気持ち良く寝てるってのにほっといてやれよ。


 賢斗は呆れながらも子猫を解析してみた。


~~~~~~~~~~~~~~

名前:小太郎 0歳(0.2m 0.6kg)

種族:ペルシャ猫

レベル:2(1%)

HP 3/23

SM 3/18

MP 1/10

STR : 12

VIT : 5

INT : 11

MND : 16

AGI : 24

DEX : 22

LUK : 9

CHA : 13

【スキル】

『九死一生LV4(28%)』

『ジャイアントキリングLV3(56%)』

『忍術LV1(48%)』

~~~~~~~~~~~~~~


 えっ・・・何この化け猫。

次回、第五十二話 小さな暴れん坊。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 比較するとマジで化け猫ですね。 ただ此処まで一気にステ上昇すると、上昇したステに引っ張られて上手く動けなかったりするのもありがちですよね。 特に今回のはアイテムの取り外しで乱高下する訳です…
[一言] 小太郎のバトルを見てみたい! 鳥系モンスターと一対一で対峙して、「どちらが上か見せてあげるにゃ」なんつって!
[一言] 何気に小太郎が瀕死だ。九死一生がガンガンレベルアップしているし。笑いどころではない、笑ってはいけないのだろう。ひょっとして、円のお家がプライベートダンジョン化しているのではないか。
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