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第五話 睡眠トラップと不思議な感覚

○視覚強化スキル○


 初戦闘で棍棒を入手した賢斗はまだ帰還予定時刻には随分早いにもかかわらず、入口付近の大岩ポイントまで戻ってきた。

 その目的といえばまたハイテンションタイムでスキルを習熟取得すること。

 現状欲しいスキルが山程ある彼としては当然の流れである。


 よしっ、ここなら目立たないし邪魔にもならない。

 ドキドキエンジンのクールタイムも終わってる事だし、もう一回行ってみますか。


 ドキドキエンジン、始動っ!


ドクドクドクドクドッドッドッドッ――――・・・・・


 うむ、続きまして~、ドキドキジェット、発動っ!


 ・・・あれ?


 おかしい・・・ちゃんとドキドキエンジンで心拍数も上げておいたのに。

 となるとこれはドキドキジェットのクールタイムがドキドキエンジンより長いという事か?

 あの効果の凄さからすればそうだったとしても何ら不思議ではない。

 にしても俄かに悪い予感がしてきたな。

 せめて許容範囲の長さであってくれれば良いのだが。


 一抹の不安を感じつつも賢斗は予定通り新たなスキルの習熟行動に移った。

 ハイテンションタイム程ではないが、テンションタイムに於いてもスキルの習熟効果は通常よりかなり向上する。


 さて、次に取得するスキルはっと・・・う~ん。


 当初俊足、索敵、潜伏スキルを順次取得していく計画だった賢斗。

 しかしダッシュスキルの予想以上の効果やパーフェクトマッピングスキルの取得は彼の中のスキル取得優先順位を大きく変えていた。


 やっぱリ現状の問題点を考えれば視覚強化が欲しいよな。


 次に習熟取得スキルを決めた賢斗はその行動を開始。

 と言ってもそれは普通の探索者達が行う単に目を凝らすだけの内容に加え、意識的に体内の魔素を魔素エネルギーに変換していく。

 そうする事でスキルの習熟効率が一段階向上する事をもう既に彼はこれまでの体験から知っていた。


 ふむ、このテンションタイム状態でもちゃんと状況を感じ取れるな、うん。


 そして次に行なったのはその出来た魔素の変換エネルギーを今回のスキルの発動箇所である目に集中させる。

 これにより習熟効率が更にもう一段階向上する。


 よし、順調順調、後はこいつを。


 その後は集中させた魔素の変換エネルギーを使って視覚が強化されるイメージを構築。


 でもこのイメージ構築には結構注意が必要なんだよなぁ。

 暗視とか遠見とか視力強化の下のスキルもある訳だし、ちゃんとどっちも可能な形をイメージしておかないと。


 それをひたすら繰り返していく。


ドッドッドクドク、ドクン、ドクン、ドックン、ドックン


 あら、もう30分経っちまったか。

 やっぱテンションタイム1回じゃスキルの取得とまでは行かないみたいだな。


 賢斗は大岩の陰から抜け出すと、また第1ポイントへ向け歩き出した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○睡眠トラップと不思議な感覚○


 午後3時30分、第1ポイントに辿り着いた賢斗はそのまま右折し右ルートへ、その先にある宝箱部屋まで脳内マップ表示を広げておくため進んでいく。


 300m程進むと枝道があり、その奥20mにゴブリンと思しき存在がマップ上で確認出来た。

 無視して先に進む事も可能な状況、しかし彼は枝道の奥へと歩を進めた。


 いや~、一回棍棒を使ってみないとなぁ。


ギギャァァ――


 距離が10m程に迫ると、ゴブリンは賢斗に気付き奇声を上げる。


 ふ~ん、武器無し個体ってのも居るのか。

 少しさっきより素早い感じだけど・・・


シュタシュタシュタシュタ


 賢斗はゴブリンをすり抜けると振り向きざまに後頭部を棍棒でフルスイング。


バコンッ


 ゴブリンはそのまま吹き飛び横壁に激突。

 ズルリと崩れ落ちたゴブリンに振りかぶった棍棒を上から振り下ろす。


バキッ


 打撃を与えた瞬間、ゴブリンは光の粒となって霧散していった。


 おおっ、今回はそれ程労せず倒せた。

 やっぱ石ころでゴブリンを倒すってのはかなり無理やりだったしなぁ。

 うん、こんなゴブリンが持ってた棍棒でも無いよりはマシ。

 つってもやっぱ刃が付いた武器の方が良いけどな、うんうん。


 再び本筋に戻るとまた宝箱部屋へと歩き出す。

 そしてその後はゴブリンと遭遇することなく3km程進んだ所でお目当ての宝箱部屋に到着した。

 そして部屋に入ると、また木製の宝箱が未開封の状態で置いてある。


 いや~、ハイテンションタイムの時は開封状態だったってのに、何だかつきが回ってきましたなぁ。

 って、あれ?何このビックリマーク。


 賢斗の脳内マップの宝箱の脇には「!」が表示がされている。


 う~む、宝箱にこんなマークがあったらやっぱり罠ってことかなぁ?

 ここは超感覚ドキドキを使って調べてみるか。


 賢斗は既にクールタイムが終わっているドキドキエンジンを発動、超感覚ドキドキで宝箱の罠を感知しようと意識する。


ドクン、ドクン、ドクドクドクドクドッドッドッドッ・・・・・・・・・


 う~ん、なんか今一ピンとこない。

 僅かな危険度は感じ取れるけど、どんな罠か一向に分からん。


 どうすっかなぁ、これ。

 でもこんな微弱な危険度なら大した罠ではないのかも・・・う~ん、一遍棍棒でぶっ叩いてみるか。


バコンッ!プシュー


 宝箱の上蓋が破壊されると白いガスが凄い勢いで噴出した。


 うわっ、なんだよっ、これ・・・あっ。


 賢斗はそのまま床に倒れてしまった。


ドッドッドッドッーーーー・・・・・


 ん、これは俺の心臓の音・・・

 そういやテンションタイム中だったっけ。

 にしても身体が動かん。

 ってことは、あれは麻痺ガスだったのか?

 でも特に痺れはないし、う~む、となるとあれは催眠ガス?

 ああ、そうだ、俺は今寝ている自覚がある。

 しかし何なんだこれは・・・浅い眠りの時に睡眠中であることを認識出来たりする事もあるけど、そんなもんじゃない。

 顕在意識が睡眠状態である事を潜在意識と自我がリンクし認識しているような不思議な感覚。


 宝箱の罠の催眠ガスで強制睡眠状態になると、こんな感じになるのだろうか?


 いや、そんな話は聞いたことがない。

 だとすればこれはいったい・・・


 15分程経つとようやく賢斗は睡眠状態から解放された。


「うっ、うう・・・、何だったんだ? 今のは」


 横倒しになっていた身体を起こすと彼の周囲には石ころが散乱していた。


 ・・・これが現実か。


 ゆっくり立ち上がり石ころをリュックに詰め込んでいく賢斗。


 2の0は辛いな・・・何だか心が折れそうだ。


 とぼとぼと宝箱部屋を後にする。

 この時の彼はこの経験が後に大きく役立つ事をまだ知らなかった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○ドキドキジェットのクールタイム○


 右ルートの宝箱部屋からまた一旦大岩ポイントへ戻ると賢斗は再びテンションタイムによる視覚強化の習熟取得を試みた。

 しかしそれは敢え無く失敗。


 まっ、視覚強化は今後絶対必要なスキルだし途中で投げ出す訳には行かないよな。


 テンションタイムが終了し、賢斗は再度第1ポイントへ向かうと今度はまだマップ表示がされていない2階層へと続く中央のルートを進んでいく。


 あっ、またビックリマークだ。


 中央ルートに入り100m程進むと脳内マップの通路の先にビックリマークが表示された。

 そしてこのマークが罠のマークであり、超感覚ドキドキを駆使して尚危険度しか分からないのは既に学習済み。


 う~ん、今度は正攻法で行ってみるか。


 賢斗は罠の位置の手前で立ち止まと前方に石ころを投げた。


カツンッ、コロコロコロ


ドシャ―――


 目前の床が崩れ落ち、3m四方の大穴が開いた。


 ふ~ん、落とし穴トラップかぁ。

 深さが3m程ってところでは落ちても死にゃしないだろうけど一人じゃ這い上がれないかもなぁ。


 賢斗は淵を通って落とし穴を回避すると更に奥へ進んでいく。

 すると程なく今度は移動する3つの点が表示された。


 おっ、これは探索者さん達かな?

 そろそろ良い時間だし今日の探索を切り上げてきたって感じか。


 彼は付近にあった枝道に入ると身を潜めて通り過ぎる探索者達をやり過ごす。


 ダンジョン内は自己責任の無法地帯・・・無闇に他の探索者との接触は避けるべし。

 結構トラブルとか多いらしいからなぁ。

 万が一トラブったらレベル1の俺じゃボコられて終わりだろうし。


 先程の探索者達が枝道の前を過ぎ去っていった。


 さて、そろそろいいかなぁ~。

 って、またお客さんか。


 その後もコンスタントに家路を急ぐ探索者達が枝道前を通過し人影が後を絶たない。


 あ~、くそっ、何時になったら人気が無くなるんだ?


 そうこうしていると時刻は既に午後6時を回りドキドキエンジンのクールタイムが終わっていた。


 そろそろ俺も帰りたいってのに、もうここでいっか。


 賢斗は中央ルートの枝道に身を潜めながらドキドキエンジンを発動すると本日3度目となる視覚強化の習熟を始めた。


ドクドクドクドクドッドッドッドッーーーー・・・・・


『ピロリン。スキル『潜伏』を獲得しました。』


 えっ、潜伏?

 いや確かに大岩に隠れてテンションタイムを消化している時間も多かったし今だってこうして・・・う~ん、まあ嬉しいんですけどね。

 とはいえ今となってはそこまで優先度が高い訳でもないんだよなぁ~。


 気を取り直し視覚強化の習熟を続行する。

 すると20分程経過したところでようやく彼の頭に待望のアナウンスが響いた。


『ピロリン。スキル『視覚強化』を獲得しました。』


 いよぉ~し、ようやく取れたか。

 テンションタイム3回正味1時間半でスキル一つを習熟取得って考えりゃ、これでもかなり優秀だろう。

 さぁ~て、今日はもう十分だな。

 あっ、そうだ、最後にもう1回ドキドキジェットが使えるか試してみるか。

 まだテンションタイムも少しは残ってるし。


ドキドキジェット、発動っ!


ドッドッドッキィィィィィィィィ・・・・・・・・・・・・・・


「うわっ!」


 来ったぁ~、ハイテンションタイムッ!


『ピロリン。スキル『パーフェクトマッピング』がレベル3になりました。』


『ピロリン。スキル『潜伏』がレベル2になりました。』


『ピロリン。スキル『視覚強化』がレベル2になりました。』


 おお~、いきなりレベルアップが3連発っ!


 最初のハイテンションタイムから5時間経過で使えたってことは、クールタイムは5時間か?

 だとしたら十分許容範囲、下手したら数か月とか思ってたし。


 いやそんな事より今はこのハイテンションタイムをどう活用するか考えないと・・・えっと次に取りたかった奴は聴覚強化か。

 でもこれハイテンションタイムで取得する必要ないよな・・・テンションタイム3回で何とかなりそうだし。

 となればちょっと取得が難しそうなあれにしてみるか。


 賢斗はリュックからゴブリンの魔石を取り出すとそれをつぶさに観察、その構造と成分に意識を傾ける。


 魔石の見た目は長さ3cm程の大きさ、六角柱に近い形状で白と黒の濁りがある。

 成分は主に石英に近い鉱物で中心に近い部分には、微量の魔素の変換エネルギーが込められている。

 また白と黒の濁りの正体はどちらも不純物で魔石に含まれる魔素含有量は通常人の目で判別は出来ない。


 流石にハイテンションタイム中の分析力は半端ねぇな。

 ともあれこれで魔石の構造と成分の把握は終了。

 あとはこれを繰り返せばお目当ての鑑定スキルが取れるはず・・・


 賢斗が意識の集中と解放を繰り返すとそれは星の瞬きのような速さで加速していく。


『ピロリン。スキル『解析』を獲得しました。』


 あれ?解析?


ドッドッドクドク、ドクン、ドクン、ドックン、ドックン


 スキルの取得と共に心拍数は平常時のそれに戻っていく。


 やはりハイテンションタイムは凄いな。

 でもまた微妙にスキル名が違うんだが・・・まあでもダッシュの時もなんとかなったし問題ないか。

 要は使えるかどうかだし。


 賢斗は自身を解析するよう意識した。


~~~~~~~~~~~~~~

名前:多田賢斗 16歳(168cm 56㎏ C88 W78 H86)

種族:人間

~~~~~~~~~~~~~~


 すると頭の中にステータスイメージが表示された。


 よし、ちゃんと使えそう。

 まっ、表示項目は少ないが、その点についてはレベルが低いせいだろう、うんうん。


 でも身長とかスリーサイズなんて情報、鑑定書には載ってなかった気がする。

 あっ、でも情報が多いってのは寧ろ歓迎すべきだよな。

 もしかしたら鑑定より優秀だったりして。

 おお~、それは十分あり得る・・・ニヤリ


 上機嫌で帰還の途に就く賢斗。

 この日探索者活動を始めて一週間が経った彼の獲得スキル数は6つ。

 奇しくもこれは初年度探索者が年間で取得する数と同じである。

次回、第六話 スキル研究部。

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― 新着の感想 ―
今思うとこの時点で睡眠耐性とか手に入れたら魔法習得できなかったのかぁ
[気になる点] 物語を絡めないでスキル過多で埋め尽くすのはもったいないですね アイデアを披露したい気持ちも分からないでもないですが
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