第五十話 やはり俺は天才なのかもしれない
○やはり俺は天才なのかもしれない その1○
5月28日火曜日午後3時、中川からの指名依頼を果たす為賢斗とかおるそして中川の三人は清川ダンジョン1階層へと転移した。
そして一人大部屋内に入った賢斗は早速中スライムの討伐に掛かる。
「サンダーランス・アンリミテッド・ディカプル。バリバリバリィ~」
10本の雷槍が放たれるとあっという間にお掃除完了。
「やっぱり魔力操作って便利よねぇ、私も早く取りたいなぁ。ニタァ」
かおるは意味深な視線を賢斗に送る。
取りゃあ良かったじゃねぇか、この狸め。
「そんな事より今は中川さんの解析スキルが先ですよ、先輩。」
「はぁ~い。」
・・・これほど腹立たしい素直な返事は初めてだ。
「じゃあ中川さん、まずは解析スキルの習熟方法から説明して行きますね。」
「ええ、是非お願いするわ。」
「ちょっと待って、賢斗君。
女性にはまず感度ビンビンを取得して貰わなくちゃダメでしょ。」
えっ、別にそんな決まりはありませんけど?チラッ
「という訳で解析スキルは明日にしましょう。ねっ、賢斗君。キッ」
とはいえここで争っても敗戦濃厚、退いておくのが得策か。
「あっ、そうでしたね。」
つか今回中川さんは依頼をしてくれた大事なお客様・・・
いくらこの美人鑑定士様の乱れる姿に興味があるとは言ってもそんなだまし討ちの様なマネを俺がしよう等と考える訳ないっつの。あっ、ホントホント。
「中川さん、今日のところは解析スキルを取得する前にまずは感度ビンビンというスキルを取得して貰います。」
「あら、どうして?
依頼したのは解析スキルだけの筈よ?」
「それはそのぉ・・・ハイテンションタイムになると女性の場合・・・ゴニョゴニョ。」
かおるは中川に耳打ちして説明する。
「ふ~ん、あっ、そういう事だったのぉ。
でもそれじゃあ2つもスキルを取得させて貰う事になってしまうわ、何か悪いわね。」
「いえ全然、これは必要な事ですから。」
「うん、了解よ、じゃあ今日は紺野さんに感度ビンビンスキルの習熟取得をお任せすればいいのね。」
かおるが桜や円に感度ビンビンを習熟取得させた事は賢斗も知っている事だがその模様を実際には見ていない。
一体どんな方法で習熟取得させたのか、その点には彼も少なからず興味があった。
(で、君は何時までそこに居るのかな?)
(えっ、あっ、いや普通に見学ですけど。)
(見学者なんて必要ないわよっ!
スキル共有は済んでるんだし、賢斗君は早くこの部屋から出て行ってっ!)
かおるは冷たく言い放つ。
はて、何か不都合な点でも?
(何でですか?
俺も先輩が感度ビンビンを習熟取得させて上げるところを見てみたいです。)
(そっ、そんなの見せれる訳ないじゃない、っとにバカねぇ。)
おやおや?そんなに拒絶反応を示されると俄かにご褒美タイム臭が強まっちゃうんですけど?
ふっ、やはり俺の予想に狂いは無かった。
「賢斗くぅ~ん、この部屋から出ててくれるかなぁ?」
(念話やめたんですね先輩、嫌です。)
「出て行ってくれるかな?」
(そんなに顔近づけて来るとキスしちゃいますよ?先輩。嫌です。)
「出て行きなさいっ!」
「・・・はい。」
ったく、マジ怖ぇ~よ先輩・・・っとに冗談が通じない人だ。
「分かってると思うけど、ちゃんと入口から10m以上離れてねっ。」
賢斗は不承不承といった様子で大部屋の外に出て行った。
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○やはり俺は天才なのかもしれない その2○
かおるの言葉に従い賢斗は大部屋から距離を取る。
そして入口から遠ざかる事10m、彼はその歩みを止めた。ピタリ
ふっ、仰る通り10m離れましたよ、先輩。
では次の行動に移りたいと思いまぁ~す♪
今までひた隠しにされてきた感度ビンビンの習熟方法。
その秘密のベールを今俺が解き放つっ!
いや~あんなに拒絶されると余計期待が高まっちゃうでしょ~♪
それに今回のターゲットはうちのボス、あれだけのダイナマイトボディが乱れ狂うとなれば見逃すなんてあり得ませんしぃ♪
コホン、という訳で潜伏スキル及び忍び足スキル発動っ!
これより再接近ミッションに移行しますっ!
ソロリソロリ・・・賢斗は気配を消すと再び大部屋へ近づいて行く。
そして入口に到達した彼が目にしたのは・・・
「すぅ~はぁぁ~。」
お~こいつはぁ、ブルルルルゥン
彼女の漏らす吐息は5m程の距離があって尚若い少年の身体を震えさせる程の艶っぽさ。
こっ、これが大人の色気という奴か・・・ゴクリ
「それでは中川さん、これから始めるので少し我慢して下さいね。」
その言葉にトロンとした目でゆっくり頷く中川。
かおるは彼女の胸の膨らみの先端を服の上から指先で軽く擦り始めた。
なっ、なるほど、これが先輩式感度ビンビンスキルの習熟方法。
期待が高過ぎたせいか意外と大した事ないな。
とはいえ女性版のハイテンションタイムならこの程度の刺激でも耐え難い程の快感がボスの身体に襲い掛かっているに違いない。
「ぷはぁ~、良いわよぉ、紺野さん。その調子よぉ。」
えっ、何この余裕・・・女性がハイテンションタイム中にあんな事されたら普通は・・・
「あっ、あれ、どうしちゃったのかな?
こっ、こうすれば直ぐに取れる筈なんですよ?」
中川の反応にかおるは焦りの色を隠せない。
う~む、確かにこの反応はおかしい・・・
すると中川は二人が予想だにしていなかった行動に出る。
「うふぅ~ん、私にはこの程度の刺激じゃ物足りないわよぉ。」
彼女は自分の胸を擦っていたかおるの右手を上から押えつけると・・・
なっ、なんとぉっ!
ムギュウ、ムギュウ、とてもかおるの手に収まら切らない物体を上から強制的に力強く揉ませ始めた。
こっ、これは・・・紛うことなき痴女の所業。
「ほぉうら、紺野さん、もっと力を入れて・・・遠慮しなくて良いわよぉ。」
清川ダンジョンの大部屋内に百合の花が咲き誇る。
「ほぉうらもっとぉ、このくらいじゃないとぉ。ムギュウ、ムギュウ」
しかも満開にっ!
「ちょっ、ちょっと、中川さん、これはちょっとそのぉ、困りますぅ。」
「もうぉ、何言ってるの紺野さん、このくらいじゃ全然物足りないわよぉ。」
おおっ、あの先輩があんなにしおらしく・・・
「うふんっ、その分じゃあ貴女まだ女の喜びを知らないみたいねぇ。
だったら私が教えてあげる。」
そんなかおるの初心な反応に中川の行動はエスカレートする。
優しく彼女を抱き寄せると妖艶な手つきで髪を撫で始めた。
ゴクリ、これからどうなってしまうのだろう。
「えっ、ちょっ、女同士でなんて・・・やっ、やめて。」
「ほぉうら、貴女もその感度ビンビンスキルを解除しなさいな。
それじゃあ気持ち良くなれないでしょう。」
「えっ、それは絶対無理ですって・・・今そんな事したら・・・」
「もうぉ、仕方がない娘ねぇ・・・はぁい。」
その瞬間かおるの身体が激しく反応する。
「あっ、ビクンッ!きゃっ、はぅあぁぁぁ~。」
えっ、今何が起こったの?
これじゃまるで初めて先輩がハイテンションタイムを体験した時と・・・
しかし事態はそこで終わりではなかった。
中川はかおるの変化に満足げ気な表情を浮かべると彼女の背後に回り後ろ側から両手を上に持ち上げた。
「ほぅら、ばんざぁ~い。
い~い、女性の胸の触り方はねぇ、こうするのよ。ぐわしっ」
あっ、ボスッ!それは俺のですっ。
「い、いぃあぅあぅぅ。」
苦悶の表情を浮かべたかおるが切なそうな声を上げる。
「ムギュウ、ムギュウ、こんなに大きな胸なのに、この張りと弾力・・・若いって羨ましいわねぇ。」
「いっ、嫌ぁっ!ドンッ」
瞬間、かおるは中川の手を振り解き距離を取った。
「あら、もう3分経っちゃったのぉ。
これからがいい所だったのにぃ。」
「なっ、中川さん、すっ、すいません、うっ、上手く行かなくて・・・」
「良いのよ紺野さん、また次・・・頑張りましょうね。フフ。」
中川が妖しく微笑むとかおるは怯えた小動物の様に首をブンブンと左右に振っていた。
よっ、予想以上に凄いものを見てしまった。
・・・罪悪感が半端ねぇぞ。
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○やはり俺は天才なのかもしれない その3○
頃合いを見計らった賢斗が素知らぬ顔で大部屋に入って行くと尻餅をついたかおるが情けない声を上げた。
「賢斗く~ん、失敗しちゃったぁ。」
ええ、見てましたよ、口が裂けても言えませんけど。
「どうしちゃったんですか?先輩。
らしくないですって、また明日頑張りましょう。」
賢斗の言葉に対し半ベソのかおるはまるで駄々をこねる子供の様に首をブンブンと左右に振った。
ふむ、この普段は見せない甘えた仕草。
先輩はやっぱ弱ってる時が一番可愛い、うんうん。
「ご免なさいね、多田さん。
私がちょっと悪戯しちゃったから。」
あの所業はちょっとした悪戯では済まない様な・・・
まっ、女性同士ならスキンシップだと言い張れん事もない気がするけど。
「つい調子に乗って彼女の感度ビンビンをハイテンションタイム中に解除しちゃったのよ。」
あっ、あれってやっぱり・・・
「ってそんな事本当に出来るんですか?」
「ええ、あなた達だから言うけど私はスキルキャンセラーってスキルを持ってるのよ。」
「なんすか?そのスキルキャンセラーって。」
「まあ簡単に言えば、他人のスキルを一定時間使えなくするスキルね。
かなりのレアスキルで個人じゃ買えないから、会社に言ってスキルスクロールを私用に買わせたの。
大事な会議や商談とかで相手方に洗脳だとか虚言スキル所持者が居た場合交渉が不利になりますよなんて理由を付けてね。」
ふ~ん、俺が思ってた以上に中川さんてクローバー内で偉い人なんだな。
まっ、腹黒いとこを除けば仕事が出来て味方に居る分にはこれ以上心強い人も他に居ない気がするけど。
「貴方達なら分かってると思うけど当然今のはオフレコで頼むわよ。」
「あっ、はい、勿論。
でもそのスキル、魔物相手でもかなり有効そうですけど買うとしたら幾らくらいですか?」
「そうねぇ、このスキルスクロールは通常まず市場に出回らないし、私がオークションで落札した時は確か5000万円以上だった筈だわ。」
ほえ~、無理無理大まじ~ん。
「ちょっと中川さん、そんなスキルを私に使わないで下さい。」
「ええ勿論よ、紺野さん。
さっきは本当にご免なさい、誠心誠意謝罪するわ。
貴女の反応があまりにも可愛いらしかったから私もつい羽目を外してしまったの。
もう絶対使わないと約束するから安心して頂戴。」
うんうん、ちゃんと反省して下さいよ、ボス。
先輩がそっちの道に目覚めたらどうしてくれるんすか?
「もぉ~、ホントにホントですよぉ。」
まっ、何にせよだ、うちのボスに感度ビンビンなんて必要ないだろ。
ハイテンションタイム中だったにもかかわらずあれだけ余裕があったんだし。
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○やはり俺は天才なのかもしれない その4○
翌5月29日水曜日午後3時、引き続き賢斗達は清川ダンジョン1階層の大部屋へとやって来た。
今日に関してはもう中川に感度ビンビンを取得させる事はせず直接解析スキルを習熟取得させる予定となっている。
昨日同様賢斗がスライム達を一掃すると三人は大部屋内でスキル共有を済ませる。
それが終わるとかおるは直ぐ様後方へ後ずさり。サササッ
「どうしたんすか?先輩。」
「だってぇ。」
そんなに怯えていると柄にもなく可愛らしいですよ。
「ふふっ、良いのよ、多田さん。
私が全部悪いんだし、すぅ~はぁぁ~。」
そう言いつつも中川の口からは早くも甘い吐息が漏れる。
まあボスがそう仰るなら、っておいおい、もしかしてもうドキドキジェットを発動したんすか?
この近距離でそんな色っぽい視線を向けられたら・・・ゴクリ
「それで多田さぁん、私はどうしたらいいのかしらぁん。」
中川は賢斗を見つめながら妖しい指先は彼の顎と喉元を行ったり来たり。
う~む、このボスの痴女っぽくなるのもハイテンションタイムの副作用なのか?
「ちょっ、ちょっとボス・・・」
あ~ん、もう鬱陶しいな・・・止めないで下さい。
「じゃっ、じゃあ中川さん、この魔石を観察して構造と成分を超感覚ドキドキで感じ取ってみて下さい。」
「か ん じ と る ?ふぅ~。」
うわ~、なにこれ辛抱溜らん。
もうこれ我慢の限界だぞ・・・
もし先輩の目が無かったら完全に押し倒して・・・否押し倒されてしまっていた気がする。
「そっ、それが済んだら後は反復して行くだけですから、がっ、頑張ってくださいね。」
「はぁぁぁ、そうなのぉ。」
よっ、よ~し、何とか説明終了。
しかし説明を終えても中川はその指先を止めようとはしない。
そんな彼女に賢斗は解析の習熟に集中させようとその手を両手で包み込む様に抑える。
するとその瞬間・・・
「はぅあぁぁっ~。」
切ない吐息を漏らした彼女は弓なりに身体を仰け反らせ天を仰いだ。
えっ?この反応はまさかっ・・・あっ。
~~~~~~~~~~~~~~
名前:中川京子 28歳(165cm 54kg B92 W60 H90)
種族:人間
レベル:3(12%)
HP 18/18
SM 10/10
MP 6/6
STR : 10
VIT : 8
INT : 9
MND : 18
AGI : 9
DEX : 12
LUK : 10
CHA : 18
【スキル】
『鑑定LV10(-%)』
『スキルキャンセラーLV10(-%)』
『酒豪LV3(23%)』
『不眠不休LV5(8%)』
『限界突破LV1(0%)』
~~~~~~~~~~~~~~
そこにはお目当てではなかったスキルが取得されていた。
・・・やはり俺は天才なのかもしれない。
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○サブミッションクリアボーナス○
昨日限界突破を取得した中川だがその所為で彼女は解析スキルを習熟するどころでは無くなってしまっていた。
そして翌5月30日木曜日午後4時、依頼を受けてから3日目となる今日ようやく彼女に解析スキルを取得させる事に成功した賢斗達は拠点部屋へと戻って来ていた。
ふぅ、思いの外苦労したな。
「二人とも有難う。
お蔭様で念願の解析スキルが手に入ったわぁ♪」
中川はこれまでにない程ご機嫌な笑顔を見せていた。
「いえ、3日も掛かっちゃって済みませんでした。」
「そんなの全然気にしなくて良いわよ、契約期日内だし。
それより私が出す対価の方が物足りなくて逆に申し訳ないくらいだわ。
あっ、そうだ。サブミッションクリアボーナスでも付けちゃおうかしら。」
えっ、ホントっ?
「今度のオークションの落札資金、限度額を2000万円までにしてあげる。」
お~なんと太っ腹っ!
「えっ、いいんですか?」
「いいのいいの、成り行きとはいえ限界突破まで取得させて貰ったんだもの。
別途依頼したと考えればこれでも全然安いくらいよ。」
「じゃっ、じゃあ有り難く、でも何か余計な出費をさせちゃったみたいで・・・アハハ」
「二人がそんな事気にしなくて良いのよ。
貴方達への投資は最後には私にも返ってくるものだしね、うふっ。」
なるほど・・・流石はうちのボス、ご機嫌であっても腹黒さは失われていない様だ。
お蔭で少し気が引けていた気分がすっ飛んで行ったぞ。
ふっ、こうなりゃ軍資金2000万円、心置きなく使わせて頂きますかね。
色々と遠回りした今回の指名依頼、ようやく達成に漕ぎ着けた三人の表情は誰もが満足気であった。
次回、第五十一話 アイテムオークション。