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第四十八話 ルンルン気分

○探索者マガジンの取材 その1○


 5月27日月曜日、今日から賢斗とかおるが通う高校だけでなく桜と円が通う女子高でも中間テスト期間に突入。

 偏差値高めな桜達の学校ではこの期間ダンジョンへ行く事も禁止されたそうで最終日である金曜日まで四人はパーティー活動を自粛する事に決めていた。

 とはいえそんな自粛期間の初日から四人は拠点部屋に集合してしまっている。


「テストが始まったばかりなのに来て貰って悪かったわねぇ。

 そんなに時間は取らせないし申し訳程度の報酬も出るからちょっと付き合って頂戴。」


 中川に呼ばれた理由はプロ探索者としての初仕事、雑誌取材の為である。


 まっ、取材内容は大方モンチャレ関連だろうなぁ。


「トントンガチャリ、取材の方がいらっしゃいましたよ。」


「どぉもぉー、探索者マガジン編集部で記者をやってる丸石と言いまぁーす。

 今日は取材に応じて下さり大変有難うございますぅ。」


 水島の後ろからハンカチで額を拭いながら現れたのは少しお腹が出始めた丸顔男性。


「ようこそ丸石君、あんまり変なこと記事にしちゃダメよぉ。」


「ちょっとちょっとぉ、取材前からプレッシャー掛けるの止めて下さいよー。

 僕に中川先輩を敵に回す度胸なんてありませんから。」


 随分油ギッシュな人が来たな。


「にしても相変わらず中川先輩はエグイですねぇ~。

 てっきり先輩の事だからどっかの大物探索者と専属契約するのかと思いきや新人の高校生探索者と契約した時はどうしたのかと心配してましたけど。

 まさかその高校生が全員魔法スキル所持者で高校生モンチャレ大会の決勝進出を決めるなんて。

 僕には分かりますよ、コレ絶対中川先輩の仕込みでしょ。

 探索者資格取り立ての高校生が魔法のスキルスクロールを幾つも買うなんてまず無理ですからね。」


 あ~傍から見たらそう見えるのかぁ。

 まっ、そう思っていて貰った方が何かと都合が良いですけど。


「その辺はノーコメントということにしておいて頂戴。

 記事にしたら承知しないわよ。」


「またまたぁ、敵わないなぁ中川先輩には。

 でも隠す必要なんて無いんじゃないですかぁ?

 クローバープロに所属すれば魔法のスキルスクロールを優遇して貰えるなんて事が知れ渡れば所属を希望する高ランク探索者の方も大勢出て来ると思いますけど。」


「馬鹿ねぇ、立ち上げたばかりのプロダクションの資金繰りにそんな余裕がある訳ないでしょ。

 うちは少数精鋭、私が気に入った相手としか契約しない方針なの。」


「まっ、言われてみればそっすね。

 餌に釣られて来る様な探索者を中川先輩が気に入るとも思えませんし。

 にしてもスカウトオンリーっすかぁ。

 なるほどぉ、ナイスキャッチにこれだけの美少女が集まってる理由にもようやく合点が行きましたよぉ。」


「それに関してはあくまで偶然よ、丸石君。

 まあ皆が美少女である事は認めるけど。」


「またまたぁ、偶然でこれだけの美少女達が集まるなんて出来過ぎですよぉ。

 にしても不思議なのは多田君の存在。

 探索者アイドルグループとして育てるつもりなら多田君みたいな男性メンバーを入れるのは逆効果ですし中川先輩が彼をスカウトした理由だけが今一ピンときません。」


 まっ、俺の場合は桜との抱き合わせ商品みたいな感じだったしなぁ。


「ウフッ、まあ今の彼を例えるならブラックダイヤモンドの原石。

 彼もまた10年いや30年に一人の逸材である事は間違いないわよ。

 と言っても丸石君には一生掛かっても理解出来ないでしょうけど。」


 ほう、この俺がダイヤの原石とな?

 ボスぅ~随分持ち上げてくれるじゃないですかぁ、ルンルン♪


「なっ、僕だってこうした取材で凄い探索者さんと会う機会もありますし少しは人を見る目に自信がありますよぉ。

 ちょっと失礼して・・・じぃ~。」


 なっ、何だよ、俺は30年に一人の逸材さんだぞ。


「なるほどぉ、何となくですが分かりました。

 彼には将来ビッグに成るスター性を感じます。」


 将来ビッグに成るとか適当にも程があんだろ。


「当たりっ!」


 えっ、何で正解?


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○探索者マガジンの取材 その2○


「それじゃあ改めまして探索者マガジンの丸石です。

 今日はモンチャレ決勝に向けた皆さんの意気込みや簡単な質問を幾つかさせて頂きますのでよろしくお願いします。ポチッ」


 挨拶を終えた丸石は対面のソファに腰を下ろすとICレコーダーのスイッチを押した。


「じゃあ次に皆さんの好きな食べ物は?」


「卵かけごはんかなぁ~。」


「ケーキのモンブランです。」


「あっ、中華料理の回鍋肉っす。」


 始まった取材の内容はその言葉通り簡単な質問に終始し他には使っている武器や良く行くダンジョン等の質問がなされた。

 そして最後にモンチャレ決勝に向けた抱負を各自語ったところで初めての雑誌取材は10分程であっけなく終了。


「本日は有難う御座いました。

 これで取材の方は終了です。」


 ふ~ん、もっと魔法スキルの事とか聞かれるのかと思ってた。


 こうした探索者相手の雑誌取材に於いてスキル関連の話をズケズケ聞くのはあまり好印象を与えない。

 そんな事はもう何年もこの雑誌の記者をやっている丸石は知っている事だし弁えてもいた。


 まっ、何にせよ、俺達としてもあれこれ聞かれずに助かったけど。


「それじゃあそろそろ失礼します。

 来週の探索者マガジンはこちらに郵送させて頂きますから。」


 丸石は笑顔で席を立ち上がると退室前に中川へ向け頭を軽く下げた。


「あっ、丸石君待ったっ。

 折角来たんだから耳寄り情報の一つくらい教えて行きなさいな。」


「えっ、耳寄り情報って言われてもなぁ。

 そんな中川先輩の喜びそうな情報なんて持ってないですよ?僕。

 でもまあ中川先輩に関係があると言えばダンジョン省の探索者制度改革に伴い6月から探索者協会がランキング制度の改革に乗り出すって事くらいですかね。」


「ランキング制度の改革?」


「ええ、その第1弾が未成年探索者ランキングとやらの公開だそうです。」


 何かモリショーが似たようなことやってるサイトがあるとか言ってたな。


「協会がそんなものを公開するって事はランクとか何かのメリットがあるのかしら?」


「いや残念ながら今のところそれは無いみたいですねぇ。

 でも若者達にとってはここの様な探プロにスカウトされるチャンスが増えますし良い励みもになります。

 またナイスキャッチの様に既にプロ契約した高校生探索者にとっても上位にランキングされればスポンサードしてくれる企業への良いアピールになるでしょう。」


 確かになぁ、ってちょっとちょっとっ!そういう話をうちのボスに言わないで下さいよぉ、丸石さん。

 どうせその何たらランキングの上位を目指せ~とか言い出すに決まってますから。


「あらそう、でもこれ以上の人材発掘をするつもりは今のところないし企業も含めた世間へのアピールという点ではテレビ中継もされるモンチャレ決勝進出の方が上。

 うちとしてはどちらにしろあまりメリットのある話には聞こえないわね。」


 あれっ?

 中川さん的には滅茶苦茶食いつきそうなネタだと思ったんだけど・・・

 まあ良く分からんが結果オーライ、次からは注意して下さいよ、丸石さん。


「ですから中川先輩の喜びそうな情報なんて持ってないって最初に言ったじゃないですかぁ。」


「わかったわかった、で、他にはないの?耳寄り情報。

 ほらほら、私に隠し事しても良い事ないわよぉ。」


「何すかそれぇ~、そんな情報あったらとっくに・・・あっ。」


「ほら、やっぱりあったじゃない。」


「いやこの情報は中川先輩以外には大した情報じゃないですから。」


「そうなの?じゃあ早く教えなさい。」


「えっと今週の日本アイテムオークションに解析スキルのスクロールが出品されるそうですよ。」


「あらそう、悪いけどそれならもう知ってたわよ。」


「ああやっぱり、先輩がこの情報を知らない筈無いとは思いましたけど。」


「でもまあ一応情報にはありがとうと言っておくわ。

 とはいえ記者ならもっと情報集めに頑張りなさいな。

 貴方はやれば出来る男なんだから。ニコリッ」


「もう、その何時も最後にちょっとだけ優しくするのってワザとっすよねぇ。」


「気にしない気にしない、さあ帰った帰った。ポンポンッ」


 愚痴る丸石をドアの方へ向かせると中川は彼の背中を押し部屋の外へと追い立てる。


 ふっ、こんな私にここまで着いて来た男は丸石君くらい、何時も感謝してるわよ。


「バタン、じゃあ光ぃ♪今週の日本アイテムオークション、行く事にしたから手配よろしくねぇ♪」


「はい、先生。」


 お~、これがうちのボスの真の姿か・・・なんて汚い。


「あと皆も聞いてたわね。

 モンチャレ決勝が終わったら未成年探索者ランキングの上位目指して頑張って行くわよぉ♪オーッ!」


 やっぱ食いついてた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○ルンルン気分 その1○


 午後2時40分、取材が終わりしばらく拠点部屋でお喋りしていた桜と円が帰って行く。

 するとそのタイミングを待っていたかの様にかおるが賢斗に声を掛ける。


「ねぇねぇ賢斗君、良かったらこの後白山ダンジョンに付き合ってくれる?」


「えっ、まあ俺もこの後どっかのダンジョンに行こうと思ってたとこでしたし別に良いですけど、白山ダンジョンで何するんですか?」


「それは勿論睡眠習熟よぉ、私も魔力操作を取得したくなったの。

 なぁ~んか矢に風魔法を乗せて放つのって結構難しいのよねぇ~。

 でも魔力操作があればきっとその辺の微調整も上手くいくと思うのよ。」


 確かに魔法を応用して使うには魔力操作があった方が断然良いもんな。


「へぇ、でも俺はてっきり先輩ならウィークポイントスキルの方を先に取得したいんじゃないかと思っていましたよ。」


「ああ、そのスキルならもう良いのよ。

 ほらここの所スライムの核狙いばっかりしてたでしょ。

 そしたら普通に取得出来ちゃったし。」


 ほほう、何ら不思議では無い話だがそのお得感はちょっと羨ましい。


 ドキドキ星人スキルに頼らずスキルを習熟取得した経験に話を限定するならば、賢斗の場合はダッシュスキルのみでこれは新人探索者の取得平均を下回る。

 とはいえ普通に取得される前にハイテンションタイムで取得して行ってるのだからこれも当然の結果と言えよう。


「でも賢斗君がウィークポイントの取得に協力してくれる気持ちがあるなんて意外だったなぁ。」


 へっ、何が?

 パーティーメンバーの戦力強化に協力するのは当然ですけど。


「だってそれって私に君の急所を触って欲しいって事になっちゃうものぉ♪」


 う~む、こういう頭の回転だけは速いなこの人・・・


「そんな事少しも考えてませんでしたよ。」


 余計な事言わなきゃよかった。


「ホントかなぁ、正直に言っても良いのよぉ♪

 かおる先輩ツンツンして下さいって。ウフ♡」


 言ったらツンツンしてくれるんかいっ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○ルンルン気分 その2○


 午後3時、白山ダンジョン協会支部までやって来た二人。

 自動ドアのセンサーが反応しドアが開くと・・・


ウィーン、チラッ、フリフリ


 こちらのセンサーも絶好調。


「侵入申請お願いします。」


「いやっほ~、たっださ~ん、第3予選も凄かったですねぇ~。

 蛯名っち雷にビックリして思わずおへそを隠しちゃいましたよぉ~。」


 ふっ、まあ大した威力だったしな。


「にしてもメンバー全員が雷魔法を使えた事にも超ビックリ。

 これでまたナイスキャッチの成金振りに拍車が掛かっちゃいましたね~。」


 まっ、傍から見たらそう思われても仕方ないかぁ。


「でもそ~んな成金振りもこの蛯名っちには大好物、より一層私の心を捉えて離しませんよぉ~。」


 そういやこいつ、協会長の孫だとか言ってたもんなぁ。

 こんな奴と釣り合う男なんかどこぞの御曹司かホントの成金野郎くらいなもんだろう。


「はいはい、分かったからいい加減侵入申請してくれ。」


「あっ、でしたね~、今日はちょっと早めの帰還予定は18時、確かに頂きましたぁ~。」


 ふぅ~。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○ルンルン気分 その3○


 程無く1階層の右ルート宝箱部屋に辿り着いた二人は睡眠習熟のスタンバイ。

 宝箱の裏側に立つ賢斗が真正面でしゃがんでいるかおるに声を掛けていた。


「にしても先輩が俺1人の監視役で睡眠習熟したいとか少しは俺も信用されてきたって事ですかね。」


「だって仕方がないじゃない。

 他の皆は今ダンジョン禁止って言われてるんだから。」


 へいへい、そこは社交辞令でも「そうね」くらい言えばいいのに。


「でもまあ小心者の賢斗君の事だし私の寝こみを襲っちゃう何て事は無いでしょ。」


「そんなの当り前っすよ、ったく人を何だと思ってるんすか。」


「うんうん、でももし変な事したらちゃ~んと責任は取って貰うんだからねっ♪」


「へいへい、万が一そんな事したら責任でも何でも取って上げますよ。」


「ウフッ、その言葉しっかり覚えておきなさいよぉ。」


 と睡眠習熟が開始されると吹き出した睡眠ガスでかおるの身体はうつ伏せに倒れた。


 っとに年上振りやがって本当に襲っってやろうか?出来ないけど。

 とはいえこんなチャンスは滅多にない。

 そしてあんな事を言われ只引き下がるってのも何処か釈然としないものを感じる。

 う~む、この場合ちょっとした悪戯程度なら許されるのではないだろうか?うんうん。


 となると先輩に心的ダメージを与えつつ変な事には該当しないギリギリのラインを巧みに攻めていく手段を構築するのが急務・・・

 よしっ、やっぱりあれか、よいしょっと。


 賢斗はかおるの身体をお姫様抱っこすると赤子をあやすかの様に左右に揺らしつつ2分程辺りを練り歩いた。


 どうですか?先輩、恥ずかしいでしょう?


 そして最後は適当な場所を見つけると平らな床面にかおるを仰向けに寝せて頭の下に持ってきたクッションを置いてやる。


 よしっ、これはあくまでも寝ている先輩を寝やすい場所に移動し姿勢を正してあげたに過ぎない。

 決して先輩の言う変な事には当たりませんぞ、ふっふっふ。


 いやでも待てよ。

 こういう悪戯は恥ずかしがる相手が寝た状態では全く成立していない様な気がする。

 う~む、酷く無意味な事をしてしまったな。


 一仕事終えた賢斗はかおるの横に腰を下ろと彼女の寝顔をしばし見つめる。


 あらあら、何ともあどけない寝顔ですなぁ。

 ホ~ント起きてる時とのギャップがあり過ぎだしずっと寝てればいいのにぃっ♪


 でも何だろう、こうして見てるとあのぷっくりした唇にキスしたくなってくる。

 がしかしそこまでの事をしたら当然先輩の言う変な事に該当してしまう、う~む。


 ・・・いや待てよ。


 普段鉄壁さを誇る先輩とは思えないこの無防備な姿。

 そしてこの賢斗さんがあんな言葉くらいでこの千載一遇のチャンスを見逃す様な甘い男で無い事は先輩も御存知の筈だ。

 にもかかわらずこんな状況を招いたのは紛れも無く先輩のミスという事に・・・


 おお~見えたっ!

 俺は何も悪くない。


 目標補足、距離約50cm。

 面舵いっぱ~いっ、よ~そろ~!


 賢斗は自分の唇をゆっくり寝ているかおるの口元へと運ぶ。

 するとその距離20cmまで近づいたところで・・・パチリッ!


 あれ?何故今先輩と目が合っているのだろう?


 賢斗の顔はだらしない笑顔のまま凍りついていた。


「おはよう、賢斗君。ニコッ」


「おっ、お早う御座います。」


 なっ、何で起きてんだよっ、この人。

 まだ10分経ってないだろぉ?

 はっ!まさか先程までの睡眠状態は狸寝入り・・・


「ふぁ~、それにしてもよく寝たなぁ♪」


 だとしたらこれはかなり不味い・・・


「なぁ~んか王子様にお姫様抱っこされた夢見ちゃったぁ、あはっ♪」


 ブフォッ!


 かおるは口に掌を当てわざとらしく笑う。


 ヤバいヤバいヤバい・・・

 これは完全に嵌められてしまっている。

 そしてあんな事言った手前このままでは取り返しのつかない事に・・・


 いっ、いや待て、早まるな。

 よ~そろ~は未遂に終わっている・・・ここはもう少し様子を見てみよう。


「へっ、へぇ~、おとぎ話みたいな夢で、よっ、良かったでごじゃりますねぇ~。」


 くっ、こんな時に・・・頑張れ俺。


「うん、でも眠っていたお姫様は王子様がキスする前に起きちゃったんだけどね、あはは♪」


 ちっ・・・容赦ねぇなぁ、相変わらず。


「それで賢斗くぅ~ん。

 私に変な事をしたら責任取ってくれるらしいけどどんな風に責任取ってくれるのかなぁ~♡」


 ・・・やはり憶えていたか。

 いやまだ変な事する前だっただろぉ?ってそんな言い訳が通用する筈はない。

 何とかこの窮地を上手く乗り切る術は・・・

 ええいっくそっ、こうなったら破れかぶれだ。


「先輩みたいな美少女が傍で寝てたらキスをしたくなるのは普通の事ですっ!

 全然変な事とは違いますってっ!」


「そっ、そう、ふ~ん、そう来たかぁ・・・

 まっ、そういう事なら今回は勘弁して上げよっかなぁ♪」


 おおっ、敗戦濃厚のこの場面、これは勝利に等しい。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


○ルンルン気分 その4○


 午後4時30分、睡眠習熟を終えた帰り道。


「で、結局先輩は何がしたかったんですか?」


「えっ、それは勿論午後から暇だったし賢斗君とデートよ。

 君もこんな綺麗な先輩とデートが出来て楽しかったでしょ?」


 はぁ~ったくこの人は。


「じゃあ魔力操作が欲しいってのは嘘だったんですか?」


「ううん、全然そんな事ないわよ、魔力操作が欲しいのは本当の事だし。

 でもそれはまた皆が居る時にするわ。

 だってそうしないとまた私の魅力で賢斗君の理性が崩壊しちゃうものぉ♪」


 う~ん、その口にガムテープ貼りつけたい。


「それにちゃんと収穫もあったわよ。

 面白そうなスキルが手に入ったし。」


 えっ、面白そうなスキル?


 賢斗は興味に駆られかおるのスキルを解析した。


~~~~~~~~~~~~~~

『ルンルン気分LV1(0%)』

種類 :アクティブ

効果 :気分次第でスキル効果が変動する。効果時間10分。

~~~~~~~~~~~~~~


 あらホント、何か面白そうだな、このスキル。

 がしかし取得の経緯を考えると何故か腹が立ってくる。


「あっ、賢斗君、今勝手に私の解析したでしょ?」


 あっ、ヤベッ。


「済みません、気になっちゃったんで、つい。」


「うんうん、素直で宜しい。

 時々こっそり私のステータス解析してるのも御見通しだぞ。」


 えっ、バレてたの?


「でも仕方ないわよねぇ、賢斗君は私の事が気になって仕方がないんだものぉ~♪」


 くそぉ、今日はもう終始この調子かよっ。


「でもどうしようかなぁ、私には賢斗君のその衝動を止める術はないし。」


 かおるは芝居染みた祈りのポーズで悩んだふりをする。


「だったらもうこれは仕方がない事ね。

 という訳で今日の私は気分が良いし賢斗君には特別に何時でも私の解析をしていい権利を授けましょう。」


 へいへい、そりゃどうも。

 つか同じパーティーなんだから解析くらい普通にさせてくれても良いだろぉ、ったく。


 上機嫌の少女と呆れ顔の少年がダンジョンから出て行った。

次回、第四十九話 オークションカタログ。

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